第9話「夢のために頑張ることを許されるなら」(脚本)
〇カウンター席
アーロイ・メレディ「従者に、君の居場所を聞いてきた」
フェミリー・コール「なるほど」
アーロイ・メレディ「今日も美味しい物探索か?」
フェミリー・コール「また笑いましたね・・・・・・」
アーロイ・メレディ「失礼」
フェミリー・コール「・・・・・・許します」
フェミリー・コール「ここ、美味しいお茶があるんです」
フェミリー・コール「すみません、追加の注文を・・・・・・」
フェミリー・コール「貴族らしいお茶の時間ではなくて、申し訳ございません」
アーロイ・メレディ「どうして謝る必要が?」
フェミリー・コール「ふふっ、いつもお気遣いありがとうございます」
アーロイさんは、私が貴族の身分でありながら街を出歩いていることを知っている。
美味しい物を探求したいという変わり者令嬢である私のことを、とてもよく理解してくださっている。
フェミリー・コール(私には、もったいないくらい素敵な人・・・・・・)
アーロイ・メレディ「・・・・・・・・・・・・」
アーロイ・メレディ「美味いな」
フェミリー・コール「もっと口角を上げて、笑ってくれてもいいんですよ?」
アーロイ・メレディ「・・・・・・・・・・・・」
フェミリー・コール「くすっ」
フェミリー・コール(憧れの貴族生活とは、ほど遠いけれど・・・・・・)
フェミリー・コール(貴族で、こういったデートを楽しめる人生なんて貴重かもしれない)
嫌われ令嬢の私と積極的に関わってくれるアーロイさんを、もっともっと幸せにしたい。
そんな気持ちが日に日に高まっていくけれど、嫌われ令嬢の私にできることは何もないんじゃないかなって思ってしまう。
フェミリー・コール(そもそも私は、女神様との契約で恋愛禁止の身分)
フェミリー・コール(アーロイ様に恋心を抱いてはいけない)
アーロイ・メレディ「フェミリー」
フェミリー・コール「はいっ」
アーロイ・メレディ「これは?」
アーロイ・メレディ「魔法の勉強か何か・・・・・・」
フェミリー・コール「これは、世界の美味しい食べ物や飲み物を記した秘伝の書です」
フェミリー・コール「とは言っても、まだ書物として発売はしていないんですけどね」
フェミリー・コール「この世界を生きる人たちに、こんなに美味しい食べ物があるんだと伝えていきたいと思っているんです」
フェミリー・コール(そして、夢の印税生活!)
フェミリー・コール(本の印税があれば、貴族という階級をはく奪されるなんて展開が起きても大丈夫!)
アーロイ・メレディ「素敵な夢だと思う」
フェミリー・コール「ありがとうございます」
フェミリー・コール(悪役令嬢の展開に陥ったとき対策だなんて、口が裂けても言えない・・・・・・)
アーロイ・メレディ「そういう夢の描き方もあるんだな・・・・・・」
アーロイさんの声が、どことなく寂しそうに聞こえてしまう。
フェミリー・コール「アーロイ様!」
アーロイ・メレディ「ん?」
フェミリー・コール「何かあったら、相談してくださいね」
アーロイ・メレディ「・・・・・・・・・・・・」
フェミリー・コール「できるだけ力になりたいです」
フェミリー・コール「直接的な力にはなれなくても、話をすることで楽になれることもありますよ」
アーロイ・メレディ「・・・・・・・・・・・・」
フェミリー・コール「あ、また笑いましたね?」
フェミリー・コール「今日のアーロイ様は失礼なところが多いですけど・・・・・・」
フェミリー・コール「とびきりの笑顔を見せてくれたので許します」
フェミリー・コール「令嬢らしくない私の夢を応援してくれた、アーロイ様の力になりたいです」
(また魔法が発動した・・・・・・)
アーロイ・メレディ「フェミリー?」
フェミリー・コール「あ、いえ・・・・・・」
私を監視している誰かがいることを知らせる魔法は一瞬だけ発動をして、すぐに消滅した。
フェミリー・コール(気のせい?)
まさかの印税生活を目論んでいる所に笑ってしまいましました!
魔女と言われながらも、なんだかんだで転生先での生活、楽しんでいて良かったです!
が、監視されてるなんて……一体誰に、どんな理由で監視されているでしょう……??