#18 Back to back and Face to face(脚本)
〇お嬢様学校
プルミエを決めるディベートの開催が決定されたことにより、中庭はちょっとした騒ぎになっていた。
喧騒の止まない中庭を歩く夜留達に、要が近づいてきた。
林要「真桜」
佐倉真桜「・・・・・・」
真桜は要には目もくれず、生徒達の間を縫っていく。
北園夜留「ま、真桜・・・? さっきの人なんか真桜のこと呼んでたけど」
佐倉真桜「そうでしたか、気がつきませんでした」
林要「佐倉真桜」
北園夜留「ほら・・・」
佐倉真桜「・・・なんでしょうか」
林要「話があります」
佐倉真桜「ですから、なんです──」
要は一瞬夜留に視線を移して、再度真桜を見つめた。
佐倉真桜「・・・申し訳ありません、お嬢様。 先に教室に向かってくださいますか」
北園夜留「あ、うん・・・」
夜留は早足で、教室の方へ歩いて行った。
佐倉真桜「私には、貴女と話すことなどありませんが」
林要「周りの目をみてください」
佐倉真桜「は・・・?」
真桜が見回すと、その場にいるほぼ全ての人間が、真桜と要、そして、先行した夜留を見ていた。
佐倉真桜(この方々は、敵意を隠そうともしていない・・・)
林要「理解できましたか」
佐倉真桜「さて、何か問題があるのですか?」
林要「移動しましょう」
佐倉真桜「・・・・・・」
〇華やかな裏庭
林要「学園長に、してやられました。ああまでして、私たちに争わせたいようです」
佐倉真桜「そうですか」
林要「まだ理解していないようですね」
林要「貴女も同じ立場のはずですが」
佐倉真桜「敵が増えただけでしょう。 何をそんなに慌てているのですか」
佐倉真桜「プルミエの候補が決まってしまった以上、お嬢様と北園夜留が確実に狙われます」
佐倉真桜「お嬢様に近づく者は全て斬ります」
佐倉真桜「貴女もその対象です」
林要「やはり、わかっていない」
佐倉真桜「では、はっきりと仰ってください」
林要「・・・今夜限りの協力を申し込みたい」
佐倉真桜「何を言い出すのかと思えば」
佐倉真桜「冗談ではありません、断固拒否します」
佐倉真桜「私の主人は、私が守ります」
林要「先ほどのあの人数を見ましたか? どうやら、穏健派ばかりではないようです」
林要「今日の二時、ドゥジエーム寮は確実に混乱に陥ります」
林要「お嬢様のディベートの準備を邪魔されたくないのです」
佐倉真桜「ディベートは私の主人が勝ちます」
林要「何を馬鹿なことを言って・・・いえ、今はそんなことを話している暇はありません」
林要「お嬢様を守るという共通の目的の前では、貴女は信用に値します」
林要「主人の邪魔をする者の排除には全力を尽くしたい、それがメイドたる私の考えです」
佐倉真桜「・・・・・・」
佐倉真桜「わかりました。今夜は見逃しましょう」
佐倉真桜「ですが、背中を預けるのはお断りです」
佐倉真桜「せいぜい私の邪魔をしないように立ち回ってください」
林要「ふ・・・承知いたしました」
〇豪華な部屋
夕食が済んでから、夜留はずっと机に向かって何かを書いているようだった。
佐倉真桜「・・・お嬢様、何をされているのですか」
北園夜留「ディベートのシミュレーション」
佐倉真桜「シミュレーションですか」
佐倉真桜「テーマの発表は当日だったかと思いますが・・・」
北園夜留「夜留は夜留に出来ることをやるだけだから」
佐倉真桜「そうですね」
北園夜留「うん、まあ、明日見てて」
北園夜留「やっと、プルミエに手が届きそうなんだ。 お姉ちゃんに、胸を張れるんだ・・・!」
佐倉真桜「朝咲お嬢様は既に、夜留お嬢様のことを誇りに思っていたかと存じます」
北園夜留「ううん、これは夜留の問題」
北園夜留「真桜」
佐倉真桜「はい」
北園夜留「夜留、頑張る!」
佐倉真桜「はい、応援しております」
北園夜留「よしっ! じゃあ、先に休むね」
佐倉真桜「おやすみなさいませ、お嬢様」
佐倉真桜「・・・・・・」
佐倉真桜(さて・・・騒がしくなってくる頃でしょうか)
佐倉真桜(・・・お嬢様の邪魔は誰にもさせません)
〇華やかな広場
林要「・・・来ましたか」
佐倉真桜「話すことはないと、何度言ったらわかるのですか」
林要「私にはあるのです」
林要「トロワジエームクラスの方々が徒党を組んだとの情報が入りました。これは私が叩きます」
林要「貴女には、ここを守ってもらいたい」
佐倉真桜「協力はしないと言いました」
要はため息をついた。
林要「どうせ貴女はこの寮前から動かないでしょうから私が遊撃に回ると言ったのです」
佐倉真桜「勝手にしてください」
林要「・・・ドゥジエーム寮には私の主もいます」
林要「誰一人として通さぬようにお願いします」
林要「もしもお嬢様の身に何かあれば、貴女の主人もろとも八つ裂きにいたしますので」
佐倉真桜「・・・いい加減に、無駄口を叩くのをやめていただけますか」
佐倉真桜「耳障りです」
真桜たちの元にやってくる無数の足音が聞こえた。
林要「念のため、寮の中にも気を配ってください」
林要「信用しましたよ、真桜」
要が走り出すと同時に、真桜が刀を抜く。
──今夜も、多くの花が散ることになった。
〇大教室
翌日。
ディベート会場の教室には、大勢の生徒が集まっていた。
北園夜留「・・・うわぁ、すごい人」
佐倉真桜「思ったよりも集まっていますね・・・お嬢様、私はここに座るようです」
北園夜留「あ、うん。行ってくるね」
夜留と善哉寺が、教室の中心に設置された席に座る。学園長が目の前の教壇に立っていた。
学園長「今回は、シンプルなルールを採用します。 立論と反論のみの、一回勝負です」
学園長「先日も言いましたが、審判は、ここにいる生徒の皆さんです。私はあくまで進行のみを行います」
学園長「審判である生徒の皆さんの票をより多くえた方の勝利といたします」
場が緊張に包まれる。
学園長「それでは、プルミエを懸けたディベートのテーマを発表します」
学園長「テーマはノブレスオブリージュです」
学園長「身分の高い者、力のあるものには、力のない人々よりも、果たさなくてはならない責任や義務があるという概念ですね」
学園長「賛成反対は、対戦者が決定してください」
善哉寺鏡日「私は、反対を希望します」
一斉に善哉寺に注目が集まり、場が騒然とする。
学園長「・・・北園夜留、希望はありますか」
北園夜留「じゃあ、賛成で」
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