5月9日 ゲーム(脚本)
〇中規模マンション
〇マンションの共用廊下
ほとんど使われない玄関の郵便受けから、茶色い包みが頭を出しているのが見えました
夕方は昼に比べて冷え込み、長い階段を上って家まで帰っても、たいして汗をかかないですみます
とはいえ、疲れるのは変わりありません。新聞や郵便も、まずここまで届けにきません
なのにここにある。経験上、それはろくでもない予感しかありません。私は渋々、それを郵便受けから取り出します
小型の辞書くらいの大きさがあり、表には消印がついてます。正規の郵便物です
私はそれの招待を探る為、家の中へと持ち込み、兄を呼ぶのでした
〇高層マンションの一室
( ´∀`)「こんなん、中を見ればわかるさ」
兄はろくに確かめようともせず、遠慮なく包装をビリビリ破り、中のものを取り出します。出てきたのは──
妹「ゲームソフト?」
タイトルのシールは、剥がされて読めません。経年による変色と、細かい傷や汚れが酷いので、年代物でしょうか?
妹「知ってる?」
( ´∀`)「古いな。確か、親父世代のだぞ」
妹「じゃあ、動かせないね」
妹(ほっとしたような、気になるような)
( ´∀`)「このハードは、編集長が持ってますよね」
兄は、編集長に同意を求めますが、編集長は大きく首を振りました
編集長「ダメだ! それをプレイしてはいけない!」
妹「何か、知ってるんですか?」
編集長「いや、その・・・こんな話を聞いたことはないか? プレイした人間が次々と行方不明になる謎のゲームソフトの話を!」
妹「行方不明?」
編集長「そう、それは見たこともないタイトルの、古いROMでね。公式に発売された履歴もないんだ」
編集長「だが、それを手に入れ、プレイしたという人間は現れ、そして行方不明になった」
編集長「次から次へ、人の手を渡り、遂にこの事故物件に引き寄せられてきたのかも知れない」
妹「これが、本当に?」
編集長「あぁ。だから、私が引き取ろう」
( ´∀`)「そんなのダメです。編集長にもしものことがあったら、誰が俺の給料を払うというんです!」
編集長「心配はいらない。こういったものの扱いは心得がある」
( ´∀`)「そう言って、給料未払いで消えられても困るんですよ! だから、俺がプレイします。丁度、ここじゃないどこかに行きたかったんだ」
妹(お疲れだね)
編集長「いや、だが!」
必死に止める編集長を押しのけて、兄は隣の家からハードを持ち出して、素早くコードを繋げて起動させてしまいます
妹「ちょっと、私まで巻き込まないでよ!」
編集長「そ、そうだ! 君だけでも早くここから離れるんだ!」
しかし、一足遅かったです。テレビの画面には、既にタイトルが、怪しげなタイトルが──
〇ハイテクな学校
『ドキドキ! エッ○な学園生活!!』
〇高層マンションの一室
妹「・・・ん?」
( ´∀`)「これって、エロゲー?」
編集長「ああぁぁぁ!!」
〇中規模マンション
それは編集長が買った、インディーズのエッチなゲームだったそうです
誤って我が家に届き、兄がきちんと確認もせずに包みを破ってしまったため、今回の悲劇になってしまいました
〇マンションの共用廊下
それからしばらく、編集長の姿を見なくなりました
きっとまた行方不明になったのでしょう
そうしてあげるのもまた、優しさだと思います