イケメン文化0世界でプロデューサー令嬢、推し参る!

咲良綾

第04話 お兄ちゃんがいる!(脚本)

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咲良綾

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〇西洋風の部屋
シェリアータ「この絵は、何ですか?」
ミレーヌ「妖精の絵です」
ミレーヌ「私の出身国シェランダには、物には妖精が宿るという伝説があります」
ミレーヌ「そしてこのプリスキラ王国ほど、男性の逞しい容姿に傾倒していません」
シェリアータ「何がきっかけで、この絵を描いたんですか?」
ミレーヌ「私が娘の時分、妖精の姿を想像して絵にすることが流行りました」
ミレーヌ「その画集が出版されることになり、私が担当したのが砂糖の妖精、シュクレです」
シェリアータ「砂糖の妖精・・・」
ミレーヌ「それがきっかけで、菓子職人として修行に来ていた夫と知り合いました」
シェリアータ「だから、お店に絵を飾ってあるんですね」
ミレーヌ「はい。思い出の絵です」
ミレーヌ「でもシンプルに」
ミレーヌ「シュクレが好みなんですよ!」
ミレーヌ「美しくて高飛車で人間なんか見下してるのに甘いものを喜ぶ姿に愉悦を感じひねくれた執着さえ抱きながら恵みをもたらす神!!」
ミレーヌ「こんなバサバサのまつ毛、男にはありえない?うるさい、これがいいんだよ!!」
シェリアータ「同意!」
ミレーヌ「そこへ現れたこのお方・・・」
シェリアータ「お兄様ですね」
ミレーヌ「細く長い手足、透明感のある肌、銀に輝く髪、華やかなアメジストの瞳」
ミレーヌ「あまりにも思い描いていたシュクレで・・・」
シェリアータ「私も震えました。ミレーヌさんの絵」
シェリアータ「お兄様に近しい見た目の存在を、これほど気高く描いてくださる方がいるなんて」
ミレーヌ「・・・実はこの絵は何度か、お客様にクレームをいただいたのです」
ミレーヌ「気持ちが悪いと」
シェリアータ「そんな!」
ミレーヌ「でも取り下げるわけにはいきませんでした」
ミレーヌ「思い出だから、好きだからというだけではなく」
ミレーヌ「クレームを認めれば、ロシュの外見をバカにする奴らも認めてしまう気がして」
ロシュオル「ばあちゃん・・・」
ミレーヌ「ここに飾った絵を褒めてくださったのは、身内以外ではあなたが初めてです」
シェリアータ「・・・やっぱり間違ってる」
ミレーヌ「え?」
シェリアータ「この絵が評価されないなんて、間違ってます」
ミレーヌ「!」
シェリアータ「きっと流されているだけで、イケメンの良さに気づいていない人たちがいる」
ミレーヌ「イケメン?」
シェリアータ「見た目が美しい男のことです」
シェリアータ「そして、イケメンたちも、自分の良さに気づいていない」
ロシュオル「・・・」
シェリアータ「この世界の価値観を変えましょう!」
ミレーヌ「・・・」
ミレーヌ「私にできることがあれば、なんなりと」
シェリアータ「ミレーヌさん、ありがとうございます」
シェリアータ「ご協力はぜひいただきたいのですが、考えがまとまるまで少し時間をください」
ミレーヌ「はい」

〇ヨーロッパの街並み
ロシュオル「・・・シェリアータ」
ロシュオル「俺は改めて、君に協力したいと思った」
ロシュオル「俺にできることはなんでもする」
シェリアータ「ありがとう」
ロシュオル「でも、レノは繊細だから・・・」
シェリアータ「ええ」
ロシュオル「俺が言う必要はないだろうが」
ロシュオル「大事にしてやってくれ」
シェリアータ「もちろんよ」

〇ホテルのエントランス
シェリアータ「・・・」
  伝承と合致する、他にはない容姿。
  素材として、お兄様は完璧すぎる。
  私はアートデュエルで勝たなければならない
  でも、お兄様・・・
  私の大事な、お兄様
シェリアータ「・・・」
  ・・・お兄ちゃん。

〇研究施設のオフィス
世李(せり)「う・・・眠い・・・」
世李(せり)「ゲームのデバッグ、根気がいるとはわかってたけど」
太一(たいち)「お疲れ様」
太一(たいち)「キャンディ、いる?」
世李(せり)「あっ、お兄ちゃん」
太一(たいち)「しーっ」
太一(たいち)「誰かに聞かれると、ややこしいから」
世李(せり)「へへ」
世李(せり)「まさかバイト先の社員さんが義理の兄だなんてね」
太一(たいち)「僕のこと、憎くはないの?」
世李(せり)「なんで? お母さんを取った人の息子だから?」
太一(たいち)「うん」
世李(せり)「お兄・・・太一さんは、悪くないもん」
世李(せり)「どちらかというと、捨てられるような子だった私が悪いんだよ」
太一(たいち)「悪くない。 せりちゃんは、絶対に悪くない」
世李(せり)「なんで断言できるの」
太一(たいち)「子どもがとらなきゃいけない責任なんてないんだよ」
太一(たいち)「君を守れなかったなら、それは大人の責任だよ」
太一(たいち)「それに見てたらわかる。君はいい子だ」
世李(せり)「・・・ちょっとキュンとしたじゃん。 私、イケメン以外興味ないのに」
太一(たいち)「はは、僕彼女いるよ」
世李(せり)「えーっ、速攻振るじゃん!」
太一(たいち)「あははは」
世李(せり)「太一さんが本当に血の繋がったお兄ちゃんなら良かったのに」
太一(たいち)「・・・」
太一(たいち)「仕事頑張ったら、社食で何か奢ってあげるよ」
世李(せり)「チョコレートパフェ!」
太一(たいち)「よし、頑張れ」

〇会議室のドア
世李(せり)「お兄ちゃん!」
太一(たいち)「あ、せりちゃん」
世李(せり)「大丈夫、誰も聞いてないよ」
世李(せり)「今度、退魔王子の舞台配信があるの」
世李(せり)「お兄ちゃんの家かカラオケで、二人で観ない?」
太一(たいち)「あ、うーん。女の子と二人きりは・・・」
世李(せり)「私は妹だよ?」
太一(たいち)「うん、せりちゃんは大事な妹だよ」
太一(たいち)「でも、血は繋がってないし、戸籍の繋がりもないから」
太一(たいち)「ごめんね。彼女を不安にさせたくないんだ」
世李(せり)「・・・そっか。 彼女さん、大事にしてもらって幸せだね」
  血が繋がってたら、良かったのに。
  お母さんが、私も連れて行ってくれれば良かったのに。
  ・・・お兄ちゃん。
  いつもそばにいてくれる、
  本当のお兄ちゃんが欲しかったよ・・・

〇黒背景
「シェリ!」

〇ホテルのエントランス
レノフォード「こんなところでうたた寝してたら、風邪引くよ」
シェリアータ「お兄・・・様」
レノフォード「どうしたの?」
シェリアータ「ギュッてして」
レノフォード「怖い夢でも見た?」
シェリアータ「ううん。 私、お兄様がいて幸せだなって」
レノフォード「シェリ・・・」
レノフォード「僕もシェリが妹で幸せだよ」
シェリアータ「お兄様」
シェリアータ「みんなにお兄様の良さを認めて欲しい」
シェリアータ「お兄様は絶対に素敵なの」
シェリアータ「でも、私、」
シェリアータ「お兄様に、つらい思いはさせたくない」
レノフォード「ねえ、シェリ」
レノフォード「僕はシェリがやりたいこと、 なんとなくわかるよ」
レノフォード「シェリのためなら、なんでもやるよ」
シェリアータ「違う、私のためじゃない」
レノフォード「わかってる。 僕のために考えてくれてるんだよね」
レノフォード「でも、僕が頑張ったら、シェリは喜んでくれるんでしょう?」
シェリアータ「・・・うん」
レノフォード「僕はシェリを信じるよ」
シェリアータ「お兄様・・・!」
シェリアータ「・・・」
シェリアータ「お兄様」
シェリアータ「私の、」
シェリアータ「アートデュエラーになってください!」
レノフォード「わかった」

〇豪華な客間
  あの男・・・

〇黒背景
  明るい髪、整った顔。どこか似てる。
  最輝(もてる)に。
  物腰は柔らかく、気遣いも細やか。

〇豪華な客間
  でも、中身は・・・

〇休憩スペース
瑠妃(るき)「あまり、仕事以外で近寄らないでください」
最輝(もてる)「どうして?」
瑠妃(るき)「あんな記事が出て・・・ 最輝さんも困るでしょう」
最輝(もてる)「これのこと?」
瑠妃(るき)「うっ、見せないで」
最輝(もてる)「そんなに悪い記事じゃないよ」
瑠妃(るき)「でも私は困ります。恋人もいるし」
最輝(もてる)「夢を売るのも俺たちの仕事だよ」
最輝(もてる)「君の恋人を見て、ファンは憧れると思う?」
最輝(もてる)「・・・俺たち、記事の通りになろうよ」
瑠妃(るき)「嫌です。お断りします」
最輝(もてる)「軽い気持ちじゃない。 俺は本気だよ」
最輝(もてる)「君の事務所にも話は通してある」
瑠妃(るき)「!」
最輝(もてる)「人気モデルのビッグカップル。 話題性は充分だ」
瑠妃(るき)「まさか、あの記事は・・・」
最輝(もてる)「公認なんだよ、俺たちは」
  事務所の、差し金?

〇黒背景
  絶対的自信を背景に、羨望と名声を求め、
  私の意思を無視する美しい男。
  寒気がする。

〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
太一(たいち)「るきちゃん、早かったね」
瑠妃(るき)「何してたの?」
太一(たいち)「会社の子に貸してもらったブルーレイ観てたんだ」
瑠妃(るき)「『退魔王子』・・・? 女性向けじゃないの?」
太一(たいち)「女性に人気だけど、 女性向けってわけじゃないよ」
太一(たいち)「観てみたら、ストーリーが重厚で面白くて」
瑠妃(るき)「貸してくれたのは、女性・・・?」
太一(たいち)「う、うん。でもるきちゃんが心配するようなことは何もないよ」
瑠妃(るき)「出演者、イケメンばっかり」
太一(たいち)「そ、そうだね」
瑠妃(るき)「太一くんに、プライドはないの?」
太一(たいち)「え?」

〇黒背景
最輝(もてる)「君の恋人を見て、ファンは憧れると思う?」

〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
瑠妃(るき)「イケメンコンテンツなんか楽しんでるけど」
瑠妃(るき)「自分がもうちょっとおしゃれしたりさ、努力しようと思わないの?」
  違う
  こんなこと言いたいんじゃない
  『お兄ちゃん!退魔王子見てくれた?』
瑠妃(るき)「『お兄ちゃん』?」
瑠妃(るき)「太一くん、妹とかいないよね」
太一(たいち)「あ、いや・・・」
瑠妃(るき)「会社の子に呼ばせてるの?」
太一(たいち)「違うよ、会社の子だけど、妹で」
瑠妃(るき)「支離滅裂すぎ。 言い訳ならもっとうまくやって」
太一(たいち)「本当なんだよ。説明するから」
瑠妃(るき)「私なんて、めんどくさいもんね。 隣にいると比べて色々言われるし」
太一(たいち)「るきちゃん、落ち着いて」
瑠妃(るき)「やだ!気持ち悪い!もう帰る!」
太一(たいち)「るきちゃん!」

〇豪華な客間
  あの時は思ってもいなかった。
  あのまま、太一くんに会えなくなるなんて。
  最輝のせいで・・・
ルディア「イケメンのせいで!」

次のエピソード:第05話 キャラが具現化している!

コメント

  • 期間が大分空いてしまいましたが、続きを拝見させていただきました。

    安定のおもしろさですね〜✨前世・現世とも兄妹のやり取りがエモく、瑠妃・太一のすれ違いが切なく…太一お兄ちゃん、ちゃんと「彼女を不安にさせたくない」って気にしてたのに😨
    数日かかると思いますが、最終話まで一気に楽しみながら読みたいと思ってます😊

  • 週刊誌で既成事実を作るなんてとんだクソ野郎ですね。
    そして優しい彼ゆえにすれ違いが辛い。
    この前世ならイケメンを怨むのもしょうがないか…

  • 繫がってしまった…!
    太一さん、優しくていい人そう。実はモテるタイプでしたね。

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