第2話 未来を知りたくばお任せあれ(脚本)
〇散らかった部屋
小林啓介「綾音さんが・・・殺された・・・?」
スマホごしに伝えられた綾音さんの悲報。
俺はすぐに信じることはできなかった。
辰郎「俺が見つけたんだけどよ・・・綾音ちゃん、店の真ん中で血を流して倒れてて・・・」
古屋辰郎「体がめちゃくちゃに切られてたんだよ!」
古屋辰郎「それで、警察が従業員にも話が聞きたいって・・・だから・・・」
小林啓介「わかりました、すぐに行きます!」
〇店の入口
店の前にはすでにパトカーが何台も止まっていて、何枚ものブルーシートが、覆うようにして店に張られていた。
警察官や検査官らしき人達が何度も店の出入口を行き来している。
小林啓介「マジなんだな・・・」
〇シックなカフェ
警察官に案内されて店に入ると、辰さんと弘子の姿が見えた。
ふたりともひどく緊張しているようだった。もちろん俺も。
篠田弘子「啓介・・・!」
篠田弘子「綾音さんが・・・綾音さんが・・・うぅ・・・!」
小林啓介「・・・わかってる」
篠田弘子「なんで・・・どうして・・・信じられない・・・!」
俺がふたりと合流すると、すぐにひとりの男が近づいてきた。
???「突然、お呼びしてすみません。 さっそくですが、原綾音さんについてお聞かせ願えますか」
男は藤山徹といい、この現場の責任者だという。
藤山徹「彼女の体にはいくつもの切られた傷がありました。 自殺や事故の可能性はまずないでしょう」
弘子が「ひっ・・・!」と息をのむ。
壮絶な最期だったのだろう。
綾音さんの遺体はすでに運ばれた後だったが、店内のあちこちに飛び散った血の乱れ具合からそう推察できた。
藤山徹「原綾音さんの周辺や近状で何かおかしなことはありませんでしたか?」
藤山徹「人間関係や金銭事情など、なんでもいいので話してください」
小林啓介「特に何も・・・そもそも綾音さんが誰かの恨みを買うとは思えません」
篠田弘子「私もそう思います。あと、借金とかもなかったと思います」
篠田弘子「副収入でピアス買ったとか言ってたし・・・」
藤山徹「なるほど。お店にカメラなどはありますか?」
古屋辰郎「ありません・・・先週ぐらいまでは置いてたんですけど・・・」
古屋辰郎「なんか急にカメラの調子が悪くなったからはずしちまって・・・まさか、こんなことになるなんて思わなかったしよ・・・」
藤山徹「わかりました。では・・・」
藤山徹「念のため、皆さんのアリバイを聞かせてもらえますか?」
藤山さんの声のトーンが変わる。むしろこれが本題だったのかもしれない。
より一層の緊張に締めつけられて、胃が痛くなる。
藤山徹「原綾音さんが殺されたと思われる時刻、どこにいましたか?」
小林啓介「・・・俺はバイトが終わってから、ずっと家にいました。証人はいないです」
篠田弘子「えっと、私はスーパーとコンビニに寄ってから家に帰りました。 家にいる間は母と一緒でした・・・」
古屋辰郎「お、俺は仕事が終わった後、適当にぶらついてから店に戻りました・・・」
藤山徹「なぜ、一旦店を出たのですか?」
古屋辰郎「いや、本当になんとなくなんですけど・・・まいったな・・・」
藤山さんは難しそうな顔をしている。
口にこそしないが、俺達を疑っている様子がありありと伝わってくる。
古屋辰郎「はあ、女房には逃げられ、今度は綾音ちゃんが酷い目に遭って・・・つくづく女を不幸にする男だよ俺って奴は・・・」
小林啓介(そういや辰さん、奥さんの浮気が原因で別れてたんだっけ・・・?)
その時奥さんからもらった手切れ金で始めたのが今のカフェ『ジャック』だったという。
結局、事件についてはほとんど何もわからず、俺達が解放されたのは夜も遅くなっての事だった。
〇雑居ビル
事件から3日後、俺は弘子を食事に誘った。
綾音さんが殺されてから、すっかり元気がなくなってしまった弘子をなぐさめたかったのだ。
小林啓介「『今、着いた』送信っと」
弘子を待つ間の時間つぶしにと、俺はスマホの写真を開いた。
そして5枚目の写真に目がとまる。
小林啓介「あ、これ飲み会のときの・・・」
飲み屋の店員さんに撮ってもらった、カフェ『ジャック』メンバーの集合写真。
俺と弘子、辰さん、そしてまだ生きていた綾音さんが写っている。
小林啓介(あの時は、まだ綾音さんが死ぬなんて思ってもいなかったな・・・)
小林啓介(綾音さんはいくら飲んでも酔わなくて、逆に辰さんは酔いに任せてなんでもベラベラしゃべって、弘子は笑いまくってて・・・)
だけど、あんな風にみんなで楽しくお酒を飲むことはもう二度とないのだ。
小林啓介「・・・これから、どうなるのかな?」
宇利杉瓜夫「――いい写真ですねえ」
小林啓介「なっ・・・!?」
いつの間に現れたのか、宇利杉が勝手に俺の写真をのぞいていた。
宇利杉瓜夫「ここ最近撮ったものでしょうか。いくつか未来と過去が見えます」
宇利杉瓜夫「撮れたての写真なら一番よくわかるんですがねぇ」
そして綾音さんを指さす。
宇利杉瓜夫「彼女は危険な運命の中にいますねえ」
小林啓介「・・・もう手遅れだよ」
宇利杉瓜夫「これは失礼しました。まだお若い身で可哀そうに」
宇利杉瓜夫「どうやらあなたは想像以上に厄介なことに巻き込まれたのですねぇ・・・」
小林啓介(! こいつ・・・事件の事知ってるのか? いや、まさかな・・・)
背筋に冷たいものが走る。
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