忍び忍びに濡るる袖

ましまる

第一帖・左府(脚本)

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〇学校の部室
  ──文芸部・部室──
るる「ぶちょーって、恋愛小説で 好きな設定ってあるんですか?」
ぶちょー「やっぱり、平安王朝モノかな」
ぶちょー「『源氏物語』にハマって以来 あの時代を舞台とした恋愛話が大好き!」
ぶちょー「知的な貴公子たちが織り成す恋愛って 見ていて興奮しちゃう!」
るる「貴公子同士が織り成すBL恋愛・・・」
ぶちょー「変な妄想はしないでっ!!」
ぶちょー「あの時代の貴公子様たちは 高貴なお姫様との恋愛に夢中なんだって」
ぶちょー「BLとか男色とかの話は存在しないから!」
るる「えー、つまんない・・・」
???「いいえ、平安時代でも男色がお盛んよ」
せんせー「しかも、その模様が記録にも残っていてね」
せんせー「もう、スッゴイ話に溢れていて 妄想が捗っちゃうのよ~」
ぶちょー「・・・捗らないでください」
るる「えー、気になりますー♪」
せんせー「じゃあ、今日は平安時代の 有名な男色エピソードを紹介するわね」
ぶちょー「・・・しなくていいです」
ぶちょー「『源氏物語』のような 美しい男女の恋愛話を聞きたいです・・・」
せんせー「何言ってるの?」
せんせー「『源氏物語』にも 男色要素が盛り込まれているでしょ!?」
ぶちょー「無いです、有り得ないです!」
ぶちょー「全編あまねく目を通しましたけど そんな話はありませんでしたよ!」
せんせー「あら、読解力が足りないんじゃない?」
せんせー「それなら、その場面を一緒に読んでみる?」
ぶちょー「望むところです!」
ぶちょー「もし、それが先生の嘘や冗談だったら 本気で怒りますからね」
せんせー「あらあら、ずいぶんと怖い感じね・・・」
るる「せんせー、その前に・・・」
せんせー「はいはい まずは平安時代の男色エピソードからね」
るる「おねがいしまーす♪」
  ※ 苦手な方は、ここで閲覧を中止ください

〇学校の部室
せんせー「さて、平安時代の男色話だけど・・・」
せんせー「やっぱり、藤原忠実・頼長父子の話は 絶対に外せないわね」
ぶちょー「この時代の人物って藤原さんだらけですね」
ぶちょー「ていうか、藤原忠実って初めて聞きました」
せんせー「確かに、この時代の朝廷は 大半の貴族が藤原さんなんだけど、」
せんせー「忠実は、藤原道長の玄孫という とっても高貴な家柄なのよ」
るる「玄孫・・・?」
ぶちょー「四代後、つまり「孫の孫」ってこと!」
るる「こ・まご・ひまご・・・の次!?」
せんせー「そう、正解よ」
せんせー「忠実は、エリートとも言える家柄の出で、」
せんせー「摂政・関白・太政大臣と 位人臣を極めている人物よ」
せんせー「さらに、「藤氏長者」という 藤原一族の代表の座にも就いているわ」
るる「藤原さんたちのトップ・・・!?」
せんせー「そう、忠実は藤原氏のトップとして、 当時勢力が衰えてきた一族の復権のため 精力的に活動するのだけど・・・」
せんせー「男色のほうも、なかなか精力的でね・・・」
ぶちょー「・・・そんな話が後世に知られるって」
せんせー「有名な話だと、」
せんせー「忠実には成雅クンって お気に入りの愛人男子がいたのだけど」
せんせー「この成雅クンを 息子の頼長と愛人シェアしていたわよ」
「えーーっ!?」
るる「父子に愛される成雅クンって イケメンだったのかな・・・?」
せんせー「いいえ、成雅クンの容姿は そこまでイケメンではなかったみたいよ」
せんせー「成雅クンについては 忠実の発言録の『富家語』に載っていてね」
ぶちょー「愛人に関する発言まで載ってるって・・・」
せんせー「忠実は、成雅クンについて このような評価をしているわよ・・・」

〇市松模様
  成雅のパパはイケメン
  でもお尻の具合はダメだった
  
  成雅クンの顔はビミョー
  でもお尻の具合は抜群
  
  だから成雅クン大好き

〇学校の部室
「・・・・・・・・・」
るる「忠実って、成雅のパパにも 手を出していたんですかー?」
せんせー「そうね、忠実は成雅クンとその父親を 愛人にしていたのよ」
せんせー「成雅クンが、忠実と頼長の父子のお相手を していたことも合わせて考えると、 もうステキな関係性よね」
ぶちょー「・・・頭が混乱します」
るる「家族ぐるみのお突き合い・・・!」
ぶちょー「その誤字はダメー!」
ぶちょー「そもそも、そんな直接的な表現が 本当に書物として伝わっているんですか?」
るる「「お尻」って書いてたんですかー?」
せんせー「いいえ、「お尻」はこちらで訳した表現よ」
せんせー「原文では「後」という 逆に生々しい表現だったからね」
せんせー「ちなみに、原文の表現を用いると・・・」
せんせー「成雅パパの「後」は「頗劣」 成雅クンの「後」は「厳」」
せんせー「と書かれているわよ」
ぶちょー「・・・それはそれでイヤな表現です」
るる「せんせー、忠実の息子の男色って 父親譲りだったんですかー?」
せんせー「いいえ、「父親譲り」というよりも 父親をも上回るくらいの熱量だったのよ」
せんせー「息子の頼長は、男色界隈で言えば 父親よりも遥かに有名な人物よ」
ぶちょー「・・・それ、どんな界隈ですか」
せんせー「その前に、この頼長について簡単に紹介ね」
せんせー「頼長は、家柄も抜群なうえに とんでもない読書量と知識量で、 当代きっての有識者と評される人だったの」
ぶちょー「有能すぎるエリート、って感じですか」
るる「すぐ出世しそう!」
せんせー「そう、その家柄と能力により 物凄いペースで出世し 左大臣として政務を担当することになるの」
せんせー「ただ、彼自身の性格に難があって すぐに政治は行き詰ってしまうのだけどね」
ぶちょー「性格に難・・・?」
せんせー「とにかく他人に厳しすぎたのよ」
せんせー「部下のミスには厳罰で臨み とにかく妥協しないという様子でね」
るる「怖そう・・・」
せんせー「そうして頼長は、気性の激しさが 世に広く知られるようになったの」
せんせー「と同時に、男色の激しさも 世に広く知られていたのだけどね」
るる「・・・男色の激しさ!?」
せんせー「頼長は『台記』と呼ばれる日記を 長年に渡りしたためていたのだけど、」
せんせー「その中身から、10人近くの愛人男性の 存在が確認されているわよ ・・・さっき触れた成雅クンも含めて」
ぶちょー「・・・日記にそんなことまで」
せんせー「そして、愛人の存在だけでなく もっと込み入った話も 生々しく赤裸々に記されているわよ」
るる「セキララ・・・気になりますっ!」
せんせー「紹介してあげたいところだけど・・・」
せんせー「内容が強烈すぎて 運営様にも怒られちゃいそうなのよ」
るる「えー・・・」
せんせー「じゃあ、直接表現を避ける意味で 原文のままで1つだけ紹介してあげるわね」
せんせー「頼長と、愛人の讃丸クンとの 素敵なエピソードよ」

〇テクスチャ
  遂倶漏精、希有事也、 
  此人常有此事、感歎尤深

〇学校の部室
るる「・・・わからない」
ぶちょー「漢文体の日記なんですね」
せんせー「そうそう、平安時代は漢文体で 色々と記されることが多い時代だったから」
せんせー「だからこそ「女流仮名文学」の存在は 日本文学史上で価値あるものなのよ」

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コメント

  • 「忍び忍びに濡るる袖」は、平安時代の男色について興味深い話をしていますね。藤原忠実と頼長父子の関係性は、家族愛と恋愛の狭間で揺れ動く様子が描かれています。作者の描写は生々しいですが、それがこの作品の魅力の一つです。男色というテーマは珍しいですが、一見禁断の恋愛に興味を持ってしまいます。歴史を学びながら、恋愛の面白さを感じることができました。

  • やはり、古今東西・歴史上のぐちょどろフレンドリー話を読むとホッコリします(?)。
    突き突かれ、くんずほぐれつ……人間の理性と体はどこまでも玩具になれる……なんか懐かしい気分をありがとうございました。そんなもんばかりあさっていた時期を思い出して若返りました(?)。

  • 親子丼の男色とは‼😳 平安時代は、今より進んでますね!
    令和言葉で書いた「万葉集」が売れたらしいですから、ましまる先生も、このシリーズを出版されたら売れるのではと思いましたが、『台記』が熱望あっても未刊行というのは壁が色々あるのでしょうかね?
    また勉強になりました💦

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