アイドル市長

りをか

秘書の石川(脚本)

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〇ベビーピンク
  私には、ずっとなりたかった夢がある。
  可愛くて、キラキラしてて、誰からも愛される職業。
  そう。
  アイドルだ。

〇個別オフィス
星野愛香「はぁ、やっと初公務終わったぁ。 つっかれたぁ」
  私の名前は、星野愛香。
  この度、新しい市長になったばかりの新人市長。
  ほんとは市長なんかなりたくなかったけど、この市を何とかすべく、軽い気持ちで市長選に立候補した。
  大した学歴も人脈も私にはない。
  だけど、私はこの町が大好き。
  この熱意と若さで、市長になったと言っても過言ではない。
石川「市長、初仕事お疲れ様でした。 お茶淹れたので、よかったらどうぞ」
  この男は、秘書の石川。
  前市長の秘書をしていたこともあり、有能なベテラン秘書だ。
星野愛香「石川君。私はお茶より、紅茶派だって言わなかったっけ?」
石川「すいませ~ん。 お茶を淹れるのが、クセになってしまってるもんで。 すぐ紅茶持ってきますね」
  石川は、淹れたお茶を片付けようとする。
星野愛香「いいわ。今日はお茶で我慢してあげる。 次からは紅茶でお願いね」
石川「ありがとうございます。 あっ、市長肩凝ってません? 良かったらお揉みしましょうか?」
星野愛香「石川くん。私はこう見えてまだ25よ?肩なんて凝ってないわ」
星野愛香「それに、女性の肩を揉んだりなんかしたら今の時代、セクハラで訴えられるわよ?」
石川「そっか。 確かにそうですよね」
石川「すみませ~ん。 前の市長によく肩揉まされてたんでつい」
  石川は頭を掻いた。
  そんな石川を見て、愛香は溜め息をつく。
星野愛香「石川くん、今日はもう帰っていいわ」
石川「えっ?まだ定時前ですよ?」
星野愛香「定時前なのは分かるけど、今日は何か疲れちゃって、一人になりたい気分なの。定時までどっかで時間潰してもらって構わないから」
石川「そう・・・ですか。 わっかりました。じゃあ、その辺で時間潰して帰りますね。 市長、お疲れ様です」
星野愛香「はい、お疲れ様でした」
  石川はカバンを手に取り、部屋から出て行った。
星野愛香「はぁ~、やっと一人になれたぁ。 さぁ、ここからは私のプライベートタイム。 今日はどのアイドルの動画にしよっかなぁ」
  愛香は自分のパソコンを開き、アイドルの動画を見漁る。
星野愛香「あっ、このユニット超可愛い♡ 今日はこの子達にしよっかな~♪」
  その後、愛香は動画に釘付けになっていた。

〇オフィスビル前の道
  市役所を出ると、外はすっかり暗くなっていた。
星野愛香「まいったなぁ。 動画観てたら、もうこんな時間だよ」
  腕時計に目をやると、時間は既に20時を回っている。
星野愛香「いくら秘書だからって、石川くんを呼ぶのもさすがに悪いし、今日はタクシーでも呼ぶとするか」
  愛香はスマホを取り出し、タクシーを呼ぼうとした。
  するとその時・・・
裕太「こんばんは~。 女市長さん」
  振り返ると、そこには以前付き合っていた元カレの裕太が立っていた。
星野愛香「ゆっ、裕太! どうしてここに?」
裕太「どうしてって、コンビニの帰りだけど?」
星野愛香「・・・」
裕太「それより、愛香~ おまえにスーツなんか似合わないね~ 下手すりゃ、就活生にしか見えねぇよ」
星野愛香「何? そんなこと言うために来たの? あんたも暇人ね」
  愛香はムキになって怒った。
裕太「だからぁ、コンビニの帰りだっつてんだろ?」
星野愛香「なら早く帰れば?」
裕太「はいはい。 そうだ、市長さんにちょっと聞きたいことあんだけど~」
星野愛香「何よ?」
裕太「市長さん、初任給はいくら貰ったのかなぁ~? 俺、金欠だからさ給付金くれよ。元カレ給付金」
星野愛香「はぁ、そんなもんあんたにあげるわけないでしょ! ろくに働きもしないで、いい加減にしたら?」
裕太「やべっ、市長さんから説教されちまったよ。 こりゃ、SNSで呟かねぇとな」
星野愛香「やめてよっ! 変な誤解されるじゃない!」
裕太「じゃあ、金よこせよ。 どうせ、たんまり貰ってんだろ?」
  裕太は愛香のカバンを無理やり奪おうとした。
「ちょっとやめてよ!離して!」
  愛香は必死で抵抗する。
「大体なぁ、元事務員のお前が市長とか生意気なんだよっ! 自分の立場を分かれっつんだよ」
「そんなこと、あんたなんかに言われたくないわ・・・」
「はっ、どこまでもふざけた女だな!」
  言い合いになってる二人を、周囲は誰も助けようとはしない。
  どうしよう。このままじゃ、ほんとにカバン取られちゃう・・・
  お願い・・・誰か助けて・・・
  愛香は目で、周囲に助けを求めた。
  その時
石川「市長!大丈夫ですか!?」
  石川が偶然にもその場に居合わせた。
「石川くん、助けて! ひったくり犯よ!」
石川「お任せ下さい。空手五段の私が、犯人なんかぶっ倒してみせますから!」
  そう言うと、裕太はその場から急いで立ち去って行った。
「おい、こら待て! 盗っ人~」
石川「市長、今すぐ警察に被害届出しましょう。 犯人の特徴覚えてますよね?」
星野愛香「被害届はいいわ・・・ 何にも取られてないし・・・」
石川「そうですか それより市長、怪我はありませんか?」
星野愛香「えぇ、大丈夫よ。 おかげで助かったわ」
星野愛香「ところで石川くん、ほんとに空手五段持ってるの?」
石川「いいえ、空手なんてしたことはごさいません。 ただ、前市長が何かあった時は空手五段って言えば、何とかなるって言ってたんです」
石川「いやぁ、まさかこんな場所でこの言葉を使うなんて思ってもみませんでしたよ。 けど、本当に何とかなりましたね」
  石川は笑いながら頭を掻く。
  愛香はこの時、本当に別の意味で有能だと彼を見て思った。

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