偽りのトリアーダ

草加奈呼

エピソード4 過去、覚醒(脚本)

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草加奈呼

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〇豪華な部屋
  テオは、物心ついた頃から、
  俺のものをよくほしがった。
テオドール「兄さん、僕も兄さんのオモチャほしい」
アルフレッド「え? テオは、 違うものを買ってもらったじゃないか」
テオドール「やっぱり、兄さんのがいいーー!」
アルフレッド(ええーー?)
  幼いが故のワガママだと思い、
  昔はよくオモチャを交換していた。
テオドール「兄さん、やっぱりそっちがいい」
アルフレッド「え? この間、交換したばかりじゃないか」
テオドール「そっちがいいの!」
リア「テオ、私のあげるよ!」
テオドール「兄さんのがいいの!」
アルフレッド「やれやれ・・・」
  ある日、進学祝いに
  父から万年筆をもらった。
  とても書きやすく、
  大切にしようと思った。
  しかし──
テオドール「兄さんの万年筆、素敵だね」
アルフレッド「これはダメだよ。父さんからもらった、 大切なものだからね」
テオドール「ちぇー」
  諦めてくれたかと思った。
  しかし、テオは
  黙って万年筆を持ち出し──
テオドール「ごめんなさい、兄さん・・・」
テオドール「壊れちゃった・・・」
アルフレッド「はぁ〜・・・・・・」
  あまりにもひどいので、
  両親に相談して、同じ物を
  買ってもらうようにした。
  しかし、それでも────
テオドール「兄さんのカバンがいい」
アルフレッド「テオ、いい加減にしてよ。 同じものを買ってもらっただろう?」
テオドール「兄さんのがいいーー!」
レナーテ「テオドール! なんであんたはそう、 アルフレッドのものばかり欲しがるの!!」
テオドール「だってぇ・・・兄さんが好きなもの、 僕も好きになっちゃうんだもの・・・」
  父も母も呆れ返っていた。
  俺はその頃から、
  好きなものを『好き』と──
  言えなくなっていた────

〇豪華な部屋
  母は、その頃からテオへの
  態度が少し冷たくなった。
  会話をするのは、
  俺やリアとばかり──
  その光景が、テオに
  どう映ったかはわからない。
  だが、テオが12になった頃、
  事件は起きた。

〇街中の階段
  母が、階段から落ちて亡くなったのだ。
  俺は、偶然にも見てしまった。
  テオが、母の背中を押したことを──
  そして、俺の方を見て言ったのだ。
テオドール「ごめんね、兄さん・・・」
テオドール「壊れちゃった」
  天使のような笑顔で────
  そう、言ったのだ

〇豪華な部屋
  俺は、恐ろしくなり父に言及した。
  しかし事件は証拠不十分で
  事故として処理され・・・
  
  テオがお咎めを喰らうことはなかった。
  ただ、父は父でテオを
  気にかけてくれていたようで──
  ある日、父は俺だけに言った。
ダニエル「アルフレッド・・・。 おまえに言われてから、私も テオドールを気にかけていたが、」
ダニエル「おまえが言っていたような素振りはない」
ダニエル「ただ、もしおまえの言っていたことが 本当なら・・・」
ダニエル「リアだけは、母さんの二の舞にするな」
ダニエル「物は壊されてもなんとかなる。 しかし、人の命だけはどうにもならん」
ダニエル「リアは・・・あの子はきっと、 ゴンドル族の希望になる」
ダニエル「今はまだゴンドル族との差別はあるが・・・」
ダニエル「私は近い将来、 その差別もなくなると思っている」
  俺は、そんな父を尊敬していた。
  リアを、テオの
  毒牙にかからせはしない──

〇豪華な部屋
  ある日、テオが大学進学のために
  家を出たいと言ってきた。
テオドール「父さん、兄さん。 俺、行きたい大学がちょっと遠いんだ」
テオドール「この家を出て、 下宿していいかな・・・?」
ダニエル「やりたいことがあるなら応援する! いいとも!」
テオドール「ありがとう!」
  内心、ホッとした。
  リアとテオが離れてくれれば、
  俺も無理に気を張らずに済む。
  しかし、その気の緩みが
  不幸を招いたのか・・・
  テオが家を出た数ヶ月後、
  父がゴンドル族を庇っていると
  疑われ、逮捕された。
  リアの存在はうまく隠せたが、
  疑いがすぐに晴れるわけではなく・・・
  父は獄中で流行病にかかり死亡した。
アルフレッド(父さんが、死んだ──!?)
アルフレッド(リアを庇ったせいで・・・ 逮捕され・・・・・・!)
アルフレッド「・・・・・・っ!!」
「はぁっ・・・はあっ・・・!」
アルフレッド(なんなんだ・・・ この湧き出る感情は・・・!)
  リアがいなければ・・・
  リアがいなければ・・・!!
リア「お兄様・・・? 大丈夫ですか・・・?」

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コメント

  • お二人の微妙な心理状態に
    ドキドキしてしまいました。
    まさに歪んだ愛…!

  • テオドールこわー…

    全てを奪い壊さないと気が済まない…。
    その行き着く先は…破滅しかないでしょうね…。

  • 弟のほうがサイコパス?でしたか。兄のほうはきちんとしようとしてたのかもしれませんが、こちらも歪んでしまいましたか…

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