寵姫は正妃の庇護を求む

香久乃このみ

第二十五話 異世界(脚本)

寵姫は正妃の庇護を求む

香久乃このみ

今すぐ読む

寵姫は正妃の庇護を求む
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇兵舎
  ◆あらすじ◆
  砦を制圧した一行。
  メルク王子はソウビに
  正体を明かすよう促す。
メルク・ポース「敵の本陣は目の前だ」
メルク・ポース「そろそろ話してもらってもいいかな。 君が何者なのか」
メルク・ポース「そして、 なぜ未来を予知するような真似が できるのか」
メルク・ポース「最後の戦いを共にする仲間に、 出来れば種明かしをして もらいたいんだが」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
  仲間たちは
  神妙な面持ちでこちらを見ている。
ソウビ・アーヌルス「そう、だね・・・」
  私は説明した。
  私は元の世界で
  上水流めぐりという名であること。
  この世界は、私がプレイしていた
  ゲームの内容と酷似した、
  私の見ている夢であること。
  私はそのゲームを一周したことで、
  大体の流れや個人の情報を
  掴んでいることを。
チヨミ・アルボル「カミヅル・・・メグリ・・・。 夢・・・」
メルク・ポース「ゲームねぇ、 カードとはずいぶん趣が違うようで、 よく分からんが」
メルク・ポース「つまり、 俺たちのことを描いた物語が 幾通りか存在している」
メルク・ポース「そのうちの一冊を君は読破済で、 今我々は君の読んだものとは 別の物語の中を進んでいる、 そんな解釈でいいだろうか?」
ソウビ・アーヌルス「うん、大体あってる」
タイサイ・アルボル「じゃあ、これからどうなるんだ?」
タイサイ・アルボル「俺たちは勝てるのか? あの腕っぷしだけは妙に立つ、 獣のような男にどうやって!?」
ソウビ・アーヌルス(う~ん、タイサイには特に答えづらいな。 これ、ヒナツ和解ルートの可能性 大だってこと・・・)
ソウビ・アーヌルス(倒せても、結局チヨミは タイサイでなくヒナツを選ぶわけで・・・)
ソウビ・アーヌルス「ごめん。 プレイしてないルートだから知らない」
タイサイ・アルボル「チッ、 肝心なところで役に立たねぇな」
ソウビ・アーヌルス「先がわからない理由は それだけじゃないんだ」
ソウビ・アーヌルス「本来ならソウビ・アーヌルスは ヒナツの寵姫のまま 民衆に憎まれて最期を迎える」
ソウビ・アーヌルス「・・・テンセイに剣で貫かれて」
テンセイ・ユリスディ「っ!」
テンセイ・ユリスディ「そう言えば、 以前もそのようなことを・・・」
ソウビ・アーヌルス「でも、私はここにいる。 この時点で、 私の知っている展開とは異なってる」
ソウビ・アーヌルス「それにキ・ソコ将軍の件も。 彼が捕らえられる展開を私は知らない」
ソウビ・アーヌルス「別ルートのせいかもしれないけど、 ひょっとすると私がここにいるせいで 起こったイレギュラーな事象の 可能性もある」
メルク・ポース「なるほど。 で、我々があの暴君に勝てるかどうかは?」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(チヨミはゲームの主人公だから、 勝利でエンディングを迎えるのは まず間違いない)
ソウビ・アーヌルス(だけど、 戦闘に負けてゲームオーバー と言うパターンも存在する)
ソウビ・アーヌルス「タイサイにも言ったけど、わからない」
タイサイ・アルボル「また『わからない』かよ。 大勢の命がかかってんだぞ!?」
チヨミ・アルボル「ううん、十分よ。 ありがとうソウビ」
ソウビ・アーヌルス「チヨミ」
チヨミ・アルボル「きっと運命に勝利して、 この物語をハッピーエンドに 繋いで見せる」
チヨミ・アルボル「それが私の役割なんでしょ?」
ソウビ・アーヌルス「うん」
タイサイ・アルボル「けど、信じがたいぜ。 俺らが物語、つまり 作り物の中の存在なんてよ」
ユーヅツ・アモル「そうかな? ボクはそう思わないな」
タイサイ・アルボル「は?」
ユーヅツ・アモル「ボクらが、メグリの世界における 作り物の中の存在だとして」
ユーヅツ・アモル「メグリ自身が 誰かの創作物の中の登場人物じゃない って、言い切れないでしょ?」
ソウビ・アーヌルス「どういう?」
ユーヅツ・アモル「君の世界も 誰かによって作られたってこと」
ユーヅツ・アモル「つまり、君自身 己の意思で動いているつもりでも、 創作者の意思の伝達役に 過ぎないかもしれない」
ユーヅツ・アモル「面倒くさいから話まとめるけど。 ボクらも君も 大して違いはないんじゃないかな、多分」
ソウビ・アーヌルス(まとめ方、雑!)
ユーヅツ・アモル「ボクとしては、 ソウビはこちらに有利な情報をくれる 便利な存在だし」
ユーヅツ・アモル「君が別世界の人間の意識を持ってても、 問題視する必要全くないな、って 思ってる」
  全員、呆気にとられた表情で
  ユーヅツと私を見比べる。
  やがて、小さく吹き出す音が聞こえた。
メルク・ポース「はは、確かに」
メルク・ポース「ソウビが僕らに不利益な行動を 取ったことはないし。 問題ないと言えば問題ないよな」
メルク・ポース「じゃ、 この話はこれでお開きにすっか!」
ソウビ・アーヌルス「軽っ!」
メルク・ポース「なに? もっといろいろ追及してほしい? ねちねちと問題提起して 責め立ててほしい?」
ソウビ・アーヌルス「いや、そうじゃないけど!」
チヨミ・アルボル「そうね。 私もこの話はここまででいいと思う」
チヨミ・アルボル「この先の展開を知らないとはいえ、 ソウビの情報に 助けられたこともあったから」
ユーヅツ・アモル「あと、 これが君の見ている夢って話だけど。 夢とは、魂が異世界で過ごした際の 出来事って説もあるんだよ」
ソウビ・アーヌルス「魂が、異世界に?」
ユーヅツ・アモル「うん。その説が正しいなら、 メグリって人の魂は寝ている間、 ここでソウビとして生きている ってことになる」
ユーヅツ・アモル「ついでに創作や夢、 つまり架空の世界と思われているものは、 実在している異世界の可能性もあると ボクは考えてる」
ソウビ・アーヌルス「ぇえ・・・」
ユーヅツ・アモル「証明のしようがないからね。 噓とも本当とも言えないでしょ?」
ソウビ・アーヌルス「そうだけど・・・」
ソウビ・アーヌルス(この世界が実在している他の世界? そんなことってあるのかな?)
チヨミ・アルボル「あ! そうそう。 ソウビの本当の名前はメグリなんだよね? 今後はそっちで呼ぶ方がいい?」
ソウビ・アーヌルス「えっ、ううん、ソウビのままで。 ここではそう呼ばれる方が しっくりくるから」
ソウビ・アーヌルス(オフ会では本名じゃなくて、 ハンドルネーム使うみたいな感じで)
チヨミ・アルボル「わかった。 じゃあソウビのままで」
チヨミ・アルボル「ソウビが別世界の人間の意識を 持ってるのは驚いたけど、」
チヨミ・アルボル「掴んでる情報を元に、私たちを 困らせたことなんてなかったもんね」
チヨミ・アルボル「味方ってことは 疑わなくていいんじゃないかな?」
タイサイ・アルボル「いや、俺は 知られたくないことまで知られてたけど」
ソウビ・アーヌルス「枕の下?」
タイサイ・アルボル「言うな!」
ソウビ・アーヌルス(そっちが振ったんだよ!)

〇城門の下

〇英国風の部屋
ソウビ・アーヌルス(今日は色々あって、疲れたなぁ・・・)
  ベッドに身を預けると、
  すぐさま睡魔が襲い掛かってくる。
ソウビ・アーヌルス(ねむ・・・)
ソウビ・アーヌルス(ん? 誰かノックしてる?)
  第二十五話 異世界 ──終──
  
  第二十六話に続く

次のエピソード:第二十六話 寄り添えたら

コメント

  • ついに種明かし!
    ユーヅツの説は面白いですね。
    そろそろ、最終の着地点が気になってきました。

  • 王子とユーヅツはINT値高いキャラですよね!理解が早くて大助かり😆
    一周目の展開にショックを受けていた彼の心境は…。

  • メルクが冷静で適応力もあっていいですね。
    いい王様になりそう😄
    テンセイは、中身がめぐりだと知ってどうなるのか…わくわくです。

成分キーワード

ページTOPへ