多層都市東京 -僕は東京で冒険者として生きていく-

草川斜辺

多層都市東京(脚本)

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草川斜辺

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〇大樹の下
  東京、代々木公園
  「冒険者ギルド:東京」に登録して初めてのクエストは、討伐クエスト。
  ファイアウルフ5頭の討伐。
  最初ということもあり簡単なものにした。
  周りを見ると、同じクエストを引き受けた同業者が大勢いるようだ。
  早速目の前にファイアウルフが2頭現れた。
  盾を構え剣を抜く。
  ファイアウルフがとびかかってくる。

〇空

〇渋谷駅前
早宮海瑠(はやみやかいる)「僕は早宮海瑠(はやみや かいる)」
早宮海瑠(はやみやかいる)「出身は、日本国、大阪」
早宮海瑠(はやみやかいる)「先週、都市国家東京に引っ越してきた」
早宮海瑠(はやみやかいる)「旧東京23区が独立した都市国家だ」
早宮海瑠(はやみやかいる)「国が違うとはいえ日本国と都市国家東京は友好国なので、EUのように移動にパスポートはいらないし税関や入国審査もない」
早宮海瑠(はやみやかいる)「日常の生活は昔と変わらない」
早宮海瑠(はやみやかいる)「都市国家東京の特徴は法律だ」
早宮海瑠(はやみやかいる)「ほぼすべての分野で世界各国と自由貿易協定が結ばれていて輸入品は安く、個人的には肉やチーズが安いのがうれしい」
早宮海瑠(はやみやかいる)「買うのは年に数回だが」
早宮海瑠(はやみやかいる)「また、各種先端技術の研究や利用の規制が緩いこと、法人税率が低いことから世界の最先端企業の本社が集まっている」
早宮海瑠(はやみやかいる)「さらに、高度専門職外国人の移民緩和により、多民族国家と呼ばれることもある」
早宮海瑠(はやみやかいる)「そんな都市国家東京の人口は、 独立前の1.5倍、1500万人を超え経済も絶好調だ」
早宮海瑠(はやみやかいる)「おかげで、母国日本国も景気がいい」

〇高層ビル群
早宮海瑠(はやみやかいる)「僕は東京湾岸の埋め立て地にある、賃貸マンションに住んでいる」
早宮海瑠(はやみやかいる)「部屋は35階だが、窓から見えるのは隣のマンションだけ」
早宮海瑠(はやみやかいる)「東京湾の埋め立て地は、ワンルームタワマンが林立する低所得者層が住むエリアだ」

〇一人部屋
  スマートフォンのアラームが鳴る。
  昼食が届いたようだ。
  ベランダを見ると、ドローンポートに荷物を下ろしたドローンが飛び立つところだ。
  湾岸にある無人の弁当工場から直送されているのだ。
  もちろん安い。
  市街地で宅配ドローンが飛び交うのも、規制の少ない都市国家東京ならではだ。
  弁当を食べたらクエストに出掛ける。
  生活費を稼がないと。
  僕が登録している「冒険者ギルド:東京」では、リアルやバーチャルの仕事を受けることができる。
  クエストで得た魔石や討伐した魔物の角とか牙を販売し、報酬、リアルマネーの報酬を得る。
  つまり、生活費を稼ぐのだ。

〇パールグレー
  エレベーターで1階に降りる
早宮海瑠(はやみやかいる)「所要時間は11分」
早宮海瑠(はやみやかいる)「今日は運がいい」

〇ヨーロッパの街並み
  通りに出る。
  ゴーグル越しに映し出される東京の街は、ファンタジー世界だ。
  VPS(Visual Positioning System)技術により、現実世界にCG映像を重ね合わせているのだ。
  実際の風景の上に中世風のテクスチャが貼り付けられ、異世界風の動物も時々現れる。
  道行く人も中世風の服装だ。
  同じゲームをやっている人間の場合、その人の装備が反映されて見える。
  僕の場合、マント姿の剣士に見える。

〇改札口前
  地下鉄を乗り継ぎ代々木公園に向かう。
  地下鉄の車両も、古めかしい馬車風のテクスチャだ。
  何度か乗り換えて目的地の最寄りの駅に到着。

〇コンビニの店内
早宮海瑠(はやみやかいる)「そうだ。 念のための回復のポーションを買っておくか」
  コンビニに寄ってエナジードリンクを購入する。
  公式スポンサーの商品で、専用アプリで購入することでポーションとして利用できる。
  商品はシリアル番号で管理されており、ゴーグルをつけた状態、ゴーグルのカメラで認識した状態で飲むことで機能する。

〇大樹の下
  代々木公園に到着。
  魔法使いや剣士がそこら中にいる。
  まずは装備を確認する。
早宮海瑠(はやみやかいる)「まず何といっても重要なのはゴーグル」
早宮海瑠(はやみやかいる)「東京に来てからは、完全に視界をふさぎ映像をディスプレイに映すタイプを使っている」
早宮海瑠(はやみやかいる)「密閉式ゴーグルで街中を歩けるのは、規制のない東京だけだ」
早宮海瑠(はやみやかいる)「これまで眼鏡型で外の様子が見える網膜投射タイプを使っていたが、隙間から見える現実に臨場感が削がれ、いまいちだった」
早宮海瑠(はやみやかいる)「次に重要なのは剣と盾」
早宮海瑠(はやみやかいる)「実体は10cm程度の棒状のコントローラだが、ゴーグル越しに立派な剣や盾に見える」
早宮海瑠(はやみやかいる)「僕が持っているのは標準の防具から選んだシンプルなものだ」
早宮海瑠(はやみやかいる)「お金を稼いで、防具や武器はもう少しかっこいいものにしたい」
早宮海瑠(はやみやかいる)「それはさておき、準備に問題はない」

〇空

〇大樹の下
  飛びかかって来るファイアウルフ
  間合いを見極め剣を振り下ろす
  右の首のあたりから左足に向け斜めに切り裂く
早宮海瑠(はやみやかいる)「決まった」
早宮海瑠(はやみやかいる)「一振りで倒せた」
  2頭目はあたりをうろつき隙を狙っているようだが、すぐにさっきのやつと同じように飛びかかってきた
早宮海瑠(はやみやかいる)(いや、さっきより速い)
  いそいで盾を構える
  盾にぶつかる振動を感じる
  盾に跳ね返されたファイアウルフに向け、すかさず剣を突き刺す
早宮海瑠(はやみやかいる)「やった」
  今度は3頭出てきたと思ったら、
  あっという間に取り囲まれる
  難易度が上がったな。
  相手の数を減らさないと。
  まずは目の前のやつからだ。
  盾を構え一歩踏み出す。
  突進しようとしたところで、
  気になって斜め後ろをちらっとみる。
  右後ろにいたファイアウルフが1頭、
  僕に向かって飛びかかってくるところだ。
  やばい。
  次の瞬間、どこからか矢が飛んでくる。
  飛びかかってきていたファイアウルフ1頭が仕留められる。
早宮海瑠(はやみやかいる)(誰か知らないが助かった)
早宮海瑠(はやみやかいる)「今のうちに目の前のやつを何とかしないと」
  突進してくるファイアウルフを盾で防ぐ。
  さっきと同じようにすかさず剣で突くが、
  かすっただけだ。
早宮海瑠(はやみやかいる)「もう1頭は?」
  後ろを振り返るが、いない。
  左からうなり声が聞こえる。
  いそいで左側に盾を向ける。
  盾に強い衝撃が伝わる。
  HPが5ポイント減少する。
早宮海瑠(はやみやかいる)「え? 盾で防いだのに?」
早宮海瑠(はやみやかいる)「いや、足にダメージを食らったようだ」
  ボディパーツは付けてないので、衝撃を感じなかったのだ。
早宮海瑠(はやみやかいる)「やはり、ボディパーツは買った方がよさそうだ」
早宮海瑠(はやみやかいる)「残り2頭」
  離れていた2頭が正面に集まる。
早宮海瑠(はやみやかいる)「2頭まとめて飛びかかってくるとやばい」
  1頭に矢が突き刺さる。
早宮海瑠(はやみやかいる)(急所に当たり仕留めたようだ)
早宮海瑠(はやみやかいる)(さっきと同じ誰かが助けてくれたのだろう)
早宮海瑠(はやみやかいる)「残り1頭だ」
  一歩前に進む。
  飛びかかってくる!
早宮海瑠(はやみやかいる)「高い!」
  盾を構え、爪の攻撃を防ぎつつ腹に向けて剣を突き出す。
早宮海瑠(はやみやかいる)「やった!」
早宮海瑠(はやみやかいる)(何とか、5頭倒すことができた)
  あたりを見回す。
早宮海瑠(はやみやかいる)(弓を放ったのは誰だろう)
早宮海瑠(はやみやかいる)(周りには僕と同じように、ファイアウルフと戦っている奴が何人かいる)
早宮海瑠(はやみやかいる)(弓を使っているのは、近くにいるあの女性の剣士だけか。剣は使ってないから弓手か)
早宮海瑠(はやみやかいる)(なんか数打ちゃ当たる的な感じで打ちまくっているが外しまくっている)
早宮海瑠(はやみやかいる)(あ、弓矢が尽きたようだ)
早宮海瑠(はやみやかいる)(近くにいるのは1頭。 今にも飛びかかりそうだ)
早宮海瑠(はやみやかいる)(彼女は盾らしきものを持っていない)
早宮海瑠(はやみやかいる)(助けてくれたのは彼女かどうかは分からないが、助けることにする)
  ファイアウルフがジャンプする。
  彼女にとびかかる寸前、横から切りつける。
早宮海瑠(はやみやかいる)(間に合ったようだ)
「あ、ありがとうございます」
  頭を下げる女性。
早宮海瑠(はやみやかいる)(少なくとも僕よりは装備にお金をかけているように見える)
早宮海瑠(はやみやかいる)「さっき、助けてくれました?」
「えっと、はい」
「というか、結果的にですが・・・」
  恥ずかしそうに下を向く。
早宮海瑠(はやみやかいる)(もしかして、打ちまくっていた矢がたまたま当たっただけなのか)
早宮海瑠(はやみやかいる)「助かりました」
「わ、私の方こそありがとうございます」
早宮海瑠(はやみやかいる)「僕はカイ、といいます」
ユナ「は、はい、私は、えっと、ユナ、です」
  お互いプレイヤー名で自己紹介する。
早宮海瑠(はやみやかいる)「あの、よかったら、LC交換しない?」
ユナ「は、はい」
  お互いのスマホを近づける。
(やった。 初めて冒険者の知り合いができた)

次のエピソード:Ep.2 冒険者ギルド本部東京

コメント

  • なんだかワクワクするお話ですね!
    こんな感じのゲームってやってみたいなぁと思いました。
    リアルの世界で楽しめるのっていいと思います。

  • ストーリーの半分は現実世界の延長になりそうな状況を感じ、又その半分は全く想像の世界で繰り広げられる夢のある印象を受けました。どんな時代が来ようとそれに上手く順応するものが勝者というわけですね。

  • 人助けをしていい行いをしたら、とっておきの出来事が待っていましたね。お互いに同じこと思っている場面が可愛くて今後のふたりを応援したくなりました。

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