4話目 摩戛(脚本)
〇レトロ喫茶
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「け、結婚かぁ。実感、湧かないなぁ・・・」
峰木 実(みねぎ みのり)「えーっと、あ、しのぶ!」
峰木 実(みねぎ みのり)「いたいた。あれ、前よりも元気そうだね!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「うん、星ちゃんに会ったおかげでね!」
峰木 実(みねぎ みのり)「そ、そっか。よかった!」
峰木 実(みねぎ みのり)「それで、星ちゃんに会った後、何か良い事が起こった?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「じ、実はね・・・」
峰木 実(みねぎ みのり)「え、け、結婚っ!?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「うん、天君からLINEで連絡が来ちゃって」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「天君のために頑張って、良かった~♡」
峰木 実(みねぎ みのり)「そ、そっか! なら、良かったね・・・」
峰木 実(みねぎ みのり)「・・・・・・」
峰木 実(みねぎ みのり)「だ、大丈夫・・・?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「大丈夫? 何が?」
峰木 実(みねぎ みのり)「そ、その、ホストと結婚って、良いと思うけど、相手の事もよくわかっていないわけだし・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・・・・」
峰木 実(みねぎ みのり)「ほ、ほら、まだ、お店で会っただけでしょ? 普通のデートとかしてないからってだけ!」
峰木 実(みねぎ みのり)「わ、私も、好きだなーって思ったけど、デートしてみたら意外とって事があったからさ、ね!!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「あ、そういうことね! それなら大丈夫、全く問題なし!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「何度かお店で会った後に、デートしたことあるから! ご飯を食べに行ったり、カラオケに行ったり!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「天君のお家に行った時は、すっごく楽しかったな~♡」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「しかも、そういう事をするの、私だけなんだって! だから、ついつい頑張っちゃうんだよね!!」
峰木 実(みねぎ みのり)「へ、へぇ~・・・」
峰木 実(みねぎ みのり)「も、もし苦しい事があったら、呼んでね。 すぐ、駆け付けるから・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「うん、ありがとう、実!」
峰木 実(みねぎ みのり)「し、幸せになって、ね・・・?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「うん、すっごく幸せ、ありがとう!」
〇一人部屋
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「本当に私達、結婚するんだ・・・///」
天(そら)「うん、まさかオッケー貰えるなんて思ってなかった。しのぶちゃんが喜んでくれて、僕も本当に嬉しいよ」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「で、でも、なんで急に? 私と、け、結婚なんて・・・」
天(そら)「なんだろう。しのぶちゃんと話していると癒されるっていうか、元気が出るっていうか・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「そっか、嬉しい・・・///」
天(そら)「・・・・・・」
天(そら)「・・・電話でも言ったけど、僕はこの仕事はまだ続けるつもり」
天(そら)「今年でやっと1000万プレイヤーまで来たんだ。もっと上のプレイヤーになって、稼げるだけ稼ぐ」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「うん、凄い事だと思う! 私は、その、稼ぎは全然だから・・・」
天(そら)「大丈夫、貯金が全然でも、借金があったとしても、僕がその分は補填する」
天(そら)「・・・その代わり、僕のメンタルを、しのぶちゃんには補填して欲しい」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「メンタルの、補填?」
天(そら)「・・・本当に、この仕事、きつくてさ」
天(そら)「どうでもいい女に愛想を振りまいて、群がってくる女に笑顔を向けて、どいつもこいつも自分が一番だと思って嫉妬かまして・・・」
天(そら)「あんな女ども、全員消えちまえばいいんだよっ!!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「そ、天君、落ち着いて!!」
天(そら)「・・・ご、ごめん。つい当たっちゃって」
天(そら)「でも、しのぶちゃんだけには、そんな事、考えていないから。しのぶちゃんと喋っている時は、落ち着いていられる」
天(そら)「それが、僕がしのぶちゃんに求婚した理由」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・そっか。天君も大変だったんだね」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「大丈夫、私が傍で支えるからね!」
天(そら)「・・・ありがとう、助かるよ」
天(そら)「素の僕を見ても、仲良くしてくれると嬉しいな」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「それは大丈夫! 私は天君の全部が好き、自信を持って言える!」
〇黒
そして、私達の結婚生活が始まった。天君はホストに行って、私は昼職をやめて専業主婦
ホスト業は夜がメインのため、必然的に私と会える時間は少なかった。それでも、最初はそんな短い時間も幸せに感じた
憧れの天君の傍に居れる幸せ、特別感、その全てが私の心を満たしてくれた
・・・しかし、そんな充足感は、次第に薄れていった
〇一人部屋
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「ね、ねぇ、そら・・・。そろそろ起きた方がいいんじゃない?」
天(そら)「・・・・・・」
天(そら)「・・・はぁ、しのぶはあんな場所に僕を行かせるんだ。はぁ・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「じゃ、じゃあ今日は休んじゃう? この前、面白い映画見つけたし、一緒に見て・・・」
天(そら)「休んだりなんかしたら、売り上げが下がるだろっ!! 何言ってんだよっ!!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・ご、ごめんなさい」
天(そら)「・・・僕こそ、ごめん。いつもごめん、本当にごめん・・・」
天(そら)「・・・身支度してくる」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「うん・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)(最後に、そらの笑顔を見たの、いつだろう・・・)
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・・・・」
〇一人部屋
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・んっ、こんな時間に、そらから?」
天「ごめん、今日はアフターで女の子を連れてくるから、ホテルに泊まってくれない? お金はテーブルに置いてあるから」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「えぇ、そんな急に言われても・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)(確かに、十分過ぎるお金はあるけど・・・)
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・・・・」
〇一人部屋
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「ね、ねぇ、そら。ちょっと、いい・・・?」
天(そら)「なに?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「そ、その、ホストを辞めて、新しい仕事を探すとか、どう・・・?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「そらが働いている姿、凄く辛そうだし、そんなそらを見ているのも、辛い・・・」
天(そら)「・・・それを支えるから結婚するって約束じゃなかった?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「え?」
天(そら)「いや、それを支えるから結婚するって約束だったじゃん。確かに辛いけど、それでも頑張ろうとしてるわけじゃん」
天(そら)「っていうか、自分は働かずに人に仕事をやめろって、自己中心的じゃない?」
天(そら)「この家の家賃はどうするの? 食費は? 今、しのぶが生活できてるのは、この仕事あっての事なんだよ、それもわからない?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「ご、ごめん、そ、そうだけど・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「で、でも、そらの笑顔を一年も見てないし、話す時間なんてほとんどないし、も、もう・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「うっ・・・」
天(そら)「・・・泣かないで欲しいんだけど。客の女の相手をするだけで手一杯なのに」
天(そら)「そんなに辛いなら、離婚でもいいよ。しのぶには、辛い想いをして欲しいわけじゃ、ないし・・・」
天(そら)「はぁ・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・・・・」
〇沖合(穴あり)
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「あ、あれ、ここは? さっきまで、部屋に・・・」
星ちゃん「あなたの幸せは、もうおしまい、おしまい」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「え、えっ・・・」
星ちゃん「ごめんね」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「え、な、なにっ・・・? えっ・・・」
〇一人部屋
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「あれ、え、え・・・?」
天(そら)「しのぶ、どうしたの?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「ご、ごめんね。なんか、立ち眩み・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・そら、ごめん。離婚、の方がいいかもしれない」
天(そら)「・・・そっか」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「でも、でも・・・、聞いて」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「私は、やっぱりそらの事が、好き・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「頑張っているそらが好き、本気なそらが好き。真剣に、ホストに向き合うそらが好き」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・でも、そらには笑って欲しい、抱きしめて欲しい、一緒にいたい。辛そうなそらを見て、一人で居るのが辛い・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・私がもっとしっかりしていれば良かったのに、ごめんなさい」
天(そら)「・・・・・・」
天(そら)「・・・僕は、しのぶの事は尊敬しているよ」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「そ、そうなの・・・?」
天(そら)「自分が無理難題を突き付けている自覚はある。結婚生活とかけ離れた事をしているとも思っている」
天(そら)「そんな僕を支えようとしてくれたしのぶは、凄いって思うし、会ってきた女性の中では一番好きだなって思う」
天(そら)「でも、僕の要求はこれからも変わらない。だから、しのぶが無理だと言うのなら、離婚が正解かなって思う」
天(そら)「僕がしのぶに甘え過ぎた。どうしても拠り所が欲しくなって、しのぶには無理をさせちゃった」
天(そら)「・・・本当にごめん、好きだったよ」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・ねぇ、今度お店に行ってもいい?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「そらが1億プレイヤーになるの、見届けてみたいな」
天(そら)「え、い、いいけど・・・」
天(そら)「しのぶは、自分を犠牲にしてお金を使うタイプだからなぁ・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「え、もちろん、そらからもらったお金で貢ぐよ?」
天(そら)「それ、意味ないじゃん!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「なんか、久々に笑ったね」
天(そら)「・・・そうだね」
天(そら)「ありがとう、しのぶ」
〇レトロ喫茶
峰木 実(みねぎ みのり)「そっか、やっぱり別れちゃったんだ・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「うん、やっぱりホストの生活に合わせるのは難しくて・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「はぁ~、疲れた~」
峰木 実(みねぎ みのり)「あ、お疲れ様!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「本当に疲れた~。私、何やってたんだろう。冷静に考えたら、凄いことしていたよね・・・」
峰木 実(みねぎ みのり)「で、でも、元気そうで良かった!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「うん! 新しい仕事も見つかったし、貯金も貯まってきたからね!」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「ま、性懲りもなくたまに天に会ってるけどね! 今度は、ただのお客さんとして」
峰木 実(みねぎ みのり)「え~、まだ会ってるの?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「友達として、って感じかな。月に1回、数万円だけ応援代として」
峰木 実(みねぎ みのり)「そっか。それぐらいなら丁度いいかもね」
峰木 実(みねぎ みのり)「どうする~? もう一回、復縁を求められたら~」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「無いかなぁ・・・。あの人、思ってた数十倍、暗いし。金があっても、なぁ・・・」
峰木 実(みねぎ みのり)「あ、そ、そうなんだ。もう、心離れてるね・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「・・・一つだけ気がかりな事があるの」
峰木 実(みねぎ みのり)「え、何?」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「別の話、昔の話なんだけど・・・。ほら、私達、いつも3人で一緒にいたでしょ?」
峰木 実(みねぎ みのり)「あ、そ、そうだった気がする・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「確か、実じゃない人が星ちゃんと仲良かった気がして・・・」
内海 しのぶ(うつみ しのぶ)「私も実も、星ちゃんに会って凄い目に遭ったからさ、その人は大丈夫かなって」
峰木 実(みねぎ みのり)「た、確かに、心配だね!」
峰木 実(みねぎ みのり)「え、えっと、うん、えっと・・・」
〇黒
「実「・・・誰だっけ」」
やはりホストである彼との生活は、そう上手くいきませんでしたか……。😔
それでも破滅とまでは言い切れないのが、せめてもの救いですね。
しかし、しのぶちゃんも実ちゃんも仲良くしていた筈の早弥ちゃんの事を忘れている……?🤨
これまた波乱の予感。