Ⅴ(脚本)
〇荒野
風葬地 烏辺野
早暁
「何をしている?」
トンボ「チッ、邪魔すんなよ。 見りゃ分かるだろう?」
トンボ「仮装の非人がモノ漁り。 係ると穢れるぞ」
武者丸「案ずるな。既に手遅れだ」
トンボ「む、武者丸様!」
武者丸「髪まで引っこ抜いて鬘にする気か? 堕ちたものだな」
トンボ「・・・」
〇古びた神社
鬼丸「な、な、な、なんじゃこりゃーーー!」
マシラ「一日の始まりは 一番精のつくものを食せ。 左府様の思し召しだ」
左府「遠慮はいらぬ。 むしろ率先して食え。 そして勤めよや」
鬼丸「ありがとう!ありがとう! 左府さん、あんた最高だ!」
鬼丸「っただっきまあああす!」
武者丸「どけい!」
鬼丸「いやあああああん!」
左府「如何した?」
武者丸「トンボを発見致しました」
左府「・・・」
ムジナ「トンボ!一体どこに隠れてたんだよ?」
ミズチ「とにかく無事でよかったぜ!」
左府「何故連れ戻ってきた?」
武者丸「余りにも穢れに塗れておりましたゆえ」
左府「左様か。ではなおのこと・・・」
左府「疾く、捨ててこい」
トンボ「・・・」
武者丸「お、お願いがございます」
左府「ならぬ」
武者丸「今一度、トンボに機会を・・・」
左府「ならぬ!」
左府「お前はいつから 私にものを申せるようになった?」
左府「弁えよ!」
武者丸「・・・」
鬼丸「お、おい!」
マシラ「口を挟むな!」
鬼丸「・・・」
左府「足を痛め踊れぬようになった非人は ただの獣。 ハレの場に獣が勤める役目はない」
左府「何処なりとも消えよ」
トンボ「・・・踊ります」
武者丸「トンボ」
トンボ「ご覧ください!踊れまする!」
左府「宙がえりをせよ。昔のように」
武者丸「左府様!それは余りにも・・・」
左府「ハレの踊りは戯れ事ではない!」
左府「日ノ本繁栄を祈り命を賭して踊る! それがお前達の勤めだ!」
トンボ「うおおおーーーーッ!」
左府「・・・」
トンボ「・・・」
左府「見事」
左府「帰参を許す。勤めよや」
トンボ「あ、有難うございます!」
ムジナ「やったねトンボ!」
ミズチ「また一緒に暴れようぜ!」
マシラ「さあ、ハレの衆筆頭のご帰還だぞ!」
マシラ「踊れや踊れーーーー!」
鬼丸「こ、これがハレの衆・・・」
鬼丸「命懸けの・・・踊り」
武者丸「食ってる場合か」
CONTINUED