第9話 戦士の休暇(ソルジャー・オン・バケーション)(脚本)
〇ファミリーレストランの店内
遠征前に与えられた7日休暇によって豊原市に戻ってきた海斗たち。
高校もちょうど秋休みにより一週間休日が続いている。
彼らはいつもの習慣で近所のファミレスに集まっていた。
月島海斗「今日は何する?」
海斗が『何する?』と尋ねた時は何のゲームをするか、と言う意味である。
善通寺正吾「あー、オレ今回パス。浅利とツーリング旅行する約束なんだよ」
善通寺正吾「オレの新車で樺南を走り回ってやるぜ!」
月島海斗「そうなんだ」
九鬼雄太「ボクは先生のところでピアノのレッスンがあるんだー」
九鬼雄太「週末の発表会に岩城さんも来てくれるらしいし、練習しなくちゃ!」
月島海斗「そうなんだ」
善通寺正吾「というわけで、わりいな海斗」
九鬼雄太「ごめんね、海斗くん」
月島海斗「いや・・・」
善通寺正吾「じゃあなー!!」
九鬼雄太「またねー!!」
月島海斗「・・・」
海斗はスマホを取り出し、彼女の美唄渚であるメテオくんのアカウントにDMする。
海斗のメールはいつも短い。今日は『暇?』の二文字だけ。
彼女からはすぐに返事が帰ってきた。
月島海斗「『今週は兄さんと墓参りにいくので豊原へは行けない』」
月島海斗「うーん・・・」
自分が札幌に行くのも考えたが、オタクの海斗は理由なしに外出したくない。
海斗はゲームをするのが目的であり交遊にはほとんど興味がないのである。
あくまでもゲームをするための対戦相手が欲しいだけだ。
月島海斗「じゃあ家で時間を潰すか・・・」
〇男の子の一人部屋
結局、海斗は自宅で遊ぶという、いつもの結論に達した。
月島海斗「何するかな・・・」
月島海斗「ゲームでもするか──」
海斗は独りで部屋に籠ってずっとゲームをしているオタクである。
ここ数ヶ月、CShやシオンベースの訓練、部活でのゲームばかりしていたので、新しいゲームをしていない。
というわけで、とりあえず積んであるゲームをプレイしていくことにした。
月島海斗「あ、これは・・・正吾がやってたゲーム」
海斗はシオンベースのクルーになる前に勧められて入手したゲームを見つける。
月島海斗「『ゴッドVSドラゴン』通称ゴッドラ」
月島海斗「女の子のアクションが爽快なやつ・・・」
人気声優や人気キャラクターデザイナーを使っている美麗グラフィックのアクションRPG。
要するに美少女キャラで敵を倒して狩りをするゲームだ。
月島海斗「このオープンワールドのハスクラRPG、話題だけどまだやってなかったんだよな」
月島海斗「となりのハスクラゲーム部はこれをメインでやってるんだっけ」
というわけで海斗はさっそくプレイしてみる。
このゲームは課金すれば簡単に強くなれるシステムがあった。
軍資金はあるので、最高ランクのチケットと、強力な課金装備を購入する。
そしてwikiで情報を収集して効率的に経験値を稼ぐ。
月島海斗「やっぱ狩りゲーは面白いなー」
効果的なコンボをマスターし、高性能なアイテムを入手してステータスがどんどん強化されていった。
この手のゲームは技術的にも慣れたものである。
月島海斗「うーん・・・なんだろう?」
月島海斗「この身体だとレベルアップしても何の興奮もしないんだよな・・・」
ステータス画面の能力値を見て、自分が強くなったことを実感する。
RPGでは当然の行為であり、気持ちの良い瞬間のはずだ。
ところが神楽耶の身体は、強い自分になんの反応も示さない。
月島海斗「女の子の身体は強くなっても興奮しない?」
月島海斗「それとも課金で楽に強くなっているから?」
月島海斗「両方かもしれないなぁ・・・」
月島海斗「まぁ、強さの実感は男性ホルモンが影響しているからかな・・・」
月島海斗「しかしそれはそれでつまらないな・・・」
というわけで海斗は神楽耶の身体を故意に興奮させて快楽を得ることにした。
月島海斗「ふぅ・・・」
月島海斗「あー気持ちー」
女の身体は何回でもできるし、自分の身体なので何の抵抗もしない。
海斗はレベルアップの度にそれを繰り返した。
月島海斗「こりゃ気持ちよくハスクラゲームするのにちょうどいいや」
何がちょうどいいのかよくわからないが、その日、海斗はずっとそのゲームをプレイし続けていた。
月島海斗「あーガラナがうまいー」
〇密林の中
サクチャイ・ラオバン「やっぱり男子のハンターたるもの、休暇はリアルでひと狩りするに限るぜ・・・」
サクチャイ・ラオバン「数多の英傑が狩りを好んだ。古今東西例外はない」
サクチャイ・ラオバン「最近の若いモンはゲームの中でばかり狩りをしているらしいが・・・なっとらん!」
サクチャイ・ラオバン「やはりリアルの狩りは最高だよ!」
サクチャイ・ラオバン「まぁ自宅近くにジャングルがないだけかもしれないが・・・」
サクチャイ・ラオバン「しかしそう考えると男の狩り好きは生来的なものなのだろう」
サクチャイ・ラオバン「さて今日のメシはどこだー?」
サクチャイ・ラオバン「おっ!? 獲物がいたぞ!」
サクチャイ・ラオバン「セキショクヤケイだ、うちの地方で家畜化されたという世界三大家畜のひとつだな」
サクチャイ・ラオバン「肉も卵もウマイ。間違いない」
サクチャイ・ラオバン「よし今日の晩メシは『トム・カー・ガイ』だ!!(※ココナッツミルクで仕上げたチキンスープ)」
サクチャイ・ラオバン「よーし、得意の弓で仕留めるぞ・・・」
サクチャイ・ラオバン「うりゃっ! くらえっ!三連射!!」
ニワトリ「・・・」
サクチャイ・ラオバン「外した・・・」
サクチャイ・ラオバン「弓で狙われているのに堂々としてやがる・・・ なかなかの度胸だ」
サクチャイ・ラオバン「しかし女の身体だと弓が撃ちにくい・・・ おっぱいが邪魔すぎる!」
サクチャイ・ラオバン「アヴジェ族は特に巨乳だから厳しいぜ・・・」
サクチャイ・ラオバン「もみもみ・・・」
サクチャイ・ラオバン「ならば素手で捕まえるべし!」
サクチャイ・ラオバン「うりゃっ!」
ニワトリ「コケコッコ~!」
サクチャイ・ラオバン「は!?」
サクチャイ・ラオバン「いつの間にかニワトリの大群に囲まれている!?」
ニワトリ「コケコッコー」
ニワトリ「コッコー!」
サクチャイ・ラオバン「しまった!? 孔明の罠か!!」
ニワトリ「コケッコ~」
ニワトリ「ケッコ~」
サクチャイ・ラオバン「うわぁー!!」
ニワトリ「コケッ!」
ニワトリ「ケッ!」
サクチャイ・ラオバン「いたたた・・・」
サクチャイ・ラオバン「ニワトリは集団反撃する習性があるとはいえ、反撃でボコボコにされるなんて・・・」
サクチャイ・ラオバン「こんなアクションアドベンチャーゲームあったなぁ・・・」
〇男の子の一人部屋
月島海斗「何するかな・・・」
月島海斗「確か"あき"ちゃんはテルテナ島で撮影だっけ・・・」
海斗は彼女である北三条英雄に"S&PR500"の海外撮影ツアーに誘われた。
だが拘束期間が6日間すべてだったので断った。
アイドルの水着は好きだが、海斗は基本的に家にいて映像をみる方が好きなオタクである。
月島海斗「YouTubeでもみるか・・・」
海斗はいつも通り動画投稿サイトを巡回する。
そしてゲーム実況をみたりアイドルの動画などもチェックした。
月島海斗「うへへ、ココナッツガールはみんな巨乳で萌えるなー」
月島海斗「あー興奮するー・・・」
月島海斗「いや、身体はしない・・・」
月島海斗「まぁ神楽耶のおっぱいもEカップだしそこそこ大きいしな」
月島海斗「自分の胸についているから触り放題だしなぁ」
月島海斗「あー、何度揉んでも柔らかくて面白い」
海斗はマウスと自分の胸を揉みながらネットサーフィンを続けている。
月島海斗「あっ、アーカイブの水着プロモだ。懐かしい・・・」
ブックマークには『S&PR500』のフォルダが残っていた。
『S&PR500』は札幌で最も伝統のあるアイドルグループで、北海道や樺南で知らない人はいない。
ルックスに自信のある女の子が目指すアイドルグループであり、メンバーの入れ替わりが激しい。
海斗は去年の夏、『S&PR500』の"あき"を知った。
若くて溌溂(はつらつ)とした姿勢。男心を掴む甘い仕草。趣味に知識の濃い軽快なトーク。
それらは真ネカマである北三条英雄が行っていた演技だったが
女性アイドルというのは元々、男性の興味を惹く演技で人気を得るものだろう。
海斗はこの"あき"というアイドルのファンになった。
いや、おそらく好きや推しとはちょっと違うかもしれない。
男子なら誰もが1度は陥る、同世代で趣味が合いそうな女の子に寄せる憧れのひとつなのだろう。
月島海斗「やっぱ"S&PR500"は皆かわいいよなー」
月島海斗「やっぱり南国のビーチに行った方が良かったか?」
月島海斗「こんなかわいい女の子達と水着でバカンスなんて・・・」
ゲームでは迷いがない海斗だが、女の子に関しては逡巡(しゅんじゅん)が多い。
月島海斗「そういえば、前に買った水着があったな」
海斗は北三条英雄と一緒に購入した水着を思い出した。
部屋の中だが、試しに着てみる。
月島海斗「おおっ!!」
月島海斗「やっぱ女の子の水着はいいなぁ・・・」
月島海斗「神楽耶の肌はすべすべしていてとても綺麗だし」
月島海斗「おっぱいも大きいし谷間も魅力的でいい感じだ」
月島海斗「身体は興奮しなくても、魂は興奮する──」
自分の身体なので触ろうが揉もうが自由である。
さらにどんなポーズで撮影もできた。
月島海斗「よし、このポーズで・・・」
月島海斗「ふぅ・・・」
さらに、身体から得られる快感もすべて本物だ。
海斗は飽きずに自分の撮影と快感を何度も繰り返し楽しんだ。
月島海斗「あー、水着姿で部屋で飲むガラナはウマいなぁー」
〇海辺
北三条英雄「いやっほー!!」
北三条英雄「四方八方水着の美少女! 見放題の触り放題!」
北三条英雄「海はキレイで暖かい! 南国のビーチは最高だぜー!!」
銭函信二「リーダー 水着写真撮影に海斗君を誘ったんじゃないの?」
北三条英雄「それがねー誘ったんだけど断られちゃった」
大麻慎太郎「海斗くん。幼馴染と縒(よ)りを戻したって話、聞いた?」
北三条英雄「あー、知ってるよ。小隊長の妹だ」
銭函信二「浮気じゃない?それ」
北三条英雄「別にー? 私は女の子じゃないから、気にしないよっ!!」
北三条英雄「"あき"だってここでみんなとイチャイチャして浮気してるしっ!!」
銭函信二「ま、それもそうか」
大麻慎太郎「南国のビーチでトップアイドルを侍(はべ)らせたハーレムは最高だよ」
北三条英雄「触り放題だしな!!」
北三条英雄「今回はPチームやRチームの女の子達もいるし」
北三条英雄「ビーチでナンパでもして楽しもうぜ!」
銭函信二「俺たち同士で楽しむのもいいけど、かわいい子をホテルに連れ込むのもいいよね」
大麻慎太郎「女の子が選り取りだ」
北三条英雄「オッサンの俺たちじゃ絶対ムリだったけど、この身体と立場なら楽勝」
北三条英雄「ほんと美少女ヒロイン人生は最高だぜ!」
大麻慎太郎「違いないや!!」
銭函信二「美少女ばんざーい!!」
北三条英雄「たっぷり南国の楽園を満喫するぜー!」
〇男の子の一人部屋
月島海斗「何するかな・・・」
月島海斗「そういやアイプロの秋イベが出てるんだった」
『ミリタリアイドルプロデューサー』は大戦時代の兵器を美少女化したキャラクターをアイドルとしてデビューさせるゲームである。
プレイヤーは提督プロデューサーと呼ばれ、女の子達に慕われて仲良くしつつキャラクターを育成する。
キャラクターは課金したりクエストをクリアすることでガチャを回して収集する。
現在は第七弾『ミリタリアイドルプロデューサー、トロピカルステージ攻略作戦』としてシリーズ化されていた。
月島海斗「ガチャでも回すか・・・」
海斗はスマホを取り出してアイプロのアプリを起動する。
海斗はこの手のゲームはコンプリートするまでやめないタイプの収集癖のあるオタクだった。
アイプロのグッズも全シリーズ揃えている。
月島海斗「よし、第七弾のレアも全コンプするぞ!」
というわけで海斗はひたすら無言で課金し、ガチャを回し続ける。
集中すること数時間、相当な金額を費やして全レアのコンプリートを達成した。
月島海斗「ふぅ、やったぜ!! 新衣装も全部ゲットだ!」
月島海斗「以前はゲーム内でかなりクエスト回さないとダメだったけど、金さえあれば楽勝だな──」
金=力。金=時間。金=コレクション。この手のゲームはそういう内容が大半である。
月島海斗「いわゆる、これが大人買いってやつかな?」
フルコンプしたシートを見て悦に浸る海斗。
だが、海斗は以前の身体と妙に違和感がある。
すべてのレアキャラを手に入れたのに達成の解放感が、まるで足りない。
月島海斗「そういや、女の子が全コンプする欲ってあんまり聞いたことがないな・・・」
月島海斗「精神的には無いわけじゃないんだろうけど、身体はそれに達成感を与えてくれないってことなのか・・・」
仕方がないので、海斗は神楽耶の身体から強制的に褒美を毟(むし)り取ることにした。
月島海斗「ふぅ・・・」
神楽耶の身体は何も抵抗しない。海斗に一方的に弄(いじ)られ、達成の褒美を与えるだけである。
月島海斗「あーガラナがうまいー」
〇カジノ
夕張万里「やっぱ、男の三大遊戯といえば、酒、女、そしてギャンブルだろ!」
夕張万里「というわけで、今日はカジノでパーッと派手に遊ぶぜー」
深川京「アニキは博打が大好きですからねー」
日高晶「アニキ、今日の占いはラッキーデーだ。イケそうですぜ!」
夕張万里「よしよし、なかなかいい手がきたぜー」
夕張万里「よし、ここは勝負だっ! 全財産をベット!」
深川京「あ、アニキ・・・」
日高晶「大丈夫っスか・・・」
夕張万里「任せておけ! いくぜっ!」
夕張万里「ストレート!」
日高晶「相手はフラッシュっすね・・・」
夕張万里「・・・」
夕張万里「あーヒデちゃん? カネ貸してくれない?」
夕張万里「頼むよー また例のサービスするからさぁー」
夕張万里「サンキュー、持つべき物は親友だぜ!」
夕張万里「じゃーねー!」
深川京「アニキ・・・もうやめておいた方が・・・」
日高晶「今日はラッキーカラーが悪いっス、また出直しましょう・・・」
夕張万里「うるせー! お前ら女の子じゃあるまいし、負けて逃げたり今日の運勢なんて気にしてんじゃねー!」
夕張万里「男ならいつだってガンガン突っ込んでビシバシ攻めまくるべきだ!」
日高晶「ああ、こうなると負けパターン・・・」
深川京「アニキはスイッチ入っちゃうと止まらないから・・・」
夕張万里「勝負だ!」
日高晶「・・・」
深川京「・・・」
夕張万里「ふふふ・・・この身体を使えばカネなんていくらでも稼げる」
夕張万里「俺たちの身体は気持ち良くいくらでも稼げる身体なんだぜー」
夕張万里「借金なんて怖くなーい」
深川京「ア、アニキ・・・」
日高晶「負けフラグっス・・・」
夕張万里「まだまだイクぞっ! 次の勝負だ!!」
深川京「あ、アニキー・・・」
日高晶「・・・」
夕張万里「人生はギャンブルだぜ・・・」
日高晶「また店の差し押さえを防ぐために働かされそう・・・」
深川京「つらい・・・」
〇男の子の一人部屋
月島海斗「何するかな・・・」
月島海斗「マンガでも読むか・・・」
海斗は高校生だが、少年マンガも青年マンガも少女マンガも幅広く読む。要するにオタクである。
海斗はスマホで『悪役令嬢婚約破棄、二度目の人生聖女で溺愛ルート』という女性向け漫画を読んでいる。
タイトルが全てを語っているが、人気の絵師を使っているので女の子がとてもかわいい。
女の子が煌びやかなドレスを着る姿はとても映える。
月島海斗「こういうマンガのヒロインは大概かわいいんだよなー」
月島海斗「でも女性向け漫画って結婚とか恋愛とか人間関係の内容が多いよな」
月島海斗「最初が幸福でそれを失って取り戻す話が多くて、底辺から成りあがる話は少ないし・・・」
月島海斗「この身体で女性向け漫画を読めば何か沸いてくるかと思ったが、別に何もこない」
月島海斗「そんなに恋愛とか結婚したいかなぁ?」
女の恋愛は自販機で飲みたいジュースを選ぶ程度
男の恋愛は砂漠でオアシスを探す程度という
しかし、恋愛しやすい身体だから恋愛好きになるのかというとそういうわけでもない。
月島海斗「女の身体は不思議だなー」
と、言ったところで海斗は鏡を見る。
すると、当然であるが鏡には神楽耶の姿が映っている。
月島海斗「まぁ神楽耶は学校一の美人だよな・・・」
月島海斗「顔は整ってるし、脚は長くてスタイルいいのに、胸はEカップもあるし」
月島海斗「髪は長くて綺麗だし、肌がすべすべで触り心地いいし・・・」
月島海斗「で、俺が神楽耶なわけで・・・好きになんでもできるわけで」
月島海斗「こういう美少女が・・・いや美少女じゃなくても、かわいい服を着るのが楽しいのかもな」
以前の海斗の部屋には鏡などなかったが、今は全身が映る姿見を置いている。
美少女である神楽耶の全身を映して見るのが楽しくて仕方がない。
そこには学校一の美少女といわれた筑波神楽耶がいて、すべて海斗の思い通りになっていた。
誰にも邪魔されないし、何をしても問題ない。
月島海斗「そういえば、神楽耶はドレスも持っていたな・・・」
月島海斗「試しに着てみるか」
月島海斗「おお、なかなかいいじゃないか!」
さすが学校一の美人と噂の筑波神楽耶である。
海斗はとても心地良い気分が湧き上がるのを感じた。
月島海斗「これが女の気持ちいいことなのかな?」
月島海斗「つまり、行為自体じゃなくて、対人関係や服や部屋も含めてた環境に気持ち良さを感じる?」
月島海斗「ふーん・・・」
月島海斗「ま、とりあえず俺は男だし。やりたいことをするか」
月島海斗「ふぅ・・・」
月島海斗「あーガラナがうまいー」
〇結婚式場の階段
伊達勇「俺たち、独身貴族『ぼっち』もようやく卒業だなっ!!」
千島古丹「まさか俺がウェディングドレスを着て結婚式をするとはね──」
占守清「僕たち同士で結婚することになるとは・・・」
※この世界では同性婚も重婚も可能です。
伊達勇「彼女がいなくてずっと傷を舐めあっていた40代オッサンオタクだった俺たちが・・・」
千島古丹「ま、精神はそうでも身体は本物の若い女だし、互いに気心も知れてるからちょうどいいだろ」
占守清「家事は分担できるし、休日も楽しいし、夜も気持ちいいし、ほんと最高だぜ!」
伊達勇「やっぱ結婚は女が主役だよなー」
千島古丹「みんなドレス姿が超キレイだせー」
占守清「別に男は必要ないよな」
伊達勇「そうだな! これから毎日楽しく暮らそうぜ!」
「結婚ってすばらしー!」
〇男の子の一人部屋
月島海斗「何するかな・・・」
月島海斗「アニメでも見るか・・・」
海斗はアニメもかなりチェックしている。ミリタリーやバトルが好きだが、何でも観る。要するにオタクである。
月島海斗「このアニメは雄太が話していたやつだな・・・異世界チーハーかぁ・・・」
『社畜レベル999勇者の異世界転生パーティ追放チートハーレムゴブリン退治でスローライフ』
タイトルですべての内容を物語っている異世界転生美少女アニメだ。
海斗はアトマテレビに課金して連続視聴を始める。
月島海斗「異世界でのんびりスローライフで少しだけ活躍しただけで女の子にベタ惚れされるハーレムねぇ・・・」
月島海斗「しかし、このアニメの女の子はみんなかわいいなー」
海斗は何気なく全話観ているが、昔と違う妙な感覚がある。
月島海斗「・・・なんか変だな」
神楽耶の身体は普通の男なら性的に興奮するシーンになっても、なんの反応もしない。
女の子が脱いでも、チート洗脳でデレても、ゴブリンに回されても、神楽耶の身体は無視している。
月島海斗「まぁ脱衣に反応しないのは分かるが・・・」
海斗は自分で脱げば女の裸など無修正で好きなだけ見れる。
確かにそれではラッキースケベに興味はなくなるのだろう。
月島海斗「けど、チート催眠はなぜだろう?」
月島海斗「女の子向けの作品で催眠や洗脳で男に好かれて喜ぶ作品は皆無だよな」
月島海斗「よくわからない・・・」
月島海斗「それに女の子がゴブリンに回されても反応しないな・・・」
月島海斗「つまり女の子は無理やりやりたいほど性欲的な願望はあまりなく、それ以外の部分の要素が大きいってことか・・・」
月島海斗「女性向けで男のハーレムを作る作品はあっても全員とやりたいわけじゃないもんな」
月島海斗「まぁ、そりゃそうか」
月島海斗「でも俺は自分でやればいいんだけどね!!」
というわけで、海斗はいつものようにそういうシーンの度に自分でやって慰めた。
月島海斗「ふぅ・・・」
月島海斗「こりゃなかなか楽しいな!」
月島海斗「あーガラナがうまいー」
月島海斗「さて、次のアニメも見よう」
〇大広間
ローラシア帝国は、ローラシア連邦、アスンシオン帝国、バイカル共和国、レナ王国などが合併して誕生した列強の1つである。
皇帝が統治する貴族制であり、貴族は特権の代わりに義務としてたくさんのクルーをシオンベースに派遣している。
そして、彼らローラシア帝国出身者のクルー達は同国人同士で結束していた。
そのためアーリマン攻略作戦への出撃前に、ローラシア帝国出身者同士による盛大な壮行会が行われている。
ちなみに、ここにはいないがアンセム司令官もローラシア帝国に併合されたアスンシオン帝国の出身である。
カイト・カザン「アルベルトは第1小隊でディーバーだったね」
アルベルト・カザン「はい、兄さん。 僕もアーリマン攻略作戦で一緒に戦えて嬉しいです」
アルベルト・カザン「増員による補欠追加合格で、兄さんたちを見送る立場なんて絶対嫌だったし・・・」
カイト・カザン「攻略部隊の隊長であり、第1小隊の小隊長でもあるルスランの言うことを良く聞くんだよ」
アルベルト・カザン「はい兄さん。カザン家の男子として、恥ずかしくないよう頑張ります!」
ルスラン・コンドラチェンコ「やぁ、カイトにアルベルト。ごきげんよう」
カイト・カザン「ごきげんよう、ルスラン」
アルベルト・カザン「ルスラン隊長! ごきげんよう」
ルスラン・コンドラチェンコ「親友の弟を預けられたのでは、また私の責任が増えてしまうよ」
カイト・カザン「確かルスランは大部隊の隊長は初めてだったか・・・」
ルスラン・コンドラチェンコ「ああ、第二次シオンベースの戦いで、前の隊長は戦死したから──」
ルスラン・コンドラチェンコ「アンセム司令官はこの重要な戦いの指揮を私に任された」
ルスラン・コンドラチェンコ「我らコンドラチェンコ家は英雄アンセムに代々忠誠を誓う家柄」
ルスラン・コンドラチェンコ「アンセム司令官の期待に応えなくちゃね」
カイト・カザン「ルスラン、そんなに気負わなくていいんじゃないか」
カイト・カザン「今回の戦いは熟練者が多い。副隊長の李中佐はベテランだし、他の隊の小隊長もそうだ」
カイト・カザン「君ばかりが決断の責任を気負う必要はないんだよ」
ルスラン・コンドラチェンコ「それでも今までにない大軍が参加するんだ」
ルスラン・コンドラチェンコ「彼らの命を預かる責任の重さを感じるよ」
メトネ・ヴォルチ「うふふ・・・ごきげんよう。シオンのクルーの皆さん」
ルスラン・コンドラチェンコ「これはこれはメトネ様・・・」
カイト・カザン「このような辺境の分家の領地へようこそいらっしゃいました」
現れた少女、メトネ・ヴォルチは皇帝の娘、つまり皇女であり、アンセム司令官の妻でもある。
彼女はアリス族という小柄な美少女の種族であった。
メトネ・ヴォルチ「あらぁ? これから戦いに向かう男を見送るのは女の務めよ?」
ルスラン・コンドラチェンコ「ありがたき幸せ・・・」
カイト・カザン「粉骨砕身、皇帝陛下の為に戦います」
メトネ・ヴォルチ「うふふ、皆の為にとっておきのお菓子を作ってきたの」
メトネ・ヴォルチ「みんなでお茶を飲みながらいただきましょう」
カイト・カザン「ありがとうございます」
メトネ・ヴォルチ「ところでアンセムは元気にしてるぅ?」
ルスラン・コンドラチェンコ「はい。私たちはいつもよく指導していただいています」
メトネ・ヴォルチ「こんなかわいい嫁を置いて100年も単身赴任だなんてねぇ・・・」
カイト・カザン「100年ですか・・・」
メトネ・ヴォルチ「しかもほとんど連絡もよこさないのよ?ヒドいと思わない?」
メトネ・ヴォルチ「太陽系の果てに作ったハーレムが楽しくて仕方がないのかしら?」
カイト・カザン「そのようなことはないかと・・・」
メトネ・ヴォルチ「せっかくこっちにもアンセムの為にハーレムを作って待っているのに、辛いわぁ」
アルベルト・カザン「メトネ様、ローラシアには皇帝陛下の後宮しかないはずですけど・・・」
メトネ・ヴォルチ「ここにいるあなた達がアンセムのハーレム要員よ? 当然でしょう」
カイト・カザン「この身体はシオンベースと同じαラグナ族。アンセム司令官の糧となることは我が望みです」
メトネ・ヴォルチ「別に身体がそうだからって、運命を受け入れる必要はないでしょう?」
メトネ・ヴォルチ「アンセムはそういうのに逆らって生きている面白いオトコよ?」
アルベルト・カザン「あ、あの・・・メトネ様は大好きな人と離れていて淋しくならないのですか?」
アルベルト・カザン「僕なんて兄さんといつも一緒にいられるのが嬉しくて仕方がないのに」
メトネ・ヴォルチ「別にぃ~?」
アルベルト・カザン「別にって・・・心配じゃないんですか?」
メトネ・ヴォルチ「アンセムは上手くやるわ」
メトネ・ヴォルチ「あたしはオトコを見る目は確かなのよ?」
カイト・カザン「はい、アンセム司令官はとても素晴らしい指導者です」
ルスラン・コンドラチェンコ「我らアンセム司令官の手足として勝利の為に戦い続ける所存です」
メトネ・ヴォルチ「・・・」
メトネ・ヴォルチ「あなた達は死ぬタイプね」
カイト・カザン「えっ・・・」
ルスラン・コンドラチェンコ「・・・」
メトネ・ヴォルチ「将棋で言うなら捨て駒、囲碁なら捨て石、チェスならサクリファイスかしら?」
ルスラン・コンドラチェンコ「・・・私はアンセム司令官のためにいつでも死ぬ覚悟があります」
カイト・カザン「私も皇帝陛下と国家のために手駒となりいつ果てても構いません」
メトネ・ヴォルチ「どうして?」
ルスラン・コンドラチェンコ「私の先祖は英雄アンセムに命を助けられたと聞いています」
メトネ・ヴォルチ「そうよ、でもそれはあなたじゃないでしょ?」
ルスラン・コンドラチェンコ「それがあるから今の私と我が家の名誉があるのです」
メトネ・ヴォルチ「うふふ・・・じゃあ、そっちのカザンの娘わぁ?」
カイト・カザン「我がカザン家はローラシア、アスンシオンに跨がる最も古き名門貴族」
カイト・カザン「主君のため、国のため、貴族の義務を果たします」
メトネ・ヴォルチ「うふふ・・・そうね。知ってるわ」
メトネ・ヴォルチ「あなた達をなぜ飼っているか教えてあげる」
メトネ・ヴォルチ「戦争だから勝つために誰かが効率的に死ぬ必要があるの」
メトネ・ヴォルチ「女が死ぬと勝っても未来がないので、勝つために男に死んでもらうの」
メトネ・ヴォルチ「だから死にたい男を育てておけば、勝ちやすいでしょう?」
メトネ・ヴォルチ「あなた達、男は勝つために永遠に女に飼われているのよ」
カイト・カザン「・・・」
メトネ・ヴォルチ「もし、それが嫌なら女として生きる道を教えてあげるわぁ?」
メトネ・ヴォルチ「もう身体は本物の女の子なんだし、ハーレムに入って抱かれる道の方が幸せよ?」
メトネ・ヴォルチ「精神の男女なんて区別は幻想。気持ち次第でどうにでもなるわ」
ルスラン・コンドラチェンコ「いえ・・・メトネ様。私達は自らの意志でハーレムには入りません」
ルスラン・コンドラチェンコ「皇帝陛下やアンセム司令官が望まれれば別ですが・・・」
カイト・カザン「私は男としてあくまで勝利のために戦います」
メトネ・ヴォルチ「そう、頑張ってね」
メトネ・ヴォルチ「私達はそういう男達に守られている」
メトネ・ヴォルチ「だから、見送りに来るのは女の義務なのよ?」
メトネ・ヴォルチ「それでも勝って、生きて帰ってこれたら、とびきりのご褒美をあげるわ」
メトネ・ヴォルチ「それではごきげんよう。武勲を期待しているわよ」
ルスラン・コンドラチェンコ「・・・」
カイト・カザン「メトネ様・・・不思議なお方だ」
カイト・カザン「私たち男の魂や運命を見透かしているような・・・」
アルベルト・カザン「隊長!兄さん!」
アルベルト・カザン「僕達は大軍だし! 負けないですよね!!」
カイト・カザン「ああ・・・だけどリスクは常にある」
ルスラン・コンドラチェンコ「臆(おく)していては、それこそ戦場に行く意味が無いからね」
アルベルト・カザン「兄さん達は死なないですよね!!」
アルベルト・カザン「だって兄さんはあのレーヴァテインの海斗くんに勝ったんだ! 負けるわけない!」
ルスラン・コンドラチェンコ「・・・」
カイト・カザン「アルベルト、私と約束してくれ」
カイト・カザン「私とルスランは勝つために喜んで犠牲になる」
カイト・カザン「だけど、アルベルトは必ず生き残る道を選んで欲しい」
アルベルト・カザン「どうして・・・そんなの選べないよ!」
カイト・カザン「私達は皇帝陛下やアンセム司令官に勝ってほしいんだ」
ルスラン・コンドラチェンコ「自分の命を捨ててもね」
カイト・カザン「私はアルベルトの事は一番よく知っている」
カイト・カザン「アルベルトには生き残って、勝つために皇帝陛下や司令官に尽くしてほしい」
アルベルト・カザン「わかったよ・・・」
アルベルト・カザン「でも、みんなで勝って帰ってきて一緒に祝勝会をやるんだ!」
ルスラン・コンドラチェンコ「もちろん、私たちも簡単に死ぬつもりはないさ」
アルベルト・カザン「約束したからねっ!!」
カイト・カザン「ああ、わかった。約束だ」
〇男の子の一人部屋
月島海斗「今日は何するかな・・・」
海斗の母「海斗くん、密林から荷物が来てるわよ」
月島海斗「あー、頼んでいた航宙母艦『リベリオン』のプラモだ!」
海斗の母「せっかく可愛いのに、ずっと寝間姿のままだとよくないわよ?」
月島海斗「別にいいじゃん。外出しないし・・・」
海斗の母「そう? 下着は変えなさいね」
月島海斗「わかったよ」
その場でパンツとブラジャーを脱いで洗濯物を渡す。恥じらいはない。
海斗の母「もう、男の子気分が抜けないわねぇ・・・」
月島海斗「さて、さっそく作るかー」
海斗は兵器や武器が大好きで、プラモデルもよく作る。要するにオタクでる。
月島海斗「アメリカの『エンタープライズ』級も実用的なデザインでかっこいいけど」
月島海斗「野性的なデザインの南米艦『リベリオン』もかっこいいよな!」
連邦政府が有する宇宙艦隊の艦艇は様々なゲームに登場する。
著作権がないのでプラモやグッズも人気だった。
軍艦プラモは自作パーツなどを追加しなければ、比較的作りやすい部類のプラモデルである。
海斗はそれほど本格派なモデラーではなく、作るのは既製品のプラモデルぐらいであった。
月島海斗「やっぱり、リベリオンの120mm超電磁砲はかっこいいなー」
結局、海斗がレーヴァテインが好きなのは大砲が好きだからである。
月島海斗「攻撃力と防御力と機動力。兵器に必要とされるステータスは太古の昔から変わらない」
月島海斗「戦いにおける本質的な何かがあるんだろうなぁ・・・」
月島海斗「そういえば、アインシュタイン博士は『第四次世界大戦は投石と棍棒だ』と予測したけど」
月島海斗「結局、化石文明時代は『投石』で滅びたし」
月島海斗「"グリーゼ710"も『投石』で攻撃してくる」
月島海斗「戦いを支配するのはいつだって原始的な理論なんだろうなぁ・・・」
月島海斗「よし、できた!」
月島海斗「おーカッコイイ!!」
月島海斗「主砲うてー!」
月島海斗「ドンドン!!」
完成した宇宙戦艦のプラモデルで戦っているセリフを真似る海斗。
男性は年齢に関わらずやる。
月島海斗「女子はこんなの子供っぽいとか思ってやらないのかな?」
月島海斗「でも、なんかこう達成感が足りないなぁ・・・」
やはり身体は海斗の行動に冷めている。むしろ身体が精神の幼さを軽蔑しているようにも思える。
月島海斗「ふん! 俺の身体だし、黙って好き放題するもんね!」
月島海斗「ふー」
月島海斗「ふープラモを完成させた後のガラナはうまい!」
〇後宮の庭
李維新「嘿!」
李維新「哈!」
李維新「呀!」
白大鵬「維新、戻ってからずっと鍛練しているなぁ・・・」
李維新「三連撃は伝説の勇者の技! もっと鍛えないと!」
李維新「海斗や他の一族に負けていられない! 精神力と集中力を磨くんだ!」
かつて東方七王国は、燕、呉、魏、斉、蜀、理、越が群雄していた地域であった。
東方七王国を統べる皇帝が不在になると互いに分裂して覇を競う。
それを度々繰り返してきた。
しかし、200年前の大戦以来、分裂したことは無い。
現在は皇帝が独裁的権力を持つ列強の一つである。
そして、東方七王国で最も北に位置する燕王国の首府、北京は皇帝の住まう都である。
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
そう言えば現代のスマホって想像を絶するほど不潔だからいつでもアルコール消毒出来るようにしているのですが、これから抗菌効果の高い素材でフレームやタッチパネルを作るようになると予想してます。