トランクの人

銀次郎

ゆるやかな螺旋(脚本)

トランクの人

銀次郎

今すぐ読む

トランクの人
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇古いアパートの一室
若宮はづき「頭痛い‥昨日、飲みすぎたかな‥」
若宮はづき「もう少し寝てよ‥痛たた‥」

〇古いアパートの一室
  ♪ピピピピピ
若宮はづき「あー‥、10時になっちゃった‥」
  ♪ピンポーン
若宮はづき「来ちゃったか―‥ はーい」

〇アパートの玄関前
配達員「お届け物‥」
配達員「何すか、その恰好‥」
若宮はづき「あははは‥寝坊しちゃって‥」
配達員「はぁ‥ とりあえず、いつものトランクです」
若宮はづき「あー、はい じゃあ、前のトランクを‥」
配達員「はい、回収します それじゃ」
若宮はづき「ははは‥よろしくー‥」
若宮はづき「はぁー‥ 中に入ろっと‥」

〇古いアパートの一室
若宮はづき「さて、今回の中身は‥」
若宮はづき「なに?これ?‥象?」
若宮はづき「あっ、メモはと‥」
若宮はづき「えーっと、反町4丁目2-6‐21‥ 炭屋四十 15時‥か、何かずいぶん具体的‥炭屋四十‥?お店か何かかな?」
若宮はづき「とにかく、シャワー浴びて支度しますか!」

〇ゆるやかな坂道
若宮はづき「うーん、この辺りのはずなんだけど‥」

〇屋敷の門
若宮はづき「あっ、ここだ‥大きい家 炭屋って書いてある‥苗字だったのか」
若宮はづき「これ、中に入る‥しかないよね‥」

〇大きな日本家屋
若宮はづき「ここが玄関か‥すいませんーん」
庭師 田所「何か御用ですか?」
若宮はづき「あっ、あの、お届け物で‥」
庭師 田所「お届け物?宅配便の方にはみえませんが‥?」
若宮はづき「まあ、そうですよね‥あの、炭屋四十と言う方に、荷物を持って来まして‥」
庭師 田所「旦那様にですか?ちょっと待って下さい 鴫野さん、鴫野さーん!」
召使い 鴫野「はい、なんでしょうか?」
庭師 田所「こちらの方が旦那様にお届け物だと‥」
召使い 鴫野「旦那様に?あなたが? 宅配便の方には見えませんが?」
若宮はづき「(同じことを‥) あの、今日の15時にここに届けるようにと‥」
召使い 鴫野「15時に‥あー、なるほど あなたがそうなんですか」
若宮はづき「まあ、はい‥」
召使い 鴫野「どうぞ、お入りください ご案内しますよ」
若宮はづき「ありがとうございます!」

〇おしゃれな廊下
若宮はづき「広い廊下ですね‥」
召使い 鴫野「‥そうね、旦那様の曽祖父の頃からのお屋敷で、それをずいぶん改装したみたいだから、私もたまに迷いそうになるわ」
若宮はづき「あのー、奥様‥なんですか?」
召使い 鴫野「あっはっは、いえいえ、私は旦那様の身の回りのお世話にしているだけ あの方はずっと独り身よ」
若宮はづき「あっ、そうなんですか‥ すいません」
召使い 鴫野「いいのよ、謝らなくても こんな大きな屋敷に結婚もせずに独り身でいるなんて、なかなか想像つかないものね」
若宮はづき「ここに一人‥?」
召使い 鴫野「ええ、身の回りの世話をしている私と、庭師の田所以外、ここには誰もいないの それに夜になったら私達も帰りますしね」
若宮はづき「こんな大きなお屋敷に一人なんて、なんか私なら寂しくなっちゃうな」
召使い 鴫野「まあ、普通はね‥それにね、あの方はほとんど外にも出ないのよ‥ここだけ、このお屋敷だけがあの方の世界の全て‥」
若宮はづき「ここだけ‥」
召使い 鴫野「さあ、着いたは ここよ」

〇屋敷の書斎
召使い 鴫野「旦那様、お荷物を届けに来た方をお連れしました」
炭屋四十(すみやしじゅう)「おお‥すまないな」
召使い 鴫野「それでは、私はこれで 何かお飲み物でもお持ちしますか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、そうしてくれ‥ さあ、君、中に入りなさい」
若宮はづき「あっ、はい」
炭屋四十(すみやしじゅう)「‥‥」
若宮はづき「あのー、お届け物ですけど‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「‥ああ、そうか‥出してくれ」
若宮はづき「はい‥」
若宮はづき「こちらです‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「これ‥か‥」
若宮はづき「‥これでいいんでしょうか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「まあまあ、いいだろう こんなものが来るとは思わなかったが」
若宮はづき「あのー、でも、あのトランクの中身って、 ご希望されたものが届くんじゃ‥?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「まあ、決まりとしてはそうだが、 そもそも私は希望してないからな」
若宮はづき「希望してない? どういうことでしょうか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「うーん‥何と言ったらいいか‥」
若宮はづき「あっ、すいません、余計な事を聞いてるかも‥あの、必要じゃない物が届くなんてこと、今までなかったので、つい‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「いやいや、気にしなくていい ‥君、名前は?」
若宮はづき「若宮です‥若宮はづきといいます」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうか、若宮さんか 若宮さん、この像は何だかわかるかね?」
若宮はづき「この像ですか‥? 象の像‥ あの、ダジャレじゃないんですよ!」
炭屋四十(すみやしじゅう)「あっはっはっは いやいや、もちろんわかっとるよ まあ、確かに象の像だな」
若宮はづき「あははは‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「これはな、ガネーシャと言ってヒンドゥー教の神様なんだよ ほら、よくインド料理の店にはこの像が飾ってあるだろ」
若宮はづき「あっ!見たことあります!」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ガネーシャはな、豊穣や知識、商業の神で、禍を取り除き、幸福をもたらすと言われてるんだよ」
若宮はづき「へー‥でも、何でなんですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「うん? 何でとは?」
若宮はづき「なぜ、その、このガネーシャがあなたの‥炭屋さんのところに送られて来たんでしょうか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「私のあだ名だったらしいからな‥ まあ、そんな理由だろう」
若宮はづき「あだ名?炭屋さんの? 誰がそんなあだ名を‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「連中だよ‥今なら瑠璃沢や、その他の連中じゃないかな」
若宮はづき「‥知ってるんですか!? 瑠璃沢さんのこと」
炭屋四十(すみやしじゅう)「まあな‥彼よりだいぶ以前から関わっているからな」
若宮はづき「瑠璃沢さんより前って‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「もっとも、連中から離れてずいぶん経つので、今は何をしているのかはよく知らないが‥まあ、興味も無いがな‥」
若宮はづき「そうなんですか‥あの‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「なんだね?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「何で、離れたんですか? その‥瑠璃沢さん達から?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「理由か‥」
若宮はづき「‥すいません、また余計な事‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「若宮さんは、今の世界をどう思う?」
若宮はづき「今の世界?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ‥あなたにはどう見える? 今の世界は?」
若宮はづき「私には‥」
  トントン!
召使い 鴫野「失礼します、お飲み物をお持ちしました」
炭屋四十(すみやしじゅう)「おお、ありがとう」
若宮はづき「すいません」
召使い 鴫野「旦那様、今日は良いお天気ですよ たまにお庭でも歩いてみてはいかがですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「うーん‥そうか まあ、たまにはな」
召使い 鴫野「お嬢さん‥お名前は?」
若宮はづき「若宮です、若宮はづきです」
召使い 鴫野「じゃあ、若宮はづきさん、 旦那様と一緒にお庭を歩かれてはいかが? いろいろと頭が整理できるかもよ?」
若宮はづき「えっ?あっ、はい‥」
召使い 鴫野「ふふふ‥では、失礼しますね」
炭屋四十(すみやしじゅう)「相変わらず感のよい人だ‥」
若宮はづき「何だか‥話しの内容を知ってたみたい‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「彼女は少し特別なんだよ 君と同じようにな」
若宮はづき「えっ?私ですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「まあいいさ‥それも私には興味の無い話だ どうだ?お茶を飲んだら少し庭を歩かないか?」
若宮はづき「はい、じゃあせっかくなんで」

〇風流な庭園
若宮はづき「わー、すごいお庭ですね!」
炭屋四十(すみやしじゅう)「長く手間をかけて育てたからな 田所が丁寧にやってくれたおかげだ」
庭師 田所「おや旦那様、お散歩ですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「鴫野さんに言われてな、ちょっと庭を見に来たんだよ」
庭師 田所「そうですか、今日は天気がいいですから、草たちも嬉しそうですよ」
炭屋四十(すみやしじゅう)「はっはっはっ、嬉しそうか! そうだな、田所のおかげだよ」
庭師 田所「いえいえ、滅相もないです では私はまだ手入れがありますので、失礼します」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、よろしく頼むよ」
庭師 田所「はい、それでは」
若宮はづき「草たちが嬉しそうって、素敵な言い方をなさる方ですね」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、面白い男だ もともとは草木に詳しいわけではなかったらしいが、ずいぶんと勉強したようだ」
若宮はづき「植木屋さんじゃなかったんですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、経済学の分野で働いていたらしいがよくは知らんな ある男の紹介でうちで働いてもらうようになった」
若宮はづき「ある男?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、田之上という経済学者だよ あいつから紹介されてな」
若宮はづき「田之上‥経済学者って、あの田之上さんですか!」
炭屋四十(すみやしじゅう)「知ってるのか?彼を?」
若宮はづき「私が‥私が初めてトランクの中身を届けた人です」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうか‥そう言うことか」
若宮はづき「はい‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「田之上とはよく話をした仲でな 私よりだいぶ年下だが、ズケズケと意見を言ってきおって‥まあ、それも面白かったがな‥そうか‥」
若宮はづき「あの‥さっきの話ですけど」
炭屋四十(すみやしじゅう)「うん?」
若宮はづき「さっき聞かれた、その‥今の世界をどう思うかって‥私、世の中が確かにおかしくなってるのかなって思うんです」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうか‥」
若宮はづき「少しずつですけど、何だか壊れ始めてるような‥そんな気がして‥ だから、瑠璃沢さんが言うようにもしかしたら‥」
若宮はづき「本当に滅びてしまうんじゃないかって思えたりもするんです‥でも‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「でも?」
若宮はづき「でも、はっきりとそれが正しいとも思えなく‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうか、それが若宮さんの感じる今の世界か‥」
若宮はづき「はい」
炭屋四十(すみやしじゅう)「‥先程聞かれた事だが、なぜ瑠璃沢達と離れたかと」
若宮はづき「‥はい」
炭屋四十(すみやしじゅう)「私はな、輪の中にいたかったんだよ」
若宮はづき「輪の中?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、変化の無い日々が繰り返される大きな輪の中で、穏やかに生きていく‥ それを理想とし、また、そう生きているつもりだった」
若宮はづき「つもりだったって‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、違ったんだ‥大きな輪の中だと思っていた場所はな、螺旋だったんだよ」
若宮はづき「螺旋?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「とても緩やかで大きい、下りの螺旋だよ‥降りている事にも気がつかないような、緩やかな下りの螺旋、私はその中にいたんだよ」
若宮はづき「あの‥どういう意味なんでしょうか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そしていつか気がついた時には、底と言う終わりについている」
若宮はづき「えっ?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「つまりな、それは今の世界と同じだと言う事だ‥この大きな螺旋は、私だけではなく、世の中すべてで起きている事だ」
若宮はづき「それは瑠璃沢さんが言っているような‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「それを最初に話したのは田之上だった」
若宮はづき「田之上さん‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「当時の私は多くの金を動かしていた‥若宮さんには想像もつかない額を、世の中の様々な場所に投資していたんだ‥」
若宮はづき「投資‥ですか」
炭屋四十(すみやしじゅう)「瑠璃沢たちも、その投資先のひとつだよ」
若宮はづき「えっ!?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ただ、その頃に感じていた違和感があった‥何か違う、ここは安らげる輪では無いと感じるものが‥その時に青い光の話を聞いたんだ」
若宮はづき「田之上さんから?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、田之上とは経済学者として話す事は幾度かあったが、瑠璃沢の仲間として話すことは無かったのでな‥そこで初めて聞いたよ‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「あの光が意味するものと、その後に起きる事を‥」
若宮はづき「その後に起きる事‥ですか」
炭屋四十(すみやしじゅう)「最初は理解出来んかった‥と言うより、経済という目の前の現実をに立ち向かうべき学を修めた者が何を狂った事をと思っていたが‥」
若宮はづき「そうなんですか‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「あいつはこう言ったよ 「四十さん、そろそろあなたの役目は終わりなんじゃないですか?」とな‥」
若宮はづき「終わりって、そんな‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「世の中で為すべきことを為したと、もう十分だと言っていたな」
若宮はづき「でも、だからって‥いなくならなくても‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「確かにその通りだ‥その後にも人生はある、余生という考え方もできる‥でもな、そう言われ、もう満足している自分もいたんだよ」
若宮はづき「じゃあ、もう‥生きなくてもいいと?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうだな‥私個人としてはもう十分だ だがそうもいかない事情があってな‥」
若宮はづき「事情‥?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ただ、その頃から世間と関わることは辞め、瑠璃沢たちとも離れてしまった ただ支援だけは今も続けているがな」
若宮はづき「あの、その青い光ですが‥実は気になってて‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「何をだね?」
若宮はづき「炭屋さん、光が無いんです‥ 今までの人達みたいに、青い光が無くて‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「抑えているんだよ‥正確には抑えてもらっているんだ」
若宮はづき「抑える? 青い光を?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「いざなぐ手だ」
若宮はづき「いざなぐ?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「一時的に光を抑えることが出来る人物をそう呼んでいる」
若宮はづき「そんなこと出来る人がいるんですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「鴫野さんがそうだ‥知らなかったのか? 君もそうだと思っていたが、瑠璃沢からは何も聞いていないのか?」
若宮はづき「いえ‥詳しいことは‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「なるほど‥瑠璃沢なりのやり方があるということか」
若宮はづき「そうなんでしょうか‥ただ、わからないことが多すぎて‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「若宮さん、あんただったらどうしたい?」
若宮はづき「どうしたい? 私だったら‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「瑠璃沢と行動しながらも、何か釈然としない気持ちを持っている今のあんただったら、この世界をどうしたいと思う?」
若宮はづき「私だったら‥あの私、田之上さんのこと、思い出して‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「田之上のことを?」
若宮はづき「はい‥田之上さん、自分の最後を誰かを助けるために使ったんです 違う終わりを選べたはずなのに、子供を助けるために命を‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「‥‥」
若宮はづき「そんな風に‥そんな行動をとる人も、壊れ始めた世界にはいるんだって思うと‥ その‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「大丈夫か、無理して答えんでもいいんだよ」
若宮はづき「大丈夫です‥だから、瑠璃沢さんのやっている、滅びに合わせて一緒に終わるような、その方法以外にも何かあるんじゃないのかと‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「人の良心に託すと言うことか」
若宮はづき「‥すいません、何か子供っぽく聞こえますよね」
炭屋四十(すみやしじゅう)「いや、そうは思わんな あんたが素直に感じた思いを聞きたかっただけだ、それに良し悪しは無いよ」
若宮はづき「‥はい」
炭屋四十(すみやしじゅう)「千寿とは話したか?」
若宮はづき「千寿? 千寿千穂呂さん!」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうだ‥瑠璃沢達と別のやり方なら、彼女のやり方もまたひとつの方法だと思うが?」
若宮はづき「そうなんですが‥何か、受け入れられなくて‥理解はできるんですけど‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「まあ、そうかもしれんな」
若宮はづき「千寿さんともお話しされたことがあるんですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、何年か前だ  もう瑠璃沢達と離れた後だったか? ここに来てな、協力してほしいと言われた」
若宮はづき「協力?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「金だよ、支援してほしいとな」
若宮はづき「でも、千寿さんって大きな会社を‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「確かにな‥だが世の中を変えようと言うんだ、金はいくらあってもな‥ それに私から支援を受けたと言う事実も欲しいんだろう」
若宮はづき「どういう意味ですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「瑠璃沢達を支援している私以外が、それによってどう動くかという事だ‥ まあ、政治の話だな」
若宮はづき「それで‥支援されたんですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうだな‥それには答えないでおこう」
若宮はづき「‥‥」
召使い 鴫野「旦那様、お庭はいかがでした?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「おお、鴫野さんか 教えてもらってよかった 草木が嬉しそうだと田所も言っていたよ」
召使い 鴫野「ふふふ、田所さんらしい ところで旦那様、そろそろお体を休ませていかがですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、そうだな‥久しぶりに人と長く話しせいか、いささか疲れたようだ」
若宮はづき「すいません、何か色々聞いちゃって‥」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:託された人形

コメント

  • 不思議に慣れてきた
    主人公が
    うっかりしてしまう事に
    何故か好感がもてます
    が、それとは別に大きな
    枠組みが次々と…

    どうなるんだろう?

成分キーワード

ページTOPへ