母を肯定できなくてー宗教2世の記録ー

咲良綾

ep1.母の入信(きっかけ)(脚本)

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咲良綾

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〇モヤモヤ
  何も食べたくない
  食べる力が出ない
  でも 食べないと死ぬ

〇おしゃれなリビングダイニング
  なんとか・・・一口ずつ
  食べることに こんなに体力がいるなんて
  わたしの体は どうしてしまったの?

〇女の子の一人部屋
  動ける時間がどんどん減ってる
  ストレス?何がつらいの?
  ・・・わからない
  自分の気持ちがわからない
  全部殺してきたから
  自分の気持ちは、悪魔サタンだから

〇講義室
  わたしは、とある宗教に所属している
「皆さん、ようこそいらっしゃいました」
「どうぞご起立ください。 はじめに、賛美の歌を歌いましょう」
  今日はハモれるレパートリーの歌だ♪
  歌っているときだけ、
  何か役に立ってる気がする
  続けて司会者のお祈りを聞いて
坂下明菜「アーメン」
  話を聞きながら聖書を開き、ノートを取る
  ・・・まただ、眠い
  耐えられない、体が起きていられない
  脳がシャットダウンしようとしてるみたい。
  どうして、こんな・・・

〇講義室
姉妹1「明菜姉妹、今日も姉妹の歌には励まされたわ」
坂下明菜「ありがとうございます」
姉妹2「深い注解もありがとうございます。 よく個人研究されてるのね」
坂下明菜(半分以上寝てたし、その場で資料を見て適当に答えたんだけど)
坂下明菜「姉妹こそ、たくさんの注解励まされました」
姉妹1「体調はどう?また痩せてない?」
姉妹2「集会に来てるだけ偉いわよ! 神は姉妹の努力を見てくださってるわ」
  温かくて優しい人たち。でもわたしは
  本当は神なんか信じてない。
坂下百合子「明ちゃん、帰りましょうか」
坂下明菜「うん」
  神を信じているのは、母。

〇黒
  わたしが6歳のとき、
  母が聖書の勉強を始めた。

〇おしゃれなリビングダイニング
坂下明菜「ただいま」
坂下百合子「お帰り」
吉川清子「こんにちは、お邪魔してます」
坂下明菜「こんにちは」
坂下百合子「明ちゃん、本好きでしょう。 いいものいただいたのよ、見て」
坂下百合子「聖書の物語を子ども向けにまとめた本ですって」
坂下明菜(リアルな絵だな・・・ ひげ生えたおっさんばかり)
坂下百合子「これで明ちゃんもお勉強しましょうね」
坂下明菜「うん」
坂下明菜(知識が増えるのは嬉しいな。 聖書ってなんだかカッコいい)

〇教室
坂下明菜「知ってる?人間って、塵でできてるんだよ!」
友達1「ええーっ?」
坂下明菜「ほんとだよ、聖書に書いてあるんだよ。 神様が塵で作ったって!」
  最初は、知識が増えるのがただ楽しかった

〇おしゃれなリビングダイニング
坂下敏行「明菜、誕生日おめでとう」
坂下明菜「わーい、ありがとう!」
坂下百合子「・・・」
坂下百合子「・・・明ちゃん」
坂下明菜「なに?」
坂下百合子「ちょっとこれを見て」
坂下百合子「・・・こういういきさつで、ヨハネは 誕生日のお祝いに殺されたの」
坂下百合子「聖書に出ている誕生日の例は全部残酷だし、 私たちが崇拝していいのは神だけなの」
坂下百合子「個人を讃える誕生日のお祝いは、 偶像崇拝になるんですって」
坂下百合子「神に喜ばれない誕生日のお祝い、 明ちゃんはこれからもやりたい?」
坂下明菜「・・・やりたくない」
坂下百合子「そうね。もう誕生日のお祝いはやめましょう」
坂下明菜「・・・」
  できないことはどんどん増えた

〇クリスマス仕様の教室
坂下明菜「・・・先生」
先生「坂下さん、どうしたの?」
坂下明菜「あの、クリスマス会、わたしは宗教上の理由で参加できません・・・」
先生「うーん、歌ったりしないで教室にいるだけは?」
坂下明菜「それくらいなら大丈夫だと思います」
坂下明菜(ギリギリ大丈夫だよね? お祝いするわけじゃないもん)
  本当は参加したい。でも

〇おしゃれなリビングダイニング
坂下百合子「神は全部、心の中まで見ておられるの」
坂下百合子「どんな小さな忠節も評価してくださるのよ」
坂下明菜(悪いことも全部丸見えなんだ・・・)
坂下百合子「神の教えを受けていない世の人は、何の影響を受けているって書いてある?」
坂下明菜「悪魔サタンです」
坂下百合子「その通りね。 世の人との交わりには気をつけないと」
坂下百合子「神に従わない人は、最終的にどうなるかしら」
坂下明菜「ハルマゲドンで滅ぼされます」
坂下百合子「そうね。終わりの日はもう近いから、油断しないようにしないと」
坂下百合子「そして子どもたちは特に影響を受けやすいの」
坂下百合子「この聖句を読んでみて」
坂下明菜「「愚かさが少年の心につながれている。懲らしめのむち棒がそれを彼から遠くに引き離す」― 箴言 22:15」
坂下百合子「ありがとう。お母さんは明ちゃんを悪魔の影響から助けたいけど、それには何が必要とある?」
坂下明菜「懲らしめのむち棒?」
坂下百合子「そうね。明ちゃんは、ハルマゲドンで滅びたくないよね?」
坂下明菜「うん」
坂下百合子「お母さんも明ちゃんに生き残って欲しいから、悪いことをしたら懲らしめを与えます」
坂下百合子「この聖句も読んで」
坂下明菜「「子供たちよ、主と結ばれたあなたがたの親に従順でありなさい」― エフェソス6:1」
坂下百合子「神は子どもたちに何を求めている?」
坂下明菜「親に従順であることです」
坂下百合子「そうね。神は子どもたちがつらい思いをしないために、導きの言葉を与えられているの」
坂下百合子「これは明ちゃんを束縛するためじゃなくて、守るための愛の言葉なのよ」
坂下明菜(子どもってそんなにバカなんだ。 自分を信じないようにしないと)
  従わなければ死が待っている
  そして何より
  お母さんを悲しませたくない

〇展示スペース(展示物無し)
  小学3年生のとき、母はバプテスマを受けた

〇通学路
坂下百合子「明ちゃん、今帰り?」
坂下明菜「お母さん」
坂下めぐみ「お姉ちゃんおかえり」
  5つ下の妹は、幼稚園に入園しなかった。
  この世の悪影響を避けるためだ。
  「この世から離れなさい」。わたしも、放課後友達と遊ぶことからは縁遠くなっていた。
坂下百合子「私たちは奉仕の帰りよ。 もう一件再訪問に行ってから帰るからね」
坂下明菜「わかった」
坂下百合子「今日は集会よ。予習はできてる?」
坂下明菜「まだ・・・」
坂下百合子「宿題終わったら、ちゃんとやっててね」
坂下明菜「はい」
  2世の子どもは忙しい。
  学校の勉強、集会や研究、その予習、奉仕。
  面倒だった。みんなのように遊びたかった。
  でも
  頑張ったら、お母さんが喜ぶんだ。

次のエピソード:ep2.抑圧と自我(懲らしめの鞭)

コメント

  • 宗教って本質的な意義が切り取られて、副次的な効果が資本主義に結びついてしまっているのが悲しいです。手を清めなさいと伝えて病気を防いだり、勧進で神への感謝を神社が代行したりしていた時代ではなくなってますからね。
    宗教2世が抱える問題は、大変複雑で解決が難しいですが、この体験談…覚悟して読ませていただきます。

  • 何を書いても失礼な気がして。なので一言だけ。

    発信すると決めた気持ちに報いる為に読みたいと思います。

  • タイムラインでお見かけして、思わず拝見してしまいました。
    聖書のつかわれ方、解釈は人の数だけあるんですよね。とても大切な書物で、大切なご家族で、大衆との齟齬にショックを受けた時期なんかがあっただろうなと、勝手ながら想像します。
    どれひとつとも呪うことなく、お幸せに今を生きられていたらと願うばかりです。続編を希望します。

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