トウベツピリカコタン

ゆきんこ

第七話 ウコチャランケ(話し合い)(脚本)

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〇屋敷の寝室
サクア「やっと寝付いた・・・」
尚継(なおつぐ)「一応、応急処置もしてあったが、無理してここまで来たんだろう」
尚継(なおつぐ)「気絶したあとも痛みにうなされていたな」
尚継(なおつぐ)「医者は、臓器が傷ついてないから大事にはならないと言ったが」
サクア「ユワレ、何があったの・・・?」

〇屋敷の寝室
ユワレ「うっ、うっ、ううっ」
サクア「ユワレ!まだ起きちゃ駄目よ!!」
ユワレ「サクア・・・迷惑を、かけた。 行かなきゃ・・・」
サクア「借りを返しただけだ!」
サクア「いいから、布団に戻れ。 キズ口が開くぞ!」
サクア「一体、誰に刺された?」
ユワレ「聞くな・・・」
ユワレ「死ぬかと思って・・・最期にお前の顔が見たくなって・・・しまったんだ」
ユワレ「ハア、ハア・・・」
ユワレ「お前を・・・巻き込む気はない」
サクア「このっ、わからず屋めっ!!」
サクア「お前の秘密を、私が知らないと思っていたのか!?」
ユワレ「誰が、そのことを・・・ まあいい・・・」
ユワレ「それより・・・もう・・・アイヌの里には近づくな」
ユワレ「二度とな」
サクア「聞いてくれ」
サクア「ナオが、トウベツにアイヌと和人の学校を作ると言ってくれたのだ」
サクア「最近の政府の弾圧がヒドいのは聞いている」
サクア「だが、日本人として幼い頃から同等の学問を習えば、」
サクア「差別や迫害の歴史がいつか終わるのではないだろうか」
サクア「天は、誰も平等に見ている」
ユワレ「カムイではなく、天か・・・」
ユワレ「ハッ・・・変わったな、サクア」
ユワレ「あの男のせいか・・・」
ユワレ「今のお前は、どう見ても和人だよ・・・」
ユワレ「だから、余計に巻き込むわけにはいかない」
ユワレ「さらばだ」

〇古風な和室(小物無し)
尚継(なおつぐ)「そうか、出て行ってしまったんだな」
サクア「私、アイヌの里に行ってみる」
サクア「学校のことも首長に伝えたいし、ユワレのことも気になるから」
尚継(なおつぐ)「ユワレは来るなと言ったんだろう?」
サクア「そんなの、余計に放って置けないよ!」
尚継(なおつぐ)「一緒に行こう・・・とは、素直に言えない」
尚継(なおつぐ)「もしかして、和人絡みだとしたら・・・俺が顔を出して良く思われるワケがない」
尚継(なおつぐ)「うーん・・・」
サクア「心配しないで」
サクア「大丈夫よ、私一人で」
尚継(なおつぐ)「駄目だ!」
尚継(なおつぐ)「やっぱり、サクア一人を行かせるわけには行かない!!」
サクア「止めたって無駄よ!」
尚継(なおつぐ)「俺も行く!!」
サクア「ナオは・・・危険だよ!」
尚継(なおつぐ)「イオマンテからの帰り道、約束したじゃないか」
尚継(なおつぐ)「サクアを二度と離さない」
サクア「えっ」
尚継(なおつぐ)「昨日、言いそびれたけど・・・和人にとって、男から女性に渡す櫛には意味があるんだ」
尚継(なおつぐ)「9(苦しみましょう)4(死ぬまで)」
サクア「それって・・・求婚?」
尚継(なおつぐ)「そうだよ」
尚継(なおつぐ)「今回のことが落ち着いて、アイヌの子供たちをトウベツの学校に通わせられたら」
尚継(なおつぐ)「結婚してくれ」
サクア「ナオ・・・私・・・イレズミもないのに結婚なんか出来ないと思っていた・・・」
サクア「早くに子供を産んて力を無くした母上の代わりに、巫女として生きろと首長に言われていたし、」
サクア「混血の私が求婚されることなんて、ありえないと思っていたの」
尚継(なおつぐ)「愛しているよ、サクア」
サクア「私も・・・」
尚継(なおつぐ)「こういう時・・・接吻してもいいのかな?」
サクア「こういう時・・・接吻するのかな?」
「・・・❤️」

〇祈祷場
アイヌの民「ユワレ!なんだ、その姿は!?」
ユワレ「安心してくれ」
ユワレ「松浦殿の助けもあって、旧土人保護法とアイヌ協会の件は受理してもらった」
アイヌの民「じゃあ、何でそんな格好に!?」
ユワレ「本州では反政府の機運が士族の間で高まっていて、一触即発の事態なのだ」
ユワレ「運悪く、開拓使札幌本庁を出てきた俺と松浦殿が没落士族どもに狙われ、」
ユワレ「松浦殿を庇った俺が 刺されたというわけさ」
ユワレ「和人なら大騒ぎだっただろうが、アイヌの男が刺されたくらいじゃ、」
ユワレ「誰も気に留めやしなかったよ」
アイヌの民「だが、手当はしてあるようだな!」
アイヌの民「一応、医者を呼べ!」
ユワレ「カムイはまだ、俺に会いたくないらしい」
ユワレ「だが、少し眠くなってきた・・・」
アイヌの民「首長が倒れたわ!手を貸して!」

〇寂れた村
コンベッキノ「ヒィッ!」
コンベッキノ「サ、サクア?」
コンベッキノ「アァ、アナタっ、し、し、しん・・・死んだんじゃなかったのッ!?」
サクア「ご無沙汰していました、母上」
尚継(なおつぐ)「イシカリトウベツに住む、伊達尚継と申します」
尚継(なおつぐ)「首長に御目通りをお願い申し上げます」

〇祈祷場
首長「そうか・・・学校」
首長「もう儂は隠居してのう」
首長「若いモンに政治は任せておるもんで、決定権は・・・今はユワレにあるのじゃ」
首長「ユワレは今、療養中だから」
首長「動けるようになったら話すが良い」
サクア「ユワレを刺したのは誰なんですか?」
首長「気になるか、サクアよ」
サクア「ええ、とても」
首長「しばらく見ない間に、和人らしくなったのう」
首長「アイヌは過去は水に流せる」
首長「なぜなら、悠久の流れは水と同じで留まるところを知らないからじゃ」
首長「昔のことをアレコレ言ったからって、」
首長「水を浚うが如し。指の間からすり抜けるだけじゃよ」
サクア「・・・ユワレにも和人みたいだと言われたな」
首長「学校といえば」
首長「ちょうど政府からもユワレが嘆願した『旧土人保護法』のことで御触れが来てな」
首長「アイヌの子供たちにも日本人としての教育をしろと決まったようじゃ」
首長「和人は六年だが、アイヌは四年」
首長「教育を受ける義務を付けるらしい」
尚継(なおつぐ)「まさに絶妙な機会だったのか」
サクア「ユワレがそんなことを、考えていたなんて」
首長「伊達と言ったか?若いの」
尚継(なおつぐ)「はっ、ハイ! 尚継です」
首長「この子の父は幼き頃に蒸発、母は育児放棄していて」
首長「儂が理想のシャーマンに育てるために、あまり周りの子供らと同じことはさせてこなかった」
首長「だが儂らが導かずとも、サクアは自分の道を自分で切り開くことが出来たようだ」
首長「サクアをくれぐれも宜しく頼む」
サクア「散々迷惑ばかりかけてきたのに・・・ 首長・・・そんなふうに思っていたなんて」
尚継(なおつぐ)「は、ハイ!お祖父様!」
首長「儂はお前に、お祖父様と呼ばれる筋合いないわい!」
尚継(なおつぐ)「すっ、スミマセン!」

〇ボロい校舎
鮎田先生(あゆた)「立派な学校が出来ましたね!邦直さま」
鮎田先生(あゆた)「ただ、近隣の旧土人の子供を受け入れるということで」
鮎田先生(あゆた)「村人や近隣の住民達の反応が、気になりますな」
鮎田先生(あゆた)「治安が悪くなることへの対応や教育体制の見直しなど、」
鮎田先生(あゆた)「混乱は必死です」
邦直(くにただ)「私も尚継から話を持ち掛けられた時は、驚いたよ」
邦直(くにただ)「何も和人と同席させずとも、今のトウベツの規模であれば、アイヌ学校を別に作っても良かったからな」
邦直(くにただ)「ただ、今日の開拓の成功はアイヌの民の協力があってのこと」
邦直(くにただ)「アイヌの民とともに生きていけたらと願っている」
鮎田先生(あゆた)「邦直さま、あなたは本当に謙虚な方だ! アイヌにまでへりくだらずとも、あなたの功績は皆が知っていますよ」
邦直(くにただ)「如牛もアイヌの民の助力は分かっているはずなのに、和人だから認めたくないのか・・・?」
邦直(くにただ)「いずれにしろ、学校の件は尚継と鮎田に任せる」
邦直(くにただ)「良いように取り計らってくれ」
鮎田先生(あゆた)「ははー! 肝に命じて仕ります!」
鮎田先生(あゆた)「・・・ああは邦直さまに言ったものの」
鮎田先生(あゆた)「男女の同席も最近のことなのに、」
鮎田先生(あゆた)「旧土人と和人の通う学校などと・・・!」
鮎田先生(あゆた)「さあ、困った困った!」
鮎田先生(あゆた)「日本初の学校になることは間違いないが、」
鮎田先生(あゆた)「日本最速で閉校なんてことにならなきゃ良いのだが・・・」

〇黒背景
  ──tobecontinued

次のエピソード:第八話 決壊

コメント

  • プロポーズも成功し、学校の件もまとまりそうでよかったです。ただし、みんなが納得するかどうかは別物ですね。頭ではいいこととわかっていることでも、それまでのあり方を変えるのはそんなに簡単にはいかない、というのは歴史が証明しています…

  • 物語がどんどん回っていった第七話でしたね。時代は移ろい歴史となっていく内容で!
    尚継とサクアのラブシーン(?)、とっても可愛いですね!いいですねっピュアピュアで!!
    この物語が穏やかなまま帰結していくのか、それとももう一波乱起こってしまうのか、想像しながら読んでしまいますね!

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