市長、レジャー施設を開拓する!(脚本)
〇個別オフィス
月日は流れ、季節は冬を迎えようとしている。
星野愛香「11月も終わり、季節はすっかり冬。 一年あっという間だなぁ」
星野愛香「カウントダウンライブも迫って来てるし、不安と緊張でいっぱいだわ」
星野愛香「今日も家に帰って自主練しないと」
石川「市長、今月の市報来ましたよぉ。 星崎くんのことも、ちゃんと記事になってます」
星野愛香「ほんとだ。 写真もいいカンジじゃない」
石川「彼も見てくれるといいですね」
星野愛香「それはそうと石川くん、先日の祭りの件だけど・・・」
石川「祭りがどうかしました?」
星野愛香「どうして勝手にステージに上がって、歌ったりしたのよ?あの後、来場してくれたお客様から苦情があったのよ?」
星野愛香「おかげで賑わう雰囲気も台無しよ!!」
石川「そっ、そうなんですか? それは申し訳ないことしましたね」
星野愛香「石川くんの歌声のせいで、途中で頭痛や吐き気がしたりして具合が悪くなって退場した人もいたし、倒れた人も居たみたいよ」
石川「し、市長。それはいくら何でも大袈裟過ぎではありませんか・・・?」
石川「・・・てことはつまり、それはカラオケで僕の歌声を聴いた市長さんの正直な感想だったわけですね。うっ、ううっ・・・」
星野愛香「・・・うん。とても申し訳ないけど、あれはお世辞でも上手いと言えないわ」
星野愛香「まぁ、さっきのお客様の話は嘘だけれど」
星野愛香「中には、笑ってたお客様もいて楽しかったって言ってた人もいて、それはそれで良かったけどね」
石川「なら、結果オーライじゃないですかぁ。 祭りは、笑って楽しくするものじゃないと」
星野愛香「いい?次また歌ったりしたら許さないからね?」
石川「了解でーす。 市長、次のイベントはクリスマスですね。また星崎くんオファーしちゃいましょうよ」
星野愛香「そうね。 彼さえ良ければ、また声掛けてみましょう」
石川「市長、彼だけじゃなく他のアーティストやアイドル呼ぶのもいいじゃないですか?」
星野愛香「地元のアーティストやアイドルを呼ぶってこと?そんな簡単に呼べるのかしら」
石川「地元のアーティストやアイドルなら、引き受けてくれる人いると思いますよ?」
石川「何ならその件、僕に任せちゃって下さい」
星野愛香「要するに、石川くんがしたいだけでしょ?」
石川「あはは、バレました?」
〇湖畔の自然公園
愛香と石川は、荒れた湖畔公園に来ていた。
星野愛香「ここも随分と変わってしまったわね・・・」
石川「市長、ここにも訪れたことあるんですか?」
星野愛香「えぇ、小学校の歓迎遠足で行ったこともあるし、家族で行ったこともある。昔はたくさんの人で賑わってた場所なのに」
星野愛香「次はここをどうにかしなければ・・・」
星野愛香「石川くん、どうすればまたここにたくさんの人が訪れるかしら?」
石川「そうですねぇ。こんなに景色がいい所なので、キャンプ場とか作ったらどうでしょうか?」
星野愛香「キャンプ場なら近くに新しく出来たところがあるじゃない」
星野愛香「そうだっ!グランピングとかどうかしら?キャンプと違って、色々持ち物の準備もしなくて済むし、インスタ映えにも最適だと思うの」
石川「それは確かにいいアイデアですね。 女性や家族連れの方にはちょうどいいかも。ペットとか連れて来てもいいですし」
石川「けど、僕的には遊園地とかありかもですね。大きな遊園地じゃなくていいんです。小さな遊園地」
星野愛香「遊園地かぁ」
石川「はい。 遊園地で遊んだ後は、グランピングとか」
星野愛香「石川くん、たまにはいいこと言うじゃない」
星野愛香「小さな遊園地とグランピングかぁ。 うん、これでいきましょう」
〇個別オフィス
定例議会後
石川「市長、議会お疲れ様でした。紅茶にします?それともエナジードリンクにします?」
星野愛香「そうね、紅茶にしようかしら」
石川「どうぞ。 しかし、定例議会は何回やっても緊張しますね」
星野愛香「緊張するのは石川くんじゃなくて私でしょ?議員の質疑応答は慣れないものよ」
石川「中には、厳しく言ってくる議員もいますしね。特にあの議員、グランピング計画にもいまいち反応薄かったし」
石川「もしかしたら、グランピングとキャンプの違いが分かってないのかもしれませんね」
星野愛香「えっ、そんなことある?」
石川「案外そうかもしれませんよぉ」
石川「そんなことより市長、グランピング計画についてもっと計画を練りましょう」
星野愛香「そうね」
〇稽古場
週末、愛香はスタジオで練習していた。
月島虹花「もうすぐだね。 カウントダウンライブ」
立花花音「ほんと、今から緊張と不安でいっぱいだよ。 二人とも家で自主練とかしてる?」
星野愛香「してるよ。 何か、スタジオだけの練習だと不安だし」
月島虹花「私も愛香と同じ。 家やカラオケで振り入れて練習してる」
立花花音「みんな、おんなじだね。 ピンキーのライブだもん。 迷惑はかけられないよね」
事務所関係者「皆さん、お疲れ様です。 もうすぐですね。 カウントダウンライブ」
事務所関係者「どう?完璧になってきてるかしら?」
月島虹花「お疲れ様です。 完璧かどうかは分かりませんが、形にはなってきてると思います」
事務所関係者「そう。 じゃあ、早速見てもらいましょうか。 二人とも入って」
ミレイ「みんな、久しぶりだね」
アイラ「練習頑張ってる?」
月島虹花「えっ、どうして二人がここに?」
事務所関係者「二人はクリスマスライブに向けて練習中なの」
立花花音「サンタコスのピンキーも可愛い」
アイラ「ありがとう。 似合ってる?」
星野愛香「もっ、もちろんです」
事務所関係者「いつまでにやけてるつもり? 早速二人に見てもらうわよ?」
月島虹花「はっ、はい。 すみません」
三人は、ピンキーの前で無我夢中になって踊った。
〇稽古場
月島虹花「どうでしたか?」
事務所関係者「アイラ、ミレイ。 三人の歌とダンスどうだった?」
アイラ「歌とダンスに関しては、まだ練習不足の所はあるかな」
アイラ「立ち位置とかまだ分かってない気がするし。 ミレイは?何か思ったことある?」
ミレイ「みんな、表情が固いよ? そんなんで見に来てくれた人楽しめるかな?」
ミレイ「私たちはね、スタジオに二人しかいないけど、常にファンの人がいることを想定して笑顔で練習してる」
アイラ「だからみんなも、常に笑顔で練習してないと、本番のときに笑顔を忘れてしまうことがあるかもしれない。 私達がそうだったから」
ミレイ「これからは、笑顔を取り入れて練習した方がいいと思うよ?」
星野愛香「笑顔か・・・」
月島虹花「確かに、私達は笑顔で歌ったことがない」
立花花音「ずっと歌とダンスに集中してた」
事務所関係者「いい?アイドルに必要なのは笑顔よ? その笑顔で、ファンの人の心を掴むの。分かった?」
月島虹花「はい。 ありがとうございました」
〇個別オフィス
翌日、愛香は手鏡の前で笑顔の練習をしていた。
星野愛香「う~ん、市長になってからあまり笑顔とか見せてないなぁ。 アイドル級のスマイルってどんな感じなんだろう」
星野愛香「何か顔が引きつるのよね・・・ こうなったら、あの石川くんに教えてもらうしかなさそうだわ。 彼、笑顔だけは得意みたいだから」
石川「僕がどうかしました?」
星野愛香「ちょっと! いきなり驚かさないでよ! びっくりしたじゃない」
石川「すみません。 市長、鏡がどうかしたんですか?」
星野愛香「何でもない」
石川「そうですか・・・ 僕は?僕に何か用事あったんじゃ・・・」
星野愛香「それなら大丈夫」
〇カウンター席
昼休み、愛香は猫カフェを訪れる。
水野楓「市長、先日はありがとうございました。猫ちゃんグッズたくさん買ってもらって」
星野愛香「ううん、実家にプレゼントしたら母も喜んでたわ」
水野楓「それなら良かったです。 市長、今からお昼ですよね?」
星野愛香「うん。 何にしよっかなぁ」
水野楓「実は日替わりランチ始めたんです。今日の日替わりランチは『ニャンバーグ定食』ですよ」
星野愛香「それって、ハンバーグ定食のこと?」
水野楓「はい。 良かったらいかがですか? 美味しくて評判ですよ?」
星野愛香「じゃあ、それにしようかな」
〇クリスマスツリーのある広場
猫カフェを後にした愛香は、ツリーの飾られた公園にやって来た。
星野愛香「わぁ、素敵なツリー。 こういうの見ると、ますますクリスマスが待ち遠しくなるわね」
地域おこし隊「市長、こんにちは」
星野愛香「長谷川さん、どうしたんですか?」
地域おこし隊「どうもこうも、ツリーの設置を今までしてたんですよ。 これも地域おこし隊の仕事ですからね」
星野愛香「このツリー、隊員の方達が設置されてたんですね。お疲れ様です」
地域おこし隊「いえ、今年もここでクリスマスイベントするんですよね?何か企画みたいなのされるんですか?こないだのハロウィンみたいに」
星野愛香「今年は先日のお祭りで歌った星崎くんに、また出演をお願いしたいと思ってます」
地域おこし隊「確かに彼の歌声は良かったですからね。我が市のテーマソングも良かったですよ。CDにする予定はないんですか?」
星野愛香「そうですね。検討してみます」
地域おこし隊「是非お願いします」
地域おこし隊「ついでに最後に歌われた方はもう出演しないんですよね・・・?」
星野愛香「最後に歌った方・・・?」
地域おこし隊「ほら、アニソンを歌ったあの人ですよ」
星野愛香「あーはい。この度は私の秘書が大変ご迷惑をおかけしてすみません」
地域おこし隊「あの方には非常に申し訳ないんですけど、再度来場した人からクレームが寄せられたら、たまったもんじゃないですからね」
星野愛香「そうですね。けどもう安心して下さい。彼は二度と出演するつもりは一切ないので」
地域おこし隊「分かりました。次のイベントも星崎くんに是非期待しておきますね」
地域おこし隊「では市長、私はこれで。イベント楽しみにしてますよ」
星野愛香「CDかぁ。 悪くないかも」
〇個別オフィス
昼休みを終え役所に戻る。
石川「市長、こんな遅くまで何処行ってたんですか?」
星野愛香「遅くまでって、昼休み時間内に帰ってきたつもりだけど?」
石川「違います。昼休みから1分も経過してます」
星野愛香「そう。 それは悪かったわね」
石川「全く・・・ 市長にいち早く知らせたいことがあったのに・・・」
星野愛香「知らせたいこと? 何?」
石川「クリスマスイベントに出演してくれるアーティスト見つけたんですよ」
星野愛香「ほんとなの?」
石川「はい。誰だと思います?」
星野愛香「そんなの分かるわけないじゃない」
石川「星崎くんの知り合いのシンガーソングライターの方ですよ。ダメ元で彼のDMにメッセージ送ったらOKしてくれました」
星野愛香「そうなの?」
石川「はい。彼、星崎くんと歌いたいって言ってましたよ」
星野愛香「そう。じゃあ、出演者は一人決まったも同然ね」
星野愛香「他はどう?」
石川「アイドルやアーティストではないんですが、マジシャンや変面ショーをしてくれる人に声を掛けてみました」
石川「そちらも快くOKしてくれましたよ」
星野愛香「マジシャンに変面ショーかぁ。 楽しくなりそうね」
星野愛香「とりあえず、その方向で考えていきましょ」
〇カウンター席
その日の夕方、愛香は水野に呼ばれ猫カフェに来ていた。
星野愛香「あっ、星崎くん」
りゅうせい「市長、こんにちは」
星野愛香「偶然ね。どうしたの? こんな所で」
りゅうせい「ちょっと、猫カフェに遊びに行きたくて」
星野愛香「そうだったの。 丁度良かったわ。 星崎くん、今度のクリスマスイベントに参加してみない?」
りゅうせい「また、イベントに参加していいんですか?」
星野愛香「もちろん。 だって、星崎くんはこの市を代表するアーティストなのよ?」
星野愛香「それにね、今度のイベントに星崎くんの知り合いのシンガーソングライターさんにも出演してもらうの」
星野愛香「彼、星崎くんと歌いたいって石川くんに言ってたみたいよ。 どう?参加してみない?」
りゅうせい「もちろんです。今からイベントに向けてクリスマスソング、練習しときますね」
星野愛香「ありがとう。 当日楽しみにしてるわ」
水野楓「市長、突然お呼びしてしまってすみません」
星野愛香「ううん、大丈夫。 業務は終わったから。 それよりどうしたの?」
水野楓「これ、見て下さい」
星野愛香「うわぁ、可愛いケーキ。 美味しそう~」
水野楓「実はこれ、猫ちゃん用のケーキなんです。まだ試作品なんですけど、どうしても市長に見せたくて」
星野愛香「そうだったの。 でもすごいわね。 私が食べちゃいそう」
水野楓「お客様から、猫ちゃん用のバースデーケーキやクリスマスケーキがあればいいのにって要望があったので作ってみたんです」
星野愛香「絶対売れると思うわ。 今はペットも家族の一員だもの。商品化したら私も買うね」
水野楓「ありがとうございます。 それから市長、今度のクリスマスイベントなんですけど、私の店も出店するのでまた寄って下さいね」
星野愛香「分かった。 楽しみにしてるね」
〇クリスマスツリーのある広場
クリスマスイベント当日。
会場にはキッチンカーや出店する店が立ち並び、多くの客が足を運んでいた。
石川「市長、いやぁ賑わってますねぇ。 ついでに、市長のサンタコスも似合ってますよ」
星野愛香「そっ、そうかしら・・・ ちょっと浮かれ市長になってない?」
石川「大丈夫ですってぇ~。 何なら今日の市長、まるでアイドルみたいですよ?このままアイドル目指してみてはどうですか?」
星野愛香「ちょ、ちょっと・・・ バカな事言わないでよ・・・」
星野愛香(けど、ホントにアイドルなんだよな・・・ この先、彼にバレないかが心配だわ)
りゅうせい「市長、こんばんは。 今日はイベントに参加させて頂きありがとうございます」
星野愛香「星崎くん。 こちらこそ、いつも無理言ってごめんね。 今日のライブも楽しみにしてるから」
りゅうせい「市長、今日はサンタコスなんですね。 いつもと違うから、ギャップがあっていいカンジですよ」
星野愛香「あっ、ありがとう・・・ ちょっと恥ずかしいけどね。 こういうのって、普通市長はしないじゃない?」
りゅうせい「それがいいんですよ。 まるでアイドルみたいです」
星野愛香(星崎くんまで言い出すのね・・・)
りゅうせい「僕、これからライブの準備があるので失礼します」
星野愛香「うん。行ってらっしゃい」
石川「市長。 お腹空いてません? ラーメン買ってきましたよぉ」
星野愛香「ありがとう。 丁度お腹空いてたの」
石川「どっちにします? 味噌ラーメンと醤油ラーメン」
星野愛香「じゃあ、味噌ラーメンにしよっかな」
星野愛香「てか、このラーメン見た目が可愛い。 ナルトとチャーシューが猫耳になってる」
石川「このラーメン、水野さんの店から買って来たんです。 ちなみに商品名、何か分かります?」
星野愛香「もしかして、醤油ニャーメンと味噌ニャーメンとか?」
石川「正解です! 僕が商品名付けたんです」
星野愛香「でしょうね・・・」
石川「彼女の店、賑わってましたよ。看板猫のシナモンちゃんがサンタコスしてて、お客さんが写真撮りまくってました」
石川「どうせなら、一枚500円でお金取ったらいいのに。 市長もそう思いません?」
星野愛香「思いません。 石川くん、大体アイドルのチェキ会じゃないのよ?」
石川「ですよね。 けど、市長のサンタコスならチェキ会にしてもいいんじゃないですか?」
星野愛香「致しません・・・」
〇クリスマスツリーのある広場
こうしてイベントはライブやマジックショー、変面ショーで盛り上がりを見せ、何のトラブルもなく終わった。
石川「市長、今回のイベントも大成功でしたね。星崎くんのクリスマスソングとシンガーソングライターとのコラボも良かったです」
星野愛香「そうね。 今回ばかりは石川くんに感謝だわ。 ありがとう」
石川「いえいえ。 じゃあ次は、僕と星崎くんのコラボで決まりですね?」
「それは~どうかしらねぇ」
「え~っ、僕にもコラボさせて下さいよぉ」
〇個別オフィス
数日後、レジャー施設開拓は計画を新たに練り、定例議会で可決し翌年に着工する予定となった。


