正正の旗堂堂の陣、ゆえに…(脚本)
〇城の回廊
白河離宮
左京大夫「おお・・・」
左京大夫「おおおおおおおおっ!」
左府「五月蠅い。情緒を保て。爺(GGI)」
左京大夫「やはり来て頂けましたか! 惡左府様が 我が崇徳帝の傍にあってくれれば百人力!」
左府「崇徳『帝』とはな・・・」
鎮西八郎「ふん、公家が戦さ場にて どれほどの役にたとうぞ」
左府「されば戦まで大人しゅうしておれ、犬」
鎮西八郎「なんだと!?」
鬼丸「この人、行く所行く所で敵を作るな~」
武者丸「お前もいちいち突っ込むな。慣れろ」
左府「努努夜討ちなど行うでないぞ。 援軍を募れば戦況は膠着し、 やがて有利な和睦に持ち込める」
鎮西八郎「和睦?」
平右馬助「はなから援軍頼みとは情けない!」
鎮西八郎「左様!いくさは先手必勝! 勝って勝って勝ちまくるのが日本晴れだ!」
左府「正正の旗堂堂の陣を討つなかれ。 穢れ武者は戦の作法も知らぬのか」
左京大夫「まあまあ、策はいろいろあって宜しい。 ささ、我が帝がお待ちですぞ。左府殿」
左府「ならばお三方、そこを退いてもらおうか?」
「・・・チッ」
〇謁見の間
顕仁皇子「来たか・・・」
顕仁皇子「いや、来るしかなかったと言うべきか?」
左府「ふむ、鎧を纏っておられませぬな。結構」
左府「一時は熱に浮かされても すぐに飽きて意気消沈する。 それが平安に生きる者の性です」
顕仁皇子「して汝はどれほどの援軍を集められる。 こちらに利となる和睦を成すには数がいる」
左府「全国の荘園より。刻を稼げば稼ぐほど」
顕仁皇子「朱器台盤を奪われ 氏長者でもなくなった身でもか?」
左府「戦など・・・似合わぬ真似をなさいますな」
顕仁皇子「・・・なに?」
左府「兄弟が憎み合うは悲しき仕儀にございます」
顕仁皇子「お前がそれを言うか?」
左府「・・・」
〇祭祀場
『汝も奇妙な生い立ちよな』
『早くに父を亡くし年の離れた兄の養子となり家督を継いだ』
『政を司る関白と貴族を従える氏長者』
『その両輪を以て摂関の世を復活させるために』
『だがその関白に昨今、子が産まれた』
『今となっては関白の目の上の瘤がまさかの左大臣ぞ』
〇謁見の間
左府「瘤・・・」
顕仁皇子「いや、摂関家が生んだ捻れというべきか?」
左府「私が摂関家の捻れならば 貴方は王家の歪みではないか」
顕仁皇子「そうだ。お互い気苦労が絶えぬな」
左府「・・・早々に膝を屈されよ」
顕仁皇子「・・・」
左府「どうか世の為人の為、兵を退かれませ」
左府「貴方様はハレの王にはなれませぬ」
顕仁皇子「賢人ぶるな。 我を説得し戦さを止めた 功労者となりたいだけであろう」
顕仁皇子「それが汝の助かるただ一つの道だからな」
左府「不好長命不借身命! 皇の神官を侮るでない!」
顕仁皇子「・・・」
左府「貴方様は先帝白鳥羽院とは 似ても似つかぬ日陰者だ」
左府「かような者が王となれば、 この国はハレを失いケに沈む。 それを止めるは皇の神官たる私の勤めだ」
左府「民の為、疾く仏門に『消え去れ』よ!」
顕仁皇子「口が過ぎようぞ!惡左府!」
顕仁皇子「な、なんだ?」
左府「まさか・・・そんな・・・夜襲だと?」
左府「神聖なる皇戦(すめらいくさ)を 夜襲で穢すだと?」
〇城の回廊
清盛「正正の旗堂堂の陣を討つなかれ・・・か」
『左様。故に』
〇豪華な王宮
信西「刻は、今」
CONTINUED