はじめてのデートだけれど、着ていく服が『これ』しかなかった女

胡林

いつかの約束(脚本)

はじめてのデートだけれど、着ていく服が『これ』しかなかった女

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〇渋谷駅前
「3ヶ月前ということは 戦争終結まで前線で戦っていたのね?」
風二 (ふじ)「もういいですか? 人を待っているので・・・」
リポーター「青春時代を戦場で過ごしたわけでしょ? 『戦乙女』の噂は本当なのかしら?」
風二 (ふじ)「ッ! そんなこと──」
???「伏せろ!二等兵ッ──!!」
風二 (ふじ)「あっ!?」
リポーター「えっ、ちょっ! なにコレ、ピリピリするー!?」
やもり「いつまで伏せている、二等兵」
風二 (ふじ)「やもりさん」
やもり「久しいな、二等兵」
やもり「相変わらずの腑抜け面で安心したぞ」
風二 (ふじ)「・・・ほんとに来てくれたんだ」
やもり「『生き残れたら』 という約束だったからな」
やもり「まさか、 デートなどする日が来るとは」
風二 (ふじ)「って、やもりさん!」
やもり「なんだ?」
風二 (ふじ)「その格好・・・」
やもり「ん? お馴染みのバトルドレスだが?」
風二 (ふじ)「脱いでください」
やもり「もっ!?」
やもり「え、それって・・・ 『ここで』ってこと?」
やもり「いきなり野戦?いや市街戦? 初陣なのにそんな──」
やもり「この・・・どスケベがッ!」
風二 (ふじ)(スケベがスクランブルしている・・・)
風二 (ふじ)「やもりさん、 もう戦争終わってるんですから」
風二 (ふじ)「戦闘服はマズイですって。 武装解除しましょう?」
やもり「そう言われてもな」
やもり「私は戦闘服しか持ってないぞ?」
風二 (ふじ)「あ・・・」
  無理もない話だ。
  彼女は戦場しか知らない──
  『兵器』としてのみ
  扱われた存在なのだから──
やもり「安心しろ これはただのバトルドレスじゃない」
やもり「決戦(デート)仕様だからな」
風二 (ふじ)「決戦仕様?」
やもり「よく見ておけよ・・・」
やもり「・・・」
やもり「見るなッ!」
風二 (ふじ)「えぇ!?」
やもり「よいしょ、よいしょっと・・・」
やもり「おヘソ!」
やもり「どーだ、二等兵 ヘソ出しだぞー?」
やもり「いまの私は『ギャル』なのだよ」
風二 (ふじ)「いったい、 どの辺が決戦仕様なのか謎だけど・・・」
風二 (ふじ)(おヘソ・・・やもりさんの)
やもり「このギャルスタイルなら問題ないだろ?」
風二 (ふじ)「ダメ」
やもり「えー、ダメか? ギャルなのに!?」
風二 (ふじ)「やもりさん、少々鈍ったようですね?」
やもり「・・・なんだと?」
風二 (ふじ)「戦場では、 擬態の下手な兵士はタダの的でしたよ?」
風二 (ふじ)「じゃあ、今のやもりさんは・・・?」
やもり「完璧なギャルだろう? 一体なにがっ──」
美少女ちゃん「ぬぁッ!? なにゆえ街中に武装した女が!?」
美少女さん「おまわりさぁーん!」
風二 (ふじ)「そういうことです」
やもり「そん・・・な・・・」
やもり「『擬態のやもり』と呼ばれた私が・・・」
風二 (ふじ)「変態のやもり?」
やもり「ん?」
風二 (ふじ)「さあ、服を買いにいきますよ! このままじゃタダの的です!」
やもり「ん、一緒に服を・・・か デートっぽい感じだ」
風二 (ふじ)「やもりさん?」
やもり「よし、遮蔽物を利用して前進するッ! ついてこい二等兵ッ!」
風二 (ふじ)「・・・了解っ」
  条約違反の存在として、処分対象の彼女は
  兵器なんかじゃない
  決して──
やもり「いいダンボールがあったぞ。 これを被って進もう」
風二 (ふじ)「普通に歩いていきましょう 手つなぎますか?」
やもり「もっ!?」
  処分なんて、絶対にさせない
  これは僕の、最後の任務だ──

コメント

  • ヤモリさんが可愛らしい天然さんというだけではなく、排除される対象としての存在だということに、心がキュッとします。そしてそれを阻止しようとしている彼の覚悟も見えて、これから始まる壮大な物語の予告編を見ているようでした。
    もっ、が癖になります。

  • やもりさんの可愛らしいビジュアルと、野戦?いや市街戦?のステキな脳内に参りました。その一方で、物語の底流に流れる大きなストーリーに彼女達が翻弄される姿もありありと想像でき、1000字以内と思えない充実感です!

  • 続きが気になりました!

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