〇赤（ダーク）
舘マモル「犯人に繋がる点を整理しよう」
「全ては先月、 剛力キョウカ絞殺事件から始まった」
「死体遺棄の現場には、液晶画面が割られたスマホと」
「ハイヒールの足跡」
「それに」
「X病院でしか処方されない、特注品の栄養サプリメントが落ちていた」
「今月に入り、この事件を模倣したような殺人未遂事件が連続して３件発生」
「何れも深夜に背後から襲われ、被害者は犯人を確認できず、目撃情報も無し」
舘マモル「捜査は難航している」
舘マモル「剛力キョウカはアイドル・響スイの熱狂的なファン、通称・『ヒビカシ』だった」
舘マモル「ヒビカシたちは、キョウカとSNSでトラブルを起こしていた」
舘マモル「キョウカの遺体の近くで発見された栄養サプリメントが、」
舘マモル「アイドル響スイに処方されたモノという裏も取れたので」
舘マモル「私は剛力キョウカ絞殺事件及び３件の殺人未遂事件の被疑者として」
舘マモル「響スイの事情聴取をした」
舘マモル「その結果」
舘マモル「ヒビキからは決定的な証拠や自白は得られなかったけど」
舘マモル「『ヒビカシ』を集めた宿泊ファンイベントに、潜入捜査を開始することにした」
舘マモル「ヒビキも怪しいけど」
舘マモル「『ヒビカシ』の３人のうちの誰かが犯人という可能性もある」
「イベントが始まった矢先に、私の頭上にシャンデリアが落下するという事故が発生」
舘マモル「これは単なる事故か、はたまた・・・」
舘マモル「そんな時、被疑者のヒビキが私の前に現れたのよ」
舘マモル「メイドの女装をしてね！」

〇洋館の玄関ホール
響スイ「さっきのシャンデリア落下は、事故じゃなさそうだね！」
響スイ「この事件、俺に狩らせてみない？」
舘マモル（女装男子のイベントワッショイ！）
舘マモル（イヤイヤ、狩らせてたまるか！）
舘マモル「アナタ、何でメイドの格好をしているのよ！」
舘マモル「そういう趣味の人!?」
響スイ「俺なりの捜査だよ」
響スイ「参考人の模倣することで、事件に近づけるかと思ってね」
響スイ「エリザさんには氷嚢を借りるついでに、メイド服も借りて来たんだ」
舘マモル「アナタはエリザが怪しいと思っているということ？」
響スイ「俺はね」
響スイ「ココに居る全員が怪しいし、犯人じゃないかと疑っている」
舘マモル「１番怪しい自分を差し置いて、 よくも大きく出たものね！」
響スイ「ゴメンね！」
響スイ「オレもある程度、犯人との接触を覚悟してこのイベントを仕掛けたのに」
響スイ「マモルさんまで標的になるのは予想外だったんだ」
舘マモル「アナタがイベントを仕掛けたですって？」
舘マモル「まるで犯人を知っていて、罠を仕掛けたような口ぶりね」
響スイ「そうだとも言えるし、 そうじゃないとも言える」
響スイ「もしかしたら、１人の犯行じゃない可能性もあると思っている」
舘マモル「まるで探偵ね！」
舘マモル「でも悪いけど」
舘マモル「それを推理するのは私の仕事よ！」
舘マモル「アナタには、むしろいつも通り行動してほしいの」
舘マモル「日常の中の些細な非日常が、止まった歯車のネジになるかもしれないからね」
響スイ「フフ、頼もしい！」
響スイ「じゃあこうしない？」
響スイ「刑事さんのプライベートを推理出来たら、俺の考察にノッてもらう」
舘マモル「私のプライベートですって？」
舘マモル「会って２回目の人間のプライベートを、どうやって？」
響スイ「俺、記憶力と観察眼はあるほうだから、その組み合わせで推理するよ」
舘マモル「ナメられたものね」
舘マモル「その代わり」
舘マモル「何も答えられなかったら、二度と余計な詮索や動きはしないでちょうだい」
舘マモル「捜査の邪魔よ」
響スイ「オッケー！ ありがとうマモちゃん♪」
舘マモル（マモちゃん・・・!?）
舘マモル（急に呼び名を変えても気恥ずかしくないだと!?）
舘マモル「あざと可愛すぎだろ──ッ！」
響スイ「にゃ？」

〇洋館の玄関ホール
舘マモル「では、問題よ」
舘マモル「今日、私が着ているワンピースは何年前に買ったものでしょう？」
響スイ「・・・」
響スイ「キミは嘘をつくのが下手だね」
舘マモル「エッ!?」
響スイ「やっぱりね。 小鼻が少し広がるから、分かるよ」
舘マモル「し、知らなかった・・・。 ナナコさん、本当？」
菜七子(ナナコ)「全然分からなかったです！」
舘マモル「カマかけたわねッ!?」
響スイ「ちゃんと考察したよ〜」
響スイ「ズバリ、 そのワンピースは借り物じゃない？」
舘マモル「!!」
舘マモル「なぜそう思うの？」
響スイ「お洒落なワンピースはネックレスやハイヒールのセットで買うことが多い」
響スイ「組み合わせを考えるのが、面倒だからね」
響スイ「ワンピースのサイズが合っているのに、ハイヒールは躓くくらい大きいなんて」
響スイ「滑稽だよね」
響スイ「ただでさえ歩き難い靴なのに、」
響スイ「わざわざ大きいサイズのハイヒールを選んで買うことはあり得ない」
響スイ「さらに言えば、」
響スイ「そのワンピースの腰リボンの端に、小さな刺繍が施されているのは知っている？」
響スイ「手縫いだから、メーカーの名前じゃない」
舘マモル「き、気づかなかった・・・」
響スイ「『O・K・A・R・I・K・A』」
響スイ「つまりそのワンピースは、」
響スイ「オカさんという苗字か、リカさんという名前の女性から借りたワンピース」
響スイ「キミの買ったモノじゃない」
菜七子(ナナコ)「舘さん、合っていますか？」
舘マモル「シノグの姉はリカ・・・結婚しているなら、シノグとは苗字は違うかもしれない」
舘マモル「このことは、 私とシノグしか知らないハズ！」
舘マモル「アナタは一体──!?」
響スイ「アッタリ〜！」
響スイ「じゃあ、シャンデリアの落下事件について検証しようか」

〇洋館の階段
響スイ「まず、剛力キョウカ絞殺事件と今回のシャンデリア落下事件は」
響スイ「切り離して考えてみよう」
響スイ「殺人事件は、 俺が犯人かもしれないからね！」
舘マモル（女装を解いてくれて良かったわ。 萌え死にするかと思った）
響スイ「マモちゃん、ちゃんと聞いてね？」
舘マモル「聞いてるわよッ！」
響スイ「落下したシャンデリアの接続部には」
響スイ「あるハズのボルトが無かった」
響スイ「そして、接続部近くのビニール生地が焼けたような跡が残っていたんだね」
舘マモル「何らかのタイマー機能付き可燃物を使ってシャンデリアを落下させて」
舘マモル「落下後に犯人がボルトを回収したんじゃないのかしら」
響スイ「ボルト回収のメリットは？」
舘マモル「指紋とか、証拠になるような跡が付いていたんじゃないの？」
響スイ「30点！」
響スイ「俺の手がボルトだとして」
響スイ「ココから落ちても──」
「ヒビキ──!?」
響スイ「床に、落ちた形跡があるハズだよね〜」
舘マモル「何してるのよ！」
舘マモル「２階から飛び降りたかと思ったじゃない！」
響スイ「フフ。 このシャンデリアも同じかも」
響スイ「ボルトがあるって思いこんでいるだけかなってね！」
舘マモル「ボルトは最初から無かった!?」
舘マモル「じゃあ、どうやって天井から吊り下げていたの？」
響スイ「マモちゃんは覚えている？」
響スイ「転ぶ前に白いスモークが漂っていたよね」
舘マモル「ええ。PVRって演出もスゴいなと思ったわよ」
響スイ「俺もそう思っていたけど、 違うんだよね、ナナコさん？」
菜七子(ナナコ)「ハイ、本日はスモークの演出は用意していません！」
舘マモル「じゃあ、アレは何だったの？」
響スイ「う〜ん すぐに教えても良いけど」
響スイ「その前に確認！」
響スイ「このイベントに参加しているヒビカシ三人娘の家が経営している会社の中で」
響スイ「『化学工業』を経営している家は無いのかな？」
舘マモル「西園寺タイコは財閥のお嬢様。 伊集院コマチは医療法人グループの理事の娘」
舘マモル「財前クレオは元総理大臣の孫娘」
舘マモル「待って」
舘マモル「西園寺タイコは財閥のお嬢様だから、その中に関連会社はあるかもしれないわね」
舘マモル「剛力キョウカの件を含め、１人ずつ聞き込みをしましょう」
響スイ「生の話を聞きたいから、通話を繋げたまま聞き取りをしてくれない？」
舘マモル「分かったわ」
響スイ「あれ、もしかして」
響スイ「俺のこと、信用してくれたの？」
舘マモル「まさか」
舘マモル「裏切ったと分かれば、容赦なく撃つわ」
響スイ「いいよ！」
響スイ「キミになら、撃たれたい」
響スイ「その代わり、 間違いなくハートを撃ち抜いてね！」
舘マモル（クッ、 逆に私が撃たれた気分よ！）
舘マモル（調子が狂う男ね、ホントに！）

〇城の客室
伊集院コマチ「剛力キョウカについて？」
伊集院コマチ「そう、アナタはキョウカの友人だったのね」
伊集院コマチ「私はクレオが犯人だと思うわ」
伊集院コマチ「許せないってキレていたもの」
伊集院コマチ「タイコも躍起になって、特定班を扇動していたから」
伊集院コマチ「怪しいかもね！」
伊集院コマチ「え？私は・・・」
伊集院コマチ「剛力キョウカにイラっとして、批判ツイにイイネを連打しただけよ〜」
伊集院コマチ「そういえば」
伊集院コマチ「メイドのエリザについてはご存知？」
伊集院コマチ「どこかで見たと思っていたけど、タイコの推し友だと思うわ」
伊集院コマチ「抽選に外れたからって、スタッフとして潜り込むなんてプライドは無いのかしら」
伊集院コマチ「エリザもかなり怪しくない？」
伊集院コマチ「化学工業？」
伊集院コマチ「家は病院よ。関係無いわ」

〇豪華な部屋
財前クレオ「犯人は」
財前クレオ「タイコとコマチに間違いないわ！」
財前クレオ「前にも似たような事件があってね」