【2期】ゾンビバー真相開店事件(脚本)
〇公園のベンチ
桜庭 紗月(さくらば さつき)「ひっ・・・!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「大丈夫ですか!」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「あ、あなたは!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビ課の樺島です」
樺島 一心(かばしま いっしん)「我々が来たからには、もう安心ですよ」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「ゾンビめ・・・!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「尾ヶ崎さん、待ってください!」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「このゾンビは人間を襲った」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「処分するのが当然だろ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「彼女はケガ一つない。襲われたわけではありません」
樺島 一心(かばしま いっしん)「忘れたんですか?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「僕たちの仕事は、ゾンビによる困りごとを解決することです」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「チッ・・・」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「どうなっても知らんぞ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「何があったか、詳しく教えてもらえますか?」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「ベンチに座ってたら、急にこのゾンビが近づいてきて・・・」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「何か振り回してくるんです」
樺島 一心(かばしま いっしん)「彼が持ってるのは──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ままごとのコップ・・・?」
ゾンビ「あーうーあー」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね、頼めるか?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「任せて」
樺島 ここね(かばしま ここね)「『えっくす、わい、じー』って言ってる」
樺島 ここね(かばしま ここね)「算数の問題かな??」
樺島 一心(かばしま いっしん)「いや・・・何かの暗号かもしれない」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「やれやれ。ゾンビ課ってのは、お子様の集まりか?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「尾ヶ崎さん、何か分かったんですか?」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「『XYZ』といえば、カクテルの名前だ。常識だろ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「あの腕の振り、彼はカクテルを作ってるつもりなんじゃ・・・」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「もしかして──」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「九条さん!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「お知り合いですか?」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「行きつけの店で、バーテンダーをされてた方です」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「パンデミックから行方知れずだったんですが、こんな所に・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビは人間だった頃の強い想いに従って、行動することがあります」
樺島 一心(かばしま いっしん)「彼は、あなたにカクテルを振る舞おうとしているのかもしれません」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「私が常連だったから・・・?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「まだ、ハッキリしたことは言えませんが」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「馬鹿らしい。ゾンビに心が残ってるとでも?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・僕は、そう信じています」
樺島 一心(かばしま いっしん)「桜庭さん」
樺島 一心(かばしま いっしん)「教えて頂きたいことがあります」
〇原宿の通り(看板無し)
桜庭 紗月(さくらば さつき)「ここが、九条さんが働いていたバーです」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・じゃあ、交渉してみます」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「おい! ゾンビを店に入れようなんて、正気か!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ちゃんと話せば、分かってくれるはずです」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「無駄無駄。追い返されるに決まってる──」
〇シックなバー
マスター「構いませんよ」
「へ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「あ、ありがとうございます!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「九条さんが使っていたモノは残っていますか?」
マスター「少しお待ち下さい」
〇シックなバー
マスター「九条君、あなたのシェイカーですよ」
九条 匠(くじょう たくみ)「うーあー!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・材料を欲しがってるみたい」
樺島 一心(かばしま いっしん)「その・・・使わせて頂くことは可能でしょうか?」
マスター「もちろん」
マスター「彼は、ここのバーテンダーなのですから」
〇シックなバー
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「めちゃくちゃだ」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「あんな酒、飲めたもんじゃねえな」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それを決めるのは、僕たちじゃありませんよ」
九条 匠(くじょう たくみ)「あーうーあー」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「──じゃあ、いただきます」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「・・・」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「うっ」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「九条さんってば、しばらく見ない間に腕が落ちたみたい」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「私の好きなカクテルも、忘れちゃったのかな・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「XYZがお好きだったのでは?」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「いえ、かかさず飲んでたモノがあるんです」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「大学生の時、初めてこの店に来てからずっと──」
〇原宿の通り(看板無し)
桜庭 紗月(さくらば さつき)「私の誕生日に言う必要ないじゃない・・・」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「他に好きな人ができたなんてさ」
???「そこの、お嬢さん」
九条 匠(くじょう たくみ)「よろしければ、一杯飲んでいきませんか?」
〇シックなバー
桜庭 紗月(さくらば さつき)「わぁ・・・すっごく爽やか!」
九条 匠(くじょう たくみ)「それは『ギムレット』といいます」
九条 匠(くじょう たくみ)「気に入って頂けて何よりです」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「カクテルって、甘いものばかりと思ってました」
九条 匠(くじょう たくみ)「甘いも酸っぱいも、どんな味も楽しめるのがカクテルの良い所です」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「・・・」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「どんな味も、か」
失恋の悲しみが、じんわりと溶けていくようでした
それから辛いことがある度、ここに通うようになったんです
〇ファンシーな部屋
就活で悩んでいた時──
〇オフィスのフロア
叶わぬ恋をした時──
〇シックなバー
九条さんとギムレットが、私を待ってくれてました
〇シックなバー
桜庭 紗月(さくらば さつき)「今日、会社で聞いちゃったんです」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「片思いしていた先輩が結婚するって」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「ずっと前から『叶わない』ってあきらめてたはずなのに──」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「いざ答えが出ると、わんわん泣いちゃって」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「ほんと、馬鹿みたい」
樺島 一心(かばしま いっしん)「桜庭さん・・・」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「ゾンビが九条さんだと分かった時、また元気づけてくれるかも──」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「そう期待しちゃいました」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「優しい言葉も大好きだったカクテルも・・・もうないんですね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「──僕はそう思いません」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「え」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ようやく分かりました」
樺島 一心(かばしま いっしん)「九条さんが公園で、桜庭さんにカクテルを振舞おうとした理由が」
樺島 一心(かばしま いっしん)「彼はきっと──」
〇公園のベンチ
泣いているあなたを、放っておけなかったのではないでしょうか?
〇シックなバー
樺島 一心(かばしま いっしん)「九条さんは話すことも、美味しいカクテルを作ることも、できないかもしれない」
樺島 一心(かばしま いっしん)「けど、彼の想いは──」
樺島 一心(かばしま いっしん)「何一つ、変わっていないと思います」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「・・・本当だ」
桜庭 紗月(さくらば さつき)「味は変わっても──」
〇シックなバー
マスター「・・・」
マスター「皆さんは、カクテル言葉というものを、ご存知ですか?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「花言葉のようなものでしょうか?」
マスター「はい。カクテルにはそれぞれ込められたメッセージがあるのです」
マスター「XYZは──『永遠にあなたのもの』」
マスター「実は、告白やプロポーズに使われるモノなのです」
樺島 一心(かばしま いっしん)「まさか、九条さんは桜庭さんのことを・・・」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「樺島。終わったならさっさと引き上げるぞ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・本日は突然押し掛けたにも関わらず、ありがとうございました」
マスター「こちらこそ、最後に良い想い出となりました」
樺島 一心(かばしま いっしん)「最後・・・?」
マスター「もう、店を畳むつもりなんです」
樺島 一心(かばしま いっしん)「そう──だったんですね」
マスター「私も、随分歳をとってしまいました」
マスター「九条君が、跡を継いでくれると思っていたのですが・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「彼がカクテルを作ることはもう──」
九条 匠(くじょう たくみ)「うーあー!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「なっ!?」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「俺に?」
ゾンビ「あーうー」
樺島 ここね(かばしま ここね)「『ギムレット』って言ってる」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「・・・」
尾ヶ崎 ルイ(おがさき るい)「ゾンビの酒なんて飲めるか」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・感じ悪」
樺島 一心(かばしま いっしん)「どうして、尾ヶ崎さんにカクテルを・・・?」
マスター「もしかして・・・」
マスター「昔、九条君に教えたことがあるんです──」
〇シックなバー
マスター「私たちバーテンダーの務めとは、何だと思いますか?」
九条 匠(くじょう たくみ)「・・・美味しいお酒を振る舞うことでしょうか」
マスター「もちろん、それもあります」
マスター「しかし、本当に大切なのは──」
〇シックなバー
マスター「それからでしたね」
マスター「九条君が、何かを抱えた方を見る度、店に招き入れるようになったのは」
マスター「彼は今も──務めを果たそうとしているのかもしれません」
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・尾ヶ崎さんの冷たい態度には、何か理由があるのかもしれない」
樺島 ここね(かばしま ここね)「そう・・・なのかな」
樺島 一心(かばしま いっしん)「いつか、分かりあえる日が来る──僕はそう信じるよ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃん・・・」
マスター「・・・」
マスター「やはり──」
〇宇宙空間
マスター「私の目に狂いはなかったようです」
〇空
〇原宿の通り(看板無し)
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃん、見て!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あのバー、看板が変わってる」
樺島 ここね(かばしま ここね)「やっぱり辞めちゃったんだ・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「素敵なお店だったのに・・・残念」
樺島 一心(かばしま いっしん)「新しいお店も、変わらず素敵だと思うな」
樺島 ここね(かばしま ここね)「どうして分かるの?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それはね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「優しい色のカクテルを出してくれる──」
〇シックなバー
不思議なバーテンダーがいるだろうから
今回のエピソードでXYZは「永遠にあなたのもの」という意味で使われましたが、僕としては「終わり」の印象が強いですね。
何故ルイにギムレットを?
と思って調べたら「遠い人を想う」。
彼がゾンビを嫌悪する理由はもしかしたら……。🤔