Ⅵ(脚本)
〇華やかな広場
親王雅仁の舘
庭園
トンボ「あいや!あいやーッ!」
左府「・・・」
雅仁皇子「遊びをせんとや生まれけむ」
雅仁皇子「戯れせんとや生まれけん」
雅仁皇子「遊ぶこどもの声きけば」
雅仁皇子「我が身さえこそ動がるれ」
皇太子 雅仁親王
〇華やかな広場
雅仁皇子「相変わらず奇異な宴を催すな、左府」
左府「殿下が囃したてる 乱知己騒ぎ程ではございませぬ」
雅仁皇子「あの見事な踊り手、名は?」
左府「武者丸と申します。 お気に召しますれば後ほど」
雅仁皇子「汝(なれ)と一緒にするなよ」
雅仁皇子「なあ、氏長者ならば、 そろそろ真っ当に果たさねばならん 役目もあるんだろう?」
雅仁皇子「難儀なことだな」
左府「殿下が背負う天命に比べれば、 何ほどにございましょう」
雅仁皇子「天命か・・・」
雅仁皇子「帝のお命・・・危ういのか?」
左府「・・・」
左府「ささ、もう一献」
雅仁皇子「夜伽を薦めるは酒を飲ますは、 そんなに俺を骨抜きにしてくれるなよ」
雅仁皇子「・・・」
雅仁皇子「兄君はどうお考えであろうな・・・」
左府「畏れながら何も考えてはおりますまい」
〇屋敷の書斎
『顕仁皇子は既に引き籠りの世捨て人』
『臣下も取るに足らぬ者ばかり』
〇華やかな広場
雅仁皇子「奇遇だな。俺も同じよ」
雅仁皇子「お前達貴族に侮られ続け、 若くして世捨て人が心持ちだ」
左府「お戯れを」
雅仁皇子「戯れせんとや生まれけむ」
雅仁皇子「な、何ごとだ!」
『悪鬼征伐!物の怪退散!』
蘭陵王「やあやあ皇子様を惑わす非人ども。 この軍神蘭陵王が征伐してくれん」
蘭陵王「かかれい!」
白面武者「オオーーッ!」
ミズチ「痛って~」
白面武者「オオーーッ!」
ムジナ「何だよコイツら~」
雅仁皇子「あれは白面の武者団」
左府「清盛か!」
清盛「よう、惡左府」
左府「卑しき無頼漢めが! 皇子の宴である、下がりおろう!」
雅仁皇子「いいぞいいぞ!よく参った!」
雅仁皇子「非人の舞と武者の舞、 これほどのハレがあろうか!」
左府「殿下・・・」
清盛「武者丸と言ったか?」
清盛「まことの武者の力、 味わわせてやろう」
武者丸「王家の犬が何ほどぞ!」
清盛「いざ!」
武者丸「ヤアーーーッ!」
左府「おのれ・・・なんと醜い舞か。 私のハレを滅茶苦茶にしおって」
雅仁皇子「いや、これこそが俺のハレだ」
雅仁皇子「せめぎ合え!求め合え! ぐちゃぐちゃに混ざり合え!」
雅仁皇子「あはははは!あはははは!」
左府「つくづく解せぬお方よ」
「申し訳ございませぬ」
「養育者として情けなき限りです」
左府「全くだ。しかとお導き奉らんことを」
左府「信西殿」
信西「・・・」
『舞え舞え蝸牛』
『舞わぬものならば』
『馬の子や牛の子に蹴させてん』
雅仁皇子「あはははは!あはははは!あはははは!」
CONTINUED