タワーディフェンス・レーヴァテイン dominate_ep8

R・グループ

第8話 新兵の危機管理(ニュービーナード・インシデント)(脚本)

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〇諜報機関
サイファ「これが回収したドローンのデータを復元した"敵"の情報よ」
  "敵"との初接触時から人類は何度も無人の偵察衛星を放っていた。
  だが、その度にすべて撃墜されている。
  しかし、シオンベース周辺の敵衛星を排除できたことで、残骸からメモリを回収することができた。
  そこには活動中の"敵"の様子がはっきりと映し出されている。
アンセム・ヴォルチ「まるで岩の柱が衛星全体に寄生しているようだ・・・」
  衛星の地表には、2mぐらいの球形の岩が達磨(だるま)のように縦に積みあがっている。
  そしてその岩が衛星の表面にびっしりと敷き詰められていた。
ユニックス「この岩は菌類の様に衛星表面で増殖するものと予測されます」
アンセム・ヴォルチ「宇宙のカビか・・・」
  さらに拡大して詳細を映し出すと、積み上げられた岩を中心に、極小の塵が超高速で回転していた。
アンセム・ヴォルチ「日本のダルマ落としのような胴体にヤジロベエのような回転する構造物・・・」
サイファ「小石の動きはハンドスピナーという玩具(おもちゃ)に近いわね」
ユニックス「周囲の塵は光速の1%という驚異的な速度で回転しています」
アンセム・ヴォルチ「いったいどうやったらそんなスピードが出せるんだ?」
ユニックス「重力制御を利用したものだと思われますが詳細は不明です」
サイファ「空気中でこんなスピードを出せば空気の圧縮と摩擦による熱で容易に燃え尽きてしまうでしょう」
サイファ「高速で回転しているため、岩の柱の周囲にリングができているようにも見えるわ」
ユニックス「撃破した敵衛星から岩の残骸を回収しましたが、回転している小石はありませんでした」
アンセム・ヴォルチ「つまり、敵は"死ぬ"か"壊れる"と回転運動が起きなくなるということだろうか?」
ユニックス「判明していません」
  以前から望遠による観測は行われており、敵衛星の地表には人間が作るような構造物は何も無い事は判明していた。
  だが、実際に活動中の状況を見てみると、その姿は地球の地形からは想像もできない有様である。
ユニックス「管理者同盟はこの物体を"スピナー"と名付けました」
ユニックス「"スピナー"が敵本体なのか、一部なのか、それとも敵が作った端末なのかは判明していません」
アンセム・ヴォルチ「炭素や窒素などの生命の組成に関わる物質は発見できなかったんだよな?」
ユニックス「まったくないわけではありません。 残骸から微量のアミノ酸は検出されています」
サイファ「地球の常識で考えれば生物を構成するためには全然足りない量だけどね」
ユニックス「さらに、データの詳細を分析すると角運動量、つまり回転運動によるもの以外と考えられる熱が発生しています」
アンセム・ヴォルチ「ふむ・・・」
  続いて、"敵"との戦闘における戦術分析に移る。
  こちらは直接の光学観測ではなく、集めたデータから検討した結果である。
ユニックス「敵の反応装甲は衛星上に何重にも積み重なったスピナーが外側だけ剥離して、衝撃を減殺(げんさい)したと予測されています」
アンセム・ヴォルチ「こちらの仕組みはほぼ予想通りだな、敵の拡散弾もそうだろう」
サイファ「閃光弾はおそらく核反応の電磁パルスを利用したものね」
ユニックス「回収した拡散弾から高濃度のウラン235が検出されています」
サイファ「敵のレーザー砲台も核反応を利用したガンマ線に指向性を持たせて発射されたと予測されるわ」
  濃縮したウラン235が臨界に達すると核分裂反応を起こし強力な粒子線を周囲に放つ。
  電磁パルス(EMP)兵器はこの粒子線によりイオン化した無数の電子を放出させることで電子機器や通信環境にダメージを与える。
  レーザーは、粒子線のうち最もエネルギーの大きいガンマ線を収束させ指向性をもたせ一方向に放つ。
  人類も化石文明時代から保有している兵器である。
サイファ「ステルスを実現した発光装置は、断面の電離作用を利用した発光と予測されているわ」
サイファ「いわゆる地震光と同じシステムね」
アンセム・ヴォルチ「しかし・・・こんな複雑なシステム、機械的な装置も無しに実現可能なのだろうか?」
ユニックス「一応、核分裂や核融合、指向性波長、地震光は自然界でも発生しうる現象でもあるわ」
サイファ「ガンマ線レーザーもガンマ線バーストなどの現象が知られているわね」
アンセム・ヴォルチ「さらに・・・"敵"が電磁気学を使用している形跡はない」
ユニックス「はい、"敵"が電子による記録や通信は行っている形跡は確認されていません」
アンセム・ヴォルチ「なのに"敵"は我々の電子機器に故意に打撃を与えるために、このEMP兵器を投入してきた」
ユニックス「その通りです。 こちらの電子機器によりダメージを与える波長に調節された形跡があります」
アンセム・ヴォルチ「ふむ・・・"敵"の概要はわかった」
アンセム・ヴォルチ「結局、これは生物なの・・・か?」
ユニックス「管理者同盟は判断を保留しています」
ユニックス「現在まで得られたデータ上は人間の定めた生物の定義には合致していません」
アンセム・ヴォルチ「我々が戦っている"敵"は間違いなく、明確な意図と技術の蓄積をもって戦術を組み立てている」
アンセム・ヴォルチ「意志がないなんてありえない・・・」
アンセム・ヴォルチ「これが"敵"だとすると・・・"敵"は回転運動を精神の源としているというのだろうか?」
ユニックス「初接触時より"敵"は重力制御に関しては我々より優れた科学力を持っています」
ユニックス「逆に電磁気学に関しては我々より劣っていたと予測されています」
アンセム・ヴォルチ「そうだな、我々は巨大ガス惑星の軌道を変えるような科学力を持っていない」
アンセム・ヴォルチ「"敵"は数千年前からそれぐらいの技術を持っていたということだし・・・」
サイファ「角運動量は慣性に関する力。"敵"の本質が重力制御と無関係とは思えないわね」
アンセム・ヴォルチ「電磁気学で精神を構成する我々と 角運動量で精神を構成する"敵"か・・・」

〇実験ルーム
アンセム・ヴォルチ「リスミー、ヴァルキリー隊を増強しよう」
リスミー・マクマード「クルーはこのあいだ補充したばかりじゃないの!!」
アンセム・ヴォルチ「ヴァルキリー隊のクルーをカレイジャス隊に編入したから、ヴァルキリー隊が手薄だ」
アンセム・ヴォルチ「今まで以上に索敵を密にしないといけないし・・・」
アンセム・ヴォルチ「防衛陣地設営作業用の工作ヴァルキリーや、兵站スタッフももっと必要になる」
アンセム・ヴォルチ「アーリマン攻略部隊にほとんどの人員を配置したから、次の手も考えておかないとね」
ユニックス「現在の備蓄量と補給状況なら増員は可能と考えます」
リスミー・マクマード「わかったわ。 過去のミッション成績から選んで増員しましょう」
アンセム・ヴォルチ「ああ、頼む」
リスミー・マクマード「ほんと男って消耗を気にしないのね!」
リスミー・マクマード「シオンベースのクルーを増やすということは、他で奪われるものがあるというのに」
ユニックス「あら、あなたのご主人のやり方はもっと強引で過激でしょう?」
リスミー・マクマード「あんな放蕩者の事はどうでもいいの!」
リスミー・マクマード「百年ぐらい会ってないからどこで何をしているのかも知らないわ」
ユニックス「ご主人の前では溺愛型完全奉仕妻のくせに」
リスミー・マクマード「もう! からかわないで頂戴」
ユニックス「ほんと面白い。人間を見ていると飽きないわ」

〇体育館の裏
有珠冬也「うっひっひ ゲームやんのに金が足りねーんだよ 貸してくれねーかなぁ?」
高校生「や、やめてくれよ・・・」
有珠冬也「ああ? また痛い目に遭いたいのかぁ?」

〇川に架かる橋の下
大岸俊夫「うぃーっく!! 遂にアパートも追い出されちまった・・・」
大岸俊夫「ゲームにギャンブル、酒に女。昔は派手に金を遣っておったんじゃがなぁ・・・」
大岸俊夫「これでワシも完全に浮浪者か・・・ もう飲むしかねぇ!!」

〇施設の男子トイレ
八雲潤「あー働きたくねー」
八雲潤「俺は仕事をしないで毎日楽しく自由に人間らしく生きるんだ」
八雲潤「ブヒヒッ!! ママのクレカでまたゲームしよっと!」
八雲潤「ふー」

〇VR施設のロビー
有珠冬也「な、なんだここはよぉ!?」
大岸俊夫「ワシの酒が抜けとる!?」
八雲潤「な、なんだこの髪!?」
リスミー・マクマード「皆さん、ようこそシオンベースへ」
リスミー・マクマード「私がチュートリアル担当の教養課長、リスミー・マクマードよ。 よろしくね」
リスミー・マクマード「早速状況を説明するわね」

〇ファンタジーの教室
然別洋子「あー、授業退屈ねー」
然別洋子「今日の放課後は彼氏クンとデートだぁ・・・楽しみ──」
有珠冬也「俺が地球を守る戦士になるなんてなぁ・・・」
有珠冬也「・・・」
有珠冬也「えっ!? な、なんだここはっ!?」
有珠冬也「女子校!?」

〇おしゃれなキッチン
蘭越里香「ふんふんふーん」
蘭越里香「はやく満(みつる)さん、帰ってこないかなー」
蘭越里香「今日は彼の大好きなハンバーグよ」
大岸俊夫「おや!? どうなっとるんじゃ!?」
大岸俊夫「ワシが料理をしておる!?」
大岸俊夫「ここはどこじゃ!?」

〇清潔なトイレ
朱鞠内聖良「♪」
八雲潤「ブヒッ!?」
八雲潤「股から小便が出てる!?」

〇VR施設のロビー
  シオンベースのヴァルキリー隊は大幅に増員され、クルーは倍増した。
  海斗達カレイジャス隊の訓練と並行して、新兵の教養が行われている。
リスミー・マクマード「というわけで、今日から新兵の皆さんの正式な訓練と作業を開始します」
リスミー・マクマード「先に説明した通り、先輩たちは一か月後にアーリマン攻略作戦に出撃予定です」
リスミー・マクマード「ですので皆さんのヴァルキリー隊がシオンベースを守る主力となります」
リスミー・マクマード「活躍を期待していますね」
有珠冬也「うっす! オレがこんなところで働けるなんてなー」
有珠冬也「身体は気持ちいいし女子校は楽しいよぉー」
大岸俊夫「就業時間中にゲームで遊んでいて会社をクビになったワシがのぅ・・・」
大岸俊夫「地上では若い人妻の身体になれて最高じゃて」
八雲潤「昔ハマってたCShの成績でこんなスタイル抜群の身体を手に入れられるなんて・・・」
八雲潤「しかも地上ではロリボディが俺の・・・ ブヒヒッ!!」
リスミー・マクマード「それじゃあ、新しいヴァルキリー隊員はさっそく勤務に入るわね」
リスミー・マクマード「操作はゲームと同じだけど、身体は違うし、体感も変わるから慣れておくことが大切よ」
「了解!!」
マキア・ローザリア「数日彼らをみたが、今回の増員は大分質が低そうだね」
リスミー・マクマード「過去のCShの成績で惜敗だった者を集めたのだけれど・・・」
リスミー・マクマード「3年前まで遡ったから、今はプレイしていない者もいるみたい」
マキア・ローザリア「対戦ゲームの腕はプレイしていないとすぐに落ちてしまう」
マキア・ローザリア「その間に社会で挫折したり、道を外した者もいるようだ」
リスミー・マクマード「シオンベースは実力主義、戦争ができれば地球でのモラルについては問題にしていないわ」
マキア・ローザリア「地球で刑務所に入ってたって精神だけこっちに連れて来るわけだしな」
リスミー・マクマード「数年前までは優れたプレイヤーだったのだから、何とか思い出してもらいたいものだけれど・・・」
マキア・ローザリア「リスミーは心が読めるし、アンセム司令官には逆らえない、ここでの悪事は不可能だ」
マキア・ローザリア「しかし、それで戦士として能力が高まるわけじゃないからな」
マキア・ローザリア「新兵は予め動員する者が指定されている大陸の国家だけにできなかったのかい?」
リスミー・マクマード「クルーの採用は管理者同盟が割り当て通りの公平な負担を要請してきているの」
リスミー・マクマード「それにお行儀のよい貴族ばかり採用したほうがいいというわけでもないのよ」
マキア・ローザリア「それもそうか・・・しかし地球での私の仕事が忙しくなりそうだよ」
リスミー・マクマード「連邦職員とシオンベースのクルーの掛け持ち、なかなか忙しいわね」
マキア・ローザリア「この程度、大戦中に比べればどういうことはないさ」

〇センター街
ナンパ男「たったこれっぽちの金で現役女子高生がやらせてくれるなんてよぉ!!」
有珠冬也「うっひっひ・・・俺をサイコーに気持ちよくさせるのが条件だぜ?」
ナンパ男「もちろんさ、俺はテクに自信があるんだぜ」
有珠冬也「前の男もそう言ってたが一発やっただけで疲れ果ててたよ」
ナンパ男「オレに任せろって」
有珠冬也「女の身体はやって貰えば最高に気持ちいい。 だれどそれは男のテク次第だ」
有珠冬也「ま、お手並み拝見といきますかー」
然別洋子「やめてっ!! 私の身体でそんなエッチなことしないでっ!!」
有珠冬也「またお前かよ・・・いい加減ウゼェ!!」
然別洋子「女の子の身体は大切なのよ!! 安売りしないで頂戴!!」
有珠冬也「この身体はもう俺のモンだ。お前に関係ねーだろ!!」
然別洋子「ひどいっ!! 私の身体なのにっ・・・」
有珠冬也「ふん、この身体はとっくに貫通処理済みだ」
然別洋子「そ、そんなっ!!」
有珠冬也「お前は中の絶頂を知らないまま女からオサラバってわけだ」
有珠冬也「ざまぇねぇな!」
有珠冬也「俺は毎日気持ちよく楽しめてサイコー、超愉快だぜー」
然別洋子「ひどいっ!!」
有珠冬也「あーこいつマジウッゼー!! おい、やっちまってくれよ」
有珠冬也「俺をつけまわす変態ストーカーなんだ。最低の奴だろ?」
ナンパ男「なんだお前? 俺の女に文句でもあんのか? ああ?」
然別洋子「いやっ! 暴力はやめてっ!!」
然別洋子「ひいっ! 痛いっ!」
然別洋子「殴らないでっ!! 暴力はやめてっ!」
ナンパ男「近寄んじゃねーよ雑魚が」
然別洋子「いやっ 助けてっ!!」
有珠冬也「なさけねー奴・・・ マジでキモッ」

〇綺麗な会議室
蘭越里香「私の身体を返してください!」
大岸俊夫「そんなこと言われてものぉ~ この身体はもうワシの身体だってTS法で決まっておるのじゃ」
大岸俊夫「この身体でワシが何をしようと文句は言わせんぞ」
蘭越里香「あなた・・・私妊娠していたの・・・」
蘭越満「な、なんだって!?」
大岸俊夫「ほー、腹の違和感はそれかー」
蘭越里香「私達の待望の子供なのに・・・」
大岸俊夫「じゃあこのワシの腹にはおまえ達夫婦の子が宿っているわけじゃな」
蘭越満「子供だけでも私たちに返してください!!」
大岸俊夫「民法では子供は産んだ女の物じゃ。 つまり、ワシが産んだらワシの物じゃ」
大岸俊夫「そして、この国には種付けした父親には養育費を払う義務がある」
大岸俊夫「子供の権利はワシの物、お前たちは養育費と親の義務だけ果たせよなぁ」
大岸俊夫「子供に責任はないんじゃ、当然じゃよなぁ?」
蘭越里香「そ、そんな・・・」
蘭越満「くっ・・・」
大岸俊夫「嫌なら下ろそうかのぅ。ワシは別に産みたくないしのぅ!!」
大岸俊夫「あー母体の健康を害する恐れがあるのぅ!! くっくっく」
蘭越里香「や、やめてください!!」
大岸俊夫「だったら、その分ワシに奉仕せい。 この腹の子の命は母体のワシが好きなように決められるんじゃぞ?」
大岸俊夫「そういう風にお前ら女が決めたルールじゃろ?」
蘭越里香「ううっ・・・」
蘭越満「どうしてこんなことに・・・」

〇女の子の部屋
八雲潤「ぶ、ぶひひひ・・・」
八雲潤「いくらママに甘えても構わないし、働けとも言われない」
八雲潤「どんな女の子を守る法律も、俺自身が自分の身体を楽しむ事を規制する事は出来ないんだ」
八雲潤「つまり、いくらでも好きなことがし放題・・・」
八雲潤「ブヒヒヒヒッ!! 俺が幼女なんだ!」
八雲潤「最高だっ! 幼女最高だっ! ブヒヒヒヒッ!」

〇宇宙戦艦の甲板
月島海斗「いよいよ今日から母艦離発着訓練だ・・・」
九鬼雄太「シミュレーション通りやれば大丈夫だよっ」
善通寺正吾「うぉーキンチョーして勃起してきたぜー!!」
オペレーター「海斗機スタンバイOK カタパルトクリア」
オペレーター「発進しますか?」
善通寺正吾「カレイジャス、海斗機発進します!!」

〇宇宙空間
善通寺正吾「無事発艦できたぜー」
九鬼雄太「次は編隊だね」
月島海斗「1301龍馬機、1303英雄機、1302カイト機の後方に」
善通寺正吾「了解!!」
九鬼雄太「訓練通り問題なく隊列を組めているよっ!!」
月島海斗「昔の大戦では編隊に失敗することも多くて、指揮が乱れて大損害を受けたこともあったらしい」
月島海斗「宇宙では尚更チームワークが大切だよ」
善通寺正吾「航路に問題はねぇぜ!」
九鬼雄太「進路に異常なし!」
月島海斗「さて準惑星を周回して・・・次は着艦訓練だ」
月島海斗「着艦の方が難しいってきくけど・・・」
善通寺正吾「なんか機体が馴染んできた。着陸誘導装置もあるし、大丈夫だぜー」
  その時、海斗はモニターに防御衛星設置作業中のヴァルキリー隊に目を留めた。
月島海斗「あれ・・・」
月島海斗「あの作業分隊。周辺警戒機を置いてないんじゃないか?」
  宇宙では物体は高速で移動しているため、衝突した場合、常に大きな事故になる。
  そのため単座機の作業規則では周辺警戒を担当する機を必ず配置することになっていた。
九鬼雄太「置いてないね。警戒レーダーが作動してないみたいだよ」
善通寺正吾「危ないなぁ。事故の元だぜ」
月島海斗「無線を繋いでくれ」
九鬼雄太「了解っ!」
月島海斗「そこのヴァルキリー、周辺警戒レーダーの故障か?」
有珠冬也「あー、すいません。 警戒レーダーの作動を見落としてましたー」
有珠冬也「今、作動させましたー」
月島海斗「了解」
有珠冬也「チッ・・・めんどくせぇなぁ・・・」
有珠冬也「周辺監視すると作業効率が落ちるってのによぉー」
有珠冬也「あーこんな仕事パッパと終わらせて、早く帰ってヤりてぇー!」
有珠冬也「うっひっひ、今日は新しいプレイを試してやるぜ」

〇VR施設のロビー
月島海斗「なんとか無事に離発着訓練と編隊飛行訓練を終えたな──」
善通寺正吾「結構簡単だったぜ」
九鬼雄太「たくさん練習したしねっ」
月島海斗「あれ、何かロビーが騒がしいけど・・・」
李維新「お前!! 危うくぶつかる所だったじゃないか!!」
李維新「ちゃんと定められた手順を守れ!!」
八雲潤「ブ、ブヒッ!! 自動操縦装置に従っただけだよう!!」
李維新「帰投は管制オペレーターと繋いで指示に従うんだよ!!」
李維新「宇宙で衝突したら大惨事になるんだぞ!!」
八雲潤「そんなの衝突警戒装置があるから大丈夫でしょ!!」
八雲潤「俺はゲームでいつも警報を聞いてから回避してたよ!!」
李維新「警報出るまでずっと自動操縦で放置してるのか?」
八雲潤「当たり前だよ、そんなのよくやるじゃん」
李維新「そりゃ緊急時だけだ! 訓練や作業中にやるんじゃねぇ!!」
八雲潤「ブ、ブヒぃ!!」
リスミー・マクマード「李少尉、待って頂戴」
李維新「リスミー教官・・・」
リスミー・マクマード「私から手順を守るように伝えるわ。ここは任せてくれないかしら」
李維新「わかりました・・・」
リスミー・マクマード「八雲曹長、あっちで話をしましょう」
八雲潤「ブヒ・・・」
李維新「・・・怒不可遏」
月島海斗「維新・・・」
李維新「あんな無責任な連中、雇う必要ないんだよ!」
李維新「俺たち東方七国には、シオンベースで戦うために人生を捧げて毎日鍛錬している一族がいくつもあるんだ」
李維新「後宮には身体の交換を受け入れるための若い女も事前に用意されている」
月島海斗「訓練する男性も、身体を捧げる女性も本心とは限らないじゃないか」
李維新「もちろん内心はわからないけど、表面上は誰も不幸にならない」
李維新「戦いを希望している俺たちから新兵を採用すればいいんだ!!」
李小龍「維新、待ちなさい」
李維新「爸爸・・・」
  激怒している李維新を第2航宙小隊の小隊長、李小龍が遮る。
李小龍「組織のことは司令官や幹部が考えることだ」
李小龍「まだ着任して数ヵ月の新兵が口を挟むことじゃない」
李維新「李中佐、我ら一族は戦う為に産まれ、それを誇りにしてきました」
李維新「今回の増員でも着任した東方七国の新兵はみんな誠実に任務に服しています」
李維新「未熟な仲間がいると全力で敵と戦えません」
李小龍「維新、お前は自身の才能と努力に頼りすぎる」
李小龍「しかし、男の強さはそこじゃない。間違えるな」
李維新「自らを心身共に鍛錬して、誰かを守るために戦う以外に何があるっていうんです?」
李小龍「自分で考えた結論じゃないと意味はないさ」
李維新「・・・」
李維新「まったく、爸爸はいつもそうだ。たまに会っても何も教えてくれない」
李維新「何をするか自分で考えろってことかよ・・・」
月島海斗「維新、徴兵が特定の地域や種族に偏るとそれはそれで問題だよ」
月島海斗「俺たちは地球を守っているんだし・・・世界全体の責任だと思う」
李維新「まったく・・・海斗は理屈っぽいやつだな・・・」
李維新「ま、リスミー教官に任せるよ。あの人は1000年以上前から教育者やってるらしいしな」
月島海斗「1000年・・・」
李維新「とんでもない人がゴロゴロいるんだ。このシオンベースは」
月島海斗「本当にすごいよね」
李維新「お前もだよ・・・」
月島海斗「どうしたの?」
李維新「なんでもない」

〇警察署の食堂
大岸俊夫「ウィーック!!」
九鬼雄太「うわっ!! お酒臭い・・・」
月島海斗「そのコップは・・・アルコール?」
月島海斗「シオンベースに酒類は持ち込まれて無いはずなのに・・・」
大岸俊夫「よぉ! 先輩、一緒に飲むかい?」
九鬼雄太「ボク達は未成年だし・・・」
大岸俊夫「おーそーかそーか、そりゃ残念」
大岸俊夫「酒も飲めない歳(とし)から働いているなんて、君達は偉いねぇー」
九鬼雄太「この身体のαラグナ族は毒にも病気にも耐性があるっていうけど・・・」
九鬼雄太「お酒には酔うんだ・・・」
月島海斗「酔わない種族もいるらしいけど、アルコールによる酩酊だけはするみたい」
大岸俊夫「そりゃ、人類には酒が必要だってことじゃな!!」
月島海斗「知識と簡単な道具があればお酒は簡単に作れるけど・・・」
月島海斗「少ない食料を使ってやるなんて・・・」
大岸俊夫「んー仕事を終えて一杯やるなんて当然の権利じゃろう!?」
大岸俊夫「ここは酒税法適用外の特別地区、自作しても法律は問題ないんじゃ」
月島海斗「その代わり、補給物資の不当な浪費を禁止するルールがあります!」
大岸俊夫「ワシに割り当てられた食料をワシが飲むんだから不当浪費じゃないぞい」
大岸俊夫「それにワシは地球で妊婦なんじゃ。 休暇の時、浴びるほど飲んでもいいのかのぅ? んー?」
大岸俊夫「胎児にどんな影響がでようとワシには関係ないしのぅ?」
月島海斗「そ、それは・・・」
大岸俊夫「仕事や戦場と酒は昔から切っても切れない関係なんじゃ!!」
月島海斗「それは・・・そうだと思います・・・」
大岸俊夫「教官も状況が許せば酒類も補給されると言っている、単に今までなかっただけじゃ!!」
大岸俊夫「まー社会に出て長く汗を流したことのないガキにはわからないじゃろうけどな」
月島海斗「・・・」
大岸俊夫「あー、仕事の後の一杯は最高じゃー」

〇諜報機関
カイト・カザン「今日の編隊訓練もマニューバの予行も上手くいったね」
カイト・カザン「これなら、実戦でも問題なさそうだ」
カイト・カザン「"敵"の正体も判明したし、私達の反撃はこれからだよ」
月島海斗「回転を源とする"敵"ですか・・・」
  収集した"敵"に関する情報は、すでにシオンベースのクルーに周知されていた。
カイト・カザン「そうだな、今日はレーヴァテインと異名をとる海斗くんに"敵"の戦術能力について意見が聞きたいな」
月島海斗「ええ・・・」
カイト・カザン「真剣に戦った者だからこそ感じられることもあるんじゃないかい?」
カイト・カザン「最新のAIが分析したって、現場で戦った意見の方が正しいこともあるさ」
月島海斗「そうですね。俺が思うに・・・ "敵"も俺たちと同じだと思います」
月島海斗「戦術を組み立てて、戦力を集中し、弱点を突き、フェイントを絡ませてきます」
月島海斗「おそらく、新兵器の開発や戦力の投入について戦略的な判断もしているでしょう」
月島海斗「人間の意識が電流、AIも同様だとすれば・・・」
月島海斗「それをマクロな小石サイズで行っているのが"敵"なのかと・・・」
月島海斗「衛星表面の石柱が大脳のシワで、回転する小石が神経を流れる電流なのではないでしょうか」
カイト・カザン「すると、"敵"は衛星ひとつを乗っ取っている1個体であるということなのかな」
月島海斗「いえ、俺は"敵"は全てで1つの意志だけで行動している・・・そう思えます」
月島海斗「地球でも種として全体意識があるような戦略で生きている生物は存在しますし・・・」
月島海斗「むしろ、種同士で個が分かれている方がレアケースなのかもしれません」
カイト・カザン「なるほど・・・」
カイト・カザン「"敵"は意志ひとつの1個体。それは参考になる意見だね」
カイト・カザン「個という存在で意志が分かれている私達とは違うという事か・・・」
月島海斗「個人といえば・・・」
月島海斗「カザン大尉・・・最近、シオンベースの風紀が落ちているような気がします・・・」
月島海斗「新兵との軋轢はどこの軍隊でも起きることだけど・・・」
カイト・カザン「組織だし、ある程度は仕方がないと思うよ」
カイト・カザン「私達人間は個々にそれぞれの意見を持っている。軋轢があって当然」
カイト・カザン「アンセム司令官やリスミー教官はそのあたりのプロ。任せて様子を見守るしかないね」
月島海斗「カザン中尉のローラシア帝国もクルーは予め指定された貴族から選抜されるんですよね」
カイト・カザン「ああ、今回の追加動員もローラシアでは、指定された貴族のみが採用されているね」
カイト・カザン「私は兄の戦死でクルーとなり、地球では妹のアナスタシアの身体を使っている」
カイト・カザン「クルーになる時、お互い同意の上で身体を交換したんだ」
月島海斗「戦死したら補充される・・・」
カイト・カザン「私達はまるで戦うためのパーツみたいだろう?」
月島海斗「はい・・・」
カイト・カザン「予め社会の歯車として決められている人生だけど」
カイト・カザン「貴族の特権を放棄すれば辞めることはできるんだ」
月島海斗「どうして国によってシステムに差があるんだろう・・・」
カイト・カザン「違っていいんだと思う。一部の貴族にのみ義務と特権を与える社会が良いとは限らないさ」
カイト・カザン「それに私は思うんだ。 私達の国に海斗くんは産まれない」
月島海斗「どういうことです?」
カイト・カザン「一見温厚で優柔不断に見えても、戦闘では恐ろしいほどの闘志と集中力を秘めている」
カイト・カザン「そういう君みたいな魂は、育てるんじゃなくて志すんだよ」
カイト・カザン「私達のように社会から与えられたレールで育てられた者には得られない領域なんだろうな」
月島海斗「そういうものでしょうか・・・」
カイト・カザン「そういうものだよ」
月島海斗「・・・」

〇二階建てアパート

〇一人部屋
  翌日、休暇で地球に戻った海斗は札幌郊外にある美唄渚のアパートへ来ていた。
月島海斗「ここが男の一人暮らしかー、いや女の一人暮らしか・・・?」
月島海斗「かなり綺麗にしてるね」
美唄渚「いいの? 海斗兄さん、せっかくの休みなのに・・・」
美唄渚「ゲームならオンラインでもできるでしょう?」
月島海斗「渚がどういう生活をしているか気になってさ」
月島海斗「本当に独りで暮らしをしているんだ・・・すごいね」
美唄渚「一応、大学生だし、おかしくないでしょ」
美唄渚「それにレナ族は伝統的に成人した男子は1人暮らしをするのよ」
月島海斗「まぁ海外じゃ、大学生は大人扱いが当たり前か・・・」
月島海斗「けど、精神的には俺より年下なのに、今年度大学卒業で、来年から社会人とはなぁ・・・」
美唄渚「海斗兄さんだってもう軍に所属しているじゃない」
美唄渚「それに女の子の精神は中学生でもう大人なのよ」
月島海斗「男がずっと子供なだけかもしれないけどね」
  海斗はクッションに胡坐をかいて座る。
  パンツは丸見え、恥じらう様子はまったくない。
月島海斗「さて、アレやるか!」
美唄渚「アレって・・・」
月島海斗「一人暮らしの男の家に泊りで遊びに来て、2人でやる事っていったらアレしかないだろ?」
美唄渚「・・・」
月島海斗「スカッとしてとっても気持ちいいヤツさ」
月島海斗「あー楽しみすぎて身体が疼(うず)くよ。明日の朝まで徹底的にやろう!」
美唄渚「うん・・・」
月島海斗「よーし、さっそく始めるぞ。今日は手加減ナシだ。ガンガン攻めてくれ」
美唄渚「・・・」

〇一人部屋
月島海斗「ふー」
月島海斗「いたた・・・さすがに激しすぎた。 キツい・・・」
美唄渚「大丈夫? 海斗兄さん」
月島海斗「ああ、大丈夫だ」
美唄渚「女の子がそれを言うと大丈夫じゃないってことなんだけど・・・」
月島海斗「痛いのは最初だけだろ・・・次は慣れてもっと上手くできるさ」
美唄渚「そうだね」
月島海斗「あ─」
月島海斗「ひと汗掻いた後のガラナがウマい!!」
月島海斗「やっぱスマクラ100セットマッチは面白いな!!」
月島海斗「対面だと遅延が無いからカウンターコンボの練習にはぴったりだ」
美唄渚「指が慣れていないから痛くなるのよ」
月島海斗「この程度たいしたことないよ。少し休憩したらまた始めるぞ」
美唄渚「やっぱり海斗兄さんは海斗兄さんだわ。 どんな姿でも私には海斗兄さんにしか見えない・・・」
月島海斗「そうかな?」
月島海斗「最近はゲームばかりじゃなくて動画サイトもよく見てるんだよ」
月島海斗「じゃあ、ちょっと指休めに巡回するか・・・」
美唄渚「海斗兄さんが回るのは、ほとんどがゲーム実況か情報系ね」
月島海斗「あとエロかな?」
美唄渚「その身体でもそれを言う海斗兄さんは本当にすごいと思うわ」
月島海斗「今日はいつものサイトはあんまり更新がないなぁ・・・」
月島海斗「あ、あれ・・・この動画は・・・」
美唄渚「どうしたの?」

〇団地のベランダ
有珠冬也「うっひっひ・・・」
有珠冬也「TikTik女子高生シリーズ第3弾!! ベランダで〇〇〇~」
有珠冬也「今日もみんなにサービスしちゃうぜー」
ナンパ男「おーい、早くしろよ」
有珠冬也「待ってろって」
有珠冬也「女子高生がいろんなトコで、こんなことやあんなことをしちゃうシリーズ!!」
有珠冬也「うふふ・・・今日はベランダでアワビを焼いちゃうぞっ!!」
有珠冬也「あーん、お汁がダクダクでとってもおいしそー!!」
有珠冬也「じゃ、今から焼きまーす!! ゆっくりしていってねー」
有珠冬也「チャンネル登録よろしくね!」
有珠冬也「ちゅっ!!」

〇ホテルの部屋
大岸俊夫「人妻NTR物語ch第四話、プレミアム公開じゃ!! くっくっく・・・」
大岸俊夫「さーて、こちらは他所の旦那。 今からこの人妻ボディで合法不倫をはじめるぞい」
大岸俊夫「シチュエーションがそそるのぅ! 寝取られみんな大好きじゃろう?」
大岸俊夫「あーん、前の旦那、ごめんなさーい! でも女のボディはロマンスは優先して当然じゃよなぁ?」
大岸俊夫「ワシも気持ちいいし 人妻気分をたっぷり楽しもうかのぅ!!」
大岸俊夫「さーて、頼むぞ! くっくっく・・・」
大岸俊夫「さわさわ」

〇浴場
八雲潤「ブヒヒッ 100日後に〇〇する幼女、今日はおフロだよっ!!」
八雲潤「あたしが、いろんなトコ洗うブヒッ!!」
八雲潤「あそこもここもキレイキレイにしちゃうブヒ!!」
八雲潤「ブヒヒッ!!」
八雲潤「すりすり」

〇一人部屋
  海斗はシオンベースのクルーがアップしたと思われるSNSや動画の投稿をいくつも発見した。
  どれもかなり際どい内容である。
月島海斗「女子高生、人妻、ロリ・・・再生数の稼げるネタばかりだな」
美唄渚「シオンベースの人はこういう動画アップしても問題ないの?」
月島海斗「クルーは基地の軍法がすべてで、地球での罪は関係ないんだ」
月島海斗「地球での生活は連邦法や日本の法律に引っかかれば問題だけど・・・」
月島海斗「直接裸を写しているわけじゃないし、取り締まりされるようなこともないと思うよ」
美唄渚「男性って、どうしてこんなエッチな動画をアップするのかしら?」
美唄渚「再生数でお金稼ぎ? でも、クルーってお給料はかなり貰えるんでしょう?」
月島海斗「承認欲求だと思うよ」
月島海斗「高給を得たからこそ、次は多くの人から褒められたい」
月島海斗「お金が有り余ってる芸能人や、資産家だって似たような事を始める人は多いさ」
美唄渚「確かにね」
美唄渚「でも男の人ってこういう背徳的なシチュエーション好きよね」
美唄渚「女の子の身体を一方的にイタズラして楽しむなんて、私には理解できないわ」
月島海斗「残念だけど、女の身体になった男はみんなやる」
月島海斗「他人向けで公開するかどうかの違いしかないと思うよ」
美唄渚「・・・海斗兄さんもやりたくなるの?」
月島海斗「なる」
月島海斗「この身体になった時は1日何回もやってた」
美唄渚「そうなんだ・・・」
月島海斗「渚はその男の身体でなにも溜まらないの?」
月島海斗「悶々とした男性的欲求が溜まらない?」
美唄渚「溜まるよ。だけど私は女の子だから、好きな人とじゃないとできないわ」
月島海斗「・・・」
美唄渚「・・・」
月島海斗「じゃ、俺とやる?」
  沈黙の時間が流れる
美唄渚「いいの?」
月島海斗「別に、ずっと処女でいたって意味ないし」
  処女の女性には"VAF"という特殊な力があるが、それは成人後、年齢を追うごとに減衰する。
  種族にもよるが、だいたい30歳で1割程まで低下してしまう。
  ただし、シオンベースのαラグナ族は処女である限り不老なので減衰しない。
美唄渚「・・・」
  海斗はベッドに仰向けになると股を開いた。
  海斗の下着は露(あらわ)になり、同時に自分の胸を揉んでいる。

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コメント

  • 加油

  • ここまで社会秩序と法令や家族観が特殊な世界観の作品は珍しいですねー

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