後宮!功夫娘娘物語

秋山ヨウ

第十五話『本物の皇帝』(脚本)

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〇黒
  潔斎で見事凶手を退けた玉兎と寒月。
  しかし、祠堂で血が流れたことは不吉であるとされ・・・。
  その責任は再び、皇后へと帰されることとなった。

〇皇后の御殿
皇后「もう一度やり直しよ。動きはすぐに覚えたのに、細かいところまで意識がいかないみたいね」
玉兎「次は気を付けます。 もう一度拍子をもらえますか?」
皇后「一、二、一、二・・・やめ。 何度言ったらわかるの?」
  ──ビシッ!
玉兎「あうっ!」
皇后「おまえの唯一の取り柄は?」
玉兎「体を動かすことですっ! もう一度初めからお願いします」
皇后「いいえ、休憩にしましょう。 どうも気が散っているみたいね」
  この日、玉兎は皇后から舞の教えを受けていた。
  月蝕の祭祀で皇后が奉納する、特別な舞だ。
皇后「それで、何に気を取られているの?」
玉兎「それは・・・その、玉兎が影武者になったせいで、娘娘の評判を落としているのではないかと思って」
皇后「はぁ・・・」
玉兎「す、すみませんっ」
皇后「何に対しての謝罪?」
玉兎「それは・・・娘娘を完璧に再現できなくて」
皇后「あのね、おまえの一番大切な仕事はわたくしの命を守るということよ。それができていればいいの」
玉兎「それだけで、いいんでしょうか」
皇后「わたくしに完璧な影武者は必要ないわ。 そして、おまえに期待もしていない」
玉兎「はい・・・」
皇后「おまえは思っていたよりも子供ね。役に立とうと力んだところで、武術が出来るだけの娘が皇后になれるはずもないのよ」
皇后「責めているわけじゃなく、単なる事実としてね」
玉兎「うぅっ」
皇后「責めていないと言っているでしょう。 わたくしの人生を軽んじないでちょうだい、と言っているの」
玉兎「娘娘の、人生を・・・」
皇后「わたくしがおまえになれないように、おまえもわたくしにはなれない。それでいいのよ」
皇后「それに何度も言ったでしょう、頭を使うのはおまえの仕事ではないと」
玉兎「・・・そうですよね。娘娘は娘娘として修業を積んできたのに、一朝一夕で玉兎が盗めるはずもありません」
皇后「そういうことよ。おまえはおまえにできることをすればいいの。さあ、心配事はもうない?」
玉兎「あっ、待ってください! 『秘花宝典』は無事ですか? 秘伝書も敵に狙われているのですよね?」
皇后「もう手は打ってあるわ。大体、おまえが考えつくことなんて全部対策しているの」
皇后「麗華や小宝が走り回っているのも、そのためだわ」
玉兎「わかりました。 玉兎はもう頭を使いません!」
皇后「その調子よ。 おまえはそのほうが上手くいくわ」
玉兎「ご指導お願いします、娘娘! 舞がものになるまで、不眠不休で修行しますので!」
皇后「そこまで付き合わないわよ?」

〇皇后の御殿
  その後の玉兎は存分に才能を発揮し、すぐに舞をものにした。
  舞は皇后も太鼓判を押す出来栄えだが、「玉兎は頭を使わない方がよい」ということが証明された。
玉兎「ご指導くださり、ありがとうございました。お茶をお入れしますね」
皇后「ええ、お願い・・・そういえば玉兎、おまえに聞きたいことがあったわ」
  茶の用意をしながら、皇后の言葉を待つ。
皇后「おまえ、寒月とはどこまでいったの?」
  ──バシャッ。
玉兎「あぎゃっ!? あ、熱っ、水・・・!」
皇后「あら、本当に何かあったの?」
玉兎「と、突然何を言うのですか!」
皇后「潔斎で素敵な夜を過ごしたのかと思ったのだけれど」
玉兎「確かに潔斎での寒月さんはかっこよかったですけど! 血まみれで素敵な夜もなにもありませんよーっ!」
皇后「・・・かっこよかった?」
玉兎「それはもう! 寒月さん、強かったんですよ!」
玉兎「玉兎に、大切な女ーとか、朕の妻ーって言ってくれてですね・・・えへへっ!」
皇后「あらあら、まぁ。あの男がそんなセリフを吐くなんて。おもしろいことが聞けたわね」
玉兎「はえ?」
皇后「寒月も陛下も美形だと言ったの。あの顔でそんなセリフを言われたら、さすがのおまえもよろめくのねぇ」
玉兎「いえ、玉兎の平衡感覚に異常はありません! むしろ経絡の流れがおかしくなるのです!」
玉兎「この前は心臓が破れそうになりましたし・・・」
皇后「寒月といると、ドキドキすると?」
玉兎「はい、そうなのです。 不思議ですよね・・・」
玉兎(最近は寒月さんに会っていないし、あの経絡の乱れも、なければないで落ち着きませんね・・・)
皇后「もうっ、仕方のない子ね。 鈍いのは頭だけにしておきなさいな」
玉兎「えっ? いま玉兎の悪口を・・・?」
皇后「ちょっとお使いをしてきなさい。 そこで色々と見極めて来るといいわ」

〇豪華な王宮
玉兎「というわけで、娘娘から陛下への文です!」
皇帝「ふむふむ・・・なるほど」
玉兎「娘娘はいったい何を見極めろというのでしょうか?」

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コメント

  • 皇帝様もノリが良くて可愛いですね……🤤
    「どうだ、ドキドキせんだろう」
    「はい!異常が起こりません!✨」なやり取りカワユイ……。

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