5月2日 穴(脚本)
〇中規模マンション
〇マンションの共用廊下
ある朝、インターフォンの隣に、穴が空いているのに気づきました。画鋲を打った跡くらいの小さな黒い点です
妹「いつの間についたんだろう?」
妹「って、今は学校、学校!」
〇ハイテクな学校
〇ハイテクな学校
〇マンションの共用廊下
家に帰ると、兄が玄関先で苦し気な表情を浮かべています
理由はすぐに分かりました。穴が大きく広がったのです。小さな黒い点は、野球ボールくらいのまん丸の穴になってます
( ´∀`)「一体、いつの間にこんな穴が」
真っ黒で、まん丸。黒く塗ったみたいに見える穴。コンクリートに、こんな綺麗に穴を開けられるのでしょうか?
( ´∀`)「大家に見つかる前に、犯人を見つけてやる。そして弁償させてやる」
妹「やっぱり、お化けが犯人とか思わないんだ」
兄は、まずは穴の状態を確認しようと、穴に顔を近づけます
すると、穴の中からのそりと、掌ほどもある蜘蛛が姿を現しました。茶色い、毛むくじゃらの、タランチュラのような体躯の大グモが
( ´∀`)「ぎゃー!!」
世にも汚い叫び声をあげ、兄は家の中に逃げました。蜘蛛もまた、驚いたのか穴の中に戻ってゆきました
妹「仕方ない。私が確認するか」
家から持ち出した大きめの懐中電灯で、中を照らしても、何も見えません。ただただ黒が続くばかり
妹「もう少し良く見たいけど、穴から白い手が伸びて中に引きずり込まれても嫌だしなぁ」
私が警戒して、手もこまねいていると
力強く扉が開き、兄が戻ってきました。悪辣な勝利を狙う顔で、手には茶色い大きな紙袋を下げています
妹「何するつもり?」
( ´∀`)「駆逐してやる! 一匹残らず!」
復讐に燃える戦士のようなことをのたまって、兄は紙袋から大量の燻煙式殺虫剤を取り出します
妹「まさか!」
兄はそれを次々と穴へ投入して、そのまま分厚い板で蓋をしました
板の隙間からは白い煙が溢れ出します
( ´∀`)「決して逃がすものか。ここが貴様らの墓場だ。ハーハッハッハッハー!」
妹「それヴィランのセリフだけど?!」
妹「いや、やってること的にいいのかな? じゃなくてコンプラ的にアウトだよ!」
ドンドンドン! 激しく壁を打ち付ける音が響きわたります
妹「もう犯行がバレた?」
が、人の気配はありません
( ´∀`)「うおぉぉー! なんていう力で抵抗しやがる!」
妹「あ、そっちか」
どうやら、お化けは殺虫剤が嫌いで、板で脱出を防げるみたいです
( ´∀`)「来るな! 来るんじゃねえ! うわあー!」
妹「追い詰められたヴィランかな?」
妹「まあ、私としても壁の中の何かにコンニチハされても困るし、手伝うべきかな」
「火事だー!」
下の階から叫び声が上がり、外へ目を向けると、白い煙がもくもくと上がっています。兄の燻煙式殺虫剤の煙です
妹「お兄ちゃん」
( ´∀`)「は、早く手伝ってくれ!」
妹「私、避難するから! 決してそこを開けないでね!」
( ´∀`)「ちょっと待て!!」
兄の声に振りかえることなく、私は階下へ下るのでした
( ´∀`)「俺を置いてくなー!」
〇中規模マンション
その後、大量の燻煙式殺虫剤の缶がエレベーターの前に落ちているのが発見され、ただのいたずらとして片付けられました
〇マンションの共用廊下
家に戻ると、兄は穴を塞いだまま立ち往生、もとい気を失ってました
既に中から叩く音はしません
おそるおそる、板をずらしてみると、穴はなくなって元の壁に戻ってました
妹「お化けって、なんでもありだなぁ」