母を肯定できなくてー宗教2世の記録ー

咲良綾

ep6.恋愛シャットダウン(認知の歪み)(脚本)

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咲良綾

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〇カラオケボックス
「戦隊乙女ゲーム完成おめでとうございます!」
Juno「ありがとう~!」
綾姫「あれ、スチル何枚描いたんですか。 すごかったですよね!」
Juno「小さいカットインもたくさん描いたからねー」
くさかなこ「立ち絵もめちゃくちゃ動きましたよね! 怪人も個性的で面白かった~」
綾姫「声優の皆さんもお疲れ様でした~」
DOM「いやー、戦隊監修で参加したはずが 声まで使ってもらえるとは」
hige「DOMくん武術やってるからか、 発声がしっかりしてるんだよね」
  創作活動を通じて、年に一回程度のオフ会参加を重ねるうち、
  男性とも気安く交流できるようになった。

〇女の子の一人部屋
DOM「ニチアサ見た?」
坂下明菜「見たよー」
  この頃は、作業しながらメッセージ機能で個別チャットを楽しむのが流行っていた。
  DOMさんはJunoさんの大学の後輩だ。
  3つも年下だし、こちらの対応でメンタルがブレたりせず、さっぱりしている。
  共通の知り合いが多い安心感もあり、構えず接することができた。
坂下明菜「あー、戦隊と仮面ライダーの映画観に行きたい」
坂下明菜「でも大人の女一人で初参戦はハードル高いよ」
DOM「俺、一緒に行きましょうか?」
坂下明菜「は!?いやいや、うち熊本だよ!」
坂下明菜「無理でしょー」
DOM「なんで?飛行機ですぐじゃん。 熊本城見てみたいし」
坂下明菜「え?いや・・・ 言われてみれば、物理的には可能だけど」
  独身男性のフットワークって、
  こんな感じなの?
DOM「おお、泊まっても3万円台か。ありだな」
坂下明菜「ありなの!? ほんとに、本気?」
DOM「いいよー。 日記に書いてもいいよね?」
坂下明菜「確かにネタとしてはおいしいかも・・・」
DOM「ヒーロー映画観に熊本行ってきましたーって」
坂下明菜「あはは!」
坂下明菜「戦略ゲームの舞台になった居酒屋案内するよ」
DOM「そうそう、あそこ行ってみたい!」
DOM「なんかノリで話決まりそうだけど大丈夫?俺は全然いいけど、綾さん困ってない?」
坂下明菜「他に同行者探すあてないもん、正直助かる」
DOM「じゃあ、飛行機のチケット買っちゃうよー」
坂下明菜「おー!」

〇路面電車のホーム
綾姫「ほんとに来たー!」
DOM「どーもこんにちはー 街から城が見えていいね!」
綾姫「ヤバい、DOMさんがいる、ウケる」
綾姫「加藤清正像の前で仁王立ちしてみて!」
DOM「おお、加藤清正。素晴らしいM字開脚ですね」
綾姫「M字www待ってwww」

〇大衆居酒屋
綾姫「映画面白かったねー」
DOM「ここが例の居酒屋かー!」
DOM「おっ、ゲーム会社のキープボトルある!」
綾姫「ゲームにも出てくるコロッケ、おいしいよ!」
DOM「うはー、でかい!いいねぇ~!」

〇大衆居酒屋
DOM「綾さんはさ、男性苦手じゃん。 なんで俺とは二人で会ってくれるの?」
綾姫「・・・え?だって・・・ DOMさんなら、もし何かあったとしたら」
DOM「あったとしたら?」
綾姫「殴ってくれる人がいっぱいいるし」
綾姫「わ!ひっくり返った!」
DOM「確かに、確かにな! 怖いお姉さんたちがいっぱいいるよ!」
DOM「やらかしたら破滅だよ!」
綾姫「でしょー?あはははは!」
DOM「綾さんは、恋愛しないの?」
綾姫「あー、それはねぇ・・・」
綾姫「・・・」
綾姫「親が、宗教やってて」
綾姫「同じ宗教の人としか 結婚しちゃいけないんだよ」
綾姫「本当はやめたいから信者と恋愛したくないし、親と縁を切るのもつらいし、なかなかね」
DOM「ふーん、そうか・・・」
DOM「でも親は親、綾さんは綾さんだと思うよ」
綾姫「そうだね・・・」
  今考えたら、この時のDOMさんには多少下心があったのかもしれない。
  でもわたしはネタ好きの勢いで映画を観に来たのだと、微塵も疑っていなかった。
  そして、フラグをバキバキに折った。多分。

〇路面電車のホーム
DOM「2日連続案内ありがとう、熊本楽しかった!」
綾姫「こっちこそ遥々ありがとう!」
DOM「今回の日記、同時に更新しようぜー」
綾姫「あはは、うん!」
DOM「じゃあまた、オンラインで!」
綾姫「気をつけて帰ってねー!」
  恋愛からは離れていたかった。
  離れていないといけなかった。
  自分が恋愛対象になりうることも、
  まるで電源を切ったように
  意識から消えていた。

〇講義室
  ここで少し、
  この宗教の男女観について解説します。
  まず、男尊女卑が激しい。
  集会で信者に向けて話せるのは、
  男性だけ。
  責任ある立場につけるのも、
  男性だけ。
  女性は寸劇形式や、男性のインタビューに答える形でしかステージに出られない。
  夫婦間でも男性の権限は絶対。
  主導権は男性。妻は服従。
  夫が未信者でも、
  教義に抵触しない限り従う。
  女は男を「補う者」であり、
  それが神に与えられた役割なのだ。
  恋愛にも厳しい。
  男女交際は結婚を前提としたものだけ。
  だから若いうちは恋愛してはいけない。
  結婚できる年齢になってお付き合いするにも、二人きりになってはいけない。
  デートは人の目のある場所でするか、第三者の付き添いが必要。
  婚前の性行為はNG。
  ちなみに、自慰行為もNGである。
  同性愛は絶対に禁止。
  ポルノを見るのも禁止。
  これらを幼いときから叩き込まれる。
坂下明菜「マスターベーションをしてはいけません」
坂下明菜「夫婦間でも倒錯した性行為をしてはいけません」
坂下明菜「男同士で寝てはいけません」
  男女関係や性に関わる知識は、
  かなり世間とズレていると思う。
  わたしは交流を通して、男性への偏見や恐怖心を克服しつつあった。
  けれど、男女関係の感覚は
  まだバグっている状態だったと思う。

〇黒
  そんな独特の価値観を、少しずつ世間の常識でアップデートしていたわたしに、
  そろそろ限界が近づいていた。

次のエピソード:ep7.決壊(親への告白)

コメント

  • 過剰なまでの男尊女卑は残念ながら色んな宗教(金目的気味)の宗教のあるあるですよね…。何かと都合がいいんでしょうが…。

    そんな中、このような形で人間関係が構築されていくのは本当に素晴らしいと思いました。

  • こういう考えを宗派の教えと肯定するか、マインドコントロールと否定するか、今まさに法整備されようとしている最中ですね。
    どっちにしても幼い頃から親の考えを植え付けれてしまえば、家庭しか知らない子供は慣れるしか生きていく術がない。
    ネット友達にアップデートされていく主人公に、人間関係は大事だなあと思います。

  • 教義に照らし合わせれば、DOMさんも私も完全に綾りんを堕落させる悪魔の使者ですね(^▽^; そこに引っ掛からずに交流でき、そして「常識」をアップデートできた綾りんは本当にすごいと思います。

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