事故物件サバイブ ~心霊現象総スルーな兄が最強すぎる、致死率150%呪いのロンダリング・バイト~

資源三世

5月8日 絵の具 ①Ever Ready(脚本)

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〇ハイテクな学校

〇美術室
  放課後の美術室。私は部活である女性の絵を描いていました
妹(透き通るように白い肌、澄んだ青空のような瞳、純氷のような穢れのない存在感──)
梓「それ、あの人だよね?」
  私の絵を見て、梓が苦々しい表情をします。実際、梓は彼女に苦い思いがありますから
妹「あの人が何なのか、確かめられないかなって思ってね」

〇エレベーターの中
  あのエレベーターのお姉さん──
  人でなく、でもただのお化けでもない。私は、お姉さんに対して、興味に焦がれていたのです

〇美術室
妹「でもどんなに綺麗に描いても、どうしても似てこないのだよ」
梓「似てるとは思うけど?」
妹「雰囲気が出せないんだよ」
  生き生きとした艶めかしい肌と、静寂に包まれた夜の森のような心象。それを表現できる色が見つからないのです
妹「何か、いい色ないかな?」
  画材の中を探ってゆくと、見知らぬ絵の具がでてきました
  銀色のチューブ容器に白い紙が巻かれていましたが、色の名は書いておらず、『Ever Ready』とだけありました
妹「何、これ?」
梓「誰かの絵の具が紛れ込んだ?」
妹「多分、違う。連休中、もって帰った時はこんなのなかったもの」
  試しに少しだけパレットに出してみると、僅かな赤みをはらむ白でした
妹「綺麗な色・・・」
  まるで生まれたての赤ん坊を抱く、母親の死体のような温もりがある。これを使えば、欲しい色が出せる気がする
妹(この惹きつけられる感覚・・・これは──)
  私はその絵の具を地面へ投げました
梓「何してんの?」
妹「これ、使っちゃダメなやつ。あのエレベーターと同じ感じがする」
梓「私には、ただの黒い絵の具にしか見えないけど」
妹「あー・・・」
梓「何、そのリアクション。怖いんだけど?」
  梓は共感覚で感情を色として見てしまいます。良い感情は明るく、悪い感情は暗く。人に限らず、物にこもった感情までも
  その彼女が白を黒と見間違えたのです
妹「あれは特級呪物か何かかな」
梓「だから、詳細省いて怖いこと言わないで欲しいんだけど?」
妹「人類にはまだ早すぎる絵の具ってことなのだよ」
  私は梓を軽くけむに巻き、床に落ちた絵の具を拾って、キャップを固く締めます
  更にそれを何重も画用紙で包んで、テープを固く巻きつけます
妹「これを百葉箱に入れ・・・たら、まずいか」
  誰かに開封されても困るので、自分のロッカーの奥にしまっておきました
  パレットに残ったわずかな絵の具は、今も蠱惑的に誘ってきます
  『私を使えば、あのお姉さんの絵は理想へ到達できますよ』と
妹「ちょっと洗ってくる」
  高鳴る胸に気付かないふりをして、私は絵の具を洗い流すのでした
  この色を使いたい。そんな焦がれる思いもろともに

次のエピソード:5月9日 ゲーム

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