メイド・ザ・リッパー

雛夢

#16 メイドの矜持(脚本)

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〇お嬢様学校
  プルミエは譲らない。
  善哉寺にそう宣言した夜留は、真桜とともに騒ぎの収まった中庭で話し込んでいた。
佐倉真桜「先ほどの善哉寺様へのご返答、とても堂々としておりました」
北園夜留「うん、プルミエは夜留が取るもん」
佐倉真桜「ふふ、そうでしたね」
北園夜留「真桜がまた笑ってる!」
佐倉真桜「私とて、嬉しい時は笑います」
北園夜留「あ、また真顔になっちゃった・・・」
佐倉真桜「表情のコントロールは苦手分野です」
北園夜留「えへへ・・・」
佐倉真桜「お嬢様も、笑顔が増えましたね」
北園夜留「そう?」
佐倉真桜「はい。拝見する度、癒されております」
北園夜留「お互い様だね」
佐倉真桜「お互い様・・・?」
北園夜留「そうだ、さっき真桜、誰かと話してた」
佐倉真桜「ああ・・・」
佐倉真桜「善哉寺家のメイドと、他愛もない世間話をしておりました」
北園夜留「真桜、世間話なんかするんだ」
佐倉真桜「はい」
佐倉真桜「・・・お嬢様、そろそろ午後の授業が始まります」
北園夜留「あ、うん」
北園夜留「ねえ真桜」
佐倉真桜「なんでしょう」
北園夜留「なんか・・・学園内、雰囲気が怖くなった気がする」
佐倉真桜「怖くなった?」
北園夜留「みんな、ひそひそ話とか、悪口とか」
佐倉真桜「残念ながら、この学園はこれが平常です」
北園夜留「ううん。善哉寺さんのことを悪く言ってる人が多くなってる気がする」
佐倉真桜「なるほど」
佐倉真桜「恐らく、お嬢様の登場で、善哉寺様を良く思ってない方々が表立って見えてきたのかと存じます」
北園夜留「え・・・夜留のせい」
佐倉真桜「いいえ、違います。善哉寺様は元々敵の多い方ですから、立場が揺らぐとこうなるのは必然でしょう」
佐倉真桜「お嬢様が力をつけてきている証拠です」
北園夜留「うん・・・」
佐倉真桜「お嬢様、そのように悲しい顔をされないでください・・・」
佐倉真桜「プルミエへの道を切り開くための戦略は様々です」
佐倉真桜「善哉寺様の戦略は、こういったリスクを伴うものだった、というだけの話ですから」
北園夜留「チェスみたい」
佐倉真桜「ああ、そうかもしれません」
北園夜留「夜留、サクリファイスは好きじゃない」
  サクリファイス・・・『犠牲』。
  夜留の小さな呟きは、真桜には聞き取れなかったようだった。
北園夜留「夜留は夜留なりにプルミエを目指せばいいってこと、だね」
佐倉真桜「はい、その通りです」

〇豪華な部屋
  寮室に移動した夜留たち。
  真桜がいつものようにドア工作を始めていた。
北園夜留「真桜、またドア工作してる・・・」
佐倉真桜「念の為です。お気になさらずに」
北園夜留「うん、まあもう見慣れた光景だけど・・・」
北園夜留「・・・新しい部屋、すごく広いね」
佐倉真桜「そうですね。出る夕食も変わるみたいです」
北園夜留「そんなところに差をつけるんだ」
佐倉真桜「品位昇格のご褒美のようなものでしょうか」
北園夜留「実力主義だぁ・・・」
北園夜留「あ、そうだ真桜」
北園夜留「今日先生にね、ドゥジエームへの昇格もすぐだろうって言われ──」
佐倉真桜「・・・・・・」
  真桜が真剣な顔つきで、ドアに耳を当てている。
北園夜留「ど、どうしたの・・・?」
佐倉真桜「いえ、今日はやけに足音が多いな、と」
北園夜留「足音が多い・・・? 寮が変わったから?」
佐倉真桜「いえ、トロワジエームはカトリエームよりも生徒数が圧倒的に少ないはずです」
佐倉真桜「・・・もう二時になりますね」
佐倉真桜「お嬢様はもうお休みになってください」
北園夜留「え・・・真桜は──」
佐倉真桜「私もすぐに寝ます」
北園夜留「・・・・・・」
北園夜留「わかった、おやすみ真桜」
佐倉真桜「おやすみなさい、お嬢様」

〇おしゃれな廊下
佐倉真桜(血の匂い・・・)
  真桜は月明かりを頼りに暗い廊下を進んでいった。
佐倉真桜(さきほどの大量の足音はどこへ行ったのでしょう)
佐倉真桜「血痕・・・?」
  刀の持ち手に手を掛け、辺りを見回す真桜の耳に飛び込んできたのは、少女の悲鳴だった。
佐倉真桜「・・・! 中庭か」

〇お嬢様学校
佐倉真桜「これは──」
  中庭に出た真桜の視界には、大量のメイドと生徒の死体の山だった。その惨状の中心には、要が立っている。
林要「・・・・・・」
佐倉真桜「要・・・!」
  真桜が刀を抜いて飛びかかる。
  金属と金属が交差する音が壁に反響した。
林要「本当に、まるで獣ですね。 目が血走っていますよ、真桜」
林要「この方々も貴女の差し金ですか」
佐倉真桜「差し金・・・?」

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