偽りのトリアーダ

草加奈呼

エピソード16 前を向いて(脚本)

偽りのトリアーダ

草加奈呼

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〇草原
テオドール「何、自分だけいい人のフリして 終わろうとしているわけ?」
テオドール「ねぇ、“お父さん”」
テオドール「・・・」
リア「叔父様・・・!?」
カルステン「おまえなぁ、約束が違うぞ」
テオドール「約束は破ってないよ」
テオドール「“父さん”には言ってないもんね」
カルステン「・・・・・・」
ポポロム「どういう事ですか、叔父さん!!」
カルステン「どうもこうもねぇよ」
カルステン「テオドールは、正真正銘俺の息子だ」
アルフレッド「待って、ください・・・。 テオは、たしかに母が産んだはず・・・!」
カルステン「ああ、訂正しよう」
カルステン「俺と、レナーテの子だ」
リア「そんな・・・。 叔父様と、お母様が・・・」
リア「一体、いつ・・・」
ポポロム「そうか・・・昔、あの時・・・!」
アルフレッド「まさか──!」

〇綺麗な一戸建て
  19年前──
カルステン「やあ、いらっしゃい。 ダニエル、レナーテ」
ダニエル「おお、久しぶりだな、カール!」
レナーテ「久しぶりね」
アルフレッド(5歳)「こんにちは」
カルステン「アルフレッド君、大きくなったなぁ」
カルステン「・・・で、こっちが・・・」
ダニエル「ああ、あの時の赤ん坊だ」
レナーテ「リアと名付けたわ」
リア「あーうー」
カルステン「リアちゃんか。 将来が楽しみだな」
カルステン「おーい、ポポロム!」
ポポロム「・・・なに?」
カルステン「こないだ言っていた、ゴンドル族の 女の子だ」
カルステン「リアちゃんって言うらしい」
ポポロム「リアちゃん・・・」
レナーテ「ほら、リア。 ポポロムお兄ちゃんよー」
リア「ぽー ぽー」
ポポロム(僕の名前を!?)
ポポロム(かわいいなぁ・・・)
カルステン「ポポロム、おまえの方がお兄さん なんだから、アルフ君と遊んでやれ」
ポポロム「うん、いいよ。 キャッチボールでもする?」
アルフレッド(5歳)「うん!」
レナーテ「アルフレッドも、遊び相手がいて嬉しそうね」
ダニエル「そうだな」
カルステン「今日は泊まっていけるんだろ?」
ダニエル「ああ、久々に、酒でも酌み交わすか」
カルステン「いいねぇ」
レナーテ「ふふ、こっちはこっちで仲良しね」

〇豪華なリビングダイニング
「やめて、カール!」
レナーテ「なんて人なの! 隣でダニエルも子供達も寝ているのよ!?」
カルステン「ダニエルは起きてこないさ。一度寝て しまったら、なかなか起きてこない」
レナーテ「ひどい! 昔はそんな素振り、 一度も見せなかったくせに・・・!」
カルステン「そりゃそうさ。俺はな・・・」
  おまえが、ダニエルのものになるのを
  待っていたんだよ───
「ああっ・・・」
「ああ・・・うぅっ・・・」

〇豪華なベッドルーム
  ──言えない。
  言えるはずがない。
  優しいダニエル。
  きっと知ってしまったら、ダニエルは・・・
レナーテ「ねぇ、ダニエル・・・」
ダニエル「ん・・・?」
レナーテ「私・・・もう1人子どもがほしいわ・・・」
ダニエル「えぇ? リアもいるのに、大変じゃないか?」
レナーテ「いいの、私──」

〇豪華な部屋
  テオドールと名付けた。
  とても、かわいかった。
  だけど────
レナーテ「テオドール! なんであんたはそう、 アルフレッドのものばかり欲しがるの!!」
テオドール「だってぇ・・・兄さんが好きなもの、 僕も好きになっちゃうんだもの・・・」
  ────え?

〇豪華なリビングダイニング
  俺はな・・・
  おまえが、ダニエルのものになるのを
  待っていたんだよ────

〇豪華な部屋
レナーテ(う、そ・・・)
  う そ で し ょ ?

〇豪華なリビングダイニング
レナーテ「テオドールのDNA鑑定をお願い」
カルステン「それはいいが・・・知ってどうする?」
カルステン「俺は、認知なんぞできんぞ」
レナーテ「安心して。 そんな事、死んでも頼まないわ」
カルステン「じゃあ、どうして・・・」
レナーテ「あなたと同じなのよ、あの子・・・」
レナーテ「アルフレッドのものばかり欲しがるの、 あの子!!」
レナーテ「昔のあなたと同じよ!!」
レナーテ「はっきりさせたいの」
レナーテ「私が、はっきりさせたいだけなの・・・」

〇部屋の扉
テオドール「・・・・・・」

〇豪華なリビングダイニング
カルステン「DNA鑑定の結果が出た」
カルステン「テオドールは・・・・・・俺の子だ」
レナーテ(ああ・・・・・・)
レナーテ(やっぱり・・・・・・)
カルステン「この事、ダニエルには・・・」
レナーテ「言えるわけないでしょ!!」
レナーテ「言ったら、あなただって殺されるわよ!?」
レナーテ「誰にも話さない・・・ あなたも、私も、」
レナーテ「墓場まで持って行くのよ・・・」

〇高級一戸建て
  つらい

〇豪華な部屋
  つらい

〇豪華なベッドルーム
  つらい

〇街中の階段
  テオドールの存在が、
  つらい・・・
レナーテ「お願い、テオ・・・」
レナーテ「私と一緒に死んで・・・」
テオドール「か・・・あ・・・さ・・・」
レナーテ(ああ・・・・・・)
レナーテ(やっぱりダメ・・・!)
レナーテ(私には、テオを手にかける事なんて できない・・・!!)
テオドール「やめて、母さん・・・!」
レナーテ(あっ・・・)

〇空

〇病院の診察室
カルステン「ダニエル・・・ レナーテの事は、本当に残念だった・・・」
ダニエル「それなんだがな、カール」
ダニエル「アルフレッドが、 テオドールを疑っている」
カルステン「えっ?」
ダニエル「しかし、俺がみた限り、 テオドールの態度は変わらないし・・・」
ダニエル「おまえの診察で、 何かわからないかと思ってな」
カルステン「わかった。 まずはテオ君と、2人で話をさせてくれ」

〇病院の診察室
カルステン「こんにちは」
テオドール「こんにちは」
カルステン「自分の名前、言ってみてくれる?」
テオドール「テオドールだよ」
カルステン「最近、自分で不思議だなーと、 思う事はない?」
テオドール「・・・」
テオドール「うーん、特にないけど」
カルステン(うん・・・。 二重人格、というわけでもなさそうだな)
カルステン「お母さんと、出かけた日の事を話せる?」
カルステン「無理にとは言わないけど・・・」
カルステン「どこかへ、行こうとしていたのかな?」
テオドール「・・・ヘイロ岬?」
カルステン「えっ?」
テオドール「景色が綺麗だからって」
カルステン(レナーテ・・・ おまえ、まさか・・・!!)
テオドール「ねえ、こんな診察、 意味ないんじゃない?」
カルステン「・・・え?」
テオドール「あの時の事をほじくり返して、」
テオドール「僕の心の傷を抉るつもり?」
カルステン(なん、だ・・・? この子・・・)
カルステン(本当に12歳の少年か・・・!?)
テオドール「こんなのつまんないから、」
テオドール「適当に診断名つけて父さんに言っておいてよ」
カルステン「は・・・?」
カルステン「そうはいかない。 俺は医者として────」
テオドール「だって、バラされたくないでしょ──」
テオドール「──お父さん?」

〇草原
カルステン「俺は、後悔した」
カルステン「レナーテを死なせてしまった事、 テオの脅迫に抗えなかった事、」
カルステン「そして、正しい診断が出来ずに、」
カルステン「おまえという怪物を生み出してしまった事をな・・・」
「・・・・・・」
ディルク(警察官)「だからお前、 あんなに逮捕に拘ってたのか・・・」
カルステン「そうだ」
カルステン「逮捕して、措置入院させる事が、 俺の目的だった」
リア「ひどい・・・ひどいです、叔父様・・・」
カルステン「ああ、何度でも言ってくれ・・・」
カルステン「君たちには、 何を言われても仕方がない・・・」

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コメント

  • イケオジがイケオジ過ぎた…!
    テオの人格はカール譲りだったんですね。
    テオのことが気になっていましたが、丁寧に過去が書かれていて、すごく感情移入しちゃいました。

  • カールおじさん、悪い男!😳
    レナーテさんは気の毒でしたが「隣で夫が…」という台詞でイケオジにちょっとときめいていたのではと勘繰ってしまいました🙄w
    最後までドロドロ恋愛展開が見られて大満足です。
    最終回楽しみにして読みます。

  • カールおじさん……😱😱😱クソヤロウだったんですね、だからあんなにリアを守りテオを捕まえようと。後悔するならするなという話ですが、贖罪の気持ちを抱え生きるのもまたリアリティがあって、なぜかショックな気持ちが妙に和らいでいます。
    ここからはハッピーエンドに向かっていくのでしょうか?
    続きもまた楽しませていただきます!

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