第3話 『流れ星と願い事』(脚本)
〇花火職人の作業場
七蔵「この打ち上げ筒、俺が作ったもんじゃねえか!」
角谷ナナ「はあ?」
角谷ナナ「それ、おじいちゃんが古道具屋から買って来たものだと思うけど・・・」
七蔵「いや、古ぼけてるが俺が作ったもんに違いねぇ、ほら!」
七蔵が花火筒をナナに見せると、そこには3つの「七」がトライアングル状に配置されたマークが描かれていた。
七蔵「これが動かぬ証拠でい!」
角谷ナナ「このマークが・・・何?」
七蔵「だからよ・・・」
プルルルル・・・
角谷ナナ「もう、こんな時に誰・・・!」
七蔵「それ、なんだ?」
角谷ナナ「もしもし・・・おじいちゃん? うん、もう着いたよ」
〇病室
角谷源二「ナナ、ちゃんとやってるんだろうな」
そんなことより、さっき借金取りの人がうちに来たよ
角谷源二「・・・む」
完全にヤクザじゃん!
どうしてあんなところから借りたりするの?
角谷源二「花火大会終わらせて、借金返せば関係なくなる奴だ」
それはそうだけどさ・・・
角谷源二「とにかく、てめえは花火を早く──」
あ、そうだ
おじいちゃん、七蔵さんって職人さんのことなんだけど
角谷源二「七蔵? ・・・誰だそりゃあ」
誰って・・・。
ほら、個性強めの、ちょんまげで
角谷源二「なに馬鹿な事言ってやがんでぇ」
あー、まあいいや
明日様子見にそっち行くから、その時に直接聞く──
角谷源二「ッ馬鹿野郎!!」
〇花火職人の作業場
見舞いなんざいらねえ!
半人前にもならねえド素人のくせに、そんなことしてる場合か!
七蔵「!?」
七蔵「もしや、その中に、ちいせぇ人が入ってるのか?」
角谷ナナ「・・・はあ」
〇病室
角谷源二「花火は生半可じゃねえんだ。 人を楽しませるってのはなぁ──」
あっそ、わかった。
じゃあお見舞い行かないから
角谷源二「てめぇ、ちゃんと最後まで話を聞け!」
角谷源二「・・・ああクソ、こんな時に信吾がいてくれりゃぁ」
〇花火職人の作業場
角谷ナナ「花火師なんかしてなければ、お父さんは生きてたよ」
お前──
ナナは源二の言葉を遮って電話を切る。
作業場の机にスマホを置くと、気持ちを静めるようにため息をついた。
角谷ナナ「誰か、新しい職人を──」
七蔵「それは、からくり箱のたぐいか?」
角谷ナナ「ちょっと、勝手に触らないで」
七蔵「こんな狭いところに人が・・・」
七蔵はスマホを手に取りしげしげと眺める。
角谷ナナ「・・・・・・」
〇病室
角谷源二「七蔵? ・・・そんなの知らねえよ」
〇花火職人の作業場
角谷ナナ「おじいちゃんも、知らない人・・・?」
七蔵「よっと・・・今出してやるからな!」
七蔵はスマホを持つ手に力を込めると、二つに折り曲げようとする。
角谷ナナ「ちょっ・・・! ストップ、ストップ!」
七蔵「あっ!?」
七蔵「なんでぇ! その中にちいせぇ人がいんだろ!?」
七蔵「助けてやらねえと・・・」
角谷ナナ「その常識外れの言動と格好・・・花火の妖精にしては可愛くないけど」
七蔵「ん・・・?」
角谷ナナ「ねぇ、この打ち上げ筒を作ったって・・本当?」
七蔵「おう。 この七印(しちじるし)、間違いねえ!」
角谷ナナ「と、いうことは・・・」
七蔵「ん?」
角谷ナナ「七蔵さんは花火を作れたり・・・する?」
七蔵「その話なんだけどよ、ここは花火屋なんだろ?」
七蔵「地獄でも花火屋に落としてくれるたぁ、神様も粋なことしてくれるぜ」
角谷ナナ「うん、地獄じゃないけどね」
七蔵「地獄じゃねえのか? ってことは、その前の閻魔の裁き・・・」
角谷ナナ「ていうか、神様、か・・・」
〇花火職人の作業場
角谷ナナ「これから一人で、どうしよう・・・」
角谷ナナ「!!」
角谷ナナ「どうか花火大会が成功しますように!」
〇花火職人の作業場
角谷ナナ「えっ! そういうこと!?」
七蔵「ん?」
角谷ナナ「神様、ありがとう!」
七蔵「んん? なんだ?」
角谷ナナ「つまり七蔵さん、花火作れるんだよね!?」
七蔵「まあな、城前屋の七蔵っていやぁ、花火狂いで有名だったんだぜ?」
角谷ナナ「花火狂い・・・」
七蔵「この花火筒だって、大川の花火大会で打ち上げるために作ったんだからよ」
角谷ナナ「花火大会で・・・!」
ナナはおもむろに七蔵の両手を取ると、彼に希望に満ちた目を向ける。
角谷ナナ「ようこそ! 即戦力~!」
七蔵「なんでぇ、どうした」
角谷ナナ「やっぱり、お星さまが願いをかなえてくれたんだ・・・」
七蔵「あん? お星さま?」
角谷ナナ「うん、きっとそう!」
角谷ナナ「七蔵さん、私と一緒に花火大会成功させよう!」
七蔵「お! いいねぇ! その言葉を待ってたぜ!」
ナナと七蔵はお互いに手を取り合い、笑顔を見せた。
〇黒
残り、あと48日──