#14 アヴェンジャーズ・コンプレックス(脚本)
〇華やかな寮
ある早朝。
真桜がいつものように、寮のエントランスまで、新聞を取りに出てきていた。
真桜がポストから朝刊を取り出すと、一緒に出てきた白い封筒が床に舞い落ちた。
佐倉真桜「おや・・・これは」
佐倉真桜「私宛の手紙・・・?」
佐倉真桜「差出人は・・・敷島エリカ、ですか」
真桜が辺りを見回す。
佐倉真桜(気配はない・・・)
佐倉真桜(これは、部屋に戻る前に読んでしまいましょう)
手紙の内容は、場所と時間が示されただけのシンプルなものだった。
佐倉真桜(・・・なるほど、果たし状というものですか。律儀な方ですね)
佐倉真桜(今夜、ですか)
〇寮の部屋(ポスター無し)
北園夜留「あ、真桜、おはよう」
佐倉真桜「おはようございますお嬢様、起きていらしたのですね」
北園夜留「うん、今起きたところ」
佐倉真桜「どうぞ、本日の朝刊です」
北園夜留「真桜、どうしたの?」
佐倉真桜「はい?」
北園夜留「あ、ううん、なんだろ・・・いつもと顔つきが違う、気がする」
北園夜留「何かあった?」
佐倉真桜「・・・いいえ、なにも。 変わりはありません」
北園夜留「そう、何かあったら夜留に言って」
佐倉真桜「ありがとうございます、お嬢様」
佐倉真桜(この戦いは私が始めたこと。 敷島エリカも私が生み出した私の敵)
佐倉真桜「行きましょう」
北園夜留「え、夜留まだ全然準備できてない」
佐倉真桜「あ、いえ・・・!」
佐倉真桜「そうですね、ゆっくり御支度なさってください」
〇お嬢様学校
善哉寺と夜留のチェス対決の一件以来、周囲の夜留への評価が変わったようだった。
成績も優秀な夜留に羨望の眼差しを向ける生徒も多く、以前よりもよく話しかけられるようになっていた。
生徒「夜留さん、一緒にご飯食べませんか」
北園夜留「あ・・・ごめんなさい。 夜留もう食べちゃいました」
生徒「あ、じゃ、じゃあ、一緒に勉強でも──」
北園夜留「ご、ごめんなさいっ!」
夜留が小走りに逃げていき、真桜がその後を追う。
〇お嬢様学校
佐倉真桜「お嬢様、何も逃げなくとも・・・」
北園夜留「なんか怖いんだもん・・・真桜だって、友達作っちゃダメって言った」
北園夜留「それに・・・また、小春さんみたいに急にいなくなっちゃったら、って思うと・・・」
佐倉真桜「・・・申し訳ありません」
北園夜留「なんで真桜が謝るの?」
佐倉真桜「いえ・・・」
北園夜留「えへへ、大丈夫。真桜がいるもん」
佐倉真桜「はい、私はいつでもおそばにいます」
〇洋館の一室
北園夜留「真桜、たまには先に寝てもいいよ?」
佐倉真桜「いいえ。 メイドは後に寝て、先に起きるものです」
北園夜留「そんな決まりない」
佐倉真桜「あります」
北園夜留「じゃあもう寝る。真桜も寝てね」
佐倉真桜「かしこまりました」
佐倉真桜「・・・・・・」
佐倉真桜(さて・・・行きましょうか)
〇華やかな裏庭
真桜が裏庭に足を運ぶと、敷島が一人、壁にもたれかかるようにして待ち構えていた。
敷島エリカ「・・・ああ、本当に来たんだ」
佐倉真桜「一人ですか。貴女のメイドはどこに?」
敷島エリカ「言ったでしょ。 関係のない人を巻き込むつもりはないの」
佐倉真桜「よい心がけですね」
敷島エリカ「冷静ぶって偉そうに言うな!」
佐倉真桜「怒鳴る相手が欲しくて、呼び出したのですか?」
敷島エリカ「あんたはぁっ! 葵の時もそう言う口調で追い詰めたのか!」
佐倉真桜「どうだったでしょうか」
敷島エリカ「・・・葵のことを教えてやる」
敷島エリカ「あんたが殺した少女がどんなに尊いものだったか・・・!」
佐倉真桜「・・・・・・」
敷島エリカ「葵には弟が2人いて、その子たちの将来のために、お金が必要だった!」
敷島エリカ「でも、あんたが殺した!」
敷島エリカ「家で待ってる弟たちの元に届いたのは、頑張っているはずの姉の訃報が記された一通の手紙だけ!」
佐倉真桜「残されたものの怒りはよく存じております」
敷島エリカ「・・・『人を呪わば穴二つ』ということわざがある」
佐倉真桜「・・・?」
敷島エリカ「復讐をするには、相手と自分の墓穴が必要なの」
敷島エリカ「復讐をすれば、いつか自分に返ってくる」
敷島エリカ「あんたはどう? ちゃんと二つ掘った?」
佐倉真桜「・・・・・・」
敷島エリカ「・・・私はひとつしか掘ってない」
敷島エリカ「あんたのだけ!」
敷島が慣れない手つきで剣を鞘から抜いた。
佐倉真桜「甘いのです」
敷島エリカ「なに?」
佐倉真桜「1つや2つで足りるわけがない」
敷島エリカ「・・・・・・」
佐倉真桜「あなたに恨みはない。 だが、あなたの墓穴を掘る覚悟はある」
佐倉真桜「私は、復讐のためだけに、葵さんを殺しました」
佐倉真桜「そして、私の前に立つと言うのなら、関係のない貴女を殺す覚悟があります」
敷島エリカ「あんたは・・・! まだそんなことを!」
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