第12話「誰も幸せにすることができない私だけができること」(脚本)
〇謁見の間
ヨルダノフ・コール「フェミリー」
フェミリー・コール「はい」
フェミリー・コール(っていうか、転生してから父親に会うのは初めてなんですけど)
フェミリー・コール(ちょっと老けすぎでは・・・・・・?)
私が異世界に転生してから、何十日が経過したかなんて覚えていない。
けれど、私は1度も父親という人物と顔を合わせたことがなかった。
フェミリー・コール(私が相当、父親から嫌われているってことね)
ヨルダノフ・コール「メレディ家から申し出があった」
フェミリー・コール(アーロイ様・・・・・・?)
ヨルダノフ・コール「おまえとの婚約を破棄するということだ」
フェミリー・コール「婚約破棄・・・・・・」
フェミリー・コール(そっか・・・・・・)
フェミリー・コール(やっぱり私は、婚約破棄される運命だったんだ・・・・・・)
この間までは、楽しく言葉を交わし合うことのできる仲だと思っていた。
けれど、私は婚約者として至らぬことばかりだったんだと思う。
フェミリー・コール(アーロイ様の幸せを守りたかった)
フェミリー・コール(アーロイ様を、私が幸せにしたかった)
ヨルダノフ・コール「厄介なおまえを貰ってくれる貴重な相手だったというのに・・・・・・」
フェミリー・コール(私の傍にはもう、アーロイ様はいない・・・・・・)
ヨルダノフ・コール「聞いているのか! フェミリー!」
フェミリー・コール「はい、お父様」
ヨルダノフ・コール「これから一体どうすればいいのか・・・・・・」
フェミリー・コール「お父様」
フェミリー・コール「今までありがとうございました」
ヨルダノフ・コール「ん?」
フェミリー・コール「コール家の人間を名乗るのは、今日で終わりにします」
ヨルダノフ・コール「・・・・・・コール家を出るというのか」
フェミリー・コール「魔女の私が、この家にいるのは好ましくないんですよね?」
ヨルダノフ・コール「・・・・・・・・・・・・」
この世界のことを学ぶために時間がかかってしまったけれど、婚約破棄をきっかけに旅立てということかもしれない。
親のすねをかじるのも、自由で気ままな令嬢生活も今日で終わりということ。
ヨルダノフ・コール「この世界は、魔法と呼ばれている力を必要としていない」
フェミリー・コール「承知しております」
ヨルダノフ・コール「苦労するぞ」
フェミリー・コール「お父様こそ、娘が1人いなくなったことが世間の話題にならないように・・・・・・」
ヨルダノフ・コール「それくらい、おまえに言われなくても分かっている」
フェミリー・コール「さすがです、お父様」
フェミリー・コール(最後の最後まで、娘の名前を呼んでくれないのかー・・・・・・)
フェミリー・コール(うん)
フェミリー・コール(でも、転生前のフェミリーはたくさん愛してもらったはずだから)
フェミリー・コール(行こう!)
フェミリー・コール「私を産んでくださり、ありがとうございました」
〇洋館の階段
フェミリー・コール(令嬢生活も終わりかー・・・・・・)
フェミリー・コール(お金もあって、素敵な婚約者もいて、ある意味では完璧な毎日だったんだけど・・・・・・)
フェミリー・コール(アーロイ様、大丈夫かな・・・・・・)
転生の手伝いをする女神という役職をやっていたこともあり、令嬢が婚約破棄されるって展開は想像できた。
フェミリー・コール(けど、婚約破棄される原因が分からない・・・・・・)
もちろん、私が至らなかったが故の婚約破棄も考えられる。
フェミリー・コール(考えられるけど・・・・・・)
フェミリー・コール(ついこの間までは、普通に言葉を交わしてくれた・・・・・・)
唯一引っかかるのは、そこ。
私とアーロイさんの関係は、至って良好だったと思う。
フェミリー・コール「・・・・・・・・・・・・」
フェミリー・コール(アーロイ様の身に何かが起きた?)
チート能力を授かったところで、アーロイ様の様子を確認する魔法は使えない。
女神様、チートの定義ってなんですか・・・・・・?