8 無法地帯(脚本)
〇教室
休み明け。
小泉彩花「お早う誠一」
久我誠一「あぁ、お早う」
久我誠一「・・・・・・」
小泉彩花「ちょっと誠一!本当大丈夫?」
久我誠一「あぁ、これでもちゃんと寝たから・・・」
小泉彩花「それは分かったけど、あいつ等の言う事気にする事無いよ!ほら!行き過ぎた正義は人を傷付けるって言うし!」
久我誠一「そうだよな・・・隼人も同じ事言ってた・・・」
小泉彩花「あ・・・」
久我誠一「でも御免・・・何時までも引きずってたら駄目だよな。俺どうも疲れてた見たいだ」
小泉彩花「そうだよ!何事も程々で良いんだよ!」
久我誠一「有難う・・・」
渡辺一樹「二人共お早う!ゲームは何処まで進んだ?」
小泉彩花「お早う渡辺君。昨日は二人目倒して切り上げたよ」
渡辺一樹「そうなんだ。何だかんだ順長だね。僕は今日三人目に挑むよ。ハーキンさえ倒せば、いよいよ折り返し!ハデスは僕が最初に」
渡辺一樹「倒すんだ!」
久我誠一「渡辺、お前楽しそうだな」
渡辺一樹「当たり前じゃん!僕自身やりたいから買ったんだ!冒険物のゲームで敵を倒せばストレス発散にも成るしね!」
久我誠一「俺も最初はそう思ったよ・・・冒険は楽しい・・・敵を倒せば強く成れる・・・なぁ、聞きたい事が有るんだけどさ・・・」
渡辺一樹「ん?何だい?」
久我誠一「ハデスって・・・本当に倒すべきラスボスなのか?」
渡辺一樹「はぁ?お前何言ってんのさ?」
久我誠一「ハデスと暗黒四天王・・・何だか俺には悪い奴には見えないんだ。寧ろ自分から悪い奴に成ってる様に見える」
久我誠一「考えて見たらおかしいだろ・・・街を壊して森を作ったり、自分勝手な市長の蛮行を街の人に見せたり・・・とてもそこらの悪党と」
久我誠一「やってる事が同じだとは思えない」
渡辺一樹「あのさぁ久我・・・現実とゲームの区別が出来なく成ったのか?有れはフィクション。現実とは何も関係無いんだぜ?」
久我誠一「でもメッセージ性は強いよ」
渡辺一樹「困った奴だなぁ・・・ならステージ3を攻略して見ろよ。悪党は倒されて当たり前だって、良く分かるからさ!」
久我誠一「そうか・・・ならやって見るよ・・・」
渡辺一樹「久我、ゲームのやり過ぎで頭行っちまったってのは無しだぞ?」
小泉彩花「ねぇ誠一!今日はもう帰ったら!?何か変だよ!」
久我誠一「心配掛けた事は謝るよ。俺は大丈夫」
小泉彩花「これの何処が大丈夫なの!?」
久我誠一「渡辺の言う通り、あいつ等が意味深な事してるから頭おかしく成ってるだけだよ。どの道ハデスを倒せば全てが分かるし」
小泉彩花「頭がおかしくって感じるなら、あのゲーム辞めた方が良いんじゃ・・・」
久我誠一「彩花、俺は大丈夫だから。どの道今日は帰る気は無いよ」
小泉彩花「分かった・・・でも困ったらあたしに言ってね・・・!」
久我誠一「あぁ・・・」
荘司や隼人の行動、ハデスの言動が引っ掛かって俺の中で迷いが生じた。このままゲームを進めれば、確実に残りの四天王が
何か言って来るのは間違い無かった。色んな葛藤を抱えながら、俺は今日の授業に取り組んだ。
〇立派な洋館
学校の課題が終わり、彩花に心配されながらも俺は今日もゲームにログインした。進めばまた四天王と戦う事には成るが、
正直怖いと思う自分も居た。
小泉彩花「良い誠一、本当に辛く成ったら迷わずログアウトするからね!」
久我誠一「あぁ、もう心配は掛けないよ」
小泉彩花「場合に寄ってはおばさん達に知らせて、もうこのゲームはやらない様にするからね!」
久我誠一「分かった」
ロザミィ「あぁ!お二方!ご無事でしたか!」
小泉彩花「ロザミィさん!」
ロザミィ「聞きましたよ。今回の黒幕は赤木隼人だと。私も怪しいと思ってたんですが、まさかロナルド様を失脚させるとは・・・」
久我誠一「失脚?て事は・・・」
ロザミィ「はい。ロナルド様は今後市長職としてはやっていけません。それだけならまだしも、今市民は税金を払われなかった事に寄り」
ロザミィ「貧困を強いられて居ます。この街から殆どの住民が居なく成るのもそぉ遠く無い話でしょう」
小泉彩花「そっか・・・ロナルドさんが馬鹿だったからこんな事に・・・」
ロザミィ「誠に・・・恥ずかしい話です。お二人はこれからどうなさるおつもりで?」
久我誠一「俺達ですか?そうですね・・・向こうの方に街が有るって話を聞いたんでそこへ行こうかと」
ロザミィ「分かりました。ですが、その方角は西の方ですよね?」
久我誠一「そうですが、それが何か?」
ロザミィ「西の方の街はとても治安が悪いと言う話を聞きます。市民の殆どが剣や銃等の武器を携行しており、下手な事をすれば」
ロザミィ「自分が標的にされます。私も余り行った事が無いので上手く説明は出来ませんが、もし本当に行くと言うのなら、」
ロザミィ「くれぐれも街で犯罪等の騒ぎを起こさない様にして下さい。貴方方がこれから行く街の自警団は足の速さと戦闘のテクニックに」
ロザミィ「関して、右に出る者は居ないとまで言われています」
小泉彩花「げ、ゲームなのにそこまでやる??このゲームを作った結城雁之助の考える事って分からないなぁ・・・」
久我誠一「忠告、有難う御座います。俺達、そろそろ行きますね」
ロザミィ「分かりました。お二人共、くれぐれもお気を付けて」
小泉彩花「はい!少しの間でしたが、お世話に成りました!」
次の目的地はステージ2の街から西の方に有る治安の悪い街だ。話を聞く限り、安易に近付いて良い様な場所では無いが、
そこで暗黒四天王のハーキンが何かをするのは間違い無かったので、俺達は迷わず行く事にした。
〇けもの道
小泉彩花「ステージ3は治安の悪い場所か・・・何か一気にR18臭く成ったね・・・」
久我誠一「そうだな・・・ロザミィさんの言う通り、身の振り方には気を付けないとな」
小泉彩花「誠一、今何考えてる?」
久我誠一「え?どうした?」
小泉彩花「顔見たら何か考えてるっぽい顔してたからさ、あたしにも話してよ」
久我誠一「そうだな・・・隠しても仕方の無い事だし・・・・・・ハーキンは俺等に何を突き付けてくるのかなって・・・」
小泉彩花「あぁ・・・やっぱり・・・」
久我誠一「治安の悪い街だって言うし、犯罪するなとか、薬物やるなとか言って来そうなんだよね。正直回目見当も付かないけど」
小泉彩花「でも行けば分かるよ。どの道ハーキンもレナもあたし等に何か訴えるのは間違い無いし」
久我誠一「・・・そうだよな・・・結城雁之助がどんな気持ちでこのゲームを作ったのか、ハデスを倒せば分かる事だし、」
久我誠一「ウジウジ心配しても良い事無いよな!」
小泉彩花「そうだよ!先ずはやって見る事が大事だしね!そこで起きた事は、その時考えて、解決すれば良いもん!」
久我誠一「あぁ!取り合えず先を急ごう」
小泉彩花「おぉ!」
先の事を気にしても状況は好転しない。今は只出来る事をやれば良い。希望と不安を抱えながら、俺達はステージ3の街を目指した。
〇荒廃した市街地
小泉彩花「こ、此処がステージ3・・・何これ!?治安悪いなんてレベルじゃ無いよ!!」
久我誠一「そうだな・・・てか、そもそも誰か居るのか!?」
小泉彩花「今のままじゃ分からない事だらけだね。先ずは誰か人を探さなきゃ!」
久我誠一「あぁ、出来れば自警団の人とかが良いんだけど・・・・・・ん?」
久我誠一「彩花、こっちだ!」
小泉彩花「え!?どうしたの!?」
久我誠一「良いから静かに!こっちに隠れる!」
小泉彩花「わ、わぁ!!」
どれだけ歩いたか分からないが、森の中を歩いた先で俺達が見た光景は荒れ果てた街だった。散策を始めようとした所、
俺は咄嗟に彩花を連れて物陰に隠れる。近くに誰か居るのだが、穏やかな感じでは無かった。
モブ男「はぁ・・・はぁ・・・何処か、隠れられる場所は・・・・・・」
モブ男「うわぁ!!!」
モブ騎士3「へ!こんなもんか!」
街の住民と思える人が逃げ惑う人を銃で射殺し、逃げた人から持ち物を漁っていた。
モブ騎士3「けっ!湿気てるなぁ・・・まぁ武器を持ってたから良いか・・・」
小泉彩花「せ、誠一・・・今の見た・・・!?あいつ・・・人殺した・・・!!」
久我誠一「あぁ見た・・・な、何て事だ・・・俺達はこれから、こんな無法地帯を攻略しないといけないだなんて・・・!!」
セナ「ステージ3の街へようこそ!」
小泉彩花「セナちゃん!?」
セナ「今からステージ3の説明をさせて頂きます!これまでのステージと違い、ステージ3では人型のMPCとの戦闘が可能で、」
セナ「スライム等のモンスターと同じく、倒せば経験値やアイテムを獲得出来ます!」
久我誠一「そうか・・・MPC・・・でも何だか気が引けるな・・・」
セナ「ですが此処で注意です!人型MPCを倒す際に自警団に見つかれば、捕まえるまでプレイヤーを追い掛けます!隠れる方法は、」
セナ「人目の付かない所に隠れるか、自警団のMPCを倒す事です」
小泉彩花「うげ・・・聞いてたら食欲無くした・・・」
セナ「人型MPCは通常モンスターよりも多くの経験値を獲得出来ます。今後の攻略に役立てて下さいね!それでは、説明は以上です!」
小泉彩花「誠一・・・あたし嫌だよ・・・幾らMPCとは言え、人を傷付けるなんて・・・」
久我誠一「そうだな・・・先ずは落ち着こう。さっきの光景を見る限り、この街は安全とは言えない。早い所宿屋を探して、」
久我誠一「体制を立て直した方が良い。敵対する人型を見たら、可能な限り逃げよう。でもいざって時は・・・」
小泉彩花「う〜ん・・・難しい所だね・・・」
久我誠一「あぁ、兎に角宿屋だ。此処に居たら誰かに見つかる」
ステージ3は誰もが恐れる無法地帯。他人を傷付けたり物を略奪したりと、制作者の意図がさっぱり分からなかった。
俺達はその後、無事宿屋を見つけて、今後の作戦を考えるのだった。
〇兵舎
小泉彩花「誠一、只今」
久我誠一「お帰り・・・彩花、今後の事だけど・・・」
小泉彩花「そうだよね・・・真面目に攻略するなら人型を倒すのが一番だけど・・・そんな事しても良い事なんか無いよね・・・」
久我誠一「あぁ、でも人を傷付けたりするタイプのゲームは心アドベンチャーだけに始まった事じゃ無いのは事実だ。次のストーリークエストの」
久我誠一「必要レベルは27。ハーキンに辿り着くにも、やっぱりこれが一番手っ取り早い」
小泉彩花「誠一!相手はあたし達と同じ人間なんだよ!」
久我誠一「此処はゲームの世界だ。何より、最初の有れも幻同士の存在がやった演出だ。此処は現実じゃ無い、フィクションだよ」
小泉彩花「そ、そうだよね・・・反面教師として受け止めるしか無いね・・・」
久我誠一「彩花、気に掛かるってなら、もう彩花はこのゲームを辞めた方が良い。俺は一人でも結城雁之助の真意を確かめる」
小泉彩花「えぇ!?それこそ駄目だよ!!」
久我誠一「彩花、これはタカがゲームなんだ。やりたい奴は勝手にやれば良い。やりたく無いなら、無理にやる方が良く無い」
小泉彩花「荘司や隼人の事忘れたの!?あんな意味深な言葉や行動・・・進めた先で誠一が一人で立ち合ったらどう成るか分からないんだよ!?」
久我誠一「そうだ・・・でも俺は知りたい・・・結城雁之助の真意を・・・どんな事が有ってもだ・・・」
小泉彩花「なら、あたしも行くわ。誠一だけに背負わせはしないから!」
久我誠一「そうか・・・有難う・・・」
小泉彩花「人型MPCの事は何とかするとして、何かイベントとか無い?」
久我誠一「そうだな・・・宿屋探しに夢中に成ってたけど、新規来てたぞ」
小泉彩花「マジ!?なら早く見よう!」
久我誠一「あぁ!」
〇荒廃した市街地
ハーキン「・・・・・・」
ハーキン「相変わらずこの街は争いが絶えないな。同じ種族同士で一体奴等は何をしたいと言うのだ・・・」
ハーキン「だからこそ、私には都合が良いのだがな」
団長「ならず者共の鎮圧はどうだ?」
副長「申し訳有りません・・・状況は余り芳しく有りません・・・」
団長「そうか・・・やはりもっと戦力を拡大せねば・・・」
ハーキン「お前達、此処で何をしている?」
副長「な、何奴!?」
団長「貴様一体何者だ!?」
ハーキン「まぁこの身なりじゃ警戒されても文句は言えぬか。安心しろ、戦いに来た訳じゃ無い。何が有ったか気に成っただけだ」
団長「ほ、本当に戦いに来た訳では無いのか?」
ハーキン「あぁ、貴様等をどうこうして私に何の得が有る?」
団長「・・・そうか・・・分かった。話せるだけ話そう」
ハーキン「有難い。そもそもこの街は何故此処まで戦いに明け暮れている?政治家が不祥事でも起こしたのか?」
団長「いや、政治家はまともに機能していた。そもそもこの街はカジノやギャンブルで成り立って居たのだ」
ハーキン「カジノにギャンブル?成る程・・・昔は栄えて居たと言うのか?」
団長「そうだ。この街は金持ちの外来人が来る事も珍しく無かった。だが有る時、貧困に飢えた者が金に目が眩み、金持ちに対する」
団長「恨みや妬みに支配され、遂には武力行使に移り、我々自警団はならず者達の鎮圧を行って居る」
団長「だが有る時、バブルが崩壊して街は機能不全に陥り、暴動を止めたくても止められなく成ってしまったのだ」
ハーキン「成る程・・・折角築き上げた栄光も、そう成ってしまえば世話が無いな。政治家共は何をしているのだ?」
団長「今この街には政治家は一人も居ない。毎日争いに明け暮れて、外の者も誰も近付かないのだ」
ハーキン「大体の事情は分かった。まともな指揮官の居ない街等、滅びの運命を辿る以外に無い。一つ聞こう。お前達自警団は、」
ハーキン「どうしたいのだ?」
団長「私はこの街を復活させたい!その為にも、先ずは私欲に満ちたならず者達を鎮圧しないといけないのだ!」
ハーキン「意気込みは分かった。ならば私が手を貸そう」
副長「何だと!?しかし、どうやって!?」
ハーキン「戦力が欲しいなら、私からこれを提供しよう」
ロボット兵「・・・・・・」
副長「こ、これは!?」
団長「私も噂でしか聞いた事が無い!異国の技術で造られたロボット兵じゃ無いか!」
ハーキン「そうだ。この力が有ればならず者等雑魚も同然。どうだ?街の復活の為にもこいつ等を使って見ないか?」
団長「素晴らしい!貴公からの施し、誠に感謝する!!」
ハーキン「大した事では無い。使い方は私から説明させて頂こう」
小泉彩花「な、何よこれ・・・反則じゃん!!」
久我誠一「これは・・・思ったより厄介な事に成ったな・・・」
街にハーキンが訪れ、自警団にロボット兵を引き渡していた。自分達が人型MPCを倒す光景を見られたら、間違い無く
彼等はロボットを使うだろう。ムービーは此処までと成り、俺達は街の宿屋に強制転移されるのだった。
〇兵舎
小泉彩花「誠一、これどうしよう。レベル上げも此処じゃかなり厳しいよ」
久我誠一「そう思ってたんだけどさ・・・これが使えるかも」
小泉彩花「これって?」
小泉彩花「あ!見えない所から攻撃するのか!」
久我誠一「そ!俺はストーリークエストやる為にもこれを使う。彩花にも、使えそうな魔法無い?」
小泉彩花「あたしかぁ・・・氷とか雷・・・後この前隼人を倒した時にバリアの魔法使える様に成ったよ!」
久我誠一「え!?それって朗報じゃ無いか!?」
小泉彩花「間違い無いね!後は魔力切れに注意すれば何とか成るかも!」
久我誠一「何か色々と出来そうだな・・・次の課題終わらせたら、色々やって見るか!」
小泉彩花「そうだね!」
ハーキンの行動にどうするべきか悩んだが、お互いの武器や得意分野も増えてるので、対応の幅が広がって居た。
後日、俺達は学校の課題を終わらせた後にストーリークエストの挑戦の為に人型MPCと戦闘する事とした。
凄い事になって来ましたね
ここでも人の欲が語られていますね
善人なら製作者の真意を知りたくなるのも必然ですね
しかしロボット相手だと一筋縄ではいかないですね・・・しかも退治すれば町の自警団とも敵対で周りが敵だらけに・・・
どうなるのか楽しみです