偽りのトリアーダ

草加奈呼

エピソード5 虚無(脚本)

偽りのトリアーダ

草加奈呼

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〇黒背景
  お兄様、ごめんなさい・・・
  私は、お兄様の言うことを聞けませんでした。

〇豪華な部屋
アルフレッド「・・・リア。 今度、テオが来るそうだな」
リア「はい。今から楽しみです」
アルフレッド「テオのことだが・・・」
アルフレッド「おかしな素振りを見せたら、 すぐ俺に言うんだ」
リア「おかしな素振り?」
アルフレッド「その・・・。おまえに危害を 加えるようなことがあれば・・・」
リア「テオが・・・?」
リア「テオがそんなことするはずありません」
アルフレッド「・・・母さんが、 亡くなった時のことを覚えているか?」
リア「はい。たしか、事故だと・・・」
アルフレッド「テオが、関与していると言ったら?」
リア「・・・・・・」
リア「うそです」
アルフレッド「うそではない。証拠がなかったから、 事故として処理をされただけだ」
リア「うそですっ!」
リア「お兄様は、私のことが憎いからといって、 テオとの仲まで引き裂こうとしているのですかっ!?」
アルフレッド「・・・・・・!!」

〇黒背景
  お兄様・・・。私は・・・
  テオを信じたかったんです・・・。
  信じて・・・いたんです・・・
  ごめんなさい、お兄様・・・
  私は、お兄様を責められません・・・。

〇田舎の病院の病室
  目を覚ますと、知らない天井があった。
リア「・・・・・・・・・」
  なにも、考えられない・・・。
  なにも、考えたくない・・・。
  なみだも、出ない・・・。
  からっぽだ。
  誰か
  誰か
  誰か・・・

〇田舎の病院の病室
アルフレッド「ポポロム先生・・・。リアは、 義妹(いもうと)は大丈夫でしょうか?」
ポポロム「リアさんの身体の方は大丈夫です」
ポポロム「少々傷ついていましたが、早急に処置 しましたので、2ヶ月ほど安静にすれば、 回復します」
ポポロム「ただ、心配なのは心の方です・・・」
アルフレッド「そう、ですか・・・」
ポポロム「でも、あなたも肋骨にヒビが入ってるんですから、2週間ほど安静ですよ」
アルフレッド「わかりました・・・」
ポポロム「とはいえ、リアさんの事は心配でしょう」
ポポロム「これで、 リアさんに、お会いになられますか?」
アルフレッド「・・・はい」

〇田舎の病院の病室
リア「・・・・・・・・・」
  リアは、寝台から起き上がり、うつろな
  目をしていた。
ポポロム「リアさん、 お兄様が来てくださいましたよ」
  ポポロムは笑顔で接したが、リアはうつろな目をすっと横に向けただけで──
  さも興味がなさそうに、視線を戻した。
アルフレッド「リア・・・」
ポポロム「アルフレッドさん。 リアさんに、声をかけたり、 優しく手に触れたりしてみてください」
ポポロム「その・・・抱きしめたりなどは、 まだ刺激が強いと思うので、 徐々に慣らしていくように・・・」
  アルフレッドは、リアに近づいたが、
  その手を握る事はできなかった。
アルフレッド(手を伸ばせば・・・ 届く距離にいるのに・・・!)
アルフレッド「ポポロム先生・・・。 俺は・・・リアに普通に触れることが できないんです・・・」
アルフレッド「俺の大切なものを、 すべてテオが奪っていく・・・」
アルフレッド「テオが・・・・・・テオがいる限り、 俺は・・・っ!!」
「ああああああああああああ!!!!」
  アルフレッドは、今までの事をすべて
  打ち明けた。
  家族でも、リアでもなく、第三者に。
  こんな事は、今まで誰にも話せなかった。
  第三者に自分を曝け出す事で、少し楽に
  なった。
ポポロム「そうですか・・・辛かったですね・・・」
ポポロム「今のお話を聞いてわかりました」
ポポロム「アルフレッドさん。 僕は、あなたの心の方も心配です」
ポポロム「リアさんは、きっとふとしたきっかけで 良くなると思うのですが、」
ポポロム「あなたの方は、幼少期から根付いている」
ポポロム「この場合、よくなるまでに非常に時間が かかるんです」
ポポロム「あなたの心も、 少しずつ解きほぐしていきましょう」
アルフレッド「無理です、先生・・・。 俺は、テオがいる限り・・・」
ポポロム「テオさんは、警察に任せましょう。 きっと捕まえてくれます」
ポポロム「じゃあ、リアさん。何かあったら、 ナースコール押してくださいね」
リア「・・・・・・・・・」

〇田舎の病院の廊下
ディルク(警察官)「アルフレッドさん、 少々お話よろしいですか?」
アルフレッド「・・・はい」
ポポロム「僕も同席します」
ディルク(警察官)「先生は、お忙しいでしょう?」
ポポロム「お気遣いなく。重症の患者を放って おく事はできませんので」
ディルク(警察官)「チッ・・・」
ポポロム「何か、不都合でも?」
ディルク(警察官)「いいえ? では、病室で・・・」

〇田舎の病院の病室
ディルク(警察官)「リアさんのことにつきましては、 先生から少し伺いましたので・・・」
ディルク(警察官)「あなたと、逃走中のテオドールさんに ついて聞きたいのですが」
ディルク(警察官)「あの廃屋で、一体何を?」
アルフレッド「・・・先生から聞いてないですか?」
ディルク(警察官)「聞いていますよ」
ディルク(警察官)「私どもは、各方面から話を聞いて情報を 整理しておりますので、アルフレッドさん からのお話も聞いておきたいんです」
ディルク(警察官)「しかし、まさか本当に ゴンドル族を匿っていたとは・・・ よく今まで隠し通せましたね」
アルフレッド「・・・それは、今関係ないのでは?」
ディルク(警察官)「ふふ、これは切り札です。 つまり、あなたが何を言おうと、」
ディルク(警察官)「我々はあなたを逮捕する理由を 持っている、という事です」
アルフレッド「・・・・・・!」
ポポロム「ちょっと待ってください」
ポポロム「彼は、僕の患者さんなので、病人を簡単に 逮捕してもらっちゃ困りますよ〜」
ポポロム「それに、ゴンドル族の扱いについては、 ダニエル氏が遺した書簡により規制が 緩んだはずでは?」
アルフレッド「・・・父さんが!?」
ディルク(警察官)「それは、まだ正式な決定ではない! 審議中だ!」
ポポロム「でも、審議中にしろ 国民の意識が変わったのは確かです」
ポポロム「ヘタに逮捕すると、 国民の反感を買いかねませんよ」
アルフレッド「先生・・・」
ディルク(警察官)「ぐっ・・・。そもそも、 よくゴンドル族を庇えるものだ。 彼らはとても粗野で野蛮だと聞く」
アルフレッド「・・・それは、戦争中に政府やマスコミが 流したプロパガンダでしょう」
アルフレッド「ゴンドル族全てがそうとは限りません。 また、逆に人間にも同じ事が言えます」
ディルク(警察官)「ふん・・・。 それは、弟さんの事を言っているのかな?」
アルフレッド「・・・・・・・・・・・・」
ディルク(警察官)「まあ、いい。今は目下の事件だ」
ディルク(警察官)「それで、テオドールさんは、今どこに?」
アルフレッド「こちらが聞きたいくらいです」

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コメント

  • ポポロム先生…怪しい…。
    迫害の恨みまだ持ってそう…。この人に全事情を吐露したのは危ないのでは!?

  • リアちゃん壊れとる……
    ポポロム先生も癒しに見せてアレなんでしょ?人物紹介見たから知ってるんだ!😂
    でもゴンドル族って隠してるんですよね。特有の名前使ってて大丈夫なのかな?同族にしか通じない感じ?

  • 心の深い傷を持つアルフ、心が壊れてしまったリア、そして元々壊れていたテオ君、この兄弟の今後は一体、、、どんどん重い内容になっていきますね。そんな中、ポポロム先生が新たな癒しキャラとして登場!?貴重な存在ですねw

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