ハレの惡左府

山本律磨

Ⅸ(脚本)

ハレの惡左府

山本律磨

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〇城の会議室
  六波羅 平清盛邸
清盛「そん時俺は言ってやったんだよ、 神の輿がナンボのもんじゃ~ってなァ!」
武者丸「・・・」
清盛「・・・」
清盛「お、おう。お前も突っ立ってねえで、 こっちに来て一緒に飲まねえかい?」
武者丸「お気遣いなく」
清盛「・・・あっそう」
清盛「で、不埒な売僧どもに弓をつがえ 日吉山王なにするものぞと・・・」
武者丸「・・・」
「お気になさらず」
清盛「気になるわい!」
清盛「お前の護衛、殺気がエグイんだよ」
清盛「酒が不味くなる。下がらせてくれ」
左府「外で待っておれ」
武者丸「・・・はっ」
左府「相変わらずの破天荒よ。 爽快半分、呆れ半分だ」
清盛「破天荒ならお前も負けてはいまい」

〇祈祷場
  『俺がくれてやった鬼の装束』
  『随分と役立ってるみてえじゃねえか』

〇城の会議室
左府「まあ、真の己を隠すには丁度よい代物だ」
清盛「真の己たァどっちだい?」
清盛「ケの頼長か?ハレの惡左府か?」
左府「今はどちらと話したい?」
清盛「ところで、頼長殿」
左府「・・・」
清盛「王者議定(おうじゃぎじょう)の面子。 そろそろ決めといた方がいい」
清盛「俺も根回しに動きたいんだ」
左府「女院殿は如何お考えであろう?」
清盛「雅仁皇子擁立で間違いあるめえ」
左府「全く、あの御仁は。 『どちらでもよい』とは言ってくれぬか」
左府「我が子が今わの際というに、 既に次の勝ち馬に乗ろうとは。 どこまでも浅ましい妾よ」
  『ま、待たれよ!各々がた!』
  『今は左大臣様と会談中である!』
左府「如何した武者丸!」
義朝「御免仕る」
武者丸「も、申し訳ございません。 流石に太刀持て追い払うわけにもいかず」
義朝「追い払うとは無礼であろう」
義朝「口のきき方までは調教しておらぬか? 左府殿・・・」
左府「清盛!これはどういうことだ!」
清盛「遅かったな義朝」
清盛「いやなァ、こいつもお前に 話があるって言うもんだからさ」
義朝「左府殿、これを御覧じろ!」
左府「なんだそれは?」
義朝「愛宕山の権現に打ち付けられていた。 陰陽師の見立てによれば、 幼き帝を呪い殺すためのものだ」
左府「それが如何した。 おぞましいものを見せるでない」
寵「しらばっくれるな!」
寵「帝と女院様の政を終わらせ、 摂関家の世を築かんとする うぬの邪望もこれまでぞ!」
左府「邪望とは世迷言を・・・」
清盛「さてと、こっからは 白面武者と検非違使別当の詮議だぜ」
清盛「帝の病 呪詛の人形(ひとがた) 女院様への悪口(あっこう)」
義朝「ハレの衆などとのたまっておるが。 所詮は体よく使える非人。 調伏に用いる式神も同じではないか」
義朝「貴様が呪詛を命じたのであろう!」
清盛「さあ、どう申し開く? 惡左府よ」
左府「謀ったか清盛!」
武者丸「左府様!」
義朝「おのれ・・・小賢しき獣め」
武者丸「お逃げ下さい!ここは私が・・・」
左府「差し出がましい!」
武者丸「さ、されど・・・」
左府「相手は志も大儀も持たぬ女院の犬ぞ」
義朝「おのれ・・・」
清盛「言ってくれるぜ・・・」
左府「我は天地神明に誓い一片の疚しさもない!」
左府「いかに女院の傀儡とはいえ、 畏れ多くも帝を調伏するなどあろうか!」
左府「鎌足、不比等公より続く皇の神官、 氏長者頼長を見誤るでない!」
左府「来い穢れ武者ども! 我を陥れるは天に仇なすと覚悟せよ!」
清盛「どうだ義朝。これが藤原頼長」
清盛「気骨の漢だろ?」
義朝「・・・」
義朝「うむ。得心した」
左府「・・・何だと?」
義朝「如何にもこれは私が作った紛い物の呪物」
義朝「されど貴方様を 陥れるためのものではございません」
義朝「新たなる世の到来にあって 左府様が我ら武士を従える器か否か、 見定めさせて頂きました」
義朝「ご無礼、平に御容赦」
左府「賢しや」
清盛「ははは。そう言ってくれるな」
清盛「今の帝は放っておいてもじきおっ死ぬ。 次は雅仁様の世だ」
義朝「女院にものなど言わせぬ。 皇子は我ら若い力でお支えする」
清盛「文武を越えた若き力の旗頭。 左府なら申し分あるめえ」
義朝「確かに。その器見定めました」
義朝「源氏一党。 これより左府様に忠誠を誓います」
左府「・・・当り前だ」
義朝「は?」
左府「もとより源氏は藤原の守護。 引き続き勤めよや」
義朝「・・・ははっ」
義朝「しかれども調伏の噂はまことにて、 女院殿の耳にも届いております。 貴方様への疑いの目も日に日に増しており」
左府「妾の戯言に気を煩わせるが 検非違使の仕事か?」
義朝「申し訳ありませぬ」
清盛「大体、呪詛なんて まどろっこしい上に足のつく様な真似、 こいつがするわけねえさ」
清盛「暗殺ならもっと迅速にかつ確実に・・・」
左府「人聞きの悪いことを言うな。高平太」
左府「・・・」
左府「いたのか」
  CONTINUED

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