閑話『むらまつり 前編』(脚本)
〇図書館
──とある日
〇役所のオフィス
中邑 ゆうり「ずっと気になってたんだけど・・・」
天邑 遥斗「どうしたんですか?」
中邑 ゆうり「これ──」
壱邑 一貴「諸悪の根元!!」
天邑 遥斗「触って大丈夫ですか!?」
中邑 ゆうり「水縹先生、これで呪いを 創ったって言ってたじゃん?」
中邑 ゆうり「つまり、この本があれば 私たちにも呪いが創れるのでは?」
天邑 遥斗「無理ですよ」
中邑 ゆうり「やってやれないことはないっ!!」
壱邑 一貴「どんな呪いを創る気だ?」
中邑 ゆうり「ずっと思ってたの・・・」
中邑 ゆうり「同じ"なかむら"なのに 柊だけ変身しないのはズルイ!!」
壱邑 一貴「たしかに!!」
壱邑 一貴「あいつも俺たちと同じ苦しみを 味わうべきだっ!!」
天邑 遥斗「これ以上、犠牲者を 増やすべきではありません!!」
中邑 ゆうり「よく聞いて、天邑くん・・・」
中邑 ゆうり「私が創ろうとしているのは」
中邑 ゆうり「「苗字に"村"がつく人間は"むらむら"すると"はなむらむら"になる」という呪い──」
天邑 遥斗「それって──」
中邑 ゆうり「そう」
中邑 ゆうり「枝"村"先輩にも効果があるッ!!」
中邑 ゆうり「先輩がどんな時に "むらむら"してるか知りたくない?」
天邑 遥斗「くっ・・・」
中邑 ゆうり「フッ、興味が出てきたようね」
中邑 ゆうり「──いざ、推して参る!!」
壱邑 一貴「呪いの創り方、分かるのか?」
中邑 ゆうり「水縹先生は『漆黒の闇の力』って 言ってたじゃん?」
中邑 ゆうり「すなわち厨二力!!」
中邑 ゆうり「みんなの厨二力を集めるのよ!!」
天邑 遥斗「どうやって?」
中邑 ゆうり「それっぽいことを言いまくる!!」
壱邑 一貴「うぉぉおおおーっ!!」
壱邑 一貴「俺のこの手が真っ赤に燃(割愛)」
中邑 ゆうり「俺は新世界の神と(割愛)」
天邑 遥斗「間違っていたのは俺じゃ(割愛)」
壱邑 一貴「オレの指ナイフより(割愛)」
中邑 ゆうり「円環の理に(割愛)」
天邑 遥斗「見果てぬ先まで続くオレ達の闘(割愛)」
「・・・・・・・・・」
中邑 ゆうり「なーんて」
中邑 ゆうり「これで呪いが完成したらすごいよねー」
壱邑 一貴「だなー」
天邑 遥斗「もー、先輩たち目がマジでしたよー」
「ははははー・・・」
仲村 柊「おい、昼飯食べ終わったなら 誰か貸出カウンターに──」
仲村 柊「──って」
仲村 柊「何やってんの」
中邑 ゆうり「何も?」
仲村 柊「何もってことはないだろ。 水縹さん観察日誌まで出して──」
仲村 柊「なっ・・・」
中邑 ゆうり「柊っ!?」
仲村 柊「・・・・・・」
仲村 柊「嫌な予感がする」
中邑 ゆうり「やっ・・・た・・・」
中邑 ゆうり「ぃよっしゃァアーッ!!」
壱邑 一貴「やったな!!」
天邑 遥斗「おめでとうございます!」
仲村 柊「おい!!」
仲村 柊「どういうことだ!? どうなってる!?」
壱邑 一貴「立派な白色大根になってるぜ!」
仲村 柊「何してくれてんの!?」
中邑 ゆうり「柊だけ呪いにかかってないのは 不公平・・・もとい」
中邑 ゆうり「可哀想!!」
中邑 ゆうり「なので類似の呪いを創ってみました」
仲村 柊「ハァアアア!?」
中邑 ゆうり「ぶっちゃけこんなスムーズに いくとは思わなかった」
仲村 柊「おいぃぃぃ!!」
天邑 遥斗「すごい。滅多に取り乱さない 仲村先輩が叫んでる・・・」
中邑 ゆうり「"はなむらむら"になって テンション上がっちゃった?」
仲村 柊「んなわけあるか!!」
仲村 柊「文化祭公演が成り立たなくなったら どうするつもりだ!」
中邑 ゆうり「大丈夫!」
中邑 ゆうり「"むらむら"しなきゃ変身しないから」
壱邑 一貴「そうそう。お前なら大丈夫だろ?」
仲村 柊「・・・・・・」
仲村 柊「そうだな」
仲村 柊「俺はお前たちと違って そう簡単には変身しない!」
壱邑 一貴「ほれ」
仲村 柊「何でそんなもの持っ──」
壱邑 一貴「変身してやんの! ギャハハハ!」
仲村 柊「お前も人のこと言えないからな?」
壱邑 一貴「なっ・・・いつの間に!?」
中邑 ゆうり「・・・・・・」
壱邑 一貴「こっ、これはさっき廊下で拾っただけで 俺のものでは──」
中邑 ゆうり「すごーい! エロ本初めて見たー!」
中邑 ゆうり「まだ書籍で買う人いるんだねぇ」
壱邑 一貴「お父さん、お宅の教育どうなってんの」
仲村 柊「お父さんじゃない」
中邑 ゆうり「あっ」
壱邑 一貴「何でお前まで変身してんの!? ねぇ何で!?」
中邑 ゆうり「エロ本しゅごい」
仲村 柊「ゆうり・・・」
天邑 遥斗「・・・・・・」
中邑 ゆうり「ああっ、天邑くんがドン引きしている!!」
水縹 慧「レファレンスするから 誰かカウンター入って〜」
天邑 遥斗「僕やります」
水縹 慧「ありがと〜」
水縹 慧「・・・って」
水縹 慧「白い!! どちら様!?」
水縹 慧「"邑"のつく苗字の子、他にもいたっけ?」
壱邑 一貴「それ仲村」
水縹 慧「えっ!? どうして──」
中邑 ゆうり「実は、かくかくしかじか・・・」
水縹 慧「──呪いを書き換えた?」
水縹 慧「素晴らしい! きみたちには黒魔術の才能がある!!」
仲村 柊「何も素晴らしくない!!」
水縹 慧「まぁまぁ。インフルエンザに かかったとでも思って・・・」
仲村 柊「インフルと呪いを 同列に扱わないでください!!」
水縹 慧「荒ぶる大根よ〜 その怒りを鎮め給え〜」
仲村 柊「先生!!」
水縹 慧「解呪方法は分かってるんだから いいじゃない」
水縹 慧「仲村くんモテそうだし、 すぐに呪いも解けるって」
水縹 慧「じゃ、僕は仕事に戻りま~す」
水縹 慧「頑張ってね〜」
仲村 柊「クッソ・・・」
仲村 柊「お前たち、覚えとけよ──」
〇大きな木のある校舎
宇多邑 苑江「えぇっ!?」
〇ディベート会場(モニター無し)
宇多邑 苑江「仲村くんまで呪われちゃったの!?」
仲村 柊「すみません・・・」
宇多邑 苑江「で、で? どんな時に変身するの〜?」
仲村 柊「先輩・・・」
宇多邑 苑江「だって〜」
宇多邑 苑江「仲村くんって演技の表現は豊かなのに 普段はポーカーフェイスなんだもん」
宇多邑 苑江「でも、呪われてればどんなことに "むらむら"するのか曝けるじゃん?」
仲村 柊「悪趣味な・・・」
宇多邑 苑江「よーし! 今日は稽古前にゲームしよう!」
宇多邑 苑江「壱邑くんも参加しない?」
壱邑 一貴「俺も?」
宇多邑 苑江「ウインクキラーってゲームなんだけど」
中邑 ゆうり「それ苦手〜!」
壱邑 一貴「どんなゲームなんです?」
宇多邑 苑江「まず、分からないように鬼役 ──殺人犯を決めるのね」
宇多邑 苑江「で、それ以外はみんな通行人」
中邑 ゆうり「ゲームが始まったら全員で 決められた範囲を歩き回るんだけど」
中邑 ゆうり「殺人犯はまわりにバレないように 通行人にウインクするの」
宇多邑 苑江「ウインクされた人は数歩してから 死んでその場に倒れる」
壱邑 一貴「死ぬ?」
宇多邑 苑江「殺人犯はウインクで人を殺せる 能力を持っているのだ!」
中邑 ゆうり「っていう設定ね」
宇多邑 苑江「死ぬ時は大袈裟に演技してよ? その方が楽しいから」
壱邑 一貴「どうなったら終わりなんだ?」
中邑 ゆうり「通行人を全員殺したら殺人犯の勝ち」
宇多邑 苑江「殺人犯を見破ったら通行人の勝ち」
宇多邑 苑江「通行人は、こいつが殺人犯だなって 思った相手にべーって舌を出すの」
壱邑 一貴「相手が殺人犯じゃなかったら?」
宇多邑 苑江「因果応報。 舌を出した通行人が死にます」
壱邑 一貴「罰が重い!」
中邑 ゆうり「舌を出された側は、 殺人犯じゃなければそのままスルー」
中邑 ゆうり「殺人犯だったら申告してゲーム終了」
宇多邑 苑江「──こんな感じ」
壱邑 一貴「分かったような分からないような・・・」
宇多邑 苑江「とりあえずやってみよ」
宇多邑 苑江「私は参加しないで鬼を決めるから、 全員目を閉じて」
宇多邑 苑江「私が肩を叩いた人が殺人犯ね」
宇多邑 苑江(鬼は・・・)
宇多邑 苑江(ゆうりちゃん!)
宇多邑 苑江「決まったから目開けていいよー」
宇多邑 苑江「範囲は机の手前までにしよっか」
宇多邑 苑江「それじゃ、用意──」
宇多邑 苑江「スタート!」
中邑 ゆうり(苑江先輩め)
中邑 ゆうり(私がウインク苦手って知ってるのに 殺人犯に指名するなんて)
中邑 ゆうり(こうなりゃヤケだ!)
中邑 ゆうり(おりゃ!)
演劇部員E(ウインク・・・ いや、まばたき? どっちだ!?)
演劇部員E(とりあえず死んどこう!)
演劇部員E「うわあーっ・・・?」
中邑 ゆうり(忖度して死んでくれたっぽいな)
中邑 ゆうり(よーし、次は・・・)
中邑 ゆうり(えいっ)
演劇部員B(・・・まばたきかな)
中邑 ゆうり(気付いてもらえなかった)
中邑 ゆうり(次こそ!)
中邑 ゆうり(死ねッ、いっちー!)
壱邑 一貴(中邑のやつ、何でこっち見ながら まばたきしてんだ?)
壱邑 一貴(もしかして──ウインク!?)
壱邑 一貴(ははっ、両目つぶってやんの)
壱邑 一貴(頑張ってウインクしようとして 可愛いな)
壱邑 一貴(──やばっ)
中邑 ゆうり「あっ」
仲村 柊「ぐっ・・・」
仲村 柊「ぐはァーッ!!」
演劇部員C「仲村先輩!?」
仲村 柊「おっ、俺はもうダメだ── 遺言を託すから集まってくれ」
演劇部員A「何か始まった・・・」
演劇部員C「死ぬのに尺取りすぎですよ」
中邑 ゆうり(柊がみんなを引きつけてるうちに いっちーを回収・・・っと)
中邑 ゆうり(フードの中に入ってて!)
仲村 柊「犯人は・・・」
演劇部員A「誰なんですか!?」
仲村 柊「あい、つ・・・だ・・・ガクッ」
「せんぱぁーーーーい!!」
宇多邑 苑江「はいストーップ!」
宇多邑 苑江「違うゲームになってる!」
仲村 柊「すみません興が乗っちゃって」
演劇部員C「仲村先輩があんなことするなんて 珍しいですね」
仲村 柊「そっ、そうかな?」
演劇部員C「あれ、いっちー先輩がいない」
宇多邑 苑江「トイレじゃない?」
演劇部員B「でも、ドアの音しませんでしたよ」
演劇部員C「密室消失事件!?」
演劇部員B「犯人はウインクで人を消した!?」
演劇部員C「ていうか、殺人犯ゆうり先輩ですよね?」
中邑 ゆうり「えっ!? な、何のことかな〜?」
演劇部員C「すっごい挙動不審でしたもん」
演劇部員B「さっきのアレ、 ウインクだったんですね」
演劇部員C「いっちー先輩をどこに隠したんですか!?」
中邑 ゆうり「もっ、黙秘します!」
宇多邑 苑江「はいはい、いつまでもアドリブ劇しない」
宇多邑 苑江「10分休憩したら通常稽古始めるよ!」
宇多邑 苑江「ゆうりちゃん、今のうちに 壱邑くんを安全な所へ・・・」
演劇部員B「先輩、フードの中に何か入ってますよ」
中邑 ゆうり「あっ、それは──」
演劇部員C「・・・にんじん?」
演劇部員B「可愛いー!」
演劇部員C「キーホルダーですか?」
演劇部員B「硬っ! 本物みたーい!」
演劇部員C「ホントだー!」
中邑 ゆうり(あああ・・・ いっちーが女子のおもちゃに・・・)
中邑 ゆうり(早く助けなきゃ!)
仲村 柊「待て、ゆうり」
仲村 柊「あれを見ろ」
中邑 ゆうり「女子にもみくちゃにされて 嬉しそう・・・?」
仲村 柊「助ける必要はない」
中邑 ゆうり「そうみたいだね」
ウィンクゲーム、確かにウィンク苦手な人はまばたきになっちゃいますね☺️
忖度して倒れてくれた演劇部員さん、優しいw
最終話まで一気に…と思ったら、まだでしたね💦
劇中劇も切なくて、得した気分です。切なさと笑いのミックスが良いですね。緩急の面白さで、満足感が高いのでしょう。小劇場的なわちゃわちゃした面白さがあって楽しいです😀
厨二力の結集から笑いっぱなしでした😂
計3人を変身させるエ■本の破壊力たるや…🤣🤣
変身してもタダでは終わらないラストシーンのいっちー、逞しさがハンパないですね😂