はづきの休日(脚本)
〇古いアパートの一室
若宮はづき「‥‥眠い」
若宮はづき「日曜か‥いくら寝ても足りない感じ‥ 昨日もほとんど寝てたしな‥」
〇黒背景
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「そんなに遠くない時期に、滅びるのよ、 人は‥みんなね」
瑠璃沢(るりさわ)「どんな道を選ぶかによって 希望の形も違うものになるかと」
〇古いアパートの一室
若宮はづき「‥わかんないなぁ どうしたらいいんだろう‥」
若宮はづき「‥気が重い‥」
若宮はづき「あーーモヤモヤする! もうやだ! シャワー浴びよ!!」
〇古いアパートの一室
若宮はづき「ふー、さっぱりー!」
若宮はづき「さあ、どうしよっかなー せっかくの休みだし‥」
若宮はづき「あっ! そうだ!」
若宮はづき「5日分だから、100万円か‥ 5日‥もっとずっと経ってる気がする‥」
若宮はづき「クヨクヨするな!はづき!」
若宮はづき「でも、このお金どうしよう‥」
若宮はづき「あっ!いろいろ支払って無いんだった! そういえば前の家賃も!」
若宮はづき「不動産屋さんに行って、溜まってる家賃を 払って来るか‥ あんまり楽しい使い道じゃないけど まあ、しょうがないや」
〇街中の道路
若宮はづき「トランクの中身を持たずに街中を歩くのって、久しぶりな気がするな」
若宮はづき「(でも100万円持ってるんだよな‥これはこれでドキドキするけど)」
〇駅のホーム
若宮はづき「電車に乗るのも久しぶり‥ 次の電車まで後‥10分か‥」
若宮はづき「えっ!? あの人‥青い‥」
〇駅のホーム
(こんなもんなのかな‥
仕事のトラブルでその責任を押し付けられて、賠償まで払うことになって‥)
(この仕事について1年、ようやく在りついた契約社員、何とか頑張れば正社員にと、必死で働いてきたけど‥)
(残業代なんて、休日なんて、そんなまともな会社じゃないのはわかってたけど‥
でも、何とか‥自分の暮らしを変えたかった)
(生きていくこの先に、自分自身に‥何か‥希望を持ちたかった‥でも‥もう、無理‥)
(こんなもんなのかな‥
こんなもんかもしれないな‥)
(お金、無いよ‥どうやって払えばいいんだろ‥親には言えないし‥
借金‥銀行、貸してくれるのかな‥正社員でも無いのに‥)
藤代ゆうり「何か‥疲れた‥」
〇駅のホーム
「『まもなく3番線を列車が通過します。 危ないですから黄色い線までお下がりください』」
〇駅のホーム
藤代ゆうり「電車‥すごい‥速い‥‥」
(たぶん‥こういう時に‥みんな‥)
そう思うと、彼女はゆっくりと線路に向かって歩いていった‥
〇駅のホーム
(‥なんか、自分の息の音がよく聞こえる‥こんなふうなんだ‥
心臓の音も聞こえる‥体の音って‥聞こえてたんだ)
「『危ないですから黄色い線の内側にお下がり下さい! 下がって!!』」
(なんか‥ゆっくり押されるような‥引かれるような‥‥あぁ‥)
「何してんですか!! 危ない!!」
その時、線路に落ちそうになる彼女を、
誰か強く引き留めた
藤代ゆうり「えっ!?」
〇駅のホーム
若宮はづき「危ないですよ! そんなに線路に近づいたら」
藤代ゆうり「あっ‥あの」
若宮はづき「とにかく線路から離れて! 向こうにいきましょう」
〇駅のホーム
藤代ゆうり「あの‥ありがとうございます‥」
若宮はづき「あー、いいの、いいの! でも、無事でよかった」
藤代ゆうり「よかった‥でしょうか‥ あのままでも‥その‥」
若宮はづき「よかったんだよ、あなたは だって、まだだから」
藤代ゆうり「まだ‥?」
若宮はづき「そう、まだ! まだ、何とかなるんだよ」
藤代ゆうり「‥そうなんですか?」
若宮はづき「うん‥どうにもならない人は、 もっと‥違うから」
藤代ゆうり「違う?」
若宮はづき「まあ、いろいろね ‥ねえ、もしよかったら、あなたの話を聞かせてくれない?」
藤代ゆうり「話し? あっ‥でも‥」
若宮はづき「話したら楽になるかもしれないよ? ほら、それに私、たまたまホームで出会った赤の他人だし、気楽にポロっと言っちゃいなよ?」
藤代ゆうり「‥はい、ありがとうございます‥ あの‥実は‥」
そう言うと彼女(藤代ゆうり)は、
今まで自分に起きたことを話し始めた。
若宮はづき「(なんだか、瑠璃沢さんと出会う前の私みたい‥)」
藤代ゆうり「だから‥そんなお金も無いし、 もう‥どうしたらいいかわからなくて‥」
若宮はづき「ふーん‥お金か‥」
若宮はづき「ねえ? それって、これで足りる?」
藤代ゆうり「えっ? 封筒?」
若宮はづき「中身、中身!」
藤代ゆうり「中身‥ えっ!? これ!!」
若宮はづき「100万円あるの それだけあったら何とかなりそう?」
藤代ゆうり「そんな‥何とかも何も こんなには‥」
若宮はづき「その仕事、続けるの?」
藤代ゆうり「えっ!?」
若宮はづき「死んじゃう事を選ぶぐらいの仕事、 まだ続けるの?」
藤代ゆうり「それは‥でも‥ 私‥他に何が‥」
若宮はづき「あなたは‥まだ、なんとかなるんだよ‥」
藤代ゆうり「‥‥」
若宮はづき「‥なーんてね、なんか無責任なこと言ってごめんね」
藤代ゆうり「あっ‥いえ‥」
若宮はづき「ほら、その賠償みたいなもの払ってさ、 残りのお金で少しゆっくりしたら? そうしたら、何かいい考えが浮かぶかもよ?」
藤代ゆうり「いい考え‥」
若宮はづき「どうせ世界は滅んじゃうんだし‥」
藤代ゆうり「世界が滅んじゃう‥?」
若宮はづき「‥あっ!?」
藤代ゆうり「えっ?」
若宮はづき「あー‥ ほら、世界が滅んじゃうみたいなものじゃない? あなたにとっては? だから‥ほら、えーっと‥」
藤代ゆうり「そっか‥そうですね‥ふふふ」
若宮はづき「うん‥そうだよ あっ、ねぇ、もしさあ?」
藤代ゆうり「もし?」
若宮はづき「ほんとに世界が滅んじゃうとしたら、 どうする?」
藤代ゆうり「世界が滅んじゃう?」
若宮はづき「うん、そう遠くない‥例えば5~6年後とか?その時に世界が滅ぶとしたら、どうする?」
藤代ゆうり「‥今のままなら、どうでもいいです でも‥今より良くなるなら‥」
若宮はづき「良くなるなら?」
藤代ゆうり「きっと、もっともっと楽しくして‥ その時まで、一生懸命生きて‥それで‥」
藤代ゆうり「でも、その時が来ても、もっと生きたいって思います」
若宮はづき「もっと生きたいか‥」
藤代ゆうり「だって、私まだ‥何にもしてないですから」
若宮はづき「そうね、これからだよね」
藤代ゆうり「はい!」
若宮はづき「よし! じゃあ、そのお金、うまく使ってね!」
藤代ゆうり「えっ? でも、こんな、こんなに‥」
若宮はづき「あー、いいのいいの!」
藤代ゆうり「でも、ほんとに、多くて‥」
若宮はづき「もー‥ よし、じゃあ、 これだけ返して!」
藤代ゆうり「‥いちまんえん?」
若宮はづき「そっ! これだけ返してもらうね!! それじゃあーねー!」
そう言ってはづきは小走りで立ち去っていった。
藤代ゆうり「えっ!? あのー! そう言えば、お名前はー!」
藤代ゆうり「‥‥ありがとーございましたー!」
藤代ゆうり「ありがとう‥」
〇商店街
若宮はづき「あー、何かモヤモヤが スッキリしたー!」
若宮はづき「あっ、家賃‥‥ どうしよう‥」
若宮はづき「まあ、いっかー! また今度で!」
若宮はづき「この1万円どうしようかな‥」
若宮はづき「よし! ぱ~っと飲みにでもいっちゃうかー!」
〇大衆居酒屋
若宮はづき「すいませ~ん!!」
続く
最初のころの
主人公と比べると
まるで別人
でもまだ半分残ってるし
安心するのは早いかも