二つの鍵と対ワンちゃん

たくひあい

prologue(脚本)

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〇城の廊下
  許さない。
  許したりなんかしない。
  
  そう聞こえたなら彼奴らが勝手に言ってるだけ。
??「そういえば、こんな話を知ってる?」
  ある日。
  その声は言った。
  明治天皇はある日を境に
  別人に入れ替わっている。
  途中から性格や特技、体格や利き手までもが異なっており、別人のようだった
  明治天皇は日本の第122代天皇。
  在位期間は1867年2月13日から1912年7月30日。
??「あぁ、その前に明治天皇は知っているかな?」
夏々都「表面上は」
  ――――そこで、ようやく、ぼくは声を絞り出す。
  明治天皇は、明治維新において重要な役割を果たし、大政奉還の上奏を勅許したことでも知られている・・・・・・のだけど、
  実は『中の人物が途中ですり替わっている』ことが昭和4年、
  土佐藩出身の田中光顕によって暴露、あるいは提唱されたと言われている。
  これが、明治天皇すり替え説と呼ばれるもので、
  つまり、それくらいの時期からまことしやかに、あるいは真実的にささやかれ続けてきた話らしい。
??「田中氏は、明治天皇が後醍醐天皇第11番目の皇子・満良親王の子孫であり、」
??「長州を治めた毛利氏によって守られていた人物だと主張しているらしいよね」
  その説は知っている。
  けど──
  いや、そもそもどうして、ぼくが『彼』とこんな話をしているのだろうか。
  ──声は、笑う。
  辺りを振り向く。

〇地下実験室
  真っ暗な部屋。モニターが並んでいる。
  ぼくを隔離しておく為の、不気味な空間。
  何日目かの朝を此処で迎えたぼくは、何処からかスピーカー越しに聞こえるそれを聞きながら、
  モニターに流れてくるぼくのデータの数々の流出をぼんやりと見ていた。
  別に常に観たい訳では無いのだが、
  「ねぇ、見た? 見た?」と
  彼の方から嬉しそうに、知らないアニメや漫画を流し続けては、嫌でも視界に入るように永遠に声を掛けてくる。
「アビスとか、ワンピとか、見た? 見てくれた? おすすめは 明日だなぁ。明日のナージャ」
  まるで、楽しいエンターテインメントと言わんばかりに。
  まるで使い捨てライターの所持数を自慢するかのように。
  何故、彼が勧めてくるのか、ぼくが受け取らなくちゃいけないのか。
  話を理解することに彼が何の意味を込めているのか。ぼくに何を理解させたいのか。
  そう言ったところで彼の話は突然、かつての天皇の時代にさかのぼってしまった。
夏々都「──それで?」
  遡ってしまって、気付いてしまった事がある。
  目の前の、それの意味。
  その推測が、じわじわと、組上がっていく。
  幼少の頃、見覚えのある風景がいくつか紛れ込んでいる事実。
  いや、
  そもそも、此処に並んでいるすべてのモニターが、個人情報の大規模な流出を現している。
  さらに終わっているのは今流れてる映像は虐待日記と呼んでいるぼくの断片だという事。
夏々都「なぜ今、そんな話をした。ぼくをどうするつもりなんだ?」
  詳細は言わないが、オブラートにすら包まず堂々公開されていた。
  まるで作品の一部であるかのように。
夏々都「こんなことばっかりして」
  複数のモニターに多くのアバターが居て、それらは各々の世界観で魔法少女だったり、戦隊ヒーローだったり、
  SFだったり、ミステリーだったり、多様な姿をして──それなのに喋る言葉は同じ。
  此方を指さしている。
夏々都「気持ち悪い」
  普通、こんなものが全国放送されるなんてどう考えても倫理規定に反している。
  あっちが表側だとすれば、ここは世界の裏側。
夏々都「空気清浄機じゃねぇんだぞ」
  やれやれ、とドラマの俳優のように呆れてみた。
  存在の透明化も問題だけれど、存在の空気清浄機化も問題過ぎる。
夏々都「ガバガバな理論で、また論破でもするつもりか」
「君はね」
  と。
  彼は笑った。
「後見人が君になるための学習材料なんだよ」
  あちこちから、さらに笑い声。
  何処に居るのか、何処にでもいるのだろう。
「だからここに居て貰う。そして俺は君を見張っている。田中君って訳だ」
  後見人というのは、事情があったり、病気や傷害、死去などで本人の代わりに権利を相続したり代行する人だ。
  重度の精神疾患や知的障がいなど、意思疎通の難しいケースにも適用することがある。
夏々都「なぜそんなことを──」
  ぼくを見張ることに、総力を挙げている彼らは、笑う。
??「察しの悪い王だな。要するに君は、後見人が君になるための学習材料なんだよ。だからここに居て貰う。一生、無給でな」
夏々都「労基にすら駆け込めないのか・・・・」
??「陰謀論だと思うかい?」
  わからない。
??「そういえば、DAIGOが出て来たのもあの頃だったよね」
??「ほら、某探偵漫画が急に雰囲気が変わり出した頃だ。 あれも後見人計画の一部というのはどうだろう?」
  わからない。
??「まだ、信じられないかい」
??「駄目押しとばかりに、同じ名前のメンタリスト、第五人格、何処かのCMには千鳥の大悟がよく出ているだろう?」
??「全部あの時期から・・・・・・そう、君達が動き出した時期から──」

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