Little Incubus

山本律磨

前編(脚本)

Little Incubus

山本律磨

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〇白
  (※)この物語はグロテスクな表現や描写が含まれています。
  Little Incubus

〇警察署の廊下
マヤ「すみません!通ります!」
刑事「オイ少年課ァ!偉そうに廊下走ってんじゃねえぞ!」
マヤ「す、すみません!失礼します!」

〇取調室
マヤ「失礼します!」
司馬「誰だ?」
マヤ「私は・・・私は・・・」
マヤ「はあ・・・はあ・・・」
ユキヲ「・・・」
司馬「おいおい。息くらい整えてから入れよ」
マヤ「すみません」
司馬「それで?お嬢ちゃん誰?」
マヤ「少年事件課の蓮見マヤ巡査です!」
司馬「少年課か・・・チッ。早かったじゃねえか」
マヤ「・・・!」
マヤ「とりあえず医務室へ・・・」
司馬「オイオーイ。平手打ちの一発二発でどこをどう治療するってんだ?」
司馬「先生も暇じゃねーんだぞ」
マヤ「彼の取り調べは私が引き継ぎます」
司馬「お嬢ちゃんがガキの取り調べねえ」
司馬「いつから刑事の仕事は少女マンガになったんだ?」
蛭田「それを言うならラノベっすよ、ラノベ」
司馬「なんだそりゃ?新車の名前か?」
司馬「ラノベGTR、体験試乗会はお近くの車屋までってか?」
蛭田「しょーもねー!」
マヤ「所轄の方々はもう一名の重要参考人米良の捜索をお願いします」
蛭田「はあ?僕ちゃん聞こえませ~ん」
司馬「おじちゃんも~」
マヤ「署長命令です」
「あっそ!」
蛭田「あーやだやだ。こんな修羅場職場までコンプライアンスときた。行きましょ司馬さん」
司馬「しょうがねえ。だけどアンタも大変だな」
司馬「女だてらにそんな『化け物』の相手をよ」
マヤ「化け物?」
ユキヲ「・・・あ」
ユキヲ「ありがとう・・・ございます」
マヤ「・・・勘違いしないで。私は君を助けたいんじゃない」
マヤ「真実を突き止めに来ただけ」
ユキヲ「・・・」

〇山間の集落
  『十王子市奥山地区母里』
  『限界集落の片隅でその殺人は起こった』

〇keep out
  『被害者は愛田セイコ36歳、無職』
  『容疑者は同じ地区に住む中学生』

〇取調室
マヤ「狭間ユキヲ君ね」
ユキヲ「・・・」
マヤ「血、それで拭いていいよ」
ユキヲ「・・・」
ユキヲ「ごめんなさい。汚しちゃって」
マヤ「構わないわ」
ユキヲ「ありがとうございました」
マヤ「え?」
ユキヲ「・・・」
マヤ(気のせいか)
マヤ「今の子って親にも叩かれた事ないでしょ。ビックリしたんじゃない?見ず知らずの、大人のオジサンにぶん殴られて」
ユキヲ「・・・」
マヤ「でも自業自得って言えば自業自得よ」
マヤ「凶器についた指紋と立証できないアリバイ」
マヤ「物的証拠も状況証拠も揃ってる」
マヤ「君が一人の人間の命を奪った事実は、もう覆せないわ」
ユキヲ「・・・」
マヤ「ただ私の仕事は、なぐって吐かせて検察におしつけるだけの簡単な仕事じゃないの」
ユキヲ「・・・え?」
マヤ「どんな理由でも殺人は殺人」
マヤ「だけど、どんな理由だろうと知った事じゃないってのは法の傲慢、いや怠慢よ」
マヤ「怪物だなんて・・・青年漫画の読み過ぎはあのオッサン刑事の方」
マヤ「君が話さなくても、君の真実はすぐに私が解き放ってみせる」
マヤ「第ニの男・・・米良エイジは必ず捕まえるから」
マヤ「それまで黙ってていい」
マヤ「あなたはただの・・・人間よ」
ユキヲ「・・・」
ユキヲ「・・・」

〇居酒屋の座敷席
司馬「フン・・・言ってくれるじゃねーか」
司馬「少年事件課さんは随分お上品なこって」
司馬「それとも取り調べを哲学とか道徳のお勉強だとでも思ってるのか?」
マヤ「で、そちらの進捗状況は?」

〇アパートの中庭
  『被害者の恋人、行方不明の米良エイジの証言は真相究明には必要不可欠なんです』

〇居酒屋の座敷席
司馬「フッ、被害者から検出された米良の遺伝子ちゃん達がそれほど気になるか?」
司馬「それとも欲求不満か?」
マヤ「私、そういうの全部録音してるんで、気をつけた方がいいですよ」
司馬「オジサン、そういうの全部揉み消せるんで諦めた方がいいよ」
「・・・」
「・・・フン!」
司馬「・・・」
司馬「ふう・・・」
マヤ「・・・」
司馬「おいおい!なんだその食生活は!」
司馬「お前よ、肉食え肉!だから頭の中まで草食系になっちまってるのか?ああ?」
マヤ「大きなお世話です」
マヤ「それに、米良の行方が掴めてないならこれ以上お話しする事はありませんし」
司馬「あのガキがホンボシって事実は変わらん。これ以上何調べる?力づくで吐かせりゃあいいだけだろ」
マヤ「狭間ユキヲに暴力なんて通じませんよ」
司馬「ああ?どういうこった?」
マヤ「そんなことも調べてない。頭の中まで脂身のようですね」

〇散らかった居間
  『この数年、実母とその内縁の夫から相当な虐待を受けていたみたいですから』
男「ああ、クソイライラするガキだな」
男「チッ・・・来いよ」
母「・・・」
ユキヲ「・・・」
男「ああ?何見てんだよ」
男「なあ、そろそろ殺しちゃっていいかな?」
母「そ、外に出てなさい!」
ユキヲ「・・・」

〇山間の田舎道
ユキヲ「・・・」
ユキヲ「・・・」
ユキヲ「おいで・・・」
ユキヲ「・・・」
ユキヲ「・・・」
ユキヲ「どこ行くの?」

〇アパートの中庭

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