9 人間の本懐(脚本)
〇荒廃した市街地
モブ騎士3「さて、次の獲物は何処かなと・・・」
モブ騎士3「んな!!」
久我誠一「うん・・・MPCとは分かっててもやっぱやるもんじゃ無いな・・・」
後日、課題を終わらせて何時も通りゲームにログインして人型MPCの討伐をしていた。余りにもリアルな出来なので
余り気分は良く無いが、制作者の真意を知る為には此処で時間を浪費出来ない。
モブ女「はぁ・・・はぁ・・・」
モブ女「あぁ!!」
小泉彩花「あぁ・・・早くレベル上がらないかな・・・」
経験値が沢山稼げるのは嬉しいが、やはり気分は良く無く、この現状に慣れてしまう事の方が怖く、俺達は早めにレベルアップを
目指した。
モブ男「・・・・・・」
モブ男「うぉ!?」
小泉彩花「この世で一番嬉しく無いレベルアップね・・・」
久我誠一「彩花、そっちはどうだ?」
小泉彩花「何とか必要なレベルまで到達したけどさ・・・もう早くこの街から出たいと言うか・・・」
久我誠一「そうだよな・・・ハーキンを倒して、早く此処を出よう。多分だけど、俺達以外のプレイヤーも居るだろうが、」
久我誠一「こう言うの、進んでやる人も居るんだろうな」
小泉彩花「そう聞くと何か変な気分ね。画面を見てピコピコやってるなら無心でやれるけど、このゲーム、VRMMOだもんね」
久我誠一「あぁ、こう言うのは使い方を間違えない方が良い。さて、そろそろやろうか」
小泉彩花「うん、お願い・・・」
必要なレベルに到達した俺達は、ストーリークエストに挑む事にした。
久我誠一「内容は・・・ならず者達の暴動を止める?」
小泉彩花「え?それだけ?何か自警団がやりそうな話ね」
久我誠一「まぁ、また人型MPCを相手にしないといけない見たいだし、成る可く早く終わらせよう」
小泉彩花「そうだね」
久我誠一「え!?爆発!?何処から!?」
小泉彩花「多分ストーリークエストのイベントだよ。向こうから聞こえた!」
久我誠一「兎に角行こう!先ずは見て置かない事には始まらない!」
小泉彩花「分かった!」
俺達は爆発音のした方へ向かい、状況を確認した。そこには沢山の人達がお互いを攻撃し合ってた。
モブ騎士2「おい、金寄越せよ・・・」
モブ騎士3「お前がくたばってくれたらな!」
モブ女「はぁ・・・はぁ・・・」
モブ男2「殺して置くのは惜しいが、俺まだ死ねないんでね」
モブ女「ま、待って!」
久我誠一「あぁ・・・これは酷い・・・」
小泉彩花「自警団は何をしてるの!?早く止めなきゃ!」
久我誠一「自警団がやらないなら、俺達がやるしか無いな。彩花、行こう!」
小泉彩花「うん・・・そうだね!」
近くに自警団は居らず、俺達は自力でこの暴動を止める事とした。
モブ騎士3「あん?何だテメェは?」
久我誠一「止めて下さい!何故こんな真似を!?」
モブ騎士3「うるせぇ!俺は金が欲しいんだよ!!」
小泉彩花「こんな無意味な事は止めて!街を元に戻そうよ!!」
モブ男2「知った事か!俺は幸せに成りたいんだよ!!」
街の人達は俺達の言葉に耳を貸さない。只ひたすらに他人を傷付けるだけだった。俺達の抵抗も虚しく感じ始めた時、
一つの爆音が成り出した。
小泉彩花「・・・・・・!?」
団長「私はこの街の自警団の団長だ!お前達、武器を捨てて投降しろ。さもなくば我々のロボット兵が貴様等を蹂躙する!」
小泉彩花「ま、待って!あたし達も同罪!?」
団長「もう一度言う!武器を捨てて投降しろ。これを無視したら貴様等の命は無い物と思え!」
小泉彩花「誠一、これって・・・」
久我誠一「間違い無い・・・強制負けイベントだ・・・」
小泉彩花「そ、そんな・・・!?」
団長「自警団の権限で、此処に居る貴様等を全員逮捕する。処罰は追って連絡する」
小泉彩花「ま、待って・・・あたし達は・・・」
久我誠一「無理だ彩花。今抵抗してもゲームオーバーに成るだけだ」
小泉彩花「そんな・・・あたし達は暴動を止めに来ただけなのに・・・・・・」
強制負けイベントに立ち合い、俺達は他のMPC共々自警団に連行され、牢獄の中に閉じ込められるのだった。
〇刑務所の牢屋
副長「此処がお前達の部屋だ。さぁ入れ!」
副長「ならず者等が、良いザマだな!」
小泉彩花「どうしよう誠一!こんなのってあんまりだよ!」
久我誠一「そうだな・・・まさか自分等の人生でこんな経験するだなんて・・・」
小泉彩花「暴動を止めようとしたあたし達は間違ってたの!?」
久我誠一「残念だけど、あの状況じゃそこらのならず者と一緒にされても文句は言えない。何より、現実じゃ無いから良かったし、」
久我誠一「幸いセーブもログアウトも出来る。泣く事は無いよ」
小泉彩花「でも、こんなの現実でって考えたら・・・」
久我誠一「あぁ、何年此処に居させられるか、最悪死刑だな」
小泉彩花「どうしよう誠一・・・あたし達とんでも無いゲーム買ったんじゃ・・・」
久我誠一「間違い無い。でもまだ結城雁之助の真意が見えない。何より此処で終わる事は無いと思う」
久我誠一「ほら!ストーリークエストが追加された!」
小泉彩花「ねぇ誠一・・・リアルではお互い良い子で居ようね・・・」
久我誠一「勿論さ。何時までも落ち込んでても仕方が無い。先へ進もう」
久我誠一「ミッション内容は・・・此処から脱出してハーキンを探し出す・・・か」
小泉彩花「ハーキン・・・そう言えば、何でハーキンは自警団にロボットを渡したんだろう?」
久我誠一「前のイベントムービーで、ハデスが人類抹殺って言ってたし、多分それだと・・・」
小泉彩花「だよね・・・」
副長「団長!またならず者達の捕獲ですか!?」
団長「あぁ、ハーキンのお陰で、我々は自警団としての責務を果たせる様に成った。今こそ反旗の時だ。この街から全ての悪を」
団長「根絶やしにする!」
副長「おぉ!もう悪党共にデカい顔は出来ませんね!お供致します!」
団長「あぁ、ならば行こう」
小泉彩花「あの人達、あんなの使って楽しいのかな・・・」
久我誠一「どうだろう・・・でも脱出するなら今しか無いな」
小泉彩花「何か手は有るの?」
久我誠一「捕まったとは言え、俺達の武器は幸い取られて無いから大丈夫。さっきこれ見つけてさ」
小泉彩花「それ、ロックピックって奴?」
久我誠一「やれるか分からないけど、ピッキングで開けるしか無いな」
小泉彩花「分かった。無理しないでね」
牢屋の鍵穴にロックピックを差し込み、直感を信じて鍵穴を回して見る。その後、
久我誠一「良し!開いた!」
小泉彩花「やった!!後はハーキンを倒して街を出よう!」
久我誠一「あぁ!本番はこれからだ!」
無事牢屋の鍵を開けた俺達は、自警団に見つからない様に外を目指した。
〇荒廃した市街地
モブ騎士3「うわぁぁぁ!!!」
団長「降伏するが良い愚か者達よ。力を持った我々に、貴様等など怖くは無い」
モブ男2「ひ、酷ぇよ・・・あんなの反則だろ・・・」
モブ騎士3「も、もう悪さなんか辞めるから・・・頼む!助けてくれぇ!!」
モブ騎士3「ひぃぃぃ!!!」
団長「最早貴様達に慈悲は無い。私はこの街に蔓延る悪を根絶やしにすると宣言したのだ!」
小泉彩花「酷い!何も此処までやらなくても!!」
久我誠一「いや、止めたい気持ちは分かる。でも今はハーキンだ。奴を探さないと!」
小泉彩花「そうだね!絶対捕まえてやる!」
俺達は自警団の目を掻い潜り、ハーキンを探した。街のあちこちを隠れながら調べ上げ、その姿を漸く見つけた。
ハーキン「此処まで効果が有るとは・・・力は強ければ強い程良い物だな」
小泉彩花「見つけた!ハーキン!」
ハーキン「お前達は・・・ならず者達と一緒に捕まってたのでは無いのか?」
久我誠一「捕まってたさ。でも脱出した」
ハーキン「そうか・・・此処まで来るとは見上げた物だな。隼人と荘司の仇と言うだけは有る」
久我誠一「聞きたい事が有る。ロボットを自警団に渡して何をしたいんだ?」
ハーキン「ほう、それを聞きたいか・・・ならば教えよう。私はお前達人間の夢を叶えてやったのだ」
小泉彩花「夢?」
ハーキン「そうだ。お前達の夢、それは戦いだ」
久我誠一「どう言う事だ?」
ハーキン「人は太古の昔から生まれて来て、今の時代に至るまで幾度と無く戦いに明け暮れた。他人を傷付け、見下し、蹴落とし、」
ハーキン「力を手にすればそれを見せびらかし、自分を高く上げる。自分こそが最強と言わんばかりに他人が積み上げた物を壊す」
ハーキン「平和を唱いながら結局はその者も戦いに身を投じる。その証拠にこれを見ろ」
ハーキン「力を手にした途端、自らを正義と称え、無駄に力を行使する。人間は、心から争い事を愛し、その上で高みを目指している」
小泉彩花「そんな!あたし達は手を取り合える!戦いなんて無くても!」
ハーキン「本当にそうだと言えるのか?」
小泉彩花「え?」
ハーキン「我等の道を阻む勇者と言えど、自分達はそうで無いと断言出来るのか?平和を守る等と綺麗事をほざいて置きながら、」
ハーキン「自分達も本当は戦いが大好きなのでは無いのか?」
小泉彩花「・・・・・・!?」
ハーキン「何、隠す事等無い。太古の昔から互いを傷付け合う事に精を感じるお前達だ。心から戦いたいのなら、」
ハーキン「この私が相手に成ってやろう!!」
小泉彩花「誠一!来るよ!」
久我誠一「あぁ!武器を取って、走り回れ!」
ハーキン「おぉ、武器を取ったか・・・そうだ!戦いこそがお前達の本懐だからな!」
ハーキン「くう!!」
小泉彩花「あたし達を、あんた達と一緒にしないで!!」
ハーキン「自分の気持ちに蓋をするな。もっと自分をさらけ出せ。戦いたいのだろう!傷付けたいのだろう!その上で感じたいのだろう!」
ハーキン「自分は強い!自分は優れてると言う優越感をな!!」
小泉彩花「誰が・・・!!」
小泉彩花「うわっ!!」
ハーキン「実際人を傷付けて分かった事が有る。それは、戦いは楽しい。人を傷付けたり見下したりするのは楽しいと言う事だ!」
ハーキン「お前達はこれが楽しくて仕方が無い。だから戦争をやるのだと!」
小泉彩花「そんなの・・・そんなの楽しく無いよ!虚しいだけだよ!!」
ハーキン「自分こそが正義と信じ、分からぬと逃げ、自分を守る為なら大切な物すら切り捨てる。私には分かる。お前達は心から、」
ハーキン「戦いを、傷付け合いを愛してるのだと!ならばその願い、私が叶えてやろう!」
小泉彩花「あたしは・・・あたしは・・・!!」
ハーキン「有難く思え。貴様等がやりたかった戦いが出来たのだからな」
ハーキン「んな!?」
久我誠一「貴方が隙を作ってくれたからこの距離で当てられたよ。貴方の言いたい事は分かる。だけど、人の中には争い事が嫌いな奴が居るのも」
久我誠一「本当さ。戦いって言っても、傷付ける戦いだけじゃ無い。守る事も作る事も出来る。彩花の言う通り、手を取り合う事だって」
ハーキン「本当にそうか?ならば何故お前達は争いを辞めない?」
久我誠一「人間って本当我儘で自分勝手なんだよ。だけど悪い所だけじゃ無い。成長する事だって変わる事だって出来る。俺にも守りたい人が」
久我誠一「居る。だからハーキン。俺は貴方を撃つ」
ハーキン「はは、ふふ、ははは、ふははははは!!」
ハーキン「面白い!ならば気の向くままに戦え!戦って、戦って、その果てに有る愚かな結末を、その目に焼き付けるが良い!!」
ハーキン「貴様等と戦えて楽しかったぞ!!」
久我誠一「もう良い・・・お別れだ・・・」
ハーキン「ふははははは!ハデス様万歳!!!」
久我誠一「ゲームなのに・・・何でこんなに虚しい気持ちに成るんだ・・・」
小泉彩花「誠一・・・誠一・・・!!」
久我誠一「彩花!?」
小泉彩花「あたし怖かった・・・あたしも平気で人を傷付ける奴なんじゃ無いかって・・・人を傷付けて、自分さえ良ければそれで良いんじゃ」
小泉彩花「無いかって・・・」
久我誠一「大丈夫だよ彩花。彩花が優しい奴だって、俺が一番良く知ってるから」
小泉彩花「誠一が思ってた事・・・今なら分かるよ・・・気付かなくて御免ね・・・」
久我誠一「彩花が謝るなよ・・・もう終わらせて、次に行こう」
セナ「ステージ3のクリアおめでとう御座います!残る四天王も後一人ですね!」
久我誠一「セナ・・・」
セナ「イベントムービーに新規が追加されました。ご視聴成さいますか?」
久我誠一「あぁ、お願い」
セナ「確認しました!それではご覧下さい!」
〇魔王城の部屋
ハデス「荘司・・・隼人・・・ハーキン・・・皆良くやってくれた。奴等が此処へ辿り着くのも時間の問題か・・・」
レナ・グレイシア「ハデス様!ハーキンが倒されたのは本当ですか!?」
ハデス「あぁ、だがこれだけは忘れるな。奴等は我の期待に充分過ぎる程応えてくれた。何の役に立たない事等無かったのだ」
レナ・グレイシア「ですが、生きて戻らねば意味が無いでは有りませんか!!」
ハデス「あぁ、あの三人がやられた事は我にも言葉が出ない」
レナ・グレイシア「ハデス様、もう私は我慢の限界です。勇者達を海の底に沈め、地上の人間共を根絶やしにして見せます!」
ハデス「あぁ、頼むぞレナ」
レナ・グレイシア「はっ!!荘司、隼人、ハーキン。貴方達の仇は私が取るわ!勇者共、今度は私が海に沈めてやるわ!!」
小泉彩花「レナ・・・仲間を倒されて物凄く怒ってる・・・」
久我誠一「あぁ、何だか自分達が悪者に成った気分だよ。これが人を傷付けるって事なんだ・・・次のステージは海か・・・」
セナ「イベントムービーは此処までと成ります。セーブして先へ進みますか?それとも切り上げますか?」
久我誠一「彩花を休ませたいから、切り上げるよ」
セナ「分かりました!またのプレイをお待ちしております!」
行き過ぎた正義は暴力にもなりゆると言うわけですね
四天王もあと一人ですが今度は何を教えたいのか?
海だとごみの放出とかですかね?
楽しみですね・・・