事故物件サバイブ ~心霊現象総スルーな兄が最強すぎる、致死率150%呪いのロンダリング・バイト~

資源三世

4月28日 パッチワーク #シナリオ(脚本)

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〇中規模マンション

〇女性の部屋
  不快な眠りに落ちていました
  熱のない泥へ沈み込む、そんな重苦しい感覚。早く目覚めたいと思っても、身体はいうことを聞かず、深く深く落ちていました

〇黒
「ひとつとひとつを繋いで、新しいひとつの出来上がり」
  上下の間隔もない暗闇の中、陽気な歌が聞こえてきます
  そこへ引き寄せられる不快な落下感と共に、歌声ははっきりしてきます
  焦点の合わないレンズで見たようにぼんやりと、一人の少女が刺繍をしているのが見えてきました
  その子はぺたんと座って、足元には色とりどりの布が散乱しています。それらを一つとっては、手元をもぞもぞと動かします
女の子「私は何をしているでしょうか?」
妹「お、お裁縫?」
  手の動きからして縫い物で間違いないと思ったのですが、その子は唇を尖らせ、ぶぶー! と、ハズレを示します
女の子「これはね、パッチワーク」
  そう言って、彼女はこちらに手元の布を差し出します

〇血しぶき
  視界は急にクリアになって
  青や緑、赤茶や黒、様々な色に変色した死体の皮を継ぎ合わせたパッチワークが露になりました
妹「うぷっ」
  中身のなくなった顔が、手が、足が、無造作に縫い合わされています
  それはひどく生々しくリアルで、夢の中でするはずのない、ツンとする腐敗臭が鼻孔から肺まで侵しました
女の子「たくさんの死体を繋ぎ合わせたパッチワーク」
女の子「色とりどりの感情が繋ぎ合わさって、見たことの無い綺麗な、綺麗な、悪夢が出来上がるの」
  彼女の足元に転がっているのも、色とりどりの布束などではなく、人の死体でした
妹(体が、動かない?!)
  今までで最大の危機感を感じ、すぐ逃げ出そうとしますが、指一本動かせません
女の子「怖がらなくていいよ。私はただの紡ぎ手だもの」
妹「紡ぎ手?」
女の子「うん! 私はパッチワークを作るの。これを見るとね、みんな安心できるから」
妹「安心? 死体で? 何を言ってるかよくわからないけど、危害を加える気はない?」
女の子「うん」
  軽やかな返事がきます。もしかしなくても意志疎通ができてる?
  もしそうなら。恐怖の中に、一筋の光明が走ります
妹「なら、少しお話してもいい?」
女の子「いいよ」
  話が通じるなら、なぜ人を殺すのか理由を聞きだし、そこから解決に至ります。昔話だと大体そんな感じです
妹「その死体はここで死んだ人たち?」
女の子「そうだよ。溺死に圧死、服毒死。切り刻まれ、すり潰され。死体はみんな、色とりどりの死に様で、二つとない最期を象るの」
妹(陽気におぞましいことを言うな。さっそく心折れそう)
妹「なんでそんなに死体を集めるの?」
女の子「みんなが安心したいからだよ」
妹「死体があったら不安だと思うけど」
女の子「煌びやかな宝船、船底に敷き詰められたのは死体のパッチワーク。あぁ、私達の絢爛は、地獄と共にある」
女の子「これは輝くだけの絢爛なんて、幻じゃあない。だから私達はここにいていいんだ」
  その子は恍惚とした表情で、おぞましいことを口にします
妹(この感じ。言葉は通じても、意思の疎通は出来ない。私はこれを知ってる)
妹(お兄ちゃんと同じだ。人の話を聞かないというか、考え方が根っこから違うんだ)
  悪意は無い、殺意もない。でも苦痛も恐怖も分かってもらえない。言葉は通じるのに、意思の疎通が出来ない
  まるで未開の文明と相対したかのような、あるいは感性の枯れた未来と遭遇したような。そんな気分です
女の子「でもね、あなた達がなかなか死なないから、みんな不安になっちゃった」
  スカートの裾を引かれました
  人形は震えながら、私をここから離そうと引っ張っています
  私の体は人形に引かれるに任せ、そこから離れてゆきました
女の子「素敵な、素敵な死体のパッチワーク。今日もみんなの安寧を紡ぐよ」
「あなたは何色で地獄を彩るの?」

次のエピソード:4月29日 田中さん(?) VS 排水溝

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