〇立派な洋館
魔剣士マナ「この世界で最も大切なものは『愛』！」
魔剣士マナ「ハーレム王子は、私が打ち破る!!」
魔王シン「皆の者──」
魔王シン「マナを先頭に屋敷へ突入せよっ！」
兵士ペイ「はっ！」

〇洋館の玄関ホール
「な、何者だっ！」
魔剣士マナ（屋敷の護衛か）
魔剣士マナ「だがこの程度の相手──」
「ぐああぁぁっ！」
魔剣士マナ「安心しろ──峰打ちだ」

〇謎の扉

〇貴族の応接間
山田「な、なんだ！」
女の子「山田様、侵入者のようです！」
魔王シン「我らは魔王軍！」
魔王シン「平和を乱す勇者を滅する者だ!!」
山田「ま、魔王軍だって!?」
山田（──いや、慌てる必要はないか）
山田（魔王軍は、転移者にやられると相場が決まっている）
山田（全員、俺のハーレムに取り込んでやろう）
山田「・・・ん!?」
山田（あのお姉さん、すごい美人だな）
山田「ムフフフ」
魔剣士マナ「シン様たちは下がっていてください」
魔王シン「分かった」
魔王シン「マナ、後は頼むぞ！」
クマシロ博士「貴様ら！」
クマシロ博士「私と山田殿の仲を引き裂くことはでき──」
魔剣士マナ「邪魔っ！」
クマシロ博士「ぎゃああああ！」
山田（恐ろしい剣さばき・・・！）
山田「だがこの距離」
山田「俺に・・・惚れろっ!!」
魔剣士マナ「ス・テ・キ♡」
魔王シン「マナっ！」
魔剣士マナ「・・・だが、」
魔剣士マナ「シン様には遠く及ばない」
山田「何・・・だと」
魔剣士マナ「──私の予想通りだったな」
魔剣士マナ「どうやら貴様の能力は、一目惚れさせることしかできないようだ」

〇荒廃した街
　　機動魔人タプノベリオン
ワタル「どうして僕たちが争わないといけない！」
レイン「敵同士だから・・・」
レイン「それ以外の理由が必要か？」
ワタル「君はとてもよく似ているんだ」
ワタル「・・・死んだ彼女に」
ワタル「僕は君のことが──！」
レイン「──ワタル」
レイン「あなたは私に『恋』をしているだけ」
レイン「それはひとときのものだ」
ワタル「それの何が悪い！」
レイン「あなたと死んだ彼女の間には、長い時間をかけて育まれた『愛』がある」
レイン「それは簡単に消えはしないだろう」
レイン「・・・私が祖国を愛しているように」
ワタル「うう・・・」
レイン「さあ、早く撃て！」
ワタル「う、」
ワタル「うおおぉぉー！」
機動魔人タプノベリオン「・・・出力最大」

〇貴族の応接間
魔剣士マナ「私は貴様に好意を抱いている」
魔剣士マナ「──だが」
魔剣士マナ「それはひとときの『恋』でしかない」
魔剣士マナ「長い時間をかけて育てた、真実の『愛』は、簡単に消えないのだ」
山田「あ、愛・・・？」
魔剣士マナ「そんな薄っぺらい好意に喜ぶ、貴様には分かるまい」
女の子「山田様、私と逃げましょうよ！」
女の子「いいえ、私よ！」
山田（そうだ・・・）
山田（この子たちとは会ったばかり）
山田（俺のどこを好きになったというのだ）
山田（もしかして・・・）
山田（今まで俺がフラレたのも・・・）

〇コンビニ
女の子「ごめんなさい」
女の子「あなたのことよく知らないので」
山田「そう」
山田「相手は俺のことをよく知らない」
山田「そればかりか──」
山田「俺自身も相手のことを知らない」
山田「ただ、第一印象で好きになっただけ」
山田「そんな薄っぺらい好意を向けられても、相手は嬉しいわけがない」
山田「俺は・・・フラレて当然だったのか」

〇貴族の応接間
山田「モテモテになり、いい気になってたのが馬鹿みたいだ」
山田「俺に本当に足りていなかったのは、モテるための表面的な魅力じゃない」
山田「相手をよく知り、自分のことを知ってもらおうとする心だった」
山田「だが、もう遅い・・・」
山田「いや」
山田「最後に気づけてよかったのかもしれない」
魔剣士マナ「・・・」
魔剣士マナ「さらばだ」
魔剣士マナ「異世界から来た勇者よ」

〇コンビニ
山田「・・・」
山田「あれ？　銃で撃たれたのに生きてる・・・？」
山田「それに、ここは──」
運転手「馬鹿野郎！」
運転手「ボーッとしやがって！　死にたいのかっ!!」
山田「す、すいません！」
山田「・・・」
山田「はは、くだらない現実に戻ったみたいだ」
女の子「あのー」
山田「はい？」
女の子「何か、落としましたよ」
山田「す、すいません」
女の子「あ、この本！」
女の子「私もすごく好きなんですよね」
山田（・・・もしかして）
山田（これは運命の出会いっ!?）
山田（見た目も好みのタイプだし、惚れてしまいそう──）

〇貴族の応接間
魔剣士マナ「そんな薄っぺらい好意に喜ぶ、貴様には分かるまい」

〇コンビニ
山田（そうだ）
山田（思いつきでまた惚れてどうする！）
山田（相手のことをよく知り──）
山田（自分のことをよく知ってもらうんだ）

〇空
山田「実は僕もこの本が好きで──」
　　この気持ち・・・
　　今度は焦らずに育ててみよう

〇貴族の応接間
兵士ペイ「・・・ハーレム王子の魔力反応、完全に消失しました」
魔王シン「まさか真正面から勇者を打ち破るとはな」
魔王シン「一体どうやったのだ？」
魔剣士マナ「いえ、私は何も」
魔剣士マナ「全部シン様のおかげですよ」
魔王シン「我は何もしておらんぞ？」
魔剣士マナ「そんなことはありません」
魔王シン「よく分からないのだ」
魔剣士マナ「ふふふ」
魔剣士マナ（きっとシン様なら、勇者に少しも惑わされなかっただろう）
魔剣士マナ（だってこの方は・・・）
魔剣士マナ（世界のすべてを深く愛しているのだから）
魔剣士マナ（その想い、私だけに向けてほしいがな）
魔王シン「マナよ」
魔剣士マナ「は、はい！」
魔剣士マナ（潤んだ瞳・・・）
魔剣士マナ（赤らめた頬・・・）
魔剣士マナ（もしかして・・・シン様も私のことを・・・）
魔王シン「あの勇者、とてもいい男だったな♡」
魔剣士マナ「・・・」
魔剣士マナ「って、めちゃくちゃ影響されてるー!!」

〇海辺
魔王シン「──っとその前に！」
魔王シン「季節は夏」
クマシロ博士「夏といえば海」
「海といえば、水着！」
「次も絶対タップしてくれよな！」