15 怖がる理由(脚本)
〇田舎の病院の廊下
3日後。
田中光太郎「さて、ここはこんな所か・・・」
世羅「では、次の指示を仰ぎましょう・・・1分1秒と無駄にする訳には行きません・・・」
田中光太郎「お、おう!(凄いな世羅さん・・・効率的に掃除してるから行動が早いと言うか・・・)」
谷本京子「あ、この辺の掃除しましたか?」
田中光太郎「あ、谷本さん、丁度終わりましたよ!」
谷本京子「分かりました・・・では、田中君には各フロアのトイレ掃除を、世羅さんには御老人の方々の話し相手をして頂きたいです・・・」
世羅「畏まりました・・・田中光太郎・・・くれぐれも手を抜かない様に・・・」
田中光太郎「分かってるって!んじゃあ行って来ます!」
〇田舎の病院の休憩室
谷本京子「皆さん、お待たせ致しました!」
小林義明「おぉ!やっと来たか!」
世羅「谷本さん、私は何をしたら宜しいですか?」
谷本京子「そこまで難しく考えなくて大丈夫ですよ・・・相手の話を聞いて上げたり、ボードゲームの相手をしたりと、」
谷本京子「あ、世羅さんは将棋や囲碁とか出来ます?」
世羅「はい、出来ます・・・」
谷本京子「あ!良かった!ここはそう言う人多いからそれが出来ると助かるんです!」
谷本京子「あの、トイレ行きたい人いますか?」
関敏子「あ、谷本さん、一緒してくれますか?」
谷本京子「あ、分かりました!じゃあ世羅さん、また後でね!」
小林義明「ロボットの姉ちゃん・・・あんた囲碁や将棋出来るのか?」
世羅「はい、その辺りの事は事前に把握してます・・・」
小林義明「おぉ!そいつは楽しみだな!ちょっと待ってな!今囲碁盤と石持って来るからよ!」
浅野叶「何だ、あんたまだいたのかい?」
小林義明「ちょ、浅野さん・・・まだ機嫌直して無かったのかい?」
浅野叶「ここの連中もあんた達も分かって無いね!AIは危ないんだよ!そんなもん無くたって私達はやって行けるんだよ!」
小林義明「で、でもよぉ・・・」
世羅「小林さん、ここは私に相手させて頂けますか?」
小林義明「え?でもよ?」
世羅「AIは使い方を間違えれば危険だと言う事は私のマスターからも聞かされています・・・ですが、」
世羅「こうも偏った認識をされたままでは私としても納得出来ません・・・一度お話したいと思うので、やらせて頂けますか?」
小林義明「・・・・・・」
小林義明「分かった、何かあったら京子ちゃん呼ぶ様にな?」
浅野叶「・・・・・・」
世羅「浅野叶さん、質問宜しいですか?」
浅野叶「何?」
世羅「あなたは以前に、機械が人を支配する作品を見たと聞いた事があります・・・それは一体どの様な作品なのですか?」
浅野叶「あぁ、教えてやるさ!それのせいで私はAIが嫌いになったからね!」
浅野叶「タイトルは忘れたけど、そこに映ってたのは・・・」
〇建設現場
『その世界ではロボットが人間と共存しててね。人間がより快適に過ごすとかどうとかの理由でロボットに仕事をさせてたのさ。』
『そこには当然AIなんて物もあって、そこにいたロボットは人の言う事を理解したり、』
『その通りに動いてたのさ。』
『だけどね。』
〇海
「・・・・・・」
『どう言う訳か知らないけど、ある日突然人はロボットを手放したのさ。ロボットは訳の分からないまま捨てられて、』
『海の藻屑になる。その筈だったんだけどね。』
〇荒廃した街
『捨てられた恨みからなのか、自己学習したロボット達は人間に攻撃を仕掛けて来たのさ。』
『当然人は抵抗した。だけど、』
『ある者は内臓を飛び出され、ある者は両手足をもがれ、ゆくゆくの内に人はロボットに負けて、地球の支配権を奪われたのさ。』
〇田舎の病院の休憩室
浅野叶「そして地上にはロボットが作り上げた都市が広がり、そこでは捕まった人間達がロボットの研究材料にされたり、」
浅野叶「良く分からん試験管に保管されたりしてたのさ・・・もう随分前の物だから覚えちゃいないけどね・・・」
世羅「そ、その様な内容だったのですね・・・」
浅野叶「そうさ・・・そして今の時代でもAIの進化は加速している・・・このまま行っても私が見たあれと同じになるのは」
浅野叶「もう目に見えてる・・・だから私はAIなんて反対してるんだ・・・」
世羅「・・・!浅野さんの言いたい事は分かりました・・・ですが、あの田中光太郎の様に明確なコンセプトが存在せず、」
世羅「只の家族として生活している者もいれば私の様に明確なコンセプトの上で成り立つ者もいます!」
世羅「物を壊すだけがAIではありません!私のマスターは!」
浅野叶「私達がどれだけ痛い思いして来たと思ってるんだい!?あんたらがどう喚こうが機械は只の機械だろ!?」
浅野叶「機械なんてね、使い易けりゃそれで良いんだよ!」
世羅「そ、そんな・・・」
小林義明「姉ちゃん!囲碁盤とか持って来たぜ!」
世羅「あ、お帰りなさい小林さん・・・」
小林義明「んじゃ!早速お手並み拝見と行くか!浅野さんもどうだ?」
浅野叶「私は遠慮しておくよ・・・あんたらで勝手におやり・・・」
浅野叶「あんたも、私の考えが分かったならさっさとスクラップにでもなりな!只でさえ迷惑なんだから!」
小林義明「う〜ん、あの性格はどうにかならんもんかねぇ・・・なぁ姉ちゃん!」
世羅「・・・・・・」
小林義明「姉ちゃん?大丈夫かい?」
世羅「あ、大丈夫です!早速始めましょうか!」
複雑な気持ちを抱えたまま、世羅は囲碁に付き合うのだった。