鬼面人の唐紙

キリ

-花見と唐紙-(脚本)

鬼面人の唐紙

キリ

今すぐ読む

鬼面人の唐紙
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇桜並木
環(生きてる...)
環(全部、夢だった──)
環(そう思いたかったが)

〇木の上
環「クッッッ! ! !」

〇桜並木
環(腕がかなり痛む...)
環(しかし、手当てが施されていた...)
  環の傷痕は広範囲だった
  だが、その傷を包帯で止血されていたのだ
環(あの鬼は...それともう一人、 刀を抜いたあやつは...)
「...さま」
「お侍様ってば!」
唐紙「おおおオイラの声、聞こえてる? ? ? ?」
環「あ、ああ大丈夫だ、ちょっと考え事を...」
唐紙「あっ...そっか」
唐紙「傷...っ」
環「ん?」
唐紙「あああっ!いやいいんだ、うん、」
唐紙「あ!花見!花見しようぞ♪」
環「ああ」
環(唐紙殿...いま何か言いかけたか?)

〇桜並木
唐紙「わあ~綺麗だな~」
環「そうだな」
唐紙「クンクン...」
唐紙「へっ...」
唐紙「ックシュ」
唐紙「ぶわあ~」
環「ふふっ」
環「鼻があるのだな」
唐紙「なんじゃそれぇ!」
唐紙「オイラのっぺらぼうじゃないからの!」
環「そうだったのか」
唐紙「もう~~! !いじめないでくれぇ!」
環「...知りたいと思ったんだ」
環「唐紙殿のことを」
環「今のところ、桜が好きということしか 知らないからな」
環「その一枚紙の下は、もしや口だけなのかと」
唐紙「・・・」
唐紙「・・・御免」
唐紙「オイラ、顔を見られとうなくて...」
環「あ...」
環「そうなのか」
環「すまない!野暮なことを聞いたな」
唐紙「ううん」
上司「お!環じゃねえか」
環「上司殿」
上司「ん~?」
上司「ほお~おめえに男か?いいねいいね」
環「そうではないっ...」
環「唐紙殿、この者は私の上司で、 剣の扱いを学ばせてもらっている」
上司「どーも」
唐紙「ははっはじめましち...!」
上司「おいおい、噛んじまいやんのっはは そんな構えんなって」
上司「環、友だちすくねえから、 仲良くしてやってな」
上司「結構べっぴんだし☆」
唐紙「うん!お侍様、すごくたくましいんだ!」
唐紙「オイラ、お侍様みたいになれるよう 頑張るよ!」
環「こっこれ!二人ともやめないか!」
環「そういう褒...めるのは、私が居ないところで話してくれ...」
環「行くぞ唐紙殿!上司殿!また」
上司「・・・よかったな」

〇桜並木
  すっかり夜になってしまったものの、
  桜は月明かりに照らされ、ひかり輝く
  夜桜になっていた
唐紙「ああ~楽しかったあ~~!」
環「わたしもだ、こんなに気持ちが 和んだのはいつぶりだろうか」
唐紙「そんなに、お侍様って大変なの?」
環「村人たちに危害が及ばないよう、常に 緊張感を持っているからな」
環「人々を守るために、鍛練は欠かせぬ」
環「だが今日は、そんなこと 考える余裕も無かった」
環「それくらい、楽しめたということだ 感謝するぞ、唐紙殿」
唐紙「...そっか」
唐紙「息抜きできたってことじゃの♪」
環「...ああ」
なまはげ「そうがそうがぁ」
なまはげ「えがったえがった」
環「っ! !」
環「唐紙殿!伏せろ!」
「うわっ!」
  唐紙を払い除け、環は
  正体不明の相手に鞘を抜いた
なまはげ「ぐぬぬっ!この尼ぁ! ! !」
  鬼は独特ななまりで、その手には営利な
  刃物を持っていた
環「いかがわしい奴めっ...」
唐紙「待て待て待って!お侍様!」
唐紙「この人は、鬼じゃのうて!神様じゃぁ!」
環「か、神?」
唐紙「そうそう!」
唐紙「すまんのぉ...なまはげ殿」
なまはげ「なんじゃ己はぁ、知らんぞ」
唐紙「ああ、この姿か」
  チラリと唐紙は、環の表情を見てから
  すうっと息を吸った
唐紙「尼はてめえだろうよぉ、はげ」
なまはげ「はげでは無い!なまはげだぁ!」
環「はっっ...っ」
なまはげ「っておおお!そなたか」
なまはげ「小鬼よ」
環「お、鬼? ! !」
唐紙「・・・」
なまはげ「あぁ・・・」
なまはげ「(小声で) 不味かったか?鬼と呼ぶのは・・・」
唐紙「別に」
唐紙「隠すことでも無いしな」
唐紙「・・・?」
環「唐紙殿は...鬼だったのか..」
環「答えろ!」
環「私に近づいたのは、何が目的だ!」
  環の白目は血走っていた
  鬼を討伐するのも侍の行い、
  だかその標的が、鬼ではないと
  信じ始めていた相手だったなんて━━
  数分前まで、ひたむきに楽しんでいたはずの相手がすぐ、倒すべき相手に
  なってしまったのだから
  顔は強ばっているが、刀を持つ手は
  僅かに震えていた
  その震えが、唐紙に隠せるわけが無い
唐紙「・・・」
唐紙「・・・お侍様、」
唐紙「怪我の具合は?」
環「っ!」
環「なぜ聞く」
唐紙「オイラを斬るのだろぉ? 鬼の討伐やらはお侍様の "任務"ってやつでしょ」
唐紙「最期に、それだけ、知りたいんだ」
唐紙「...言っておくが、鬼は」
唐紙「嘘が付けねえ」
唐紙「心配ってやつを、冗談で言ったりしねえよ」
唐紙「少しでも痛いってんなら...お侍様も、」
唐紙「嘘偽り無く、 ちゃんとオイラに教えてくれっ!」
環「っっ...」
  なぜだ...
  貴様は鬼なんだろう?
  なぜ人間の私の、怪我の心配なんて...
  唐紙殿が、よく分からない
  しかし、ここは...
環「...い」
環「傷は痛む...だがそれよりも、」
環「唐紙殿がっ...鬼だということが片腹痛い」
唐紙「っ!」
環「なあ」
環「誰かと一緒に花見がしたいと言ったのは 嘘か?」
唐紙「・・・」
唐紙「本当だ」
唐紙「...さ、桜が...綺麗だと思うのも... 嘘ではない...」
唐紙「わ、悪いのかのぉ? ! ? !」
環「・・・っ」
環「・・・わかった」
唐紙「っ?」
環「この手当、貴様だったのだな」
環「"最期"などと言うな」
環「私が恩人を切り捨てることは無い」
環「今日1日と、そして昨日救ってくれたこと」
環「ありがとう」
唐紙「っ!」
唐紙「鬼に礼を言うなんて、お前、変なやつ」
環「そういう唐紙殿も、おかしなやつだろ?」
唐紙「...ふふっ」
唐紙「お互い様か」
  こうして、唐紙との
  不思議な花見は終幕した

〇桜並木
「なるほど、奴が鬼だったとは...」
「くっくっく...吹っ掛けてみるか」

次のエピソード:-侍の上司-

ページTOPへ