第6話「私を嫌う人がいて 私を大切に想う人もいて」(脚本)
〇大樹の下
フェミリー・コール「女神様のバーー-カっ!」
私はただ、お菓子を作るための材料を手に入れたかっただけ。
それなのに、この世界では忌み嫌われている『魔法』を森で使用することになってしまった。
私は転生する際に、魔法に関するチート能力を望んだ。
けれど、私が転生した世界では『魔法』という力自体が不要だったということ。
フェミリー・コール「事前に教えてくれてもいいのに!」
そんな恨み節も生まれてくるけれど、転生者に向けて転生先の情報を教えることはほとんどない。
別に禁止されているというわけではなく、ほとんどの転生者さんは転生先の世界について尋ねてこない。
だから、新しく生きる世界の情報を知らないまま転生する人がほとんど。
私も、転生先の情報を仕入れなかった1人。
フェミリー・コール(アーロイ様は、メレディ家に生まれた六男だから嫌われているわけじゃない)
フェミリー・コール(『魔法』を使うことができる私と婚約しているから、アーロイ様は嫌われているんだ・・・・・・)
森に出かけることで、収穫はあった。
でも、失ったものも多すぎる。
フェミリー・コール「このまま死刑ルートなのかな・・・・・・」
アーロイ・メレディ「物騒な言葉が聞こえたが・・・・・・」
フェミリー・コール「アーロイ様!?」
アーロイさんの訪問に喜んではいられない。
私はアーロイさんと距離をとり、遠回しに私に近づかないでほしいと合図を送る。
アーロイ・メレディ「この間は、妹が大変失礼なことをして申し訳なかった」
フェミリー・コール「謝らないでください!」
フェミリー・コール「私は、世界を滅ぼすほどの力を持つ魔女ですから」
自分で言っていて、虚しい。
自ら望んだチート能力が、こんな結末を迎えるなんて思ってもみなかった。
フェミリー・コール「・・・・・・・・・・・・」
アーロイ・メレディ「はぁ」
フェミリー・コール(溜め息・・・・・・)
フェミリー・コール(どうしよう・・・・・・)
フェミリー・コール(泣くところじゃないのに、泣きそうになって・・・・・・)
アーロイ・メレディ「傷をつけた相手に、謝罪をしたい」
アーロイ・メレディ「妹がしたことを許してもらえるとは思っていないが、せめて君と話をすることは許してもらえないだろうか」
フェミリー・コール「・・・・・・・・・・・・私は魔女で」
アーロイ・メレディ「君が魔女かどうかは知らないが・・・・・・」
アーロイ・メレディ「世界最高峰の魔法使いだということは、昔から知っている」
フェミリー・コール「あ・・・・・・」
アーロイ・メレディ「受け取ってもらえるか」
アーロイ・メレディ「詫びの品というわけではなく・・・・・・」
フェミリー・コール「私のためを想って、ですか?」
アーロイ・メレディ「・・・・・・ああ」
フェミリー・コール「ありがとうございます、アーロイ様」
アーロイ・メレディ「・・・・・・・・・・・・仲直りを・・・・・・」
フェミリー・コール「そういえば、私からの贈り物がまだでしたね」
アーロイ・メレディ「妹のせいで、材料集めが途中になってしまったな」
フェミリー・コール「お約束していた手作り品ではありませんが・・・・・・」
フェミリー・コール「1人でやけ食いしようと思って、購入しておいたものです」
フェミリー・コール「あ、笑いましたね?」
アーロイ・メレディ「笑ってはいない・・・・・・」
フェミリー・コール「・・・・・・一緒に食べませんか?」