境界なき記憶調査団から

きせき

Ep.2 さらに前世なき者達へ(脚本)

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〇王妃謁見の間
  境界なき記憶調査団。
  支部数は4で、フォリアとカルマにそれぞれ、第1支部、第2支部がある。
  団員数は全員で19名。団長と副団長、4名の正団員、13名の準団員で構成される。
  彼らの職務は「記憶なき者の失われている過去を調査し、その過去を明らかにすること」

〇大衆居酒屋(物無し)
エミリア「さて、色々、今まで話したけど、どうだった? 境界なき記憶調査団の仕事は」
ロジオ「どうって・・・・・・」
ロジオ「(確かに、前世欄が書けなくても定職に就けるのは願ってもない)」
ロジオ「(契約書にもざっと見た限りはおかしいところもない)」
ロジオ「(確かに待遇は良いけど、相場を逸脱していないというか、良すぎることはないと思う)」
ロジオ「あの・・・・・・」
エミリア「何かしら?」
ロジオ「凄い良い話だと思うんですけど、俺なんかに務まりますかね」
エミリア「・・・・・・」
エミリア「大丈夫・・・・・・なんて言えないかな?」
ロジオ「え・・・・・・」
エミリア「いやー、私、預言者じゃなくて、ただの調査団員だし」
エミリア「でも、まぁ、もし、やってみてダメなら辞めれば良い。あたしはそう思ってる」
ロジオ「はぁ・・・・・・」
エミリア「それに、もしかしたら、前世を取り戻して、前世欄を書ける日が来るかも知れない」
ロジオ「前世欄を・・・・・・」
エミリア「まぁ、それは団員にならなくても、調査団を利用して取り戻せるかも知れないけどね」
エミリア「団員になれば公的に調査もできるし、調査資料も閲覧も自由にできる」
ロジオ「・・・・・・」
  人は悩んだ時にはもう既に答えが出ている場合が殆どらしい。
  そう、もし、悩んでいるのなら選びたい答えが既に存在している筈だから。
ロジオ「あの、少し考えたいんですけど・・・・・・待ってもらうことって可能ですか?」
ロジオ「(即決できないなんてありえないかな? でも・・・・・・)」
エミリア「うん。良いよ」
ロジオ「えっ?」
エミリア「いやー、あたし達、出会って2時間くらいしか経ってないけど、」
エミリア「ロジオ君は即答できるタイプじゃなさそうだし?」
ロジオ「はぁ・・・・・・」
ロジオ「(正論だけど、言い切られると何か、複雑だな・・・・・・)」
エミリア「で、いつまで待てば良さそうかな?」
ロジオ「じゃあ、明日・・・・・・とか?」
エミリア「分かった。じゃあ、また明日の朝までねって・・・・・・」
エミリア「って、もしかして、明後日になるギリギリが良かった?」
エミリア「一応、それだって明日までだしね」
ロジオ「いえ、明日の朝で大丈夫です」
エミリア「OK。じゃあ、明日の朝、またこの店で答えを聞かせてね」
謎の男「話は済んだかい?」
エミリア「えぇ、だいだいは」
謎の男「じゃあ、じゃんじゃん持ってくるから今日は食って食って食いまくってくれ」
  それから、沢山の料理がテーブルにところ狭しと並べられていく。
謎の男「はい、お待ちどう様」
  と言葉とともに・・・・・・

〇西洋の住宅街
エミリア「いやー、食べたね」
ロジオ「ハハハ・・・・・・」
ロジオ「(肉も魚も野菜も凄いあるメニューだった)」
ロジオ「(というか、6人前くらい? 俺とエミリアさんしかいないのに・・・・・・)」
エミリア「まぁ、マスターって悪気はないんだけど、若い子にご飯を食べさせるのが好きっていうか」
ロジオ「そう・・・・・・みたいですね。どれも美味しかったですけど」
エミリア「だね。まぁ、食べきれなかったのはお弁当に詰めてくれたから夜にでも食べたら良いよ」
エミリア「で、今日はどうしようか?」
エミリア「私の借りている部屋の隣りが空いているみたいだけど、そこで良いかな?」
エミリア「あ、宿屋の方が良かったら、宿屋もあるけど・・・・・・」
  こじんまりとしているフラゴレには宿屋が1軒あり、
  宿屋以外だと、1晩から借りられる家がいくつかあるらしい。
ロジオ「はい。あ、でも、そんなすぐに借りられるなんて凄いですね」
エミリア「うん。ほら、このフラゴレってカルマの玄関だからさ?」
エミリア「一休みして、コンキリアとかオセアーノに行く人が殆どなんだよね」
エミリア「みんな、お金を使うなら目的地でって思うから夜でも無理に旅路を急ぐけど、」
エミリア「やっぱりそれは色々危険だし、かと言って、野宿とか平気なら宿屋は高く感じる」
エミリア「だから、空き家とかを改装して、短期で滞在してもらえる物件をいくつか用意している」
エミリア「まぁ、宿屋と違って、食事はなしで、ベッドとかは備えつけではないんだけどね」
エミリア「ちなみに、私はどこでも寝られるタイプだから実にありがたいけど」
ロジオ「な、成程」
エミリア「じゃあ、行きましょうか」
ロジオ「はい」
謎の女「ふーん、彼が・・・・・・」
謎の男「なんだ、待てずに来ちまったのか?」
謎の女「え、私だけじゃないですよー」
謎の男「まぁ、良いさ。あいつの予言通りなら明日、本部で会うことになるだろうからな」

〇暖炉のある小屋
  ーフラゴレ・空き家玄関ー
エミリア「あら? 貴方も帰ってきてたんだ」
謎の男「やぁ、ミリア。今日はフォリアの方に行くんじゃなかったか?」
エミリア「うーん、まぁ、フォリアっていえばフォリアだけどね」
エミリア「ブレッザやノーチェまでは行かないよ。リコルド特区まで」

〇ファンタジーの学園
  リコルド特区。
  旧フォリアに属する地区だったが、フォリアにもカルマにも属しない地区になる。
  主な施設としてはリコルド職業紹介所やリコルド陸立病院、リコルド陸立議事堂等
  行政施設が集まっている特区である。

〇暖炉のある小屋
謎の男「へぇ、じゃあ、今日は俺の方が遠出してみたいだな」
謎の男「オセアーノに、ストレット。シレーナにも行った・・・・・・」
謎の男「流石に疲れたからさっきまで寝てた」
謎の男「って、さっきから若干、気になってたんだけど、彼は?」
ロジオ「(若干って・・・・・・)」
ロジオ「あ、すみません。アンブロージョ・アナスタージです。えーと・・・・・・?」
謎の男「あぁ、俺はネストレ・イッツォ? って名前らしい」
ロジオ「らしい?」
ネストレ「記憶がないんだ、俺」
ロジオ「記憶が・・・・・・」
ネストレ「ああ、前世はうっすらと覚えているが、今世はさあっぱり覚えてない」
ロジオ「はぁ・・・・・・(何か、自由というか、呑気な人だな・・・・・・)」
ネストレ「まぁ、深刻ぶったところで記憶が戻るならいくらでもするけど、」
ネストレ「どうやら俺の性には合わないらしい」
ロジオ「そう、みたいですね」
ネストレ「じゃあ、俺はこれで・・・・・・寝たら元気になったからバーにでも繰り出すかな」
ネストレ「じゃあ、ミリアとアンブロージャ君? 良い夜を」
エミリア「アンブロージャならロジア君になるかな?」
ロジオ「いやー、どうでしょう? 俺がアンブロージョなのは変わらないですし」
エミリア「それもそうか・・・・・・」

〇島国の部屋
  ーフラゴレ・空き家3号室ー
ロジオ「ここを一晩、使っても良いんですか?」
エミリア「うん、もう管理している人には話をつけてるから」
ロジオ「あ、そう言えば、ここっていくらなんですか?」
エミリア「あぁ、私の知り合いで一晩ならタダにしてくれたからお金は大丈夫だってさ」
エミリア「まぁ、部屋を破壊したりしたら、アレらしいけど?」
ロジオ「破壊って?」
エミリア「うーん、例えば、さっき会ったネスト君なんかは常習犯だったかな」
ロジオ「部屋を破壊する常習犯?」
エミリア「うん、部屋を破壊する常習犯」
ロジオ「大丈夫です。部屋を破壊している暇はないでしょうから」
エミリア「まぁ、それもそっか。じゃあ、また明日の朝、フラゴレ亭で」

〇島国の部屋

〇島国の部屋

〇西洋の住宅街

〇海辺
ロジオ「(あれ? 誰か、いたような・・・・・・)」
ロジオ「はぁ・・・・・・」

〇島国の部屋
  翌朝
ロジオ「(じゃあ、行くか・・・・・・)」

〇王妃謁見の間
  境界なき記憶調査団員の入団条件はいくつかあるらしいが、1つ大きなものがある。
  それは前世・現世・来世においていずれかの記憶を持たぬこと。
  そして、団員でその記憶を取り戻した場合は団を去ること。

〇大衆居酒屋(物無し)
ロジオ「おはようございます」
エミリア「あ、ロジオ君。おはよう」
ロジオ「おはようございます。あ、昨日はご馳走様でした」
謎の男「いや、良いってことよ」
エミリア「で、早速だけど、どうかな? 一晩、考えてみて・・・・・・」
ロジオ「・・・・・・色々、考えたんですけど、調査団に入れたらと思います」
ロジオ「まぁ、それしか今のところ、選択肢がないというか」
ロジオ「すみません・・・・・・後ろ向きすぎますかね?」
エミリア「ううん。多分、そんなことの方が多いんじゃない? 人生って」
エミリア「じゃあ、マスター。そういうことらしいので」
謎の男「あぁ、そのようだな」

〇王妃謁見の間
ロジオ「え?」
「記憶調査団へようこそ。アンブロージョ君」
謎の男「君を7番目の団員として歓迎しよう」

〇黒
  次回

〇王妃謁見の間
ネストレ「にどめまして?」
  空き家で出会った、今世なき青年・ネストレ。
セヴェリアーノ「アンブロージョ・アナスタージだな?」
  明日のみを見ることができる盲目の占い師。
イラリア「そんなこと、意味あるかしら」
  どこか達観した少女?

〇黒
  Ep.3 最期の記憶を

次のエピソード:Ep.3 最期の記憶を

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