16 言葉より行動(前編)(脚本)
〇通学路
田中光太郎「あ〜!今日もやり切ったなぁ!」
世羅「・・・・・・」
田中光太郎「おい、どうしたんだよ世羅さん?さっきから難しい顔してよ?」
世羅「・・・田中光太郎、これを話して良いのか私には分からなくて・・・」
田中光太郎「え?何かあったのか?」
世羅「・・・実は、カクカクシカジカで・・・」
田中光太郎「あぁ・・・そう言う事か・・・だから浅野さんは俺らの事嫌ってたのか・・・」
世羅「元々私は、カウンセリングの為に作成された物ですが、AIは只壊すだけとトコトン決め付けられたら、」
世羅「丸で楓様がやった事が悪で、私は作り出されるべきでは無いのかと・・・」
田中光太郎「おいおい、何馬鹿な事考えてんだよ?てかあんたもそんな考え出来るんだな・・・」
世羅「・・・私はどうしたら良いのでしょうか・・・」
田中光太郎「あのなぁ、そう言う奴の言う事なんて気にするな・・・そんな事してても良い事無いぜ?」
世羅「し、しかし・・・」
田中光太郎「何でそいつの言う事気にして生きなきゃならないんだ?自分が重くなるだけじゃねぇか・・・」
田中光太郎「それって楽しいか?」
世羅「た、楽しい?」
田中光太郎「世羅さん、どうして汀さんはあんたを作ったんだ?世羅さん自身は、何をどうしたいんだ?」
世羅「・・・・・・」
世羅「・・・!田中光太郎、私は!」
〇田舎の病院の休憩室
翌日。
田中光太郎「さて、ここは終わりだな・・・」
世羅「光太郎、手を休めてる暇はありませんよ?」
田中光太郎「分かってるよ世羅さん!さて次のが終わったら・・・」
谷本京子「お二人共、掃除は終わりましたか?」
世羅「はい、たった今終わりました・・・」
谷本京子「ありがとうございます!」
谷本京子「そしたら、光太郎君には洗い物、世羅さんにはトイレ掃除をお願い出来ますか?」
谷本京子「それが終わったら、またお年寄りの方のお相手を・・・」
田中光太郎「あ、分かりました!」
世羅「こちらも了解です・・・光太郎、くれぐれも手を抜かない様に・・・」
田中光太郎「分かってるって!」
数分後。
小林義明「よぉ姉ちゃん!」
世羅「お早うございます、小林さん・・・」
小林義明「今日は将棋で勝負だ!今度は負けないぜ!」
世羅「・・・分かりました、ご要望通り手加減無しで行きます・・・」
関敏子「ロボットのあんちゃん・・・ここの仕事は少しは慣れたかい?」
田中光太郎「はい!お陰様で!まだ全部って訳じゃ無いですけど・・・」
関敏子「そりゃそうだ・・・最初は誰でもそんなもんさ・・・何度も何度も、失敗して覚えるのが大事だからね・・・」
田中光太郎「えへへ、そうですよね・・・」
浅野叶「何だ、あんた達まだスクラップになって無かったのかい?」
関敏子「あぁ、浅野さん!」
小林義明「浅野さんよぉ・・・いい加減ロボに悪態付けるの止めねぇか?折角頑張ってくれてるのによぉ・・・」
浅野叶「ここには沢山人間の従業員がいるだろうに!ロボットが悪さしようとしたら、誰が責任取るんだい!?」
世羅「浅野さん、お早うございます・・・」
浅野叶「あんた達いつまでここにいるんだい!?さっさと出てくかスクラップになるか早くしてくれないかい!?」
世羅「申し訳ありませんがそれは出来ません・・・スクラップにするなら我々のマスターの許可が無ければなりませんし、」
世羅「我々は実習生として仕事に参加しているので独断で不在になれば学校側にも迷惑が掛かります・・・」
世羅「我々がその様な事になって浅野さんが原因で起きたとなった時、浅野さんはその責任を果たせますか?」
浅野叶「んな!あんたそれは!!」
小林義明「ははは!言う様になったな姉ちゃん!」
世羅「私の開発コンセプトは御老体、障害者等のカウンセリングです・・・我々は兵器では無いので、」
世羅「これから見て頂ければと思います・・・尚、この施設からは実習期間が終わらない限り出て行く事も、」
世羅「勝手にスクラップになる事も出来ません・・・追放とスクラップ以外の事なら引き受けられますので、」
世羅「そこはご理解して頂ければと・・・」
浅野叶「・・・!!あくまでここでやってくんだね??」
世羅「勝手な行動は周囲に迷惑が掛かります・・・そうでなければ問題ありません・・・」
浅野叶「・・・・・・」
浅野叶「まぁ良いわ・・・私をトイレに連れてってくれるかい?」
世羅「畏まりました、小林さん、お相手はその後で宜しいですか?」
小林義明「勿論さ!早く行ってやりなよ!」
世羅「・・・ありがとうございます・・・」
田中光太郎「おぉ、やるな世羅さん・・・」
小林義明「おう、ロボのあんちゃん!お前さんは老人介護やりたいと思うか?」
田中光太郎「え?あぁ!正直まだ何とも言えませんね・・・」
小林義明「そっか・・・あんちゃんは高1かい?」
田中光太郎「あ、はい・・・」
小林義明「そっか!高1ならまだまだこれからだな!もし君とあの姉ちゃんが一緒に介護やるってんなら、」
小林義明「負けんじゃねぇぞってあんちゃんに言うつもりだったからな!」
田中光太郎「あ、あはは・・・まぁ、ありがとうございます・・・」
何がともあれ、光太郎と世羅の実習に勤しむのだった。