卒業生、入場!

ましまる

②.卒業式前日:海外への飛翔(脚本)

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〇散らかった職員室
教頭先生「卒業式前日、準備はあらかた整った」
教頭先生「・・・入場曲以外は」
教頭先生「さて、結女先生に依頼した オリジナル曲を確認しに行くか・・・」
教頭先生「いくら彼女でも、この大舞台を前にしては 一晩かけて懸命に作曲してくれただろう」
教頭先生「そして、今は本番に向け猛練習していると 信じたいものだ」

〇音楽室
教頭先生「結女先生、失礼しますね」
結女先生「あっ、教頭先生・・・」
結女先生「・・・お疲れさまデス」
教頭先生「ええ、卒業式の準備で疲れました」
教頭先生「結女先生も 大事な役目が割り振られましたが」
教頭先生「準備は万全というところでしょうか?」
結女先生「え、ええ・・・ ちょうど頭の中で練り直していたところで」
教頭先生「そのイビキ、外まで丸聞こえだっつーのに」
結女先生「・・・えっ、何か?」
教頭先生「いえ、何でもありません」
教頭先生「てっきり、昨晩のうちに曲を完成させ 今頃は練習中だと思っておりましたが」
結女先生「ええと、昨晩はちょっと所用で・・・」
教頭先生「そうでしたか お忙しい中、申し訳ありませんね」
教頭先生「外せない大事な用事だったのですか?」
結女先生「はい、友人が「ビビビ婚」を決めたので お祝いでイタ飯屋さんに行って参りました」
結女先生「「ティラミス」とかいうデザートが絶品で その味に感動して涙を流してしまいました」
結女先生「教頭先生も、機会があれば ぜひ召し上がってみてください」
教頭先生「・・・ええ、はい」
教頭先生「お前はいつの時代の人間なんだ!?」
結女先生「・・・あの、どうされましたか?」
教頭先生「いえ、何でもありません」
教頭先生「では、曲のほうは手つかずの状態ですか?」
結女先生「・・・はい」
教頭先生「はい、じゃねーだろゴルァ!!」
結女先生「何かおっしゃいましたか?」
教頭先生「いえ、別に」
結女先生「でも、昨日の教頭先生からのご指示を 頭の中で反芻していました」
結女先生「まずは、昨日の曲より落ち着いた感じで」
結女先生「そして、門出の式に相応しく、 キラキラした要素や 広い世界へと羽ばたく印象があると尚良し」
教頭先生「はい、その通りです」
教頭先生「まずイメージを固めることは とても大事なことですね」
結女先生「ですよねっ」
結女先生「じゃあ、それを踏まえて さっそく弾いてみますね」
教頭先生「えっ、もうできたのですか?」
結女先生「はい、行きますよー」

〇黒背景
  (結女先生演奏中)
教頭先生「・・・って、オイッ!!」

〇音楽室
教頭先生「どう聞いても「異人さんが連行」ですよね」
教頭先生「オリジナル曲という件は無視でしょうか?」
結女先生「いえ、完全にオリジナルですよ」
結女先生「しかも、教頭先生のご要望は 全て盛り込んでいますし・・・」
教頭先生「ええと、どこがでしょうか?」
結女先生「昨日の曲より落ち着いた感じですし」
教頭先生「落ち着いた、というより、暗いですよね」
結女先生「キラキラ感も加えてみましたし」
教頭先生「あの謎の高音は キラキラの意味だったのですか」
結女先生「広い世界に羽ばたくようなイメージで 作りましたし」
教頭先生「どこがですか?」
結女先生「紛うことなきオリジナル曲ですし」
教頭先生「オリジナルを何度も強調してるけど 明らかな原曲があるじゃねーか!!」
教頭先生「ときに、結女先生」
教頭先生「「赤い靴」という童謡はご存じですか?」
結女先生「もちろんです 日本人なら知っていて当然です」
教頭先生「その童謡ってどんなお話でしょうか?」
結女先生「あの、外国人の芸能関係の方が 日本人の女の子をスカウトして」
結女先生「その子が世界的アイドルとして 華々しく羽ばたいていくお話ですよね」
教頭先生「その童謡が、先生の弾いた曲に 極めて酷似しているようですが・・・」
結女先生「あらら、似てしまいましたか・・・」
結女先生「卒業生のみんなに対して 広い世界で活躍してほしいと思っていたら 曲が自然と似てしまったのですね」
教頭先生「そもそも童謡の理解が間違ってるンだよ!」
結女先生「教頭先生、何やら怖い顔をされてますね」
教頭先生「いえ、元からこういう顔ですので」
教頭先生「ときに、ひとつお伺いしたいのですが」
結女先生「はい、何でしょうか」
教頭先生「私は音楽に関しては門外漢ですので ご教示いただきたいのですが、」
教頭先生「作曲をしたところ、既存の曲と似てしまう というのは、よくあることですか?」
結女先生「それはもう普通にありますね」
結女先生「私も学生時代、作曲の課題がありましたが」
結女先生「作る曲が全て、好きなテレビ番組の曲に 似てしまうということがありました」
教頭先生「ほう、ちなみにどんな番組ですか?」
結女先生「ええと、チョビ髭を付けた黒服2人が 音楽に合わせて踊ったり芸をする番組」
結女先生「あとは、スポットライトが当たった人が 「ちょっとだけよ~あんたも好きね~」 とポーズをとる番組」
結女先生「それと、聖歌隊に扮した人達が 順番に早口言葉に挑む番組、、ですね」
教頭先生「全部、ド●フじゃねーか!」
教頭先生「結女先生、貴女は一体お幾つなんですか?」
結女先生「やーだー、教頭先生ったらー レディに年齢を聞くなどルール違反」
教頭先生「それは失礼しました」
教頭先生「それはさておき、結女先生」
教頭先生「この2日間から判断すると 先生は本当に作曲が苦手なご様子ですね」
結女先生「はい、お恥ずかしながら・・・」
教頭先生「その一方で、曲の大胆なアレンジは お得意なようですね」
結女先生「「大胆」って、そんな恥ずかしい・・・」
教頭先生「・・・何を勘違いしている、コイツは」
結女先生「えっ?」
教頭先生「いえ」
教頭先生「そこで、1つの結論に至りました」
教頭先生「先生には、既存曲のピアノアレンジを お願いしたい、と」
教頭先生「明日の式の卒業生入場の際に、」
教頭先生「「仰げば尊し」のピアノアレンジ演奏を お願いします」
結女先生「それでしたら、お安い御用ですが、」
結女先生「「仰げば尊し」には反対意見もあると 昨日伺いましたが・・・」
教頭先生「もう時間がないので、そこは押し切ります」
結女先生「ちなみに、曲のアレンジは どのようなテイストにすべきでしょうか」
教頭先生「ふむ、テイストですか」
教頭先生「明るく、楽しい曲調がいいですね」
教頭先生「それと可能であれば、 原曲だと気付かれないくらいの 思い切ったアレンジがあると助かります」
結女先生「原曲がわからないアレンジだと 反対意見の先生方も騒がないですからね」
教頭先生「まさにその通りです」
教頭先生「卒業式を成功させるため、 ぜひ結女先生のお力添えを賜りたいです」
結女先生「わ、わかりました」
結女先生「最高の卒業式になるように 全力を尽くします」

〇黒背景
教頭先生「卒業式は明日」
教頭先生「もう時間はない」
教頭先生「この女を信じるしかない」
教頭先生「信じよう、結女先生を」
結女先生「教頭先生ー」
結女先生「明日の衣装なんですが こんな感じはどうでしょうか?」

次のエピソード:③.明るく楽しく…卒業式

コメント

  • 今回も凄く面白かったです!!
    教頭先生は口が悪いですね 笑
    オリジナルではなく大胆なアレンジをするという展開、いいですね!!結女先生の個性を生かす展開ですね!
    そう思っていたら、ラストのオチに笑いました!

  • 作曲って難しいんですね。難しい以前にさっぱりわかりませんが(笑)
    結女先生の特性(?)を読んでの教頭先生のアイデア。これがはまり、感動の卒業式となるかどうか…

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