MAD・AGE

山本律磨

BERSERKER(1)(脚本)

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山本律磨

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〇砂漠の基地
  天は目まぐるしく回る。
  灰色の空から、小雨が降り始める。
  撤退してきた撰鋒隊が、次々と門をくぐり砦の内へと駆け込んでゆく。

〇戦地の陣営
帯刀「動じるな。全ては想定の内じゃ、持ち場につき粛々と守れ」
  家来に具足を身につけさせている粟屋。
帯刀「エネミール銃?ゲパールの間違いであろうが。正確に伝えぬか」
  控える家臣たちがおもねる。
  『確かに虚言を弄したんかも知れませんな』
  『まこと百姓の浅知恵よ』
帯刀「たわけが。雑兵ごときがエゲレスの新式など持っとるわけはなかろう。銃も大半は紛いものに違いあるまい」
  粟屋、腰に二本差し采配を掴む。
帯刀「この雨では種子島も使えぬ。虫けら相手には勿体無いがゲパール銃を全部出せ」
  『はっ!』
  伝令、駆け出てゆく。

〇武骨な扉
  物見台から柵の外を見下ろす撰鋒隊士。
  『来ました!数、おおよそ200!』
  鉄の門が閉ざされる。

〇城壁
  眼下、集う武者たちに告げる粟屋。
帯刀「増援を求めるまでもない。常駐四百で守りきる」
帯刀「よいか、一時でケリをつけよ。手下は撫で斬り頭の首は討ち捨てて構わぬ」
帯刀「これは戦ではない。ただの百姓一揆じゃ!」
  法螺貝の音。鬨の声を上げる撰鋒隊。

〇武骨な扉
  門の前で進軍を止める奇兵隊と諸隊。
  采配を手に、先頭に立つ俊輔が告げる。
俊輔「高杉開闢総督の命を伝える」
俊輔「これより奇兵隊は山県狂介新総督指揮の下、絵堂を陥落せしめ、武器弾薬を奪取しする」
俊輔「そして陸路から萩へ攻め上り、俗論を弄す幕府の手先より藩主敬親公をお救い申し上げる」
  俊輔、狂介に歩み寄り采配を渡す。
  無言で受け取る狂介。
  『維新総督高杉晋作』の旗をじっと見据える。
狂介「維新(これあらた)・・・そうじゃ。これよりあらたに始まる」
狂介「新しき侍、俺達の世が」
  采配を掲げ、天を貫く狂介。
狂介「奇兵隊、突撃せよ!」
  鯨波をあげる奇兵隊と諸隊。
  巨大な丸太を乗せた大八車が、鉄扉にぶつかってゆき門を破壊する。
  全ての兵が砦の中になだれ込む。
武人「・・・」

〇城の回廊
  雪崩込む奇兵隊を撰鋒隊の銃弾が襲う。
狂介「怯むな!」
  狂介、采配を俊輔に突き返すと銃弾の渦中に飛び込もうとする。
俊輔「総督!」
狂介「放せ俊輔!」
  狂介、制する俊輔を突き飛ばすと、倒れている隊士達を飛び越え、魁に立つ。
狂介「怯むな!もう二度と怯むな!」
  撰鋒隊の一人が、狂介に向け銃口を向ける。
狂介「・・・!」
  『百姓が!』
  と、倒れていた隊士の一人が怒号とともに
  立ち上がり、狂介の盾となる。
  『うおおおおおおお!』
  胸に風穴を開け、吹き飛ぶ隊士。
  だが狂介は一顧だにせず、己に銃口を向けた武者に槍を突き立てる。
狂介「これが・・・これこそが志士!」
狂介「我等も続くぞ!志士となろうぞ!」
  盾となった隊士に呼応するように、倒れていた隊士達が起き上がり撰鋒隊に飛びかかる。
狂介「今じゃ俊輔!俺達ごと撃て!」
  采配を振り上げ、脇の者達に告げる俊輔。
俊輔「山県総督だけは外せ」
  俊輔、新式で負傷した隊士もろとも武者を射殺する。
  隊士達、俊輔に習って発砲する。
  撰鋒隊の陣形が崩れてゆく。
  狂介、槍を手に撰鋒隊に飛びこむ。
  槍刀を持った隊士達もまた狂介に続く。
  奇兵隊の決死に圧倒される撰鋒隊。
狂介「もろとも撃て!ワシらは死兵!こやつらを一人でも道連れに死ぬんじゃ!」
  奇兵隊、狂ったように雄叫びをあげながら撰鋒隊を斬り伏せ突き殺してゆく。
俊輔「迷うな!撃て!弾がなくなれば我らも後を追うぞ!撃て撃て撃て!」
  鉄砲隊、決死隊と化した狂介達もろとも撰鋒隊に向かって発砲する。
  狂介、撰鋒隊の屍を掴んで盾にする。
  隊士達、狂介に習い武者の屍を盾とする。
俊輔「回れ右!駆け足!」
俊輔「撃て!」
  狂介の突貫の指示と、俊輔の散開の指示に呼吸を合わせ戦う奇兵隊
武人「これが狂・・・」

〇モヤモヤ
武人「理に裏付けられた狂・・・」

〇城の回廊
  武人、ふと櫓を見上げる。
  物見台の上から、一人の兵士が狂介を狙っている。
  武人、傍で銃を構えているだけの善蔵から銃を奪って兵士を撃つ。
  物見台から転落して、頭が砕ける兵士。
善蔵「ひいっ!」
武人「これで俺も同族殺しだ」
  武人、そう言いつつも善蔵に銃を突き返す。
  撰鋒隊、ついに瓦壊し逃亡を始める。
狂介「魁は崩した。力士隊は武器庫。遊撃隊は詰所を制圧せよ。奇兵隊は俺と共に本隊を落とす」
狂介「正義はわれらにあり。小賢しき佞臣、粟屋帯刀を誅殺せい!」
  狂介、本陣に向かって駆け出す。
  奇兵隊士、雄叫びと共に狂介に続く。
  屍を越えて、殺し合いは続く。

次のエピソード:BERSERKER(2)

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