4むらむら『傾向と対策』(脚本)
〇学校脇の道
中邑 ゆうり「天邑くんの好きな人って、 もしかして・・・!?」
天邑 遥斗「ああああのっ、えっと──」
中邑 ゆうり「いったん落ち着こ!」
中邑 ゆうり「このままだと私、根菜に話しかけてる 可哀想な人になっちゃうから!」
中邑 ゆうり「えっと、どうしよう・・・」
中邑 ゆうり「うち、来る?」
〇通学路
〇一戸建て
〇おしゃれなキッチン(物無し)
中邑 ゆうり(後輩をお持ち帰りしてしまった)
中邑 ゆうり(なんて、冗談言ってる場合じゃないか)
中邑 ゆうり(天邑くん、かなり動揺してたけど 大丈夫かな・・・)
〇女の子の部屋
中邑 ゆうり「お待たせ〜」
中邑 ゆうり「よかった、元に戻ったね」
中邑 ゆうり「"はなむらむら"ってどうやって 水分摂るのか考えちゃったよ」
中邑 ゆうり「経口摂取なのか、 それとも足から吸収するのか・・・」
天邑 遥斗「中邑先輩」
中邑 ゆうり「何?」
天邑 遥斗「気持ち悪くないんですか?」
中邑 ゆうり「何が?」
中邑 ゆうり「あ! 足から吸収の場合?」
中邑 ゆうり「ちょっと気持ち悪いけど どんな感覚なのか興味はある」
中邑 ゆうり「今度試してみよ──」
天邑 遥斗「そっちじゃなくて!」
天邑 遥斗「・・・僕のこと」
中邑 ゆうり「どうして?」
天邑 遥斗「だって・・・」
中邑 ゆうり「ん〜・・・」
中邑 ゆうり「私、気の利いたこと言えないから 思ったことそのまま口にするけどいい?」
天邑 遥斗「はい」
中邑 ゆうり「あくまで私の所感ね?」
中邑 ゆうり「天邑くんは気持ち悪くないよ」
天邑 遥斗「でも、男なのに男が好きなんて・・・」
中邑 ゆうり「そんなの人それぞれじゃない? 誰が誰を好きになろうが自由っていうか」
天邑 遥斗「じゃあ、仲村先輩の好きな人が 男だったら? 嫌じゃないですか?」
中邑 ゆうり「柊の好きな人が男の人かぁ・・・」
中邑 ゆうり「それはちょっとショックかも」
天邑 遥斗「ほら、やっぱり──」
中邑 ゆうり「だってそれって、 私が選ばれなかったってことでしょ?」
天邑 遥斗「えっ・・・?」
中邑 ゆうり「柊の好きな人が男だろうが女だろうが どうでもよくて」
中邑 ゆうり「私じゃないってことがショックなの」
天邑 遥斗「先輩・・・」
天邑 遥斗「仲村先輩のこと、大好きなんですね」
中邑 ゆうり「だっ・・・!?」
中邑 ゆうり「天邑くんのせいだからね!!」
天邑 遥斗「ごめんなさい!」
中邑 ゆうり「ともかく」
中邑 ゆうり「私は偏見はない──つもり」
中邑 ゆうり「ちゃんと理解してるのか って言われると自信ないけど・・・」
中邑 ゆうり「私は天邑くんのあり方を 尊重したいと思ってる」
天邑 遥斗「・・・っ」
天邑 遥斗「先輩〜!」
中邑 ゆうり「わっ!」
中邑 ゆうり「急に持ち上げられたらビックリするよ!」
天邑 遥斗「ごめんなさい」
天邑 遥斗「・・・ありがとうございます」
中邑 ゆうり「よしよし」
天邑 遥斗「・・・葉っぱで叩くのやめてもらえます?」
中邑 ゆうり「頭なでてるつもりだったんだけど!?」
中邑 ゆうり「わっ・・・」
天邑 遥斗「おかえりなさい、先輩」
中邑 ゆうり「あはは、ただいま」
中邑 ゆうり「変身しちゃうタイミングは 何となく分かってきたけど」
中邑 ゆうり「元に戻る瞬間がいまいち掴めないね」
天邑 遥斗「何か対策を考えないとですね」
中邑 ゆうり「教室にいる間はいっちーと 助け合うしかないかな」
天邑 遥斗「僕は気を付けていればそんなに 変身しないと思うので大丈夫です」
中邑 ゆうり「やっぱ問題は どうやって呪いを解くか・・・だね」
天邑 遥斗「仲村先輩の写真にキスしてみました?」
中邑 ゆうり「してないけど・・・」
天邑 遥斗「試してみましょう!」
中邑 ゆうり「いま!? やだよ恥ずかしい!!」
天邑 遥斗「そんなこと言ってる場合ですか!」
天邑 遥斗「ほらっ」
中邑 ゆうり「〜〜〜〜ッ」
中邑 ゆうり「ア"ーッ!!」
中邑 ゆうり「こうなると思った!!」
天邑 遥斗「ダメだったか」
天邑 遥斗「もうこの呪いを受け入れて 生きていくしか・・・」
中邑 ゆうり「絶対イヤーッ!!」
中邑 ゆうり「ていうか、天邑くんこそどうするの?」
中邑 ゆうり「枝村先輩の写真ある?」
天邑 遥斗「僕は解呪は諦めてるので」
中邑 ゆうり「諦めちゃダメ!」
中邑 ゆうり「まだ枝村先輩の 恋愛指向は分かんないじゃん」
中邑 ゆうり「それに」
中邑 ゆうり「キスは合意じゃなくていいって 水縹先生も言ってたし!」
天邑 遥斗「ダメですよ」
中邑 ゆうり「人工呼吸する機会とか あるかもしれないよ?」
天邑 遥斗「救命処置が必要な状態に 陥りたくないんですけど」
中邑 ゆうり「あっ!!」
天邑 遥斗「今度は何です?」
中邑 ゆうり「間接キス・・・!!」
天邑 遥斗「難易度上がってません?」
中邑 ゆうり「でも、写真より 解呪の確率高そうじゃない?」
中邑 ゆうり「──おっと」
中邑 ゆうり「とりあえず写真で試してみて、 ダメだったら間接キス狙ってみよう!」
天邑 遥斗「先輩は告白した方が早いと 思うけどなぁ」
中邑 ゆうり「無理だって!」
中邑 ゆうり「柊は私のこと、 ただの幼なじみとしか思ってないもん」
中邑 ゆうり「天邑くんこそ、 本当にこのままでいいの?」
天邑 遥斗「いいんです」
天邑 遥斗「今日、あの人の名前が 分かっただけで嬉しいです」
中邑 ゆうり「天邑くん・・・」
中邑 ゆうり「あーもぉー!」
中邑 ゆうり「可愛いやつめー!」
天邑 遥斗「わっ!?」
中邑 ゆうり「わーっ!?」
中邑 ゆうり「ごめん! 押し倒すつもりは──」
ゆうりの母「ただいまー。 ゆうりー? 誰か来てるのー?」
中邑 ゆうり「あ、お母さ──」
ゆうりの母「そこで柊ちゃん拾ったから 持って帰ってきちゃった〜」
中邑 ゆうり「は?」
仲村 柊「ゆうり、入っていいか?」
中邑 ゆうり「柊!? ちょっと待っ──」
仲村 柊「・・・・・・」
「・・・・・・」
仲村 柊「お邪魔しました」
「待ったーッ!!」
仲村 柊「・・・何?」
中邑 ゆうり「誤解! 誤解だからっ!!」
仲村 柊「何が?」
中邑 ゆうり「決していたいけな後輩を 手篭めにしようとしていた訳ではないの!!」
仲村 柊「じゃあ何しようとしてたの?」
中邑 ゆうり「何って・・・」
中邑 ゆうり「天邑くんが可愛すぎてつい抱きつ──」
天邑 遥斗「先輩!」
中邑 ゆうり「今のなし!!」
中邑 ゆうり「えっと、えーっとぉ・・・」
天邑 遥斗「中邑先輩は、僕が落ち込んでいたから 頭をなでてくれようとしたんです」
天邑 遥斗「そしたら勢いあまってこんなことに」
中邑 ゆうり「そっ、そうそう! やましいことは何もない!!」
天邑 遥斗「その証拠に、ほら!」
天邑 遥斗「僕たち2人とも"はなむらむら"に なってません!!」
仲村 柊「・・・たしかに」
天邑 遥斗「納得してもらえてよかったです」
中邑 ゆうり「イヤな説得力だなぁ・・・」
天邑 遥斗「ふふ。呪われててよかったですね」
仲村 柊「それで、2人で何話してたんだ?」
中邑 ゆうり「どうやって呪いを解くか考えてたの」
仲村 柊「お前は、その・・・」
仲村 柊「好きなヤツはいるのか?」
天邑 遥斗「お父さんみたいな聞き方・・・」
仲村 柊「うるさい」
仲村 柊「それで、どうなんだ」
中邑 ゆうり「いないよ!!」
天邑 遥斗「先輩!!」
中邑 ゆうり「ここで告白しろっての!?」
仲村 柊「天邑は?」
天邑 遥斗「僕ですか?」
天邑 遥斗「他校に憧れの人がいるんですけど、 気持ちを伝えるつもりはないんです」
仲村 柊「そうなのか・・・」
仲村 柊「何か手伝えることがあったら いつでも言ってくれよ?」
天邑 遥斗「ありがとうございます」
天邑 遥斗「先輩、チャンスです。 仲村先輩に麦茶を飲ませましょう!」
中邑 ゆうり「柊、よかったらこれ 口つけてないから飲む?」
仲村 柊「いいのか? じゃ遠慮なく」
(・・・まさかの一気飲み)
中邑 ゆうり「一口ちょうだい作戦ができない!」
天邑 遥斗「大丈夫。仲村先輩が帰ってから 空のコップにキスすればいいんです」
中邑 ゆうり「変態ぽくて嫌だけど仕方ない・・・」
天邑 遥斗「さてっ」
天邑 遥斗「僕はそろそろおいとましますね」
仲村 柊「じゃあ俺も──」
天邑 遥斗「いえ、先輩はゆっくりして・・・」
仲村 柊「このあと犬の散歩に 行かなきゃならないんだ」
中邑 ゆうり「こういうヤツよ、こいつは」
〇一戸建て
天邑 遥斗「それじゃあ、お邪魔しました」
仲村 柊「また明日な」
中邑 ゆうり「気を付けて帰ってね~」
中邑 ゆうり「・・・よしっ!」
〇女の子の部屋
中邑 ゆうり「あれっ?」
中邑 ゆうり「コップがない・・・」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
中邑 ゆうり「お母さーん。 部屋にあったコップ知らない?」
ゆうりの母「洗っといてあげたわよ」
中邑 ゆうり「なぁーーーーッ!?」
まさかまさか、はなむらむらが二人の気持ちを証明する日が来ようとは(笑)
様々な恋愛観が交差していますね
仲村君の中にも変化が?
あっ犬の散歩かぁ
誤解の解き方が斬新、しかし説得力がありすぎる呪いですね。柊に誤解されなくて良かったです。あのままだとどうやっても言葉では説得出来ないだろうと思いました。
そしてお母さんのアシストが自然に間接キスを妨げていて笑いました。上手いこと出来てますねー。
けどゆうりの場合は間接キスは解呪されない気がしてきました。それに間接キスする前にムラムラして無限に失敗しそう(笑)
足から吸収ww
足から吸収とか誤解!とかやっぱり面白くて笑える部分がちゃんと腹筋痛いレベルで微笑ましくて面白いのがほんと好きです…!
あとコメディではなむらむらとかいうトンチキ設定っぽいのに自分が選ばれないことがショック、とか思ったことそのまま口にするけどいい?とか繊細で丁寧に向き合ってる感じが本当に良くて優しい世界だなあと……微笑ましい可愛い。勘違いルートが呪いのおかげで回避されてよかった(